チケット転売で逮捕!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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チケット転売で逮捕!?

2015年02月07日

クイズです。

「あさかぜ」「富士」「さくら」「出雲」「つるぎ」「はやぶさ」…さて、これらに共通することは何でしょうか?

鉄道ファンなら、すぐにわかってしまうかもしれませんが…

正解はブルートレインの名前です。

ブルートレインの愛称で根強い人気があった寝台特急は、1970年代後半には、大人のマニアだけでなく小中学生までもがカメラを持って撮影するというブームが巻き起こりました。
ベッドに食堂車もついたブルートレインに、当時あこがれた読者もいるかもしれませんね。

しかし、その後、利用客の減少などで次々に廃止されていく中、ついに2009年には東京駅発着のブルートレインは全廃。

最後に残った「北斗星」(上野駅‐札幌駅)も、今年の3月13日での運行終了が発表され、臨時列車としての最終運行日である8月22日(札幌発)をもって、ついに廃止となる予定だそうです。

日本のブルートレインは、約60年の歴史の幕を閉じようとしています。
さようなら、ブルートレイン!

みなさん、ごきげんよう!
と、なんだかもう終わりのような感じになってしまいましたが、今回のブログはまだ終わりません。
ブルートレインに関係する事件が起きたようなので解説します。

「ダフ屋行為:ブルトレ信州の切符ネットで高額転売」(2015年2月5日 毎日新聞)

警視庁生活安全特別捜査隊は、JRの臨時快速列車「ブルートレイン信州」の指定席券を転売目的で購入したとして、無職の男(47)ら男女2人を東京都迷惑防止条例違反(常習ダフ屋行為)容疑で逮捕しました。

報道によると、容疑者の男らは2014年の8月~9月、品川区のJR大崎駅でブルートレイン信州の指定席券4枚を含む切符6枚(3120円)を転売目的で購入した後、インターネットオークションに出品し、神奈川県の男性(53)ら3人に計約11万円で転売していたということです。

男は、「2013年の夏ごろから(ダフ屋行為を)始め、他にもやった」と容疑を認めているようです。

ブルートレイン信州は中央線富士見駅(長野県富士見町)の開業110周年を記念し、2014年9月28日に1日だけ運行。
男は、全国各地で記念切符が発売される際、先頭に並んで購入する「熱心なコレクター」として、鉄道ファンの間で有名だったということです。
以前、ダフ屋行為について解説しました。
詳しい解説はこちら⇒「AKB総選挙とダフ屋行為」
https://taniharamakoto.com/archives/155

ダフ屋行為の禁止については、東京都内の場合には、「東京都迷惑防止条例」の第2条に規定されています。

条例ですから、都道府県別に規定されているわけですね。

ところで、ここに出てくるダフ屋とは、どんな人たちか、ご存じですか?

野球場やライブ会場の付近で、「チケットあるよ~」とか言って、チケットがなくて入れない人達にチケットを転売している人達のことを言います。

都道県の各条例では、このダフ屋行為が禁止されています。

以下に詳しく見ていきます。

【転売の対象となるもの】
対象となるのは、乗車券や入場券、観覧券などのチケットです。

野球やライブの入場券は、該当しますし、今回のブルートレインの乗車券も該当することになります。

【違反となる転売の目的】
①不特定の者に転売する目的
②転売目的者に交付する目的

ダフ屋は、もともと自分で行くつもりはなく、「チケットあるよ~」と不特定の人に転売する目的があるので、これにあたります。

自分で行こうと思って買ったチケットだけど、行けなくなったので他の人に転売したという経験のある人もいると思いますが、そうした場合は初めから転売目的ではないため、罪には問われないということです。

今回の容疑者も、自分でブルートレインに乗る目的ではなく、転売目的であった、と認定されたわけですね。
【違反となる行為】
転売目的で入手したチケットを「公共の場」あるいは「公共の乗り物」で売る行為についても以下の行為が禁止されています。
①売る
②うろつく
③つきまとう
④呼びかける
⑤ビラなどを配る
⑥展示して売ろうとする

ちなみに条文では、公共の場とは、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場その他の公共の場所となっています。

ダフ屋は、野球場やライブ会場の付近で「チケットあるよ~」と呼びかけているので、④に該当するわけですね。

【法定刑】
6月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
さて、今回の事件では、容疑者はチケットをインターネットのオークションで売っていました。
ネットオークションとダフ屋行為は法的には問題となるのでしょうか?

まず、迷惑防止条例の目的は、公衆に迷惑をかける行為を防止することです。
そのため、売る行為自体に関しては、ネット上は「公共の場所」でも「公共の乗り物」でもないので違反とはなりません。
では、なぜ、今回、逮捕されたのでしょうか?

容疑者は、チケットを大崎駅で買っています。

実は、東京都迷惑防止条例では、次のような行為も禁止されています。

転売目的で、「公共の場」あるいは「公共の乗り物」での以下のような行為をすることです。
①買う
②うろつく
③つきまとう
④呼びかける
⑤ビラなどを配る
⑥列に並んで買おうとする

駅は公共の場です。

駅で、ブルートレインの乗車券を転売目的で購入すると、この規定に違反することになります。

よって、東京都迷惑防止条例違反、ということになります。

そうすると、公共の場で買わなければ、東京都迷惑防止条例違反にはならない、ということです。

ネットオークションで買って、ネットオークションで売るような場合ですね。

さて、今回の容疑者は、乗車券を買って、ネットオークションで売っただけですが、なぜ、【転売目的】と認定されたのでしょうか?

行動だけを見ると、転売目的なのか、自分で行く目的なのか、わからないはずです。

このあたりは、報道内容だけではわかりません。

たとえば、過去にも、何度もチケットをネットオークションで出品していると、今回も転売目的ではないか、と推測が働きます。

また、その時の枚数が多く、今回も6枚と比較的多いと、転売目的の推測が働きます。

チケット購入からネットオークション出品までが短時間だと、乗車目的ではないのではないか、と推測されますね。

今は、SNSの時代です。自分でSNSで、「入手困難のチケットを6枚ゲット!欲しい人は売りますよ~」などとつぶやいていると、転売目的バレバレとなります。

「転売目的」は、あくまで内心のことですから、逮捕の後、転売目的であったことを自白するかどうかがポイントとなるでしょう。

「えっ!?これって犯罪なの?」

と思った人も多いかもしれません。

このブログをよく読んで、十分気をつけて下さい。

日常に犯罪行為は潜んでいます。

「1日だけ幸せでいたいならば、床屋にいけ。
1週間だけ幸せでいたいなら、車を買え。
1ヵ月だけ幸せでいたいなら、結婚をしろ。
1年だけ幸せでいたいなら、家を買え。
一生幸せでいたいなら、正直でいることだ」(イギリスのことわざ)