東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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弁護士法律解説 リーガルアイ

 

スポーツクラブで管理監督者残業代判決


2017年10月11日

「なんにも専務」、「宴会部長」、「おとぼけ課長」…世の中には、さまざまな役職がありますが、今回は「名ばかり管理職」について法的に解説します。

「“名ばかり管理職”認定 コナミスポーツ、東京地裁」(2017年10月7日 日本経済新聞)

コナミスポーツクラブ(東京)の元支店長の女性が、権限や裁量のない「名ばかり管理職」だったとして、未払い残業代など約650万円の支払いを求めた訴訟の判決が6日、東京地裁でありました。

裁判長は、女性が人員不足でフロント業務などに従事し、恒常的に時間外労働を余儀なくされていたと認定。
「裁量が相当制限され、管理監督者の地位にあったとは認めらない」と指摘し、同社に残業代約300万円と労働基準法違反への「制裁金」に当たる付加金90万円の支払いを命じました。

判決によると、女性は、1989(平成1)年に入社。
2007(平成19)年から都内などで支店長やマネジャーを務め、2015年に退職したということで、判決後の記者会見では、「会社の労働環境は変わっていない。判決が私のように苦しんでいる人のためになればいい」と話したということです。

 

【管理監督者とは?】
名ばかり管理職、という言葉が広く知られるようになったのは、2008年1月に判決があった「日本マクドナルド割増賃金請求事件判決」がきっかけでした。

この訴訟は、マクドナルドの店長が、労働基準法が定める「管理監督者」に当たるかどうかが争われたもので、店長は管理監督者には当たらないと主張して、未払い残業代を求めました。

判決では、原告の主張通り、店長は管理監督者には当たらないとして、日本マクドナルドに過去2年分の未払い残業代など約750万円の支払いが命じられました。

今回の訴訟でも、同じ問題が争われているのですが、では管理監督者の何が問題となっているのか、まずは条文を見てみましょう。

「労働基準法」
第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

2 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

 

つまり、労働基準法上は、監督または管理の立場にある者=管理監督者は、労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されないので、残業代を支払う必要がない、ということになります。

 

【名ばかり管理職の何が問題なのか?】
労働者側からすれば、実際は管理監督者といっても名ばかりのもので、給与などで相応の待遇を受けておらず、労働時間の自由裁量も認められておらず、権限や裁量が相当限定されている。
それにもかかわらず、時間外労働を強いられ、おまけに残業代も支払われない、これは納得いかないという問題が起きてきます。

一方、使用者側とすれば、多くの会社が人件費抑制に苦労しているのが現実です。
残業が発生するのは避けられないが、かといって法律の通りに残業代を支払うと利益が出ない、経営を圧迫するというような悩みを持っている経営者もいるでしょう。

そのため、一律に「部長以上は管理監督者」としたり、「課長・店長以上は管理監督者」として就業規則で定め、その者達には、残業代を支払わない、という扱いをしている会社があります。

しかし、この取り扱いは非常に危険です。

労働基準法上、「管理監督者」といえるための要件はかなり厳しいからです。

厚生労働省の通達では、管理監督者といえるためには次の4つの要件が必要となります。

1.事業主の経営に関する決定に参画(関与)していること
2.労務管理に関する指揮監督権限を認められていること
3.自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
4.一般の従業員に比べ、その地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていること

これらの要件を満たさないと「管理監督者」とはいえないため、会社は従業員に通常の残業代を支払う義務が生じます。

過去の判例では、次のようなものが管理監督者ではないとされています。

・信金の支店長代理
・工事現場の現場監督者
・飲食店の料理長
・飲食店の店長
・バス会社の統轄運行管理者兼運行課長
・製造業の会社の本社主任と工場課長
・コンビニエンスストアの店長
・カラオケ店の店長
・不動産業の営業本部長
・広告代理店の部長
・税理士法人の管理部長

また、会社として注意が必要なのは、今回のケースのように元従業員に訴えられ裁判となった場合、未払い残業代に付加金もプラスされて2倍の金額を支払わなければならなくなる可能性もあることです。

詳しい解説はこちら⇒
「2倍!2倍!未払い残業代の付加金とは?」
http://taniharamakoto.com/archives/1889/

会社側としては、「管理監督者」を定めている場合には、それが法律上「管理監督者」として有効なのかどうか、一度見直してみる必要があります。

従業員側としては、未払い残業代を会社に対して請求することができます。
泣き寝入りすることなく、訴訟を提起するという方法もあるので、その場合は弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

 

会社側からのご相談はこちらから⇒http://roudou-sos.jp/flow/

労働者の方のご相談はこちらから⇒http://roudou-sos.jp/zangyou2/

税理士の守秘義務について


2017年10月9日

税理士の守秘義務について解説をします。

税理士法第38条は、次のように規定します。
「税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない。税理士でなくなつた後においても、また同様とする。」

そして、この条文の解釈について、「税理士法基本通達」は、次のように規定しています。

(正当な理由)
38-1 法第38条に規定する「正当な理由」とは、本人の許諾又は法令に基づく義務があることをいうものとする。

(税理士業務に関し知り得た秘密)
38-2 法第38条に規定する「税理士業務に関して知り得た秘密」とは、税理士業務を行うに当たって、依頼人の陳述又は自己の判断によって知り得た事実で、一般に知られていない事項及び当該事実の関係者が他言を禁じた事項をいうものとする。

(窃用)
38-3 法第38条に規定する「窃用」とは、自ら又は第三者のために利用することをいうものとする。

(使用者である税理士等が所属税理士から知り得た事項)
38-4 規則第1条の2第2項、第6項及び第7項の規定により使用者である税理士又は使用者である税理士法人の社員税理士が所属税理士から知り得た事項は、法第38条に規定する「税理士業務に関して知り得た秘密」に含まれることに留意する。

では、税理士が守秘義務に違反した場合には、どうなるでしょうか。

まず、一つ目は、懲戒処分です。

そして、二つ目は、刑罰です。

税理士法第59条により、2年以下の懲役又は百万円以下の罰金が定められています。

重いですね。

次のような場合には、税理士は、どうしたら良いでしょうか。

・警察から問い合わせがあった場合に、確定申告書等を開示してよいか?

・会社の業務に関与していない社長の妻から、確定申告書等の開示を要求されたら?

・代表権のない取締役から、総勘定元帳の開示を求められたら?

個別の事情に応じて判断しなければなりません。

過去には、弁護士法23条照会に対して、クライアントの情報を開示した行為が守秘義務違反かどうかが争われた事例があります。
(大阪高裁平成26年8月28日判決)

 

税理士資格を有する税理士事務所のスタッフは、税理士法上の義務を負担しませんが、守秘義務を負わせる必要があります。

入社時の誓約書や就業規則などで、工夫が必要でしょう。

詳しくは、ご相談ください。
http://www.bengoshi-sos.com/soudan

税理士が作成保存する会計データの所有権


2017年10月9日

税理士と顧問先との間で、税理士が作成した顧問先の会計データの所有権の帰属が争われた裁判例がありますので、紹介します。

東京地裁平成25年9月6日判決です。

事案としては、税理士が、元顧問先に対し、税理士顧問契約に基づく報酬請求として、43万7940円を請求し、顧問先が反訴として、税理士が保有する会計データ(電子データ)を引き渡さなかったことが債務不履行だと主張し、143万4416円の損害賠償その他の請求をした、というものです。

顧問契約書が締結されており、業務内容としては、以下のとおりでした。

・法人税、事業税、住民税及び消費税の税務代理及び税務書類の作成業務

・税務相談

・総勘定元帳(調査時の出力)並びに決算
会計処理に関する指導及び相談

・上記項目以外の業務については別途協議する。

入力された会計データを出力した総勘定元帳は、依頼者に送付されていましたが、本件は、弥生会計に入力された会計データそのものを依頼者に引き渡す義務があるのかどうかが争われた事案です。

つまり、「会計データ」自体の所有権が、税理士に帰属するのか、顧問先に帰属するのか、が争われたものです。

この点について、裁判所は、税理士が保存していた会計データの所有権は税理士に帰属しており、会計データの引き渡し義務はないと判断しました。

ただし、この判決は、税理士が、入力結果を渡す義務がない、と判断したものではありません。

会計データの所有権のみを判断したものです。

税理士と顧問先との契約関係は、委任契約とされています(最高裁昭和58年9月20日判決)。

そして、民法645条は、「受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。」と規定しています。

したがって、税理士は、受任事務を処理した時は、その結果について報告すべき義務があることは忘れてはいけません。

 

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