給料の不払いが犯罪になる!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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給料の不払いが犯罪になる!?

2014年04月08日


「足るを知る者は富む」という言葉があります。

もともとは紀元前の古代中国の哲学者で、老荘思想、道教(タオ)の創始者の一人といわれる老子の言葉とされています。

人間の欲望は、まったくきりがないが、つねに欲深くならずに分相応のところで満足することができる者は、心が富んで豊かである、という意味です。

このあとには、次のような一文が続きます。

「強めて行う者は志有り」

努力している者は、志ある者である、という意味です。

私も、まだまだ、頑張らなければいけません!

(*・`д・)ガンバルッス!!

ちなみに、京都にある禅宗の龍安寺には「吾唯知足」(われただ足るを知る)の4文字を彫った「つくばい」(茶室に入る前に手を清めるための手水鉢)があることでも有名ですが、これは「水戸黄門」として知られる水戸藩2代藩主の徳川光圀の寄進だといわれているそうです。

これは、「つくばい」ですが、黄門様が印籠を出すと、みんな「はいつくばい」でしたね。

m(_ _)m失礼しました。

さて、「足るを知る」のも大切ですが、仮に一生懸命働いたのに会社が給料を払ってくれない、という事態になった場合、「私は足るを知っているから、それでも十分幸せ♡」などと言える人はいるでしょうか?

いやいや、自分が働いた分の給料はもらえる権利があるのですから、当然、支払いの請求を主張するべきだし、会社は払わなければなりません。。

それでも支払わないような社長は……どうなるでしょうか?

こんな事件がありました。

「“売り上げ厳しくて…”給料10ヵ月分払わず 神戸の会社、容疑で書類送検」(2014年3月26日 産経新聞)

報道によると、神戸西労働基準監督署は3月25日、従業員に給料を支払わなかったとして、神戸市の会社社長の男性(66)と、法人としての会社を「最低賃金法違反」の容疑で神戸地検に書類送検しました。

事務員の女性(60)に対して、総額370万円以上の給料が未払いで、会社は2013年7月には事実上の倒産状態だったということです。

社長の男性は、「売り上げが厳しくて払えなかった」と容疑を認めているようです。

「最低賃金法」という法律があることを知らなかった人もいると思いますが、会社の経営者でも知らない人がいるかもしれませんので、簡単に解説しておきましょう。

「最低賃金法」
第1条(目的)
この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

第4条(最低賃金の効力)
1.使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

第32条(労働基準監督官の権限)
1.労働基準監督官は、この法律の目的を達成するため必要な限度において、使用者の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査し、又は関係者に質問をすることができる。

第34条(監督機関に対する申告)
1.労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。

単純にいえば、社長は従業員に国で決められた「最低賃金」よりも多く給料を支払わなければいけないし、もし支払われなければ、労働基準監督署に訴えることができる、ということです。

これらに違反した場合は、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金です。

ご存じでしたか?

給料を払わないのは「犯罪」だったのです!

ちなみに、労働基準監督官の立ち入り検査を拒否、妨害、忌避したり、嘘をついた場合は、30万円以下の罰金になります。

労働基準監督署を無視する経営者がいますが、甘くみてはいけません。

検査拒否も犯罪なのです。

さらに近年、残業代の不払いも大きな問題となっています。

使用者が労働者に残業代を支払わず、労働者がこれを請求した場合、残業代にプラスして同額の「付加金」を支払わなければならなくなる可能性があります。そういう法律になっているのです。

結局、2倍の金額を支払うことになるわけですね。

また、不払いの場合、「労働基準法」第37条及び第119条により、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金という刑事罰もありますから、社長さんは十分気をつけてください。

ところで、「未払賃金立替払制度」というものがあるのをご存じでしょうか?

これは、「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づき、企業が倒産したために賃金が支払われないまま退職を余儀なくされた労働者に対して、その未払賃金の一定の範囲について、独立行政法人労働者健康福祉機構が事業主に代わって支払う制度です。

立替払を受けるには、以下の要件を満たしていることが必要です。

「使用者」
1.労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業で1年以上事業活動を行っていたこと(法人、個人の有無、労災保険の加入手続きの有無、保険料納付の有無は問いません。)。

2.法律上の倒産又は事実上の倒産に該当することとなったこと。

「労働者」
1.倒産について裁判所への破産申立等(事実上の倒産の場合は、労働基準監督署長への認定申請)が行われた日の6か月前から2年の間に退職していること。

2.未払賃金があること。

なお、立替払される賃金の額は8割となっています。

給料が未払いのまま会社が破産してしまったような場合は、この制度を使って未払い賃金を確保し、労働者の生活費を確保することになります。

「働かざる者、食うべからず」と言いますが、働いているのに食えない状況にはしなくないものです。

働いてもらった分の給料とかけまして、

降りかかる火の粉、と解きます。

そのココロは・・・・

払わなければ大変です!