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「公然わいせつ罪」と「身体露出の罪」の違いとは?


2016年12月3日

「裸」というと、みなさんはどういうものをイメージするでしょうか?

ヨーロッパのヌーディストビーチでは、みなが上半身裸のトップレスで自由と開放感を楽しむそうです。

もうかなり昔、1970年代初頭の頃の話になりますが、「ストリーキング」というものが流行したことがありました。
イギリスやアメリカなどで、多くの観客が集まるサッカーや野球のスタジアムなどの公共の場に全裸で乱入し、走り抜けるというパフォーマンスをするもので、当時は日本でも行われたようです。

また欧米では、全裸で抗議活動や芸術活動を行うこともあります。

さらには、露出狂と呼ばれる下半身などを人前に晒して興奮する性癖を持った人もいるようで、しばしば逮捕されるというニュースを見ることもあります。

そこで今回は、裸に関する犯罪について「身体露出の罪」を中心に解説します。

該当する法律は軽犯罪法です。

「軽犯罪法」
第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

二十 公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者
ポイントは次の3点です。
①公衆の目に触れるような場所
②公衆に嫌悪の情を催させるような仕方
③身体の一部を露出

まず、場所についてですが、条文に「公衆の目に触れるような場所」とあります。

「ような場所」ですから、必ずしも公衆の目に触れる公共の場所に限りません。
公衆=多数の人の目に触れるような場所であれば、たとえば野外ではなく、道路に面した自宅の室内で多くの通行人から見えるような場合でも該当します。

次に、仕方ですが、公衆に嫌悪感を催させるような、とあります。
人が何に嫌悪や不快を感じるかは一概に規定できるものではありませんが、ここでは刑法の「公然わいせつ罪」と比較してみます。

「刑法」
第174条(公然わいせつ)
公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
「公然」とは、不特定多数、または多数の人が認識できる状態のことで、行為者がその行為を認識している状態、つまり故意にやっていることが要件として必要です。

また、「わいせつ」の解釈も個人や文化によって違い、時代によっても変化していくものですが、法的には、「性欲を刺激し、興奮または満足させる行為」、「普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」とされています。

つまり、人に嫌悪や不快を感じさせる行為は軽犯罪法違反で、それよりもさらに度を越して性的羞恥心を害するような行為は公然わいせつ罪になる可能性があるということです。

最後に、身体の露出についてですが、軽犯罪法では、「尻」、「もも」、「その他の身体の一部」とあります。

「性器」の露出は前述のように度を越して性的羞恥心を害する行為となり、「公然わいせつ罪」となります。

そこまで至らない露出で、人に嫌悪の情を催させる露出ということになります。

条文には、「もも」とありますが、どうでしょうか?

今、短いパンツやスカートでももを堂々と出して歩いている人は多数います。

しかし、それで軽犯罪法が適用された例を知りません。

軽犯罪法は、昭和23年にできた法律で、当時は「もも」を出すのは嫌悪されたのが、時代が変わり、嫌悪の対象ではなくなってきた、ということですね。

数年前に人気アイドルグループのメンバーが公然わいせつ罪で現行犯逮捕された事件がありました。

酒に酔って、公園で全裸になり、大声をあげて大騒ぎををしていたということでした。
そのため、公然わいせつ罪が適用されたと考えられます。

もし彼が、パンツだけでも履いていれば、軽犯罪法違反か、もしくは東京都の迷惑防止条例違反での逮捕になっていたと思います。

これから忘年会シーズンです。

お酒を飲み過ぎて、身体の一部又は全部を出したり、飲食した物を出したりしないようにしましょう。

出していいのは、宴会の会費やカンパ、隠し芸くらいだと肝に銘じておきましょう。

死体を放置して軽犯罪!?


2016年11月25日

今回は、「要扶助者・死体等不申告の罪」といわれる犯罪について解説します。

あまり馴染みのない罪かもしれません。
しかも死体とは、何やら不穏なものを感じますが、これは「軽犯罪法」に規定されているものです。

「軽犯罪法」
第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

十八 自己の占有する場所内に、老幼、不具若しくは傷病のため扶助を必要とする者又は人の死体若しくは死胎のあることを知りながら、速やかにこれを公務員に申し出なかつた者
ポイントは次の3点です。

①自己の占有する場所内
②扶助を必要とする者、死体、死胎
③速やかに公務員に申し出る

以前、タクシー運転手が泥酔して寝込んだお客を路上に放置して死なせたために保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕された事件について解説しました。

詳しい解説はこちら⇒
「タクシー運転手が客を置き去りにして逮捕?」
http://taniharamakoto.com/archives/2468

「刑法」の第217条から第219条には「遺棄」に関する罪が規定されていますが、今回の「要扶助者・死体等不申告の罪」とは何が違うのでしょうか?

まず「遺棄」とは、保護を必要とする者を保護のない状態にさらす犯罪ですが、刑法では遺棄する場所については特に規定はありません。
つまり、公道でも公園でも山林でも遺棄になるわけです。

一方、軽犯罪法第18号の「要扶助者・死体等不申告の罪」では、「自己の占有する場所内」と規定されています。
たとえば、縁起でもないですが、自宅の庭に老人が迷い込んで倒れて立ち上がれないような場合には、すぐに警察などに通報しなかったときは、この罪に問われる可能性があるということです。

次に、「扶助を必要とする者」ですが、「老幼」については絶対的な年齢の基準があるわけではなく、事件ごとに相対的判断されます。

また、どのような状態の人が、扶助が必要と判断されるかについては、病気やケガの人以外にも次のような状態の場合、要扶助と認められた判例があります。

・泥酔者
・極度に疲労している者
・知的障碍者
・麻薬等の薬物により正常な意識を失っている者
・飢餓者
・麻酔状態にある者
・催眠術にかかっている者
・産褥期(産後1、2ヵ月)の女子

ちなみに、要扶助者に保護者がついている場合は、警察などに通報しなくてもこの罪は該当しません。

ところが、たとえばあなたが自分の所有する土地に倒れている人を発見し、介抱したり保護したりすれば、法律上あなたは保護義務を負うことになります。
そして、途中から介護、介助を止めてしまって放置した場合は、刑法
第218条の保護責任者遺棄罪や、第219条の遺棄致死傷罪に問われる可能性があります。

保護責任者というと親や子などの親族をイメージするかもしれませんが、それには限りません。
なお、保護責任者遺棄罪の法定刑は3ヵ月以上5年以下の懲役です。当然、軽犯罪法違反と比較すれば重い刑に処されるわけですから、注意が必要です。

ところで、条文に「速やかに」とありますが、どのくらいの時間経過のことをいうのでしょうか?

速やかにとは、時間をおかずにできるだけ速くという意味です。
具体的な時間の定義があるわけではありませんが、扶助者の存在を知ったなら、その状態や発見時刻などの具体的な状況から判断して、できるだけ速く警察などに通報するべきです。

これから忘年会シーズンに突入します。

わざわざ自宅周辺を巡回する必要はありませんが、もし、見つけたら、なるべく早く警察等に通報するようにしましょう。

それが、その人のためでもあり、自分のためでもあるのです。

道路上での犯罪行為解説


2016年11月18日

今回は、道路に大量の「ねじ」がばらまかれていたという事件について解説します。

じつはこの行為、犯罪になる可能性があります。

「路上にねじ数百本、ばらまかれる…長さ5センチ」(2016年11月17日 読売新聞)

三重県津市の県道で、長さ約5センチの金属製のねじ数百本が散乱しているのが見つかったようです。

11月15日午前5時半頃と16日午前6時頃の2回、津市の路上約4キロにかけてばらまかれていたようで、1台の車のタイヤに刺さったものの、ケガ人はいなかったということです。

津市によると、12日夜と16日朝も近くの市道でねじが見つかっていることから、何者かがばらまいたとみて防犯カメラの解析などを含め、道路交通法違反(禁止行為)の疑いで調査をしているということです。
普段、何気なく使いっている道路ですが、路上で何をやってもいいというわけではありません。
法律では道路での禁止行為が定められています。

「道路交通法違反」
第76条(禁止行為)
1.何人も、信号機若しくは道路標識等又はこれらに類似する工作物若しくは物件をみだりに設置してはならない。

2.何人も、信号機又は道路標識等の効用を妨げるような工作物又は物件を設置してはならない。
3.何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない。

4.何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。

一 道路において、酒に酔つて交通の妨害となるような程度にふらつくこと。

※ よく漫画であるように、オヤジさんが寿司のお土産を持って、道路をあっちにフラフラ、こっちにフラフラして歩いていると、道路交通法違反になる可能性がある、ということです。

二 道路において、交通の妨害となるような方法で寝そべり、すわり、しやがみ、又は立ちどまつていること。

※ たまに、酔って路上で寝ていて、車にひかれてしまう人がいますが、実は被害者の方も、道路交通法違反になる可能性がある、ということです。
※ 道路で車の前に立ちはだかり、「行くなら俺をひいてから行け!」と格好いいことを言っていると、逮捕される可能性がある、ということです。

三 交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること。

四 石、ガラスびん、金属片その他道路上の人若しくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げ、又は発射すること。

五 前号に掲げるもののほか、道路において進行中の車両等から物件を投げること。

※ タバコのポイ捨て、空き缶のポイ捨てはいけません。

六 道路において進行中の自動車、トロリーバス又は路面電車に飛び乗り、若しくはこれらから飛び降り、又はこれらに外からつかまること。

※ 路面電車に飛び乗るのは、格好いいと思ってやってしまうと、道路交通法違反です。さすがに走っている自動車に飛び乗るのは難しいでしょう。

七 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が、道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく交通の妨害となるおそれがあると認めて定めた行為
今回のケースのように、ねじを道路上にばらまくような行為を含め、4項の各号に違反した場合、5万円以下の罰金に処されます。(第120条第1項第9号)

間もなく宴会シーズンがはじまります。

年末になると、道路のそこかしこで寝ている人を見かけますが、寝る場所を間違えると、道路交通法違反で警察行き、となるか、車にひかれてあの世行き、となりかねません。

くれぐれもご注意ください。

北海道砂川市暴走事故:危険運転の共犯で懲役23年の判決


2016年11月12日

一家5人のうち4人が死亡、1人が重傷により重度の後遺障害を負った北海道砂川市暴走事故(2015年6月6日に発生)の被告に対する判決が出たようなので解説します。

「<砂川5人死傷事故>2被告とも懲役23年判決…札幌地裁」(2016年11月10日 毎日新聞)

2015年6月、北海道砂川市の国道を自動車2台で暴走し、歌志内市の会社員の男性ら一家5人を死傷させたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)罪などに問われた2人の被告に対して、札幌地裁は裁判員裁判で求刑通りの懲役23年の判決を言い渡しました。

検察側は、次のような理由から両被告に対して危険運転の共謀が成立すると主張していました。

「赤信号は現場の約770メートル手前から認識可能だった」
「防犯カメラの映像から、両被告は事故前の約2キロにわたり速度を競いながら走行し、張り合って運転している趣旨の発言を同乗者が聞いている」
「以前にも速度を競って走行することがあった」

また、ひき逃げについては、「引きずった衝撃や違和感があったはずだ」と指摘しました。

一方、弁護側は「運転中に競い合う気持ちはなかった。落としたサングラスを探して赤信号を見落とした過失による事故だ」、「赤信号を無視するようなレースは過去にも今回もしていない。被害者が車外に投げ出されることは想定できず、引きずった認識もない」と反論していました。

裁判長は、「類を見ないほど悪質。競うように高速で走行していたのは明らかだ。赤信号を無視し、身勝手極まりない」と非難し、両被告による共謀を認定したということです。
今回の事件では、危険運転致死傷罪の共謀が成立するかどうかが争点となっていました。

過去には、飲酒運転による交通死亡事故で、同乗者が「ほう助罪」に問われた事例はありますが、それぞれ別々の車を運転していた複数の被告による「危険運転の共謀」が認定される判決は異例なことです。

危険運転致死傷罪の詳しい解説はこちら⇒「自動車運転死傷行為処罰法の弁護士解説(2)」
http://taniharamakoto.com/archives/1236
今回の判決は、懲役23年ということですが、「刑が軽すぎる」、「重すぎる」、「いや妥当だ」と、さまざまな意見があると思いますが、過去の判決例と比較すると、かなり重い刑となっています。

それだけ、事故の「態様が悪質」であり、かつ、「結果が重大」であるというところでしょう。

また、共謀を否認等していたので、両被告には反省の態度が見られない、という部分も考慮された可能性もあります。

たとえば、危険運転致死傷罪の判例には以下のものがあります。

【判例①】
懲役10年(求刑懲役15年)
2014年7月、埼玉県川口市でミニバイクに乗っていた65歳の女性が乗用車に約1・3キロ引きずられ死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)と道路交通法違反(ひき逃げ)の罪に問われた元同市職員の男(26)の判決公判が2015年1月29日に行われた。
裁判長は、被告が大量の飲酒で極めて危険な運転を行い、女性をはねたことに気づきながら逃走し、悪質な飲酒運転の隠蔽工作を行ったと指摘。「危険運転致死傷の事案の中では重い部類」とする一方、被告が反省の言葉を述べたこと、前科がないことなどを情状酌量の理由としてあげた。

判決/懲役10年(求刑懲役15年)
【判例②】
京都市で2013年10月2日の夕方、飲酒運転の車が小学2年の男子児童ら3人をはねて死傷させた連続ひき逃げ事件で、危険運転致死傷罪や道路交通法違反(ひき逃げ)の罪などに問われた被告の男(60)に対する裁判員裁判の判決が2014年9月19日、京都地裁であった。
被告の男はカップ酒数本を飲んで軽トラックを運転し、同市中京区の市道で自転車に乗っていた主婦(61)をはねて逃走。さらに約160メートル東で、祖父(67)が運転する自転車の後ろに乗っていた小学2年をはねて、児童は頭を強く打って死亡、祖父は重傷を負った。
弁護側は公判で、「被告は事故に気づかなかった」と主張。しかし、裁判長は、「車のフロントガラスの破損状況などから、ぶつかったときの強い衝撃に気づいたはず」と退け、「人命を軽視し、思慮の浅い態度は厳しい非難に値する」と指摘した。

判決/懲役12年(求刑懲役13年)
【判例③】
埼玉県熊谷市で2008年2月17日、2人が死亡、6人が重軽傷を負う飲酒運転事故を起こしたとして、危険運転致死傷罪に問われた元トラック運転手の男(34)の控訴審判決が2009年11月27日、東京高裁であった。
被告の男は、約5時間にわたってビールや焼酎を飲み、乗用車で熊谷市内の県道を時速100キロ以上で運転。対向車2台に衝突し、自営業の男性(当時56歳)と妻(同56歳)を死亡させ、6人に重軽傷を負わせた。
検察側は遺族の意向も踏まえ、懲役20年を主張。弁護側は、刑を軽くするよう求めていた。
裁判長は、「遺族らの厳しい処罰感情は当然」としながらも、「被告は対人無制限の任意保険に加入しており、遺族に対する損害賠償が担保されている」などと指摘。一審判決を支持、検察、弁護側双方の控訴を棄却した。

判決/懲役16年(求刑懲役20年)
【判例④】
2006年2月25日未明、愛知県春日井市内の交差点に赤信号を無視して時速70~80キロで進入し、タクシーの側面に衝突。運転手の男性と乗客の自衛隊員の男性3人、合わせて4人を死亡させるなどして危険運転致死傷罪などに問われた元会社員の男(29)に対して、1審名古屋地裁は危険運転致死傷罪ではなく、予備的訴因の業務上過失致死傷罪を適用し、懲役20年の求刑に対し懲役6年の判決を言い渡した。
2007年12月25日、その控訴審判決が名古屋高裁で開かれ、裁判長は、「危険で乱暴な運転をしていた被告は信号表示を意に介することなく、交差点に進入。重大な交通の危険を生じさせる速度で赤信号をことさらに無視した」と指摘。そのうえで、「被害者が受けた肉体的、精神的苦痛は甚大で、遺族の悲しみは深い。被告は十分な慰謝の措置を講じず、自己の責任を軽減することに終始した」などと述べ、1審判決を破棄、被告に危険運転致死傷罪を適用し、懲役18年を言い渡した。
その後、2009年6月2日の最高裁第1小法廷での上告審で、裁判長は被告側の上告を棄却し、名古屋高裁判決が確定した。

判決/懲役18年(求刑懲役20年)
【判例⑤】
2005年10月17日午前、横浜市都筑区のサレジオ学院前で制限速度40キロのカーブを曲がり切れず、歩道にいた高校1年の男子生徒らの列に突っ込み、2人が死亡、7人が重軽傷を負った事故で危険運転致死傷罪に問われた被告の男(25)の控訴審判決が2007年7月19日、東京高裁であった。
弁護側は、「1審が認定した100キロ以上の速度は出ておらず、危険運転致死傷罪に該当しない」として業務上過失致死傷罪の適用を主張。検察側は求刑通り懲役20年の判決を求めていた。
1審の横浜地裁判決では、車両の破損状況などから時速100キロ以上と認定。「他者の生命身体に対する配慮を欠いた極めて無謀で悪質な犯行」と批判し、懲役16年の判決。
2審では、1審の横浜地裁判決を支持し、弁護側、検察側双方の控訴を棄却した。

判決/懲役16年(求刑懲役20年)
【判例⑥】
千葉県松尾町(現山武市)で、同窓会帰りの男女が飲酒運転の車にひき逃げされ、4人が死亡、4人が重軽傷を負い、被告の男(33)が危険運転致死傷罪などに問われた事故について、2007年3月5日、最高裁第2小法廷は上告を棄却する決定をした。
事故が起きたのは2005年2月5日。免許停止中の被告の男が日本酒5~6合などを飲み、酩酊状態で乗用車を運転。午後9時15分ごろ、同窓会を終えて飲食店から出た8人(当時59歳)をはねて現場から立ち去り、駐車中の別の乗用車を盗んで逃げた。
1、2審では被告に対し、懲役20年を言い渡していた。

判決/懲役20年(求刑懲役20年)
【判例⑦】
北海道小樽市で、女性3人が死亡、1人が重傷を負った飲酒ひき逃げ事件で、自動車運転処罰法違反の罪などに問われた札幌市の被告の男(32歳)の裁判員裁判が2015年7月9日に開かれ、札幌地裁は求刑通り懲役22年の判決を言い渡した。
事件が起きたのは2014年7月13日夕方。被告の男は酒の影響で前方注視が困難な状態でRVを運転。市道を歩いていた岩見沢市の会社員の女性(当時29歳)ら3人をはねて死亡させ、1人に重傷を負わせて逃走した。
裁判長は、「被告は時速50~60キロで車を走行させながら、15秒~20秒程度、スマートフォンを見るため下を向いていた。“よそ見”というレベルをはるかに超える危険極まりない行動だ」と指摘。飲酒の影響による脇見運転が事故原因と認定し、自動車運転処罰法違反のうち、危険運転致死傷罪を適用した。
その後、被告の男は2015年7月23日、1審札幌地裁の裁判員裁判判決を不服として札幌高裁に控訴したが、同年12月8日、札幌高裁は被告の控訴を棄却する即日判決を言い渡し、求刑通り懲役22年とした1審の札幌地裁の判決を支持した。

判決/懲役22年(求刑懲役22年)
【判例⑧】
2014年10月30日、茨城県かすみがうら市の国道354号で無免許運転をして、6人を死傷させる事故を起こしたなどとして、自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)や強盗などの罪に問われた被告の男(25)の裁判員裁判が、2015年9月17日、水戸地裁で開かれた。
判決によると、被告の男は2014年9月~2015年1月、仲間と鉾田、潮来、鹿嶋市の事務所などで窃盗や強盗を繰り返し、2015年10月30日、乗用車を無免許運転し、前の車を追い抜こうとして対向車と衝突。同乗していた当時14~26歳の男女3人を死亡させ、対向車に乗っていた男性2人を含む計3人にケガを負わせた。
裁判長は、「運転は無謀かつ相当危険で結果は極めて重大。強盗、窃盗は実行役で被害も多額」、「遺族への対応も誠実とは言い難い」として、懲役15年(求刑懲役16年)の判決を言い渡した。

判決/懲役15年(求刑懲役16年)
【判例⑨】
2014年5月14日、長野県中野市の県道で、無免許のうえ危険ドラッグを使用して、時速126キロを超えるスピードで乗用車を運転し、対向車線を逆走して車に次々と衝突し、1人を死亡させ、2人に重軽傷を負わせたとして危険運転致死傷などの罪に問われた当時19歳の元少年(21)の裁判員裁判の判決公判が2015年11月20日、長野地裁で開かれた。
公判で元少年側は、「危険ドラッグを使っても事故を起こすとは思わなかった」などと主張。裁判長は、「同乗者が危険ドラッグを使用して手足が硬直し、事故を起こす危険があるのを目にしているのに運転を継続した責任は重大だ」と述べ、懲役13年(求刑懲役15年)を言い渡した。
死亡した中野市の男性(当時25歳)は、事故の3週間前に妻と入籍し、約4ヵ月後には挙式と披露宴を計画していたことから、裁判長は「突然の事故で人生を奪われた。その無念の情は察するにあまりある」と述べた。

判決/懲役13年(求刑懲役15年)
危険運転致死傷罪は、被害者の遺族からみると、「殺人だ」と感じられますが、加害者側からみると、「過失だ」と感じられる、という認識のずれがあります。

昔は、危険運転致傷罪が存在しなかったので、このような事故は、業務上過失致死傷罪(最高刑5年)と道路交通法違反で処罰されており、被害者感情と著しく乖離した刑事処罰となっていました。

今回は、懲役23年という刑を科されましたが、それでも遺族の被害者感情を癒やすことはできません。

交通事故事犯に対して、どの程度の刑事処罰を科すかは、非常に難しい問題であります。

今後、本件は、民事損害賠償請求にうつっていきます。

任意保険に加入しており、適正な損害賠償がなされることを祈ります。

法律事務は、弁護士でなければできません。


2016年11月3日

資格がないにもかかわらず弁護士業務を行っていた男が逮捕されたという報道があったので解説します。

「〝無資格〟弁護士の会社役員を逮捕 民事訴訟受任し書類作成…大阪地検特捜部」(2016年11月1日 産経新聞)

大阪地検特捜部は、弁護士の資格がないのに法律事務を行ったとして、大阪市鶴見区の会社役員の男(68)を弁護士法違反(非弁活動)の疑いで逮捕しました。

2015年4月から8月頃、容疑者の男は弁護士資格がないにもかかわらず報酬を得る目的で、貸金返還や損害賠償請求といった3件の民事訴訟を受任し、訴状などの書類を作成して大阪地裁などに提出していたようです。

特捜部は、容疑者の男が非弁活動を継続的に繰り返していた可能性もあるとみて調べているということです。
非弁活動(非弁行為)とは、法律で認められている場合をのぞいて、弁護士資格を持たないのに「弁護士法」の第72条に規定される行為(弁護士業務)を、報酬を得る目的で反復継続して行うことです。

「弁護士法」
第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
これに違反した場合、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されます。(弁護士法第77条3号)

過去、非弁活動により弁護士法違反に問われた事件には、通称「スルガ地上げ事件」と呼ばれるものがあります。

「スルガ地上げ事件」
2008年3月、弁護士資格がないにもかかわらず、大阪市の建設・不動産会社の社長らがオフィスビルの立ち退き交渉をしたとして、弁護士法違反で逮捕された。
もともと、このビルは商業ビル経営の「秀和」が所有していたもので、その後、モルガン信託銀行に移り、2005年9月、横浜市にあった建設・不動産会社の「スルガコーポレーション」(東証二部上場)が買収した。
その際、暴力団との関わりを持つ不動産会社に、いわゆる「地上げ」による立ち退き交渉を委託し、多額の報酬を支払っていたという。
スルガコーポレーションは、2007年9月までにビルを解体し、更地にした後に高値で広島市の商業施設開発会社「アーバンコーポレイション」に売却していた。

これは、いわゆる、地上げ、土地転がしに関連して、地上げ屋が多額の報酬を得て立ち退き交渉という法律事務を行ったために弁護士法違反に問われたものでした。

非弁活動による違反行為については、他にも以下のような判例があります。

「行政書士による弁護士法違反」
行政書士が、交通事故被害者から自賠責保険の申請手続、書類作成およびこれに付随する業務に関する依頼を受け、報酬の支払いを求めた控訴審の事例。
裁判所は、行政書士の請求を棄却した原審の判断を維持し、本件契約が法律事務に当たり、弁護士法第72条に違反する非弁行為に該当することから、公序良俗に反して無効であるとして行政書士の請求を棄却した。
(大阪高裁平成26年6月12日判決・判例時報2252号61頁)

遺産分割についての紛争が生じている場合に、他の相続人と折衝することは行政書士の業務の範囲外であると判断された事例。
(東京地裁平成5年4月22日判決・判例タイムズ829号227頁)
「司法書士による弁護士法違反」
本人訴訟による約1300万円の過払金返還請求の訴え提起について、司法書士による代理行為によるものであり、民事訴訟法54条1項、
弁護士法72条に違反する違法なものであるとして、不適法却下された事例。
(富山地裁平成25年9月10日判決・判例時報2206号111頁)
なお、過払金返還請求に関しては司法書士以外にも逮捕されている事件があります。
2013年に宮城県で弁護士資格のない夫婦が、2年間で約1000人から過払金返還請求を請け負い、約12億円を回収して約3億円の報酬を得ていたとして逮捕されています。

よく、お金を貸したのに返してくれない、というときに、弁護士じゃない人が、「代わりに取り立ててあげようか?そのかわり、取り立てたお金の半分ちょうだいね」などと言って取り立てに行くことがありますが、これも貸金請求の交渉という法律事務になるので、弁護士法違反です。

反対に、借金の返済ができないときに、会社や個人の代理人として、報酬を得て返済条件の交渉などをするのも、弁護士法違反です。

思わぬところで弁護士法違反となる可能性があります。

法律上の問題は、必ず弁護士に相談するようにしましょう。

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