妻の借金、夫にも返済義務はある? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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妻の借金、夫にも返済義務はある?

2015年03月31日

「一蓮托生」という言葉があります。

もともとは仏教思想が由来のようで、善い行いをした者は死後、極楽浄土で同じ蓮の花の上に身を託して生まれ変わることができる、という意味だそうです。

そこから転じて、物事の善悪や、結果の良し悪しにかかわらず、仲間として行動や運命をともにする、という意味で使います。

会社の社長と社員も、スポーツなどのチームの監督と選手も一蓮托生でしょう。
さらには、何らかの犯罪組織や反社会的活動をする団体も一蓮托生ということになります。

ところで、夫婦というのも運命共同体、もしくは修行のようなものだという人もいますが、配偶者がしたことに関して法的に責任を負う義務があるのか? というのが今回のテーマです。

相談内容は……すばり、お金絡みです。

Q)どうやら妻が借金をしているようなのです。私の会社に、消費者金融の会社から催促の電話が入るようになりました。これから妻とも話さなければいけませんが、その前に法的には、妻が借りたお金の返済について、夫にも責任があるのか知りたいのです。よろしくお願いします。

A)妻が借りたお金の返済に関して、夫にも支払い義務はあるのか? ということですが、「民法」第761条により、「夫婦の日常家事における債務」については、夫もその債務について連帯責任があると規定しています。
よって、妻が返済できない借金については、夫であるあなたにも返済義務が生じる可能性があります。
夫婦が結婚生活を続けていくには、生活必需品、例えば衣食住にかかるお金や、電気・ガス・水道などの光熱費、医療費、自動車の費用、交際費、子供の教育費など、さまざまなお金が必要です。
家計は妻任せ、毎月の収入から生活費を渡して、やりくりしてもらう男性も多いでしょう。

こうした日常の家事に関して、仮に妻が第三者に対して行った法律行為の債務については、夫も連帯責任を免れません。
「妻が勝手にやったことだから、私は知らない、関係ない」というのは通用しないということです。

では、条文を見てみましょう。

「民法」
第761条(日常家事に関する債務の連帯責任)
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
実際、今回の相談内容からは借金がいくらあって、妻は何に使ったのかがわからないので正確に回答はできませんが、「日常家事に関する債務」かどうかがポイントになります。

しかし、日常の家事の債務について明確に規定するのは難しく、裁判で争われる場合は、その夫婦の収入額やライフスタイルなどによってケースバイケースで判断されます。

ちなみに、過去の判例では、次のものなどが日常家事債務として認められています。
・月収が手取り30万円の家庭が購入した約60万円の子供向け学習教材
・夫婦が共同生活を営むための家屋の家賃
・妻が買った子供の洋服代
・テレビの受信料 など。

一方、日常家事債務として認められなかったものには以下のようなものなどがあります。
・月収が約8万円の家庭が購入した約41万円の太陽熱温水器
・妻が知人の借金債務を保証する目的で負担した連帯債務
・ギャンブル代 など。

たとえば妻が、ホストクラブに使った借金の場合は、通常は妻個人の債務ということになるでしょう。

いずれにせよ、「夫婦の事情」があることですが、相談者の方はまず妻と話し合いの機会を作って、事の次第について訊いてみることが必要でしょう。

隣人トラブルでもそうですが、未然に問題を防ぐためにも、起こってしまった問題の解決にも、やはり人間同士のコミュニケーションが大切なことは言うまでもありません。

もし、話し合いがまとまらなかったり、法的な対応の必要がある場合は弁護士などの専門家に相談することをお薦めします。
ご相談はこちらから⇒
http://www.bengoshi-sos.com/about/0903/