交通事故で後遺症が残ったときに弁護士に示談交渉を依頼するべきか? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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交通事故で後遺症が残ったときに弁護士に示談交渉を依頼するべきか?

2016年03月01日

交通事故に遭ってしまい怪我の程度が重大な場合には、治療を続けても後遺障害が残ってしまうケースがあります。

後遺障害は一般的に後遺症ともいわれますが、そもそも後遺障害とはどのようなものなのでしょうか。
後遺障害が認定されるための手続きも知っておく必要があります。

また、交通事故で後遺障害が残った場合、相手方任意保険会社との示談交渉の手続きが難航することがあります。

このような場合、示談交渉を弁護士に依頼するとメリットはあるのでしょうか。
どのようなメリットがあるのかも知っておきたいところです。

そこで今回は、交通事故で後遺障害(後遺症)が残った場合に弁護士に示談交渉を依頼するべきかどうかを解説します。

後遺障害とは

交通事故に遭うと、後遺障害が残ることがあります。

後遺障害は、後遺症ともいわれます。
たとえばムチ打ちの後遺症で痛みが残ったり、交通事故の怪我によって手足が不自由になったり、失明することもあります。

高次脳機能障害などの難しい症状が残ってしまうこともあります。

このようにさまざまな種類のある交通事故の後遺障害ですが、具体的にはどのような障害で、どのような場合に認定されるものなのでしょうか。

以下で順番に見てみましょう。

後遺障害は症状固定後も治らない症状

後遺障害とは、交通事故後入通院治療を続けても、それ以上症状が良くならない状態で残ってしまった症状のことです。

交通事故後の障害が完治せずに、症状が一生残ってしまう場合に後遺障害があるとみなされます。
その後の治療によって症状が良くなったり完治する可能性がある場合には、後遺障害があるとはいえません。

この場合の「それ以上治療を続けても良くならない」状態のことを、「症状固定」といいます。

症状固定したかどうかについては担当医が判断しますが、症状固定時に残っている症状が基本的に後遺障害として認定されることになります。

後遺障害には等級がある

一口に後遺障害といっても、その内容や症状はさまざまです。

ムチ打ちの後遺障害で、なんとなく首が痛む、腰などの身体の部分が痛むというケースもあるでしょうし、片手が不自由になった場合、両足が不自由になった場合、片眼が失明した場合、脳機能障害が残った場合、半身不随になった場合など、後遺障害の症状も程度もまったく異なります。

このようにまったく異なる後遺障害を一律に取り扱うことはできません。
当然、後遺障害の内容によって支払われる慰謝料の金額なども大きく異なります。

このように、後遺障害の内容や程度に区別をつけるため、後遺障害には等級がもうけられています。

具体的には、後遺障害には、1級から14級までの等級があります。
1級が一番重い後遺障害で、たとえば両目が失明した場合や両手両足が不自由になった場合などがあてはまります。

1番軽いものは14級で、ムチ打ちの後遺症によるの神経障害などがこれに当あたります。
後遺障害が残った場合には、まずはそれがどの等級の後遺障害に該当するのかについて、後遺障害の認定を受けることが必要になります。

後遺障害の認定方法

交通事故後に後遺障害が残った場合には、その症状に応じて後遺障害の等級認定を受ける必要があります。

では、この後遺障害の認定は、どのような方法で受けることができるのでしょうか。

後遺障害の認定手続きは、交通事故の損害保険料率算出機構という機関によって行なわれています。
よって、後遺障害等級を認定してもらいたい場合には、基本的に損害保険料率算出機構に依頼しなければなりません。

なお、後遺障害等級の認定を受けるには、2つの方法があります。1つは被害者請求、もう1つは事前認定加害者請求です。

以下では、これらの2つの方法について説明します。

2つの後遺障害認定請求方法

事前認定加害者請求とは

加害者請求事前認定とは、相手方の任意保険会社に後遺障害認定手続きを依頼する方法です。

交通事故の相手方が任意保険に加入している場合、慰謝料などの損害賠償金の支払いについて、相手方の任意保険会社と話し合う(示談交渉する)ことになります。

このとき、相手方の任意保険会社が自賠責保険の分も窓口になり、まとめて対応してくれることが普通です。
このように相手方の任意保険会社が自賠責保険もまとめて対応することを一括対応といいます。

そして、この一括対応サービスの一環として、相手方の任意保険会社は後遺障害の認定手続きも代行してくれます。

このように、相手方の任意保険会社が後遺障害認定手続きをする方法のことを加害者請求事前認定といいます。
被害者側に発生した後遺障害の認定手続きを加害者側の任意保険会社が代行して行なうので、加害者請求というわけです。

加害者請求事前認定の方法

加害者請求事前認定をする場合の方法は簡単です。
まず、相手方の任意保険会社に後遺障害の認定請求をしたい旨を伝えます。

すると、相手方の任意保険会社からは、担当医が作成した「後遺障害診断書」を送るように言われます。

そこで、診断書の書式を取り寄せて担当医に後遺障害診断書を記載してもらい、任意保険会社に送付すれば、基本的に後遺障害認定手続きができます。

数ヶ月後、認定手続きが終了すると、認定結果の連絡が来ます。
手続きの結果、後遺障害が認定されればその等級が知らされますし、認定が下りないケースもあります。

被害者請求とは

交通事故の後遺障害の認定方法には被害者請求もあります。
被害者請求とは、後遺障害認定請求の手続きを、被害者が自分でする方法のことです。

相手方の任意保険会社を通じることなく、被害者自身が自分で相手方の自賠責保険会社に直接連絡をとって後遺障害認定請求を進めます。

加害者ではなく被害者が自分で請求して認定手続きを進めるので、「被害者請求」といいます。

被害者請求の方法

被害者請求の方法は、加害者請求事前認定の場合より多少手間がかかります。
この場合、まずは相手方の自賠責保険会社に連絡を入れて、後遺障害認定請求をしたい旨を伝えます。
すると、自賠責保険から後遺障害認定請求用の書類が送られてきます。

そこで、まずは担当医に依頼して「後遺障害診断書」を書いてもらいます。

さらに、被害者請求をする場合には多くの書類が必要になります。

具体的には、「交通事故証明書」や「支払請求書兼支払指図書」(実印による押印が必要です)、「印鑑証明書」、「事故状況説明図」、「診断書」、「診療報酬明細書」などです。

これらの書類をすべてそろえて相手方の自賠責保険会社宛てに送ります。

すると、数ヶ月ほどで後遺障害についての決定が出て、その結果通知が送られてくることになります。
手続きの結果、認定が下りればその等級が知らされますし、後遺障害の認定が下りないこともあります。

被害者請求か加害者請求事前認定か、どちらを選択すべきか?

以上のように、後遺障害の認定請求の手続き方法としては、相手方の任意保険会社に手続きを依頼する「加害者請求事前認定」と、被害者自身が自分で請求する「被害者請求」の方法があります。

後遺障害認定請求をしたい場合、どちらの方法をとればよいのでしょうか。
この点について、考え方にもよりますが、きちんと認定を受けたいのであれば被害者請求をする方法がおすすめです。

加害者請求事前認定では、事故の相手方に自分の後遺障害の認定手続きを依頼してしまうことになります。

相手方の任意保険会社も仕事で手続きをするのですから不正をすることはないかもしれませんが、それでも被害者側の立場としては内部でどのようなことが行なわれているのかまったくわからず、手続きが不透明になります。

また、後遺障害の認定請求を受ける損害保険料率算出機構においても、加害者側から請求が来ている場合と被害者側から直接請求が来ている場合とではプレッシャーが異なるともいえます。

よって、きちんと後遺障害の認定を受けて権利を実現したい気持ちが強いのであれば、被害者請求の方が安心で確実です。

ただし、被害者請求をしようとすると、必要書類なども多く、自分で手続きをしなければいけないため、いろいろと手間がかかります。

支払請求書の提出後も、損害保険料率算出機構から追加の書面、資料の提出や問合せなどがあることもあり、それらの対応も必要になります。

被害者請求手続きをする場合には、ある程度の手間がかかることは覚悟が必要です。

認定結果に対しては「異議申し立て」ができる

後遺障害の認定請求をしても、必ずしも後遺障害の認定が下りるとは限りません。
また、認定が下りたとしても、思っていたより等級が低くなることもあります。

そもそも後遺障害が認定されないと、慰謝料や逸失利益の支払いは受けられませんし、等級が低いと支払われる慰謝料や逸失利益の金額は低くなってしまいます。

たとえば、ムチ打ちで身体に痛みが残っているのに、画像診断などでは何の症状も見られないという理由で後遺障害認定が受けられないケースなども多いのです。

では、後遺障害の認定が受けられなかったり、不当に低い等級認定になってしまった場合、何か対処方法はないのでしょうか。

この場合、後遺障害の認定結果に対しては、異議申し立てができます。

異議申し立てをする場合には、「異議申立書」という書類に理由をきちんと記入して提出する必要があります。

なお、異議申立書には異議申し立ての理由をきちんと書き込み、異議内容が認められるためには後遺障害の認定に役立つ資料などを添付することが重要です。

異議申し立ての際の注意点

後遺障害の認定結果に納得がいかない場合には、決定内容に対して異議申し立てをすることができますが、異議申し立ての際の注意点やポイントはあるのでしょうか。

まずは認定されなかった原因を検討する

異議申し立てをしても、的を得た内容でないと結局はまた同じ結果になってしまいます。

そこで、異議申し立てをする際には、なぜ1度目の請求の際に認定されなかったのかをよく考える必要があります。

すでに提出している診断書や後遺障害診断書を見直して、その記載内容をチェックしましょう。きちんと現状の問題や症状について正確に記載されているかどうかを検討します。

提出している他の客観的な資料類にも不足がないかを見て、もし資料不足があるようなら、それを補足する方法を考えないといけません。

具体的には、担当医に新しく検査や診断書作成を依頼することが多いです。

後遺障害診断書の内容をチェックする

異議申し立ての際には、後遺障害診断書の内容を確認することが大切です。
基本的な問題として、後遺症と関連する傷病名が記載されていること、その傷病に応じた治療が行なわれているかなどをチェックします。

最初に作成された診断書には傷病名が書かれていても、後遺障害診断書にその傷病名や症状が書かれていないと後遺症が認定されないのです。

このようなことも医師にきちんと説明する必要があります。

さらに、本当に症状固定していて完治が望めない症状かということも問題になることがあります。
間違っても医師に「完治」などと書いてもらうことのないように注意しましょう。

過去には、後遺障害診断書に医師が「完治」と書いていたために後遺障害認定が受けられなくなった事案などもあるので、医師に理解してもらう必要があります。

新たに診断書を記載してもらう場合のポイント

異議申し立ての際には、新たに診断書や意見書を記載してもらうことがあります。
その際、自分の後遺障害が交通事故によって発生したという因果関係をはっきりさせることも重要です。

単に交通事故のあった日にその症状(たとえば骨折など)が起こったというだけでなく、医学的にそのような骨折は交通事故によって発症した可能性が高いことを証明する必要があるケースもあります。

そのような医学的な説明方法などについては、しっかりと医師とコミュニケーションをとって相談することが大切です。

さらに、異議申し立てのために医師に追加で診断書を依頼する場合の依頼方法にも注意すべきです。

「もう一度、異議申し立てのために診断書を書いてください」というだけでは、前回と同じような内容のものしか書いてもらえない可能性が高いです。

異議申し立てのために、あらためて診断書を書いてもらうのであれば、どのような医学的な問題や事実、見解について記載してもらいたいのかを具体的に説明しなければなりません。

このように、1回目の認定に対して具体的な問題点を指摘して資料を揃えることにより、異議申し立てを成功させることができる可能性が高まるのです。

弁護士に依頼すると手続きがスムーズに進む

後遺障害の認定手続き(被害者請求)のためには、いろいろな資料が必要になります。
また、異議申し立ての際にはさらに多くの検討が必要になりますし、異議申し立てが認められるための証拠集めなども大変になります。

このような対応については、被害者が自分で進めることは困難なことが多いです。
そこで、後遺障害の認定手続きや異議申し立てをしたい場合には、弁護士に依頼するとメリットが大きいです。

弁護士に手続きを依頼すると、被害者請求の手続きをすべて弁護士が代行してくれますし、必要書類なども適切に集めてくれます。

異議申し立てをする場合にも、どのような方法で進めるべきかを検討してくれたり、法律的な観点から必要な証拠集めをしてくれるので大変心強いです。

このように、後遺障害の認定請求をしたい場合には、弁護士に手続きを依頼したほうが何かと手続きがスムーズに進むのでメリットがあります。

なお、弁護士に手続きを依頼したい場合には、弁護士に交通事故の示談交渉そのものを依頼することになります。

通常、弁護士は何らかの依頼を受ける際、「事件」ごと依頼を受けるので、「後遺障害の認定請求だけ」の依頼を受けることはあまりないからです。

よって、後遺障害が残った場合には弁護士にその交通事故にもとづく相手方への損害賠償手続き(示談交渉手続き)全体を依頼して、その手続きの中で後遺障害認定請求もしてもらうことになります。

任意保険会社との示談交渉とは

交通事故により後遺障害などが残ることがありますが、このように損害が発生した場合には、相手方の任意保険会社と示談交渉をしなければなりません。

では、この場合の「任意保険会社との示談交渉」とは、そもそもどのような手続きなのでしょうか。

交通事故が起こって怪我をした場合などには、損害が発生します。
当然、その損害を相手方(加害者)に賠償してもらわないといけません。

ただ、損害が発生しても、相手方が自主的に損害内容を調べて賠償金を支払ってくれるわけではありません。
被害者側が、相手方に対して賠償請求をしなければならないのです。

そして、多くの場合で、加害者は交通事故の損害賠償保険に加入しています。
損害賠償保険は、自賠責とは異なる任意の保険のことです。

自賠責は強制保険ですが、それとは異なり任意に加入している保険なので「任意保険」といいます。

加害者が任意保険に加入している場合には、任意保険会社が加害者に代わって損害賠償金を支払うことになります。

そのため、損害賠償金の金額を決定するための交渉(示談交渉)も任意保険会社が代行することになるのです。

このように、基本的には交通事故の示談交渉は任意保険会社が代行するで、被害者側からすると、示談交渉相手が相手方の任意保険会社になるのです。

これが、任意保険会社との示談交渉の仕組みです。

示談交渉を弁護士に依頼するメリット

交通事故で損害を受けた場合、相手方の任意保険会社との示談交渉が必要になりますが、この示談交渉を弁護士に依頼すると、たくさんのメリットがあります。

特に、交通事故後の後遺障害が残った場合には、示談交渉を弁護士に依頼したほうがメリットが高まります。
以下では交通事故後の相手方の任意保険会社との示談交渉を弁護士に依頼するメリットを順番に確認していきます。

後遺障害の認定手続きをしてくれる

交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリットの1つ目は、前述の後遺障害認定請求の項でも説明したように、後遺障害の認定請求手続きがスムーズに進むことが挙げられます。

後遺障害認定請求で、きちんと認定を受けるためには被害者請求をすべきですが、法律も保険も素人である被害者が自分で対応していては、適切に手続きをすることが難しいことが多いのです。

どのような証拠をそろえて、どのような主張をすれば通りやすいのかなどもわからないことが普通です。

そこで、後遺障害認定請求の手続きを弁護士に依頼します。

特に交通事故事案に明るく、知識や経験の豊富な弁護士に依頼すれば、後遺障害の認定手続きや異議申し立ての手続きなどが格段に進めやすくなります。

被害者が自分で認定請求をして後遺障害の等級認定が受けられない場合でも、弁護士が適切な対応をとれば後遺障害の認定が受けられることもあるのです。

後遺障害が認定されるかどうかで、支払われる賠償金の金額が大きく異なってきます。

最低の等級である14級でも、後遺障害慰謝料は110万円(弁護士基準)になりますし、最高の等級の1級なら後遺障害慰謝料は2,800万円にもなります(弁護士基準)。

さらに後遺障害の認定を受けると、その等級に応じて労働能力喪失率が認められて、逸失利益分の賠償金も支払われます。

逸失利益とは、その後遺障害が残ったことによって働けなくなるので、本来得られたはずの利益が得られなくなるという意味の賠償金です。これについても、後遺障害の程度(等級)が重い方が高額になります。

以上のように、後遺障害認定が受けられるかどうかや、どの等級で認定が受けられるかということは、交通事故の賠償金の算定の際に非常に大きな問題になります。

弁護士に依頼すると、適切な等級での後遺障害の認定を受けやすくなるのですから、そのメリットは多大であることがわかります。

法律的な知識をもって示談交渉を有利に進めてくれる

弁護士に示談交渉を依頼すると、後遺障害の認定手続き以外にもメリットがあります。
被害者個人が相手方の任意保険会社と示談交渉していると、被害者には法律的知識が少ないために、不利な条件を押しつけられて合意してしまうことが多いのです。

被害者が素人の場合、そもそも交通事故の賠償金の種類がどのようなものかも正確に知らないことが多いですし、賠償金の計算方法も知らないことが普通です。

たとえば、交通事故で傷害を負った場合には、前述したように「症状固定」時まで通院を継続しなければなりません。そうしなければ、そもそも後遺障害の判断もできず、後遺障害認定請求をすることもできないのです。

ところが、被害者個人が任意保険会社と示談交渉している場合には、通院継続中であるにもかかわらず相手方の任意保険会社から治療費支払いを打ち切られて、「そろそろ治療を終わって示談交渉したい」と言われてしまうことがあります。

この場合、被害者個人が対応していると、「治療費を打ち切られるなら、もう通院をやめないといけない」と思い込んで、症状固定していないにもかかわらず通院をやめて示談してしまうことがあるのです。

すると、当然、後遺障害の認定を受けられず、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求をすることもできません。

また、入通院慰謝料などの他の賠償項目の金額も少なくなってしまいます。

つまり、被害者個人が自分で示談交渉していると、その知識のなさにつけこまれて、不当に不利益な内容で示談してしまうおそれがあるのです。

もし示談交渉手続きを弁護士に依頼していれば、このような不利益を受ける可能性はありません。
このように、示談交渉は弁護士に依頼するとメリットが大きいことがわかっていただけたと思います。

高額な弁護士基準で慰謝料計算してくれる

交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリットは他にもあります。
それは、弁護士に依頼すると賠償金の計算方法が変わることです。

交通事故の損害賠償金の計算方法には、3つの種類があります。
具体的には、「自賠責基準」と「任意保険基準」、そして「弁護士基準(裁判基準)」です。
この中で自賠責基準が一番金額が低い基準で、次に任意保険基準、一番高いのが弁護士基準です。

自賠責基準とは、最低限の補償をするための自賠責保険での賠償金の基準であり、任意保険基準は任意保険会社で採用されている基準です。弁護士基準は裁判になった場合に裁判所で採用される基準です。

被害者が自分で任意保険会社と交渉する場合には任意保険基準で計算されますが、弁護士に示談交渉を依頼すると一番高い弁護士基準で賠償金が計算されます。

つまり、弁護士に示談交渉を依頼すると、同じ損害内容でも賠償金額が大幅に増額されることが多くなるわけです。

たとえば、後遺障害慰謝料の金額も任意保険基準と弁護士基準では大きく異なります。

後遺障害等級14級の場合、任意保険基準なら後遺障害慰謝料の金額は40万円程度ですが、弁護士基準なら110万円にもなります。
後遺障害等級6級なら、任意保険基準では後遺障害慰謝料の金額は600万円程度ですが、弁護士基準の場合には1,180万円にもなります。

後遺障害等級1級の場合には、任意保険基準なら後遺障害慰謝料の金額は1,300万円程度ですが、弁護士基準なら2,800万円にもなります。

交通事故の損害賠償の項目は、後遺障害慰謝料以外にも、入通院慰謝料や死亡慰謝料などもありますが、これらの損害項目についても任意保険基準より弁護士基準の方が高くなります。

よって、相手方の任意保険会社との示談交渉を弁護士に依頼すると、結果的に損害賠償金額が相当高額になることが多いのです。

後遺障害が残るような大きな事案では、弁護士基準で賠償金額を計算した方が有利になり、弁護士費用を支払ってもなおメリットが大きくなることがほとんどです。

これらが、交通事故で後遺障害が残った場合に弁護士に示談交渉を依頼することをおすすめする理由です。

弁護士に相談する際のポイントは?

弁護士に示談交渉を依頼する場合、どのようなことに注意すべきなのでしょうか。

以下では、示談交渉を弁護士に依頼する場合の注意点や弁護士の選び方のポイントについて説明します。

交通事故に強い弁護士を選ぶ

交通事故の示談交渉を弁護士に依頼する場合、当然、交通事故に強い弁護士を選ぶ必要があります。

弁護士にもいろいろな人がいます。中には交通事故をほとんど取り扱っていない弁護士もいますし、取り扱うとしてもあまり得意ではない人もいます。

交通事故に不慣れな弁護士に示談交渉を依頼しても手続きはスムーズに進みませんし、交渉を有利に進めることも期待できません。

ですから、交通事故の示談交渉を依頼するなら交通事故事件に力を入れて取り組んでおり、実績も多い弁護士を探す必要があるのです。

交通事故に強い弁護士とは、日常的に交通事故問題に力を入れて取り組んでおり、多くの交通事故事件の処理実績があり、知識も経験も深い弁護士のことです。

交通事故に強い弁護士の探し方

交通事故に強い弁護士は、どのようにして探せばよいのでしょうか。
この場合、インターネットのホームページを検索してみる方法がおすすめです。

「交通事故 弁護士」などのキーワードで弁護士を検索すると、たくさんの弁護士事務所のホームページが出てきます。

その中でも、ホームページ内に交通事故関係の記事が多く、弁護士によるブログやコラムで交通事故の話題が豊富な法律事務所や、交通事故関係の実績や依頼者からの評価などが高い弁護士を選びましょう。

交通事故関係の本の執筆がある弁護士も交通事故に関して知識や経験が豊富な人が多いのでおすすめです。

信頼できそうな弁護士が見つかったら、事務所に電話連絡をして、法律相談を受けることができないかどうか、相談してみましょう。

法律相談ができるなら予約をして、決まった日時に法律事務所に行って弁護士と面談で相談をします。
その場でアドバイスを受けてみましょう。

同じ相談内容でも、弁護士によってアドバイスの仕方が異なります。
それは、今までの交通事故案件の経験と知識の差によるものです。

依頼する弁護士の力量により示談金額が大きく変わることもありますので、重症のケースほど弁護士選びは慎重にするべきです。
相談をしてみて納得できたら、示談交渉の依頼をすると良いでしょう。

費用設定がわかりやすい弁護士を選ぶ

交通事故の示談交渉を弁護士に依頼する場合には、費用設定がはっきりしている事務所を選ぶことが重要です。
弁護士の費用体系は、わかりにくくなっていることが多いです。
後から依頼者が予想していなかったような追加費用などがかかってトラブルになることもあります。

また、当初にかかる費用が安くても、事件解決後の成功報酬金が高額で依頼者が驚くこともあります。
このようなトラブルを避けるためには、当初から費用設定がわかりやすく、リーズナブルな事務所を選ぶことが重要になります。

交通事故の示談交渉依頼を弁護士に相談する場合には、費用についてもしっかりと確認して、最終的にいくらかかるのか、どのくらいかかる可能性があるのかなどについて説明を受けましょう。

できれば費用についての見積書を出してもらうと良いでしょう。

費用について明確でない事務所に依頼すると、後々トラブルになる可能性があるので、やめておいた方が賢明です。

事件処理方針を確認する

交通事故について弁護士に相談する際には、その事件について、弁護士の事件処理方針をしっかりと確認する必要があります。
同じ事件でも、すべての弁護士が同じ対応をとるとは限りません。

人によって判断が異なりますし、それぞれの方針によって将来の結果が変わってくることが普通です。
そこで、弁護士に示談交渉を依頼する場合には、当初の大まかな事件処理方針だけでも確認して、きちんと納得しておく必要があります。

処理方針に納得できない弁護士には依頼すべきではありません。

よって、弁護士に相談する場合には、どのような方針で事件を進めるのかの説明を受けた上で、きちんと納得できる方針を立ててくれた弁護士に依頼するようにしましょう。

しっかりと状況を説明する

弁護士に交通事故の相談をする場合には、依頼者としてやらなければいけないこともあります。
それは、交通事故の状況や、その後の任意保険会社の対応など、全体の状況をしっかりと弁護士に説明して伝えるということです。

いくら交通事故に強い弁護士であっても、適切に情報を伝えられなければ正しい判断をすることはできません。
同時に、依頼者がきちんと説明できなければ、弁護士も方針を立てて対応することができなくなってしまいます。

よって、交通事故の相談をする場合には、正確に事件の内容を説明できるようにしておくことが重要です。

そのためには、交通事故証明書などの資料を用意したり、相手方の情報や相手方任意保険会社の情報、担当者などの連絡先、交通事故の状況を示した図面、診断書や通院先の情報など、関連する資料をそろえて正確に説明できるように準備しておきましょう。

後遺障害が残っていると思われる場合には、どのような症状があるのかなども説明できると良いでしょう。
(通院継続中の場合で、まだ後遺障害の有無が不明な場合には不要です)

このように、依頼者側も適切に対応することによって、弁護士もその本来の力を発揮できるようになるのです。

まとめ

今回は、後遺障害が残った場合に弁護士に示談交渉を依頼したほうが良い理由について説明しました。

◆後遺障害とは、それ以上治療を続けても症状が良くならないという状態(症状固定)で残ってしまった症状のことです。

◆後遺障害には1級から14級までの等級があり、それぞれの等級によって後遺障害慰謝料などの金額も異なります。

◆後遺障害の認定を受けるためには被害者請求と加害者請求事前認定がありますが、被害者請求の方がおすすめです。
また、認定結果には異議申し立ても可能です。

◆後遺障害が残る場合には、弁護士に依頼すると後遺障害認定請求の手続きがスムーズに進むことが多いです。
異議申し立ての際にも、弁護士が資料や証拠を集めて必要な主張をしてくれます。

◆交通事故後は相手方の任意保険会社と示談交渉をしますが、弁護士に示談交渉を依頼すると法的な知識をもって適切な対応をしてくれるので、示談交渉が有利に進みやすいです。

◆弁護士が示談交渉する場合には、高額な弁護士基準をもって賠償金を計算してくれるので、支払いを受けられる賠償金額も高くなります。

◆交通事故の示談交渉を依頼する弁護士を探す場合には、交通事故に強い弁護士を探す必要があります。
その際、費用や事件処理方針についてもしっかりと確認しましょう。

◆相談する際には、依頼者としても事件の内容を正確に説明できるように準備しておく必要があります。

後遺障害が残る事案では、被害者の方は今回の記事を参考にしながら弁護士に示談交渉を依頼して、有利に示談交渉を進められるようにしましょう。