学校の部活動での死亡事故の慰謝料は?(弁護士解説) | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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学校の部活動での死亡事故の慰謝料は?(弁護士解説)

2016年08月12日

学校のクラブ活動(部活動)で、生徒の死亡事故が起きてしまうことがあります。

親も両親も、当然、本人も、部活動で死亡事故が起きるなど、考えもしません。

しかし、実際には、不注意により、死亡事故が起きてしまうことがあり、その場合、法的にはどのような問題が発生するのか、ということになります。

まず、部活動は学校の活動であり、担当教師の指導下にあるわけですから、生徒の死亡について、担当教師の故意あるいは過失がある場合には、業務上過失致死罪の成立が問題となります。

過去の事例では、高校のラグビーの部活動中、生徒が日射病で倒れ、死亡した事件で、担当教師が業務上過失致死罪にとわれ、禁錮2か月執行猶予1年の有罪判決がなされた事例があります(東京高裁昭和51年3月25日判決)。

また、山岳部で岩登りが行われ、途中2名が転落した死亡した事件で、引率の教師が、業務上過失致死罪にとわれ、罰金3万円の有罪判決がなされた事例もあります(札幌地裁昭和30年7月4日判決)。

次に、生徒が死亡した、ということは、その損害をどうするのか、という民事上の問題もでてきます。

学校の管理下における死亡事故について、スポーツ振興センターにおける災害共催給付金制度があり、事故の態様によって、異なる金額の給付がされる制度があります。

次に、生徒の死亡について、他の生徒の行為に起因するものであるならば、その生徒の注意義務違反があったかどうかが問われます。

場合によっては、その生徒あるいは親に対し、不法行為に基づく慰謝料など損害賠償請求をしていくことになります。

次に、部活動中の事故、ということであれば、担当指導教師に注意義務違反がなかったか、について、検討しなければなりません。
部活動は、「学校の教育活動の一環として行われるものである以上、その実施について、顧問の教諭を始め学校側に生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務がある」とされています(最高裁昭和58年2月18日判決)。

ただし、「課外のクラブ活動が本来生徒の自主性を尊重すべきものであることに鑑みれば、何らかの事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のある場合は格別、そうでない限り、顧問の教諭としては、個々の活動に常時立会い、監視指導すべき義務まで負うものではない」(同最高裁判例)とされています。

逆に言うと、事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能な場合」には、顧問の教諭は、個々の活動に立会い、監視指導しなければならない、ということになります。

たとえば、高校ボクシング初心者である部員が、練習中に頭部にボクシングパンチを受けて、硬膜下出血により死亡した事例で、ボクシングが極めて危険性の高いものであること、当該部員が初心者であって数日前まで体調不良で部活を休んでいたこと、相手が全国大会出場者で上級レベルであったこと、等から、顧問教諭は、生徒に対し、パンチが当たる可能性のある練習を避けるか、させるにしてもヘッドギアを装着させたり相手にパンチを当てないように注意するなど事故を未然に防止する高度の注意義務があったのに、これを起こった、として、過失を認めています。

このような場合には、「事故の発生する危険性を具体的に予見可能」であった、ということになります。

そして、教師は、具体的には、

・クラブ活動自体に内在する危険の程度(武道などは危険が高いことになります)

・生徒の年齢・体格・健康状態

・技能レベル

・環境(特に屋外でのスポーツ)

などに配慮して適切に事故を未然に防ぐ注意義務が課されることになります。

これらの注意義務に違反した場合、民間の学校であれば、教師個人には、不法行為に基づく損害賠償責任が発生します。

また、教師の所属する学校は、教師の使用者として、使用者責任に基づく損害賠償責任が発生することになります。

また、学校は生徒に対して安全配慮義務を負担していたと考えられますのから、債務不履行に基づく損害賠償責任も発生する可能性もあります。

学校が国公立の場合には、法律が異なってきて(国家賠償法)、損害賠償の責任主体は、国または地方公共団体となります。

では、過去の裁判例で、学校の部活動で死亡事故が起きた場合に、どのような判決が出されているか、見ていきましょう。

学校部活動の死亡事故その1

【高松高裁平成27年5月29日判決】

県立高校の野球部所属の生徒が練習中に熱中症に罹患して死亡した事故について、野球部監督教諭に過失があったとして、県の国家賠償責任が認められた学校事故。

当時、グランドの気温は29度以上あり、その中で100メートルダッシュを続けさせていました。

判決は、生徒は、ダッシュを続けていたところ、足がつったために、一旦ダッシュを中断したが、教師から促されて再度ダッシュを再開した。この時、走れるような状態まで回復したとはいえ、熱痙攣の状態に陥っていたのであり、そのことは監督も認識することができたこと、監督は生徒に100mダッシュを再開させる以上、熱中症を念頭に置いて生徒の状況を注視し、生徒に少しでも異常な状況があれば即座にAの100mダッシュを中止させ、給水・塩分摂取・休憩を命じ、必要に応じ、熱中症に対する応急処置や病院への搬送措置を講ずるべき注意義務を負っていたにもかかわらず、この注意義務を怠った、と認定し、県の損害賠償責任を肯定しました。

そして、裁判所は、県に対し、スポーツ振興センターから支給された見舞金合計2922万9186円を除き、慰謝料など損害賠償金として、約4500万円の支払を命じました。

【新潟地裁高田支部平成9年1月30日判決】

中学校の柔道部員が部活動としての柔道の練習中に頭部を打って死亡した事故につき、指導教諭及び校長に過失があるとして、国家賠償法に基づく地方公共団体に対して裁判が起こされた事例。

担当教師は、部員たちが基本的な練習を軽視する傾向があり、出席しようと思っていた時刻には投げ込みまで練習が進むことは予想できたはずであり、投げ込みにおいて、正しい「後ろ腰」ができない生徒が「後ろ腰」をやりたがっており、受け身についても完全にマスターしたとはいえない被害生徒と練習相手となることも予想しえたのに、当日は、そのような点について部長に注意を与えず、また、安全対策として決められていた巡視する者を決めることを提案する事もせず、他に何ら柔道活動についての安全につき配慮していなかったことからすると、当該教師は、自ら立ち会うことができないときは、練習を中止させるか、危険を予想されない練習内容にとどめるべき義務、すなわち生徒に対する安全配慮を怠った過失がある、と認定しました。

また、校長についても監督義務違反がある、と認定されました。

その結果、裁判所は、死亡見舞金1700万円、死亡給付金500万円の合計2200万円を除き、合計で3400万円余の慰謝料その他の損害賠償を命じました。

このように、学校のクラブ活動(部活動)に起きた事故について、教師は、生徒達の身体に危険が生じないように配慮する注意義務がありますが、その注意義務を怠った場合には、損害賠償責任が発生する場合があります。

もし、お子さんが学校の部活動中に事故に遭われた場合には、弁護士にご相談することをおすすめします。

ご相談は、こちらから。
http://www.bengoshi-sos.com/school/