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弁護士法律解説 リーガルアイ

 

コンビニが下請法違反!?


2016年8月26日

親事業者が、取引先の下請け企業に支払う金額を不当に減額していたことが問題になったようです。

今回は「下請法」について解説します。

「下請け代金6億5千万円を不当減額 ファミリーマートに勧告 公取委」(2016年8月25日 産経新聞)

公正取引委員会は、コンビニエンスストア大手のファミリーマートに対し、下請法に違反したとして取引業者への代金返還と再発防止を勧告しました。

ファミリーマートは、おにぎりや弁当などのプライベートブランド(PB)商品の製造を委託している業者20社に支払う代金から、総額約6億5000万円を不当に減額していたようです。

報道によると、ファミリーマートは2014(平成26)年7月~2016(平成28)年6月、新規開業店舗のオープンセールで、PB商品の製造委託業者に対し、売れ残ったPB商品の代金の一部を「開店時販促費」として負担させ、下請け代金を不当に減額。

他にも、「カラー写真台帳」と呼ばれる店舗向け新商品案内の製作費を負担させたり、期間限定の割引セール対象商品の値引き相当額を負担させたりしていたようです。

なお、返還額としては、勧告内容の公表が始まった2004(平成16)年以降で4番目の大きさになるということです。
下請法は、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といいます。

親事業者が下請事業者に商品の製造などを委託・発注する場合、どうしても親事業者のほうが優越的地位にあるため、取引金額を不当に減額されたり、支払いが遅延することがあります。

それは、そうでしょう。

親事業者から「安くしろ。そうしないと、あんたの会社とは取引を打ち切るぞ」と言われたら、下請事業者はその要求に応じないわけにはいきません。

交渉力が全く違いますね。

こうした事態を防ぎ、下請事業者の利益を保護し、取引の適正化を推進するために、1956(昭和31)年6月に下請法が施行されました。

今回のケースは、第4条第1項第3号の「下請代金の減額の禁止」に当たります。

では、条文を見てみましょう。

「下請代金支払遅延等防止法」
第4条(親事業者の遵守事項)
1.親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
三 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。
この第4条では、「親事業者の禁止行為」について定めているので、以下にまとめておきます。

①受領拒否の禁止
下請事業者に責任がないのに、給付(納入品等)の受領を拒むこと。

②下請代金の支払遅延の禁止
支払代金を支払期日までに支払わないこと。

③下請代金の減額の禁止
下請事業者に責任がないのに、下請代金を減額すること。

④返品の禁止
下請事業者に責任がないのに、給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせること。

⑤買い叩きの禁止
通常支払われる対価に比べ、著しく低い下請代金の額を不当に定めること。

⑥物の購入強制・役務の利用強制の禁止
自己の指定する物を強制的に購入させたり、役務を強制的に利用させたりすること。

⑦報復措置の禁止
中小企業庁又は公正取引委員会に対し、禁止行為を行ったことを知らせたとして、下請業者に対して取引を停止するなど不利益な取扱いをすること。

⑧有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
有償支給原材料等を自己から購入させた場合、支払期日より早い時期に対価を支払わせること。

⑨割引困難な手形の交付の禁止
支払期日までに一般の金融機関で割引を受けることが困難な手形を交付すること。

⑩不当な経済上の利益の提供要請の禁止
自己のために、金銭、役務などの経済上の利益を提供させること。

⑪不当なやり直し等の禁止
下請事業者に責任がないのに、給付の内容を変更させたり、給付をやり直させたりすること。
どれもこれも、やられたら下請業者にとってはたまったものではないどころか、企業の存亡にも関わりかねないことばかりですね。

現在、ファミリーマートは業界3位で、今年9月1日には業界4位のサークルKサンクスを傘下に持つ流通大手ユニーグループ・ホールディングス(GHD)と経営統合することで基本合意しており、統合すれば業界2位に浮上。
店舗数では、最大手のセブン-イレブン・ジャパン(約1万8千店)と肩を並べることになるようです。

今回の調査が、下請事業者の申告から始まったのかどうかはわかりませんが、申告した下請事業者との取引を停止するなどすると、さらに下請法違反となるので、それは回避して欲しいと思います。

中小企業が日本を支えています。

親事業者と下請事業者の取引の適正化を望むばかりです。

「ポケモンGO」のチートツールによる法律違反にご用心


2016年8月23日

話題のスマホ向けARゲーム「ポケモンGO」で、また新たな法律違反が指摘されているようです。

今回は、「ずるい行為」だそうです。

「ポケモンGOでも登場「ずる」する道具、使うと罪?」(2016年8月18日 朝日新聞デジタル)

今年、人気のオンラインゲーム「パズル&ドラゴン」(パズドラ)で検挙という事件が相次ぎました。
問題になったのは、「チートツール」(CT)です。

神奈川県警は今年の6月15日、チートツールを作成し、無償で配布したとして広島市の大学3年生(21)を著作権法違反の疑いで逮捕。
また、チートツールを乱用してゲームメーカーの業務を妨害したとして、男4人を偽計業務妨害の疑いで書類送検した、とのことです。

チートツールとは、ゲーム攻略のために「ずるをする道具」のことで、早速、「ポケモンGO」でも登場しているようです。

「ポケモンGO」は、スマホのGPS機能による現在地情報を使ってポケモンを捕まえるゲームですが、チートツールでGPSのデータを改変することで家にいながら世界中のポケモンを捕まえられるようにするために、ゲームメーカーが提供しているポケモンを捕まえやすくする有料アイテムを購入する必要がなくなってしまうということです。

こうした事態を受け、神奈川県警は、「1回のチート行為でも罪に問われる可能性がある。絶対に手を出さないで」と呼び掛けているということです。

「パズドラ」は、パズルで対戦しながら自分のモンスターを育てる無料のゲームで、120円前後のアイテムを購入すれば、より早く、強くなれるそうです。
ところが、容疑者が作成したチートツールを使うことで一気に無敵状態にすることができるため、40万回以上もダウンロードされていたようです。

報道によれば、チートツールを使われることで、課金の機会が失われ、またランキングで競っているゲームプレーヤーの間で不公平感が生まれることで、ユーザーのゲーム離れを起こしかねないため、ゲームメーカーは深刻な被害を受けているとしています。

ゲームメーカーとしては、これまで何度も対策を講じてきたようですが、その度にさらに改良して、技術を誇示するチートツール制作者がいるために、いたちごっこ状態が続いているということです。
また、警察はサイバーパトロールを行っていますが、チートツールはゲーム上の問題のため、発覚しにくいという特徴があるようです。

そのため、神奈川県警は取り締まりについて慎重に検討をした結果、メーカーの防御プログラムをかいくぐるプログラムを開発、配布したとしてチートツール作成者を著作権法違反容疑で逮捕。
乱用に歯止めがかかっていないことから、使用者を偽計業務妨害罪書類送検したとうことです。

報道では、「偽計業務妨害罪」となっておりますが、むしろ、「電子計算機損壊等業務妨害罪」の方ではないか、という気がします。

では、この問題を法的に見てみましょう。

「刑法」
第233条(信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
偽計業務妨害罪とは、真実ではないウソやデマを不特定多数の人に広めたり、偽計=だますことで人の信用を損なったり、人の業務を妨害する罪です。

234条の2(電子計算機損壊等業務妨害罪)
人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

容疑者らは、正規のアイテムではない偽のチートツールを用いて、ゲームを誤作動させ、ゲーム制作会社の業務を妨害したということになるのだと思います。

次に、著作権法について見てみます。

第120条の2
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  技術的保護手段の回避を行うことをその機能とする装置(当該装置の部品一式であつて容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避を行うことをその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもつて製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあつては、著作権等を侵害する行為を技術的保護手段の回避により可能とする用途に供するために行うものに限る。)をした者

今回の報道では、著作権法のどの違反か、については書かれていませんが、おそらくは、この規定が適用されたのではないか、と思います。

少し難しいので、説明は割愛しますが、チートツールを作る行為は、著作権法違反になる可能性がある、ということです。

そして、憶えておかなければならないことは、チートツールを「使うだけの人」にも、犯罪が成立する可能性があることは、しっかりと認識しておかなければなりません。

ポケモンGOが流行しており、チートツールがあると、飛びついてしまう未成年者も多いのではないでしょうか。

子供を持つ親は、しっかりとお子さんに教え込んでおきましょう。

事後強盗って、どんな罪?


2016年8月18日

インターネットで「事後」と検索してみると、「事後報告」、「事後承諾」、「事後処理」などに並んで、「事後強盗」というキーワードが出てきます。

じつは、事後強盗とは犯罪の名称です。
一体、どのような罪なのでしょうか?

「事後強盗容疑で保育士逮捕 倉敷署 万引、保安員振り切る」(2016年8月17日 山陽新聞)

倉敷市内のスーパーで万引し、制止しようとした保安員の腕を引っかくなどして逃走した保育園のパート保育士の女(42)が逮捕されました。
逮捕容疑は、事後強盗です。

事件が起きたのは、8月16日午後3時15分頃

容疑者の女はスーパーで、煮豚や煮卵など食料品17点、計3193円相当を万引。
呼び止めた同店の保安員女性(36)の腕を引っかいたうえ、駐車場に止めていた乗用車を急発進。
ドアにつかまっていた保安員を振り切って逃げたようです。

倉敷署によると、保安員が車の色やナンバーを覚えており、犯行を特定。女は「間違いない」と容疑を認めているということです。

普通、「強盗」というと、包丁とかを持って銀行に行き「カネを出せ!」などと迫る行為をイメージします。
しかし、この報道では、単なる万引き犯のように思えます。

なぜ、「強盗」と名の付く犯罪が成立してしまったのでしょうか。

条文を見てみましょう。

「刑法」
第238条(事後強盗)
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

たとえば、映画やドラマにも次のようなシーンがあります。

侵入した家の人に見つかってしまった空き巣の犯人。
その時、盗んだものを取り返されるのを防ぐため、逮捕されるのを免れるため、あるいは証拠を隠滅するために、犯人が相手に暴行や脅迫を加えている。

こうした場合に、窃盗犯が相手を殺傷してしまい、重大な犯罪に発展するケースがしばしばあります。
そのために、処罰としては強盗罪と同様に扱うこととしたのが事後強盗罪ということになります。

つまり、「事後強盗」という犯罪は、「窃盗犯」だけが犯すことができる犯罪だ、ということです。

ちなみに、事後強盗は、昏睡強盗(第239条)とともに「準強盗」とも呼ばれることがあります。

刑罰としては、窃盗罪(第235条)は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金ですが、事後強盗罪の場合は強盗罪(第236条)と同じく、5年以上の有期懲役となります。

重いですね。学生時代、初めてこの犯罪を知った時にはビックリしたことを思い出しました。

詐害行為で訴えられた時の救済策(弁護士解説)


2016年8月12日

突然、詐害行為取消訴訟の訴状が届く時があります。

「詐害行為」とは、「さがいこうい」と読みます。

典型的には、自分の財産より借金の方が多くなってしまった状態(債務超過)で、唯一の財産である自宅を妻に贈与してしまうような場合です。

このような行為は、「詐害行為」として、贈与を取り消されてしまうのです。取り消される、ということは、自宅を元に戻さなければならない、ということです。

この詐害行為取消権は、民法に規定されています。3箇条あります。

【民法】
第424条  債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2  前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

第425条  前条の規定による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる。

第426条  第424条の規定による取消権は、債権者が取消しの原因を知った時から二年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

以上です。

要件としては、
・債権者を害する客観的要件
・債務者が債権者を害することを知っていたこと(主観的要件)
・受益者または転得者が債権者を害することを知っていたこと
・財産権を目的とする法律行為であること
・詐害行為取消権行使が、債権者が取消しの原因を知った時から2年あるいは行為の時から20年を経過していないこと

「債権者を害する」というのは、自分の資産を減少する行為をして債権者が十分の弁済を受けることができなくすることです。

詐害行為で訴えられた時は、上記の要件を欠いている点を見つけ、主張立証してゆくことが必要となります。

つまり、

・「本件は、債権者を害していない」
・「行為の当時、債務者は債権者を害する認識がなかった」
・「受益者または転得者は利益または転得した時点で債権者を害する認識がなかった」
・「本件は、財産を目的とする行為ではない」
・「債権者は、本件行為を知ってから2年以上経過してから取消権を行使した」

などです。

詐害行為取消権を法的に理解しようとすると、結構難しいです。

以下に、詐害行為を理解するのに必須の最高裁判例を紹介します。

(大審院明治39年2月5日判決)「相当の価格による売却であっても債務者の財産が消費しやすい金銭に変わるから詐害行為となる」
(大審院大正13年4月25日判決)「債務者がある債権者に対する債務を弁済するため相当の価格で不動産を売却したときは、特に他の債権者を害する意思がない限り、これをもって詐害行為ということはできない」

(東京高裁昭和31年5月31日判決)(要旨)Yは未成年であるから、詐害行為についての善意悪意は親権者であるAによって検討すべきであるが、Aは別居後Sの資産状態を知らないので、善意というべきである。

(最高裁昭和32年11月1日判決)
「債務者が或債権者のために根抵当権を設定するときは、当該債権者は、担保の目的物につき他の債権者に優先して、被担保債権の弁済を受け得られることになるので、それだけ他の債権者の共同担保は減少する。その結果債務者の残余の財産では、他の債権者に対し十分な弁済を為し得ないことになるときは、他の債権者は従前より不利益な地位に立つこととなり即ちその利益を害せられることになるので、債務者がこれを知りながら敢えて根抵当権を設定した場合は、他の債権者は民法四二四条の取消権を有するものと解するを相当とする。」

(最高裁昭和33年9月26日判決)「債務超過の状態にある債務者が一債権者に対してなした弁済は、それが債権者から強く要求せられた結果、当然弁済すべき債務をやむなく弁済したものであるだけでは、これを詐害行為と解することはできない」
(最高裁昭和33年9月26日判決)「債権者が、弁済金の到来した債務の弁済を求めることは、債権者の当然の権利行使であって、他に債権者あるの故でその権利行使を阻害されるいわれはない。また債務者も債務の本旨に従い履行を為すべき義務を負うものであるから、他に債権者あるの故で、弁済を拒絶することのできないのも、いうをまたないところである。そして、債権者平等分配の原則は、破産宣告をまって初めて生ずるものであるから、債務超過の状況にあって一債権者に弁済することが他の債権者の共同担保を減少する場合においても、右弁済は、原則として詐害行為とならず、唯、債務者が一債権者と通謀し、他の債権者を害する意思をもって弁済したような場合のみ詐害行為となるにすぎない」

(最高裁昭和39年11月17日判決)「債務超過の債務者が、特にある債権者と通謀して右債権者のみに優先的に債権の満足を得させる意図で自己の有する重要な財産を右債権者に売却して、右売買代金債権と右債権者の債権とを相殺する旨の約定をした場合には、たとえ右売買価格が適正価格であるとしても、右売却行為は詐害行為になる」

(最高裁昭和41年5月27日判決)
「債務者が既存の抵当権付債務の弁済をするために、右被担保債権額以下の実価を有する抵当物件たる所有不動産を相当な価格で売却し、その代金を右債務の支払に充てて当該抵当権の消滅をはかる場合にあつては、その結果右債務者の無資力を招いたとしても、右不動産売却行為は、一般債権者の共同担保を減少することにはならないから、民法四二四条所定の詐害行為にあたらないと解するのを相当とする。」

(最高裁昭和42年6月29日判決)
「本件債権譲渡が相当な対価をもつてなされたものではないのみならず、むしろ、訴外Dにおいて子供の養育費や他の借財の支払に必要とするとの理由のもとに、右譲渡債権については、上告人から右訴外人に一〇〇万円を交付し、右同額は右訴外人の上告人に対して負担する原判示債務の一部に充当しない約であつた趣旨の認定判断をしているのであり、したがつて、本件債権譲渡を債務の本旨に従つてなされた弁済と同視しえないことはいうをまたないところである。そして、原判決によれば、訴外Dは、上告人および被上告人らその他の債権者に対して多額の債務を負担しながら、資産としては本件債権のほかに見るべきものがなく、右債権が総債権者のための唯一の共同担保になつていたところ、右訴外人は他の債権者を害することを知りながら右債権を上告人に譲渡したものであり、しかも、上告人において本件債権譲渡が債権者を害することを知らなかつたことを認めえないというのである。しからば、本件債権譲渡は詐害行為として取消を免れないものというべく、これと同趣旨に出た原判決は相当」

(最高裁昭和42年11月9日判決)
「事実関係に徴すれば、前記各譲渡担保による所有権移転行為は、当時A夫妻は他に資産を有していなかつたから、債権者の一般担保を減少せしめる行為であるけれども、前記のような原審の確定した事実の限度では、他に資力のない債務者が、生計費及び子女の教育費にあてるため、その所有の家財衣料等を売却処分し或は新たに金借のためにれを担保に供する等生活を営むためになした財産処分行為は、たとい共同担保が減少したとしても、その売買価格が不当に廉価であつたり、供与した担保物の価格が借入額を超過したり、または担保供与による借財が生活を営む以外の不必要な目的のためにする等特別の事情のない限り、詐害行為は成立しないと解するのが相当であり、右と同旨の見解に立つて本件詐害行為の成立を否定した原判決の判断は、正当として是認できる。」

(最高裁昭和44年12月19日判決)
「右事実関係に徴すれば、本件建物その他の資産を被上告会社に対して譲渡担保に供した行為は、被上告会社に対する牛乳類の買掛代金二四四万円の支払遅滞を生じた訴外有限会社上田乳業食品およびその代表取締役Aが、被上告会社からの取引の打切りや、本件建物の上の根抵当権の実行ないし代物弁済予約の完結を免れて、従前どおり牛乳類の供給を受け、その小売営業を継続して更生の道を見出すために、示談の結果、支払の猶予を得た既存の債務および将来の取引によつて生ずべき債務の担保手段として、やむなくしたところであり、当時の諸般の事情のもとにおいては、前記の目的のための担保提供行為として合理的な限度を超えたものでもなく、かつ、かかる担保提供行為をしてでも被上告会社との間の取引の打切りを避け営業の継続をはかること以外には、右訴外会社の更生策として適切な方策は存しなかつたものであるとするに難くない。債務者の右のような行為は、それによつて債権者の一般担保を減少せしめる結果を生ずるにしても、詐害行為にはあたらないとして、これに対する他の債権者からの介入は許されないものと解するのが相当であり、これと同旨の見解に立つて本件につき詐害行為の成立を否定した原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、原審の認定しない事実関係および叙上と異なる見解を前提として原判決の違法をいうものであり、採用することができない。」

(最高裁昭和45年11月19日判決)
「右代物弁済は、被上告会社の代表者らが訴外会社に倒産の気配があることを察知し、他に債権者のあることを知つていたが、自己の債権の回収を図るべく、訴外会社の代表者らに対し、債務の支払かこれに代わる商品の交付を要求し、訴外会社の代表者らは、これを拒絶していたものの、被上告会社から引き続いて強硬な要求を受け午前三時頃に及んだため、ついに疲れあきらめて、本件物件を収納してある倉庫の錠を開け、被上告会社において右物件を運び出し持ち去るに任せたというのである。原審の右認定は、原判決挙示の証拠関係(ただし、原判決の理由中に第九号証の二、第一〇、一一号証とあるのは、それぞれ甲第一号証の九の二、同号証の一〇、一一の誤記と認める。)に照らして首肯するに足りる。そうとすれば、被上告会社がその債権回収のためとつた方法は、常軌を逸したものというべきであるが、原審が、右認定事実に基づいて、訴外会社としては、右のとおり被上告会社に本件物件を譲渡すれば他の債権者を害するであろうことを認識していたといえるが、これを害することの積極的な意思のもとになしたものとは認めがたい旨説示し、右代物弁済行為とならないとした判断は、正当として是認することができる。」

(最高裁昭和46年1月26日)
「本件建物を譲渡した当時右建物にはその価額をこえる金額の債権を現実の被担保債権とする根抵当権が設定されていたから、その当時、右建物には日原治子の一般債権者の共同担保となるべき余地がなかつたものであり、したがつて、日原治子の右建物の譲渡行為は詐害行為にはならない、とした原審の判断は、正当として是認することができる。」

(最高裁昭和47年10月26日判決)
「訴外沢正久は、被上告人から新たに営業資金を借り受けるに際し、被上告人の経営する田中酒造株式会社から引き続き商品の供給を受けて営業を継続することを目的として、被上告人に対する全債務を担保するため、被上告人との間に本件各不動産につき売買予約を締結し、借受金の一部をもつて第三者に対する抵当債務を弁済して抵当権設定登記の抹消を受けたのち、右売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由したこと、沢正久は、その後約四年間営業を継続したのち、被上告人との間で、右担保の目的である本件不動産の所有権を債務全額の弁済に代え被上告人に譲渡する旨の合意をし、売買名義による右仮登記に基づく所有権移転登記を経由したことなど原審の確定した事実関係のもとにおいては、右売買予約および代物弁済契約はいずれも債権者を害する行為にあたらないとした原審の判断は、正当として是認することができる。」

(最高裁昭和49年9月20日判決)
「相続の放棄のような身分行為については、民法四二四条の詐害行為取消権行使の対象とならないと解するのが相当である。なんとなれば、右取消権行使の対象となる行為は、積極的に債務者の財産を減少させる行為であることを要し、消極的にその増加を妨げるにすぎないものを包含しないものと解するところ、相続の放棄は、相続人の意思からいつても、また法律上の効果からいつても、これを既得財産を積極的に減少させる行為というよりはむしろ消極的にその増加を妨げる行為にすぎないとみるのが、妥当である。また、相続の放棄のような身分行為については、他人の意思によつてこれを強制すべきでないと解するところ、もし相続の放棄を詐害行為として取り消しうるものとすれば、相続人に対し相続の承認を強制することと同じ結果となり、その不当であることは明らかである。」

(最高裁昭和49年12月12日判決)
「民法四二四条所定の詐害行為の受益者又は転得者の善意、悪意は、その者の認識したところによって決すべきであって、その前者の善意、悪意を承継するものではないと解すべきであり、また、受益者又は転得者から転得した者が悪意であるときは、たとえその前者が悪意であっても同条に基づく債権者の追及を免れることができないというべきである。」

(最高裁昭和52年7月12日判決)(要旨)倒産会社の支店長が、暴行を受けるなど債権者から強く要求された結果やむなく弁済したと認められる判事の事情のもとにおいては、弁済が債務者において債権者と通謀し他の債権者を害する意思でされた詐害行為にあたるとはいえない。

(最高裁昭和55年1月24日判決)
「債務者の行為が詐害行為として債権者による取消の対象となるためには、その行為が右債権者の債権の発生後にされたものであることを必要とするから、詐害行為と主張される不動産物権の譲渡行為が債権者の債権成立前にされたものである場合には、たといその登記が右債権成立後にされたときであつても、債権者において取消権を行使するに由はない(大審院大正六年(オ)第五三八号同年一〇月三〇日判決・民録二三輯一六二四頁参照)。」

(最高裁昭和58年12月19日判決)「離婚に伴い財産分与をした者が、すでに債務超過の状態にあったとしても、その分与が民法768条3項(財産分与)の趣旨に反して過大でない限り、詐害行為として取消しの対象とはならない」

(最高裁昭和63年7月19日)
「抵当権の設定されている不動産について、当該抵当権者以外の者との間にされた代物弁済予約及び譲渡担保契約が詐害行為に該当する場合において、右不動産が不可分のものであって、当該詐害行為の後に弁済等によって右抵当権設定登記等が抹消されたようなときは、その取消は、右不動産の価額から右抵当権の被担保債権額を控除した残額の限度で価格による賠償を請求する方法によるべきである。」

(最高裁平成4年2月27日判決)
「共同抵当の目的とされた数個の不動産の全部又は一部の売買契約が詐害行為に該当する場合において、当該詐害行為の後に弁済によつて右抵当権が消滅したときは、売買の目的とされた不動産の価額から右不動産が負担すべき右抵当権の被担保債権の額を控除した残額の限度で右売買契約を取り消し、その価格による賠償を命ずるべきであり、一部の不動産自体の回復を認めるべきものではない(最高裁昭和三〇年(オ)第二六〇号同三六年七月一九日大法廷判決・民集一五巻七号一八七五頁、同六一年(オ)第四九五号同六三年七月一九日第三小法廷判決・裁判集民事一五四号三六三頁参照)。
そして、この場合において、詐害行為の目的不動産の価額から控除すべき右不動産が負担すべき右抵当権の被担保債権の額は、民法三九二条の趣旨に照らし、共同抵当の目的とされた各不動産の価額に応じて抵当権の被担保債権額を案分した額(以下「割り付け額」という。)によると解するのが相当である。」

(最高裁平成元年4月13日判決)(要旨)株式会社甲は取引先の倒産等により経営状態が悪化し、商品の仕入先である乙株式会社から資金援助を受け、同時に乙は、その従業員を甲に派遣して債権管理をし、甲に対し債権を有する者が多数存することおよび甲には後記在庫商品と売掛代金債権のほかにみるべき資産がないことを知りながら、甲をして甲の乙に対する債務の弁済に代えて、在庫商品を仕入価格で乙に譲渡させ、かつ201口の売掛代金債権を乙に譲渡させ、預かっていた代表者印を使用して債権譲渡通知をする等、判示の事情のあるときは、右債権譲渡は、甲・乙が通謀してした詐害行為に当たる。

(最高裁平成10年6月12日判決)
「債務者が自己の第三者に対する債権を譲渡した場合において、債務者がこれについてした確定日付のある債権譲渡の通知は、詐害行為取消権行使の対象とならないと解するのが相当である。けだし、詐害行為取消権の対象となるのは、債務者の財産の減少を目的とする行為そのものであるところ、債権の譲渡行為とこれについての譲渡通知とはもとより別個の行為であって、後者は単にその時から初めて債権の移転を債務者その他の第三者に対抗し得る効果を生じさせるにすぎず、譲渡通知の時に右債権移転行為がされたこととなったり、債権移転の効果が生じたりするわけではなく、債権譲渡行為自体が詐害行為を構成しない場合には、これについてされた譲渡通知のみを切り離して詐害行為として取り扱い、これに対する詐害行為取消権の行使を認めることは相当とはいい難いからである」

(最高裁平成11年6月11日)共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。
(最高裁平成12年3月9日)「離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意は詐害行為とならないが、当該配偶者が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされたときは、その合意のうち右損害賠償債務の額を超えた部分は慰謝料支払いの名を借りた金銭の贈与ないし対価を欠いた新たな債務負担行為であるから、詐害行為の対象となりうる」

(最高裁平成24年10月12日)「株式会社を設立する新設分割がされた場合において,新たに設立する株式会社にその債権に係る債務が承継されず,新設分割について異議を述べることもできない新設分割をする株式会社の債権者は,詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができる」
以上です。

よく判例を読み込んで、自分に該当する部分がないかどうか、検討してみましょう。

といっても、実際には、弁護士に相談しないと対応は難しいでしょう。

ご相談は、こちらから。
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学校の部活動での死亡事故の慰謝料は?(弁護士解説)


2016年8月12日

学校のクラブ活動(部活動)で、生徒の死亡事故が起きてしまうことがあります。

親も両親も、当然、本人も、部活動で死亡事故が起きるなど、考えもしません。

しかし、実際には、不注意により、死亡事故が起きてしまうことがあり、その場合、法的にはどのような問題が発生するのか、ということになります。

まず、部活動は学校の活動であり、担当教師の指導下にあるわけですから、生徒の死亡について、担当教師の故意あるいは過失がある場合には、業務上過失致死罪の成立が問題となります。

過去の事例では、高校のラグビーの部活動中、生徒が日射病で倒れ、死亡した事件で、担当教師が業務上過失致死罪にとわれ、禁錮2か月執行猶予1年の有罪判決がなされた事例があります(東京高裁昭和51年3月25日判決)。

また、山岳部で岩登りが行われ、途中2名が転落した死亡した事件で、引率の教師が、業務上過失致死罪にとわれ、罰金3万円の有罪判決がなされた事例もあります(札幌地裁昭和30年7月4日判決)。

次に、生徒が死亡した、ということは、その損害をどうするのか、という民事上の問題もでてきます。

学校の管理下における死亡事故について、スポーツ振興センターにおける災害共催給付金制度があり、事故の態様によって、異なる金額の給付がされる制度があります。

次に、生徒の死亡について、他の生徒の行為に起因するものであるならば、その生徒の注意義務違反があったかどうかが問われます。

場合によっては、その生徒あるいは親に対し、不法行為に基づく慰謝料など損害賠償請求をしてゆくことになります。

次に、部活動中の事故、ということであれば、担当指導教師に注意義務違反がなかったか、について、検討しなければなりません。
部活動は、「学校の教育活動の一環として行われるものである以上、その実施について、顧問の教諭を始め学校側に生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務がある」とされています(最高裁昭和58年2月18日判決)。

ただし、「課外のクラブ活動が本来生徒の自主性を尊重すべきものであることに鑑みれば、何らかの事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のある場合は格別、そうでない限り、顧問の教諭としては、個々の活動に常時立会い、監視指導すべき義務まで負うものではない」(同最高裁判例)とされています。

逆に言うと、事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能な場合」には、顧問の教諭は、個々の活動に立会い、監視指導しなければならない、ということになります。

たとえば、高校ボクシング初心者である部員が、練習中に頭部にボクシングパンチを受けて、硬膜下出血により死亡した事例で、ボクシングが極めて危険性の高いものであること、当該部員が初心者であって数日前まで体調不良で部活を休んでいたこと、相手が全国大会出場者で上級レベルであったこと、等から、顧問教諭は、生徒に対し、パンチが当たる可能性のある練習を避けるか、させるにしてもヘッドギアを装着させたり相手にパンチを当てないように注意するなど事故を未然に防止する高度の注意義務があったのに、これを起こった、として、過失を認めています。

このような場合には、「事故の発生する危険性を具体的に予見可能」であった、ということになります。

そして、教師は、具体的には、

・クラブ活動自体に内在する危険の程度(武道などは危険が高いことになります)

・生徒の年齢・体格・健康状態

・技能レベル

・環境(特に屋外でのスポーツ)

などに配慮して適切に事故を未然に防ぐ注意義務が課されることになります。

これらの注意義務に違反した場合、民間の学校であれば、教師個人には、不法行為に基づく損害賠償責任が発生します。

また、教師の所属する学校は、教師の使用者として、使用者責任に基づく損害賠償責任が発生することになります。

また、学校は生徒に対して安全配慮義務を負担していたと考えられますのから、債務不履行に基づく損害賠償責任も発生する可能性もあります。

学校が国公立の場合には、法律が異なってきて(国家賠償法)、損害賠償の責任主体は、国または地方公共団体となります。

では、過去の裁判例で、学校の部活動で死亡事故が起きた場合に、どのような判決が出されているか、見ていきましょう。

学校部活動の死亡事故その1

【高松高裁平成27年5月29日判決】

県立高校の野球部所属の生徒が練習中に熱中症に罹患して死亡した事故について、野球部監督教諭に過失があったとして、県の国家賠償責任が認められた学校事故。

当時、グランドの気温は29度以上あり、その中で100メートルダッシュを続けさせていました。

判決は、生徒は、ダッシュを続けていたところ、足がつったために、一旦ダッシュを中断したが、教師から促されて再度ダッシュを再開した。この時、走れるような状態まで回復したとはいえ、熱痙攣の状態に陥っていたのであり、そのことは監督も認識することができたこと、監督は生徒に100mダッシュを再開させる以上、熱中症を念頭に置いて生徒の状況を注視し、生徒に少しでも異常な状況があれば即座にAの100mダッシュを中止させ、給水・塩分摂取・休憩を命じ、必要に応じ、熱中症に対する応急処置や病院への搬送措置を講ずるべき注意義務を負っていたにもかかわらず、この注意義務を怠った、と認定し、県の損害賠償責任を肯定しました。

そして、裁判所は、県に対し、スポーツ振興センターから支給された見舞金合計2922万9186円を除き、慰謝料など損害賠償金として、約4500万円の支払を命じました。

【新潟地裁高田支部平成9年1月30日判決】

中学校の柔道部員が部活動としての柔道の練習中に頭部を打って死亡した事故につき、指導教諭及び校長に過失があるとして、国家賠償法に基づく地方公共団体に対して裁判が起こされた事例。

担当教師は、部員たちが基本的な練習を軽視する傾向があり、出席しようと思っていた時刻には投げ込みまで練習が進むことは予想できたはずであり、投げ込みにおいて、正しい「後ろ腰」ができない生徒が「後ろ腰」をやりたがっており、受け身についても完全にマスターしたとはいえない被害生徒と練習相手となることも予想しえたのに、当日は、そのような点について部長に注意を与えず、また、安全対策として決められていた巡視する者を決めることを提案する事もせず、他に何ら柔道活動についての安全につき配慮していなかったことからすると、当該教師は、自ら立ち会うことができないときは、練習を中止させるか、危険を予想されない練習内容にとどめるべき義務、すなわち生徒に対する安全配慮を怠った過失がある、と認定しました。

また、校長についても監督義務違反がある、と認定されました。

その結果、裁判所は、死亡見舞金1700万円、死亡給付金500万円の合計2200万円を除き、合計で3400万円余の慰謝料その他の損害賠償を命じました。

このように、学校のクラブ活動(部活動)に起きた事故について、教師は、生徒達の身体に危険が生じないように配慮する注意義務がありますが、その注意義務を怠った場合には、損害賠償責任が発生する場合があります。

もし、お子さんが学校の部活動中に事故に遭われた場合には、弁護士にご相談することをおすすめします。

ご相談は、こちらから。
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