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弁護士法律解説 リーガルアイ

 

SNSのなりすまし行為で名誉毀損に。


2017年9月14日

SNS上で何者かが自分なりすまし、他の利用者を罵倒する書き込みをしていたら…あなたはどうしますか?

今回は、誰にでも起こるかもしれないSNSでの「なりすまし事件」の民事訴訟について解説します。

「SNSでなりすまし、他人を罵倒 名誉権侵害で賠償命令」(2017年8月30日 朝日新聞)

長野県在住の男性が、「インターネット上の掲示板に、自分になりすまして投稿され肖像権などを侵害された」として、大阪府枚方市の男性に723万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が大阪地裁でありました。

裁判所は、「社会的評価を低下させ、名誉権を侵害した」として被告側に130万円の支払いを命じました。

事件があったのは、2015年5月。
原告男性がSNS「GREE(グリー)」で使用していたプロフィール画像の顔写真や登録名を、被告男性が無断で使ってなりすまし、掲示板に「お前の性格の醜さは、みなが知った事だろう」などと別の利用者を罵倒する内容の書き込みをしたということです。

「正当な目的なく顔写真を使い、男性が他者を根拠なく侮辱、罵倒して掲示板の場を乱す人間であるとの誤解を与えるような投稿をした」と指摘し、原告男性の肖像権、名誉権を侵害したと結論づけました。

なお、原告男性は今回の訴訟に先立ち、2015(平成27)年10月にSNS運営会社に対し、発信者情報の開示を求めて大阪地裁に提訴しており、一審は棄却したものの、2016(平成28)年10月に大阪高裁の開示命令判決を受けたことで、被告を特定して損害賠償を求める訴訟を起こしていたとうことです。

 

まずは、民事における損害賠償請求について見ていきましょう。

民法の規定により、名誉を侵害された場合は不法行為による損害賠償を請求することができます。

「民法」
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

第710条(財産以外の損害の賠償)
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

 

第723条(名誉毀損における原状回復)
他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

 

ここでのポイントは、なりすましをされただけでは一般的には名誉などの権利を侵害されたとはいえないことです。
つまり、今回の事件でいえば、被告がなりすましている間に、原告の「名誉を毀損した」、つまり、「社会的評価を低下させる」ような書き込みをしたかどうかが争点になるわけです。

なお、ネット上の中傷投稿に名誉毀損やプライバシーの侵害の内容が含まれている場合は、「発信者情報開示請求」をすることができます。

詳しい解説はこちら⇒
「中傷投稿やツイートに対抗する法的手段とは?」
http://taniharamakoto.com/archives/1299

ネット上の言動は、バレないと思っている人もいるかもしれません。

しかし、たとえば、ツイッターで爆破予告などをすると、すぐ特定されて、警察等の業務を妨害した、といことで逮捕されたりしますし、今回のように、損害賠償請求を受けたりします。

ネットやSNSの容易性を甘く見て、人生を棒に振らないように気をつけていただきたいところです。

給料不払いで社長が逮捕。


2017年9月11日

今回は、支払う側にも受け取る側にも大切な賃金に関する法律を解説します。

「給与未払い、出頭拒否で経営者逮捕 彦根労基署」(2017年9月8日 産経新聞)

彦根労働基準監督署は、滋賀県の建築工事会社の代表取締役の男(58)を最低賃金法違反の疑いで逮捕し、法人としての同社を書類送検したと発表しました。

男は、正社員とパート社員2人に対し、2016(平成28)年2~4月分の給与計約80万円を支払わなかったようで、「営業不振で支払えなかった」と容疑を認めているということです。

同労基署は、「同法違反容疑での逮捕は珍しい。出頭要請に応じないなど、逃亡や証拠隠滅の可能性があった」としています。

 

【最低賃金法とは?】
最低賃金には、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定産業に従事する労働者を対象に定められた「特定最低賃金」があり、使用者は、いずれかのうち高いほうの最低額以上を労働者に支払わなければいけません。

「最低賃金法」
第4条(最低賃金の効力)
1.使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

 

これに違反した場合、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。

また、最低賃金に関する違反があった場合、労働者は労働基準監督署等に訴えることができます。

第34条(監督機関に対する申告)
1.労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。
2.使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 

【労働基準監督官とは?】
労働基準監督署は、「労働基準法」や「最低賃金法」などの労働基準関係法令に基づいて、労働者の最低労働基準や職場の安全衛生を守るために企業を調査・監督します。

法律が守られていなければ使用者を指導することになりますが、企業への立ち入り調査(臨検)などをするのが厚生労働省の専門職員である「労働基準監督官」です。

計画的に対象企業を選定して調査することを「定期監督」といい、労働者からの申告・告発を受けて調査することを「申告監督」といいます。

労働基準監督官は、労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法などの法律違反について、「刑事訴訟法」に規定する司法警察員の職務を負っているため、警察と同じような権限を行使することができます。

第32条(労働基準監督官の権限)
1.労働基準監督官は、この法律の目的を達成するため必要な限度において、使用者の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査し、又は関係者に質問をすることができる。

 

これに違反した場合も、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金になります。

労働基準監督官の仕事の流れは通常、次のように進められます

①企業を訪問
②立ち入り調査/臨検(使用者や労働者への事情聴取、帳簿の確認など)
③法律違反が認められた場合、「文書指導」、「是正勧告」、「改善指導」、「使用停止命令」などを実施
④企業からの是正・改善報告を受けて、是正・改善が確認できれば指導は終了
⑤是正・改善が認められない場合、再度監督を実施し、重大・悪質な場合は送検

また、労働基準監督官には次のような権限が与えられています。

・事業場への予告なしの立ち入り調査(臨検)
・帳簿書類の提出要求と確認
・使用者や労働者への尋問
・使用者や労働者への報告・出頭命令
・監督指導
・法令違反者の送検・逮捕

労働基準関係法令に違反したにもかかわらず、改善が認められない使用者など(社長のほか、一定の権限を与えられている取締役や部長、課長など)は、通常では送検で済むものですが、今回のように出頭要請に応じなかったり、逃亡や証拠隠滅の可能性があるなど悪質なケースでは逮捕に至る場合もあるわけです。

社長が逮捕されたとなれば、会社の業績全体に大きなダメージを負うことになってしまいます。

労働基準監督署を甘くみてはいけません。
労働問題のご相談はこちらから⇒ http://roudou-sos.jp/

武井咲さん(オスカー)は違約金を支払うのか?


2017年9月6日

女優の武井咲さんとEXILEのボーカル、TAKAHIROさんが結婚したとの報道がありました。

武井さんは妊娠3カ月で、2018年春に出産予定ということです。

おめでたいことですね。

と、思っていたら、マスコミでは、武井さんの所属事務所オスカープロモーションが違約金を支払う可能性があり、その額は10億円もありうる、などと言われています。

「違約金」というのは、約束に違反した場合に支払われる金員ですが、法的には「損害賠償金」の一種です。

損害賠償金には、約束に違反した場合である債務不履行に基づく損害賠償金と、違法な行為を行った場合である不法行為に基づく損害賠償金があります。

では、今回の場合は、どうなるのでしょうか?

登場するのは、

・武井さん
・TAKAHIROさん
・オスカープロモーション
・広告代理店等出演契約先

です。

このうち、TAKAHIROさんは、オスカーとも出演契約先とも何の契約もないので、違約金の話からは除外されます。

そして、契約関係は、

●武井さん - オスカー

●オスカー - 広告代理店等

となっており、

×武井さん - 広告代理店等

ではありません。

したがって、広告代理店等は、武井さん個人に対しては、契約責任を問えません。

違約金請求はできない、ということです。

では、不法行為責任はどうか?

武井さんが、広告代理店等に損害を与える目的で、妊娠していないのに嘘の情報を流してCMをキャンセルさせた、などの場合には、「不法行為」に基づく損害賠償ということもあり得ますが、今回は可能性が低そうですね。

ということは、損害賠償の問題としては、

●広告代理店等 → オスカー

ということになります。

そして、もし、オスカーが広告代理店等に対して損害賠償金を支払った時は、

●武井さん - オスカー

との専属契約書に基づき、オスカーが武井さんに損害賠償を請求する、という可能性もなくはありません。

さて、オスカーと広告代理店との契約関係としては、たとえばCM出演の場合には、「CM出演契約書」などが締結されているはずです。

そこには、出演者を武井さんとし、武井さんのタレントとしての良好なイメージを保持する義務が記載されているのが通常です。

契約によっては、CMの商品を特定し、その商品とのイメージを損なわないようイメージを保持する義務が謳われることもあるでしょう。

商品やサービスのCMで、結婚や出産によりイメージダウンするものがあるとは想定しがたい(離婚情報サービスなどなら別ですが、聞いたことがないですね)ので、イメージダウンを理由として損害賠償、というのは難しいと思います。

たとえば、日弁連も武井さんを起用したCMを作っています。
http://tinyurl.com/y9jbumyj

武井さんが結婚や出産することで、日弁連のイメージが損なわれるか、というと、それはないですね。

もう1つの論点は、オスカーが損害賠償責任を負担するには、契約内容にもよりますが、通常は、オスカーに「故意」や「過失」があることが必要とされます。

オスカーが、武井さんの結婚や妊娠がCMのイメージを損なうことを認識し、かつ、それ故に結婚や妊娠を防止する措置を講じることができることが必要なわけですね。

防止措置を講じることができたのに防止措置をとらなかったというようなことが過失と認定されるわけです。

確かに、プロダクションの専属契約書では、「恋愛禁止」などが盛り込まれることがあります。

そして、アイドルに関し、この恋愛禁止条項に違反した、として、プロダクションがアイドルに対して損害賠償請求をした、という事案があります。

これについては、平成27年9月18日東京地裁判決は、アイドルに対し、65万円の損害賠償を命じ、平成28年1月18日東京地裁判決は、アイドルは損害賠償責任はない、としています。

アイドルやタレントが恋愛や結婚をすると、人気が落ちてしまうのは、仕方のないことかもしれません。

しかし、人間として恋愛、結婚、出産をしたり、しなかったり、というのは、個人の尊厳に基づく幸福追求の権利の一つです。

したがって、これを専属契約期間の全てにわたって契約で禁止するのは、私個人としては、公序良俗に反し、無効だと考えています。

したがって、オスカーには故意も過失もなく、損害賠償責任は発生しないと考えたいと思います。

ただし、出演作品が、体型を強調するCMであったりする場合には、少なくともその間は仕事に支障がないように気をつける義務はあると思いますので、もし、妊娠による体型変化とCM撮影時期が重なるようなことがあると、損害賠償責任の発生の可能性もありえるかもしれません。しかし、そうであれば、事前協議により撮影前倒しなどで対応可能なので、問題は回避できるように思います。

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