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”倍返し”には、犯罪が成立する!?

 >”倍返し”には、犯罪が成立する!?

2013年10月12日




ちょっと昔の、なつかしい話ですが、
昭和の時代、『あしたのジョー』という漫画がありました。

ボクシング漫画の金字塔ともいわれる名作で、
『週刊少年マガジン』に連載当時(1967年‐1973年)から人気を博し、テレビアニメも大人気でした。

私は、テレビアニメから観始めたのですが、すぐにとりこになり、欠かさず観ていました。

主人公の矢吹 丈(やぶきじょー)の必殺技は、クロスカウンターパンチでした。

クロスカウンターというのは、たとえば相手が右ストレートを打ってきたとき、それに合わせて、こちらはその外側から左フックをクロスするように繰り出し、相手の顔面に逆襲のパンチをお見舞いするもので、漫画の中では、『半沢直樹』の“倍返し”のさらに倍、“4倍返し”の威力があるパンチだと描かれていました。

相手の虚をつく逆襲の攻撃は威力があるわけです。

最近、こんな事件が起きました。

10月3日午後10時過ぎ、東京都足立区の路上で、10代の女性が、「知らない男に襲われ、ナイフで刺して逃げてきた」と助けを求めました。
その後、付近で太ももから大量の血を流して、意識を失っている男を発見。
男は搬送先の病院で死亡が確認されたようです。

女性は荒川沿いの土手をジョギング中に男に襲われ、ナイフを突きつけられ、キスされたり体を触られたが、男が持っていたナイフを地面に置いた隙に奪い、太ももを刺して逃げたそうです。

50代前後とみられる男の身元は不明で、容疑者死亡のまま強姦未遂容疑で書類送検されるようです。

法的に見てみると、男の方は、「強姦未遂」の容疑者。

女性の方は、「傷害致死罪」の容疑者、ということになるでしょう。

しかし、女性は、自分の身を守るために男を刺した可能性がありますので、正当防衛が成立する可能性があるとみて、警察が調査中とのことです。

では、「正当防衛」について、『刑法』の条文を見てみましょう。

第36条(正当防衛)
①急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

②防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

自分に対して、違法な侵害行為が実際にある、または、間近に押し迫っているという緊急状態において、自分を守るための防御として、侵害者に対し、やむを得ず反撃する行為を正当防衛といいます。

報道だけでは、本件の詳しい状況はわかりませんが、暗闇でナイフを持った男に襲われるという、女性にとっては圧倒的に不利で危険な状況に於いて、男のナイフを奪い、とっさに急所ではない太ももを刺したわけですから、正当防衛が認められる可能性があります。

しかし、当たり所ならぬ、刺し所が悪かったのでしょう。
太ももの動脈を切断したことによる出血多量死だったのかもしれません。

状況的には、正当防衛が成立する可能性が高いと思われますが、今後の警察の捜査を待ちたいと思います。

ところで、「喧嘩は先に手を出させれば正当防衛が成立する」ともいわれますが、じつは法律の世界では、そうともいえません。
“過剰防衛”が適用される場合があるからです。
条文の②がそれに当たります。

相手が殴りかかってきて、それを振り払って難を逃れたのに、さらに追撃してボコボコにしてしまった、という場合には、過剰防衛となり、罪に問われる可能性があります。

ドラマの半沢直樹は、“倍返し”が魅力でしたが、その復讐心による反撃が、現実世界では程度を超えた過剰防衛とみなされれば、犯罪になりうるのです。

民事でも同じです。

アパートの一室を貸しているときに、賃借人が賃料を滞納したことに対し、対抗手段として、アパートのドアの鍵を取り替えて入れなくしたりすると、逆に賃借人から「慰謝料請求」という“倍返し”をされます。

相手が法に違反したときに、実力行使によって自分の権利を回復することは違法なのです。

全てが法で解決できるほど司法制度は整っていませんが、現代の日本社会は、“法治国家”という建前で動いていることに注意しなければなりません。

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