コンサートのチケット転売で逮捕! | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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コンサートのチケット転売で逮捕!

2016年09月16日

ファン心理に付け込んで金儲けをしていた女が逮捕されたようです。

問題となったのは、アイドルのコンサートチケットの転売です。

「嵐のチケットを無許可で転売、25歳女逮捕」(2016年9月14日読売新聞)

アイドルグループ「嵐」のコンサートチケットを転売したとして、北海道警札幌中央署は、香川県善通寺市のブリーダーの女(25)を古物営業法違反(無許可営業)の疑いで逮捕しました。

報道によると、香川県公安委員会の許可を受けていないにもかかわらず、女は2015年11月から12月の間に札幌市内の女性ら3人に対し、
嵐のコンサートチケット5枚を計4回、インターネットの転売サイトで計7万円で売ったということです。

女は、チケット交換サイトでコンサートチケットを入手した後、転売サイトに出品して高値で販売する手口で、2014年10月から今年4月までに、全国31都道府県の168人に嵐などのコンサートチケット299枚を販売し、約1000万円の売り上げを得た疑いがあるとして、同署で余罪を調べるということです。
チケットの転売行為、いわゆるダフ屋行為については以前も解説しています。

詳しい解説はこちら⇒
「AKB総選挙とダフ屋行為」
https://taniharamakoto.com/archives/155

「チケット転売で逮捕!?」
https://taniharamakoto.com/archives/1866

これらの事件では、逮捕容疑は東京都迷惑防止条例違反(ダフ屋行為)でした。

迷惑防止条例は、全国の各都道府県でそれぞれ制定されていますが、たとえば東京都の場合、第2条でダフ屋行為の禁止について規定しています。

対象となるのは、乗車券や入場券、観覧券などのチケットで、転売目的で買うことも売ることも禁止されています。

ただし、「公共の場所」等で買ったり売ったりしないと、迷惑防止条例で処罰はされません。

インターネット上には適用がないわけです。

この条例自体が、「公衆での迷惑」な行為を取り締まることを目的としたものなので、インターネット上は対象にしていない、ということですね。

さて、今回の事件では古物営業法違反です。

古物(こぶつ)営業法とは、どのような法律なのでしょうか?
条文を見てみましょう。

「古物営業法」
第1条(目的)
この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。
「古物営業法」は、1949(昭和24)年に制定されたもので、盗品などの売買や窃盗などの犯罪の防止等を目的としています。

「古物」とは、一度使用された物品や美術品、商品券、乗車券、郵便切手、あるいは使用されない物品で使用のために取引されたものなどをいいます。(第2条1項)

「古物営業」とは、たとえば次のようなことをいいます。(第2条2項1号)
・古物を売買、交換する営業
・委託を受けて古物を売買、交換する営業

そして、この営業は許可制になっています。

第3条(許可)
1.前条第2項第1号に掲げる営業を営もうとする者は、営業所が所在する都道府県ごとに都道府県公安委員会の許可を受けなければならない。
これに違反した場合は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(第31条)

ちなみに、営業とは生業に限定されません。
小遣い稼ぎでも「営業」になります。
そして、営業とは「営利を目的として、反復継続する」ことです。

今回の事件は、約1年半にもわたって168人に299枚もの大量のチケットを販売したということです。

計算上は、約2.4日に1回のペースでコンサートに行くことになります。

さすがに「299回全て自分でコンサートに行く予定で買ったけれども都合が悪くなったので、やむなく売った」とは言えないでしょう。

「転売してお金を儲けるために反復継続してチケットを購入し、販売した」ということになるでしょう。

このような転売が横行すると、コンサートに行きたいファンのチケット入手が困難になります。

もちろん、高いお金を払えば手に入るのかもしれませんが、それでは、アーティスト達の本意ではありませんね。

多くのアーティストが高額転売に苦言を呈しているところです。

早く有効な防止策を考案してくれることを祈ります。合掌。。。