遠隔操作アプリで逮捕!?夫が妻に犯した罪とは? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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遠隔操作アプリで逮捕!?夫が妻に犯した罪とは?

2015年04月15日

先日、妻に内緒であることをした夫が逮捕されるという事件が起きたようです。

一体、どんなことをしたのでしょうか?

「妻のスマホに無断で遠隔操作アプリ入れた35歳会社員を逮捕」(2015年4月9日 産経新聞)

奈良県警は、妻のスマートフォンに遠隔操作アプリを無断でインストールし、遠隔操作ができる状態にしたとして、同県桜井市の会社員の男(35)を不正指令電磁的記録供用容疑で逮捕しました。

報道によると、2014年7月、容疑者である夫が妻(当時30代)のスマートフォンに無断で遠隔操作アプリをインストール。

その後、妻は何事もなく使用していたようですが、2015年3月に見覚えのないアプリがインストールされているのに気づき、「夫の仕業ではないか」と県警に相談して発覚。
男は、「間違いない」と容疑を認めているということです。

県警は、男がアプリを使ってどのような操作をしていたか調べるとしています。
何が目的だったのか? 夫婦の関係はどうだったのか?
報道内容からだけではわかりませんが、たとえ夫婦でも一線を越えれば犯罪となります。

では、条文を見てみましょう。

「刑法」
第168条の2(不正指令電磁的記録作成等)
1.正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録

2.正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
「不正指令電磁的記録供用罪」は、2011年の刑法改正で新設された犯罪類型です。

簡単に言えば、正当な理由なしに、人のコンピュータ(電子計算機)に不正な指令を与えるウイルス(電磁気記録)などを入れる(インストール)と犯罪ですよ、ということです。

今回の事件では、時代に即した形で、スマホに入れたアプリに適用したわけですが、じつはここ数年、こうした遠隔操作できるアプリを配偶者や恋人のスマホに無断でインストールする事件が増えているようです。

もともとは合法の盗難防止アプリで、スマホを紛失したり盗難に遭ったときに、遠隔操作でカメラのレンズやスピーカーを使って場所を特定して探し出すというものです。
それが違法に、しかも相手に無断で使われ、監視・盗撮などされるところに犯罪となる問題があるわけです。

昨年、広島で起きた事件では、ある女性がスマホの動きが何かおかしい、知らないアプリの表示がついたり消えたりする、居場所を言っていないのに知人に知られていたということがあり警察に相談。

その結果、元交際相手の男が、女性と会っていたときに席を外したすきに盗難防止アプリをインストールしていたことが判明。
居場所を確認され、写真を撮られ、会話を録音されていたようです。

もちろん、今回の事件では妻が同意しているのであれば問題はありませんが、子供ではないのですから同意する人もいないでしょう。
(えぇ? そうしたプレイを楽しむ夫婦もいるとか、いないとか…)

たとえ夫婦間でも、合法なアプリでも、悪意をもって無断でこっそりインストールすれば犯罪になるということは、しっかり理解してほしいと思います。

ちなみに、配偶者や恋人のメールをこっそり見るのはどうでしょうか?
詳しい解説はこちら⇒「アダムとイブと不正アクセス禁止法」
https://taniharamakoto.com/archives/1326

こちらも犯罪になる可能性がありますから注意してください。