ブログ | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 58
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
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みらい総合法律事務所
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  • 自賠責と複数人被害

    2005年04月22日

    22日午前4時15分ごろ、宮城県多賀城市の国道で、横断歩道を渡っていた仙台育英学園高校の生徒の列に乗用車が突っ込み、生徒の3人が死亡し、20人が重軽傷を負ったそうです。
     
    高校生といえば、これから社会に出て活躍しようという人達です。ご両親の無念も大変なことだと思います。
     
    加害者は刑事手続きにより処罰されることになりますが、お亡くなりになったお子さんは戻ってはきません。そこで、法律では、民事損害賠償制度を設けています。
     
    しかし、莫大な損害賠償になるため、通常加害者の資力では支払うことは不可能です。そこで保険制度が存在します。自賠責保険は、必ず加入しなければならない強制保険、自賠責保険でカバーしきれない損害賠償を填補するのが任意保険です。
     
    加害者が任意保険に加入していることを願うばかりですが、仮に加入していないときは自賠責保険で損害を賄わなければなりません。ところで、自賠責保険の支払限度額は、死亡の場合で3,000万円です(治療費等除く)。
     
    では、死亡者が3人の場合には、3分の1になってしまうのでしょうか。
     
    この点は、被害者の保護が考えられており、1人につき、3,000万円の限度が設けられています。
     
    逆に、加害車両が複数台の場合(2台以上の自動車の過失により事故が生じた場合)には、自賠責保険に加入している自動車の台数分だけ支払限度額がありますので、その分被害者に有利に働きます。

  • 弁護士募集

    2005年04月21日

    今、私の事務所で新しい弁護士を募集しています。
    10月に新人1人の採用が決まっていますが、良い方がいれば、もう1人採用する予定です。パートナー(経営側)ではなく、アソシエイト(勤務弁護士)を募集します。
     
    詳しくは、こちらへ→東京弁護士会募集要項
     
    9月に司法研修所を卒業する予定の方でもいいし、現役弁護士でも結構です。
     
    事務所のHP→みらい総合法律事務所
     
    私が運営する交通事故HP→弁護士による交通事故SOS

  • 詐害行為(財産分与取消)

    2005年04月17日

    大阪高裁平成16年10月15日判決(判例時報1886号52頁)
     
    会社が倒産したため、信用保証協会から、会社の連帯保証人である夫に対し、会社の保証債務の求償がされましたが、夫は、その時点で、すでに妻と離婚し、所有不動産を財産分与を原因として、妻に譲渡して(所有権移転登記)しまっていました。
     
    そこで、信用保証協会は、元妻に対し、不動産の財産分与は詐害行為であるとして、取消を求める裁判を起こしました。
     
    ところで、詐害行為とは、このような債務者(本件では夫)の財産処分行為(贈与したり、売却したり)によって債務者(夫)が財産を失い、総債権者が弁済を受けられなくなる場合に、その処分行為を取り消す制度です。
     
    判決では、実質上この不動産は、夫婦の共同財産であり、半分の財産分与は正当であるが、半分を超える部分は不当に過大であって、財産分与に仮託してなされたものであるとして、半分を超える部分の譲渡を取り消しました。
     
    しかし、取り消すとは言っても、不動産を二つに切るわけにはいきませんので、裁判所は、半分を超える部分をお金で評価して、お金で賠償せよと命じました。
     
    一般に、債権者の追及を免れるため、夫婦が離婚し、その財産を妻に移してしまえば大丈夫だ、という情報が流れているようです。しかし、それほど甘くはないということです。
     

  • 社外取締役義務づけ

    2005年04月16日

    金融庁は、取引所に上場するすべての企業に対し、経営陣から独立した社外取締役の起用を義務付けるルールを採用するよう、東京証券取引所など主要な取引所に要請するそうです。
     
    産業界では、「ビジネスの現場を知らない者が取締役になっても、経営判断ができないし、監視機能も担えない。」と反発する動きもあるそうです。
     
    しかし、ビジネスの現場感覚で行われる不適正な行為や違法行為等をチェックするのが社外取締役の役目だとするならば、ビジネスの現場を知らないことはむしろ望ましいこと、という考え方も成り立つでしょう。
     
    その意味で、コンプライアンスの一環として、顧問弁護士とは別の弁護士や、商法学者等を取締役に選任し、ブレーキとしての活用を積極的に考えてもよいのではないか、と考えます。
     
    経営は守りが7割、攻めが3割と言われることがありますが、最近特に守りの重要性が高まってきている気がします。

  • 地面師逮捕

    2005年04月14日

    地面師が詐欺罪で逮捕されたそうです。地面師というのは、土地(地面)を利用して行う詐欺師のことです。完全な所有権がないのに、あるように偽って取引を行い、相手から金を詐取します。
     
    今回は、容疑者は、自分が所有している土地について、債権者の抵当権が設定されていたにもかかわらず、虚偽の抵当権抹消書類を法務局に提出し、抵当権を抹消しました。そして、担保のついていない完全な所有権があるように見せかけ、消費者金融から、土地を担保に5,700万円を借り入れたということです。
     
    正当な抵当権者がいるのですから、すぐバレると思うのですが。
     
    さて、消費者金融は、土地に抵当権が設定されていれば、5,700万円を貸すことはなかったのであり、その意味で詐欺罪が成立することになります。
     
    地面師は、このように、自分の土地を使うこともあれば、他人の土地を使うこともあります。他人の土地を使う場合には、次のような手口があります。
     
    ①土地を所有している他人(「福地さん」とします)、及びその他1人(「身代さん」とします)の住民票を勝手に他の市町村に移動し、そこで新しい印鑑証明書を登録します。そうすると、自分が持っている印鑑で他人の実印登録をすることができます。(なお、この行為自体も犯罪ですのでやってはいけません。)
    ②詐欺師の1人が福地さんになりすまし、新しい実印と印鑑証明書を使い、保証書方式で、身代さんの名義に土地の所有権を移転します。
    ③詐欺師のもう1人が、身代さんになりすまし、新しい権利証(福地さんから身代さんに所有権が移転したので、新しい権利証ができます。)、新しい身代さんの実印、印鑑証明書を使って金を借り、または第三者に土地を売却して金を詐取します。
    ④その後逃走します。後で気付いた関係者がびっくり仰天ですが、詐欺師達の痕跡は残っていません。
     
    土地を所有している他人(福地さん)の他に、もう1人(身代さん)になりすますのは、福地さんになりすますだけでは、土地の権利証がなく(福地さんが持っています)、金融機関ないし買主に取引を拒絶される可能性が高いからです。
     
    不動産取引をしようとする人は、次の兆候がある場合には注意が必要です。
    ①取引直前に所有者の住所が移転し、すぐに売買され、または担保が抹消されている。
    ②不動産を譲り受けた直後に、合理的な理由なくすぐ不動産を売ろうとしている。
    ③取引を急いでいる。
    ④建物付きの場合には、内見できない。
     
    なお、不動産登記法が改正され、権利証制度が変わりましたので、上記の方法はそのまま使えません。でも新しい方法を考えるでしょう。不動産取引の際はお気を付けください。

  • 交通事故と慰謝料(死亡事故)

    2005年04月13日

    慰謝料は、交通事故の被害者が被った様々な損害のうち、精神的損害に対する賠償のことです。交通事故による損害賠償イコール慰謝料ではありません。
     
    死亡事故の場合も同様です。慰謝料の他、逸失利益や葬儀費用その他の賠償があります。
     
    このうち、慰謝料については、だいたいの金額の相場があります。
     
    交通事故により死亡した者の家庭における立場により、次のように分類されています(赤い本2005による)。
     
    一家の支柱 2,800万円
    母親、配偶者 2,400万円
    その他(独身者、子供、幼児等) 2,000万円~2,200万円
     
    この金額に、死ななかったら将来得られたであろう収入の概念である逸失利益が加算されることになります。
     
    子供や幼児が亡くなったときの両親の悲しみは、一般的に他の場合よりも精神的苦痛の程度は大きいような気がします。判例の集積により是正されることを期待します。

  • 交通事故のホームページ

    2005年04月10日

    ゴールデンウイーク中に、交通事故SOSのホームページのデザインを変えてみました。
        ↓
     
    内容は変えていませんが、デザインを変えるだけで随分時間がかかりました。
      

  • ひき逃げ犯逮捕

    2005年04月10日

    4月9日に、群馬県高崎市の交差点で、運転代行会社の乗用車が4WD車に側面衝突され乗務中の2人(40歳と50歳)が死亡した事故で、容疑者(29歳)が逮捕されたそうです。
     
    容疑は、業務上過失致死と道路交通法違反。容疑者は「酒を飲んでいたので免許を取り消されると思い、逃げた」と話しているとのこと。

    事故原因は、同容疑者が赤信号を無視して交差点に入ったとみて、危険運転致死容疑でも調べるということです。

    まだ容疑の段階なので、この容疑者が犯人かどうかわかりませんが、犯人は、信号無視とひき逃げと被害者2人死亡が重なると、実刑は免れないでしょう。 酒を飲んでいた情状が上乗せされると、何年の判決が出ることか。

    事故を起こしたときにはパニックになりますが、後のことを考えると、必ず救急車を呼んで救護し、謝罪し、きちんと誠意をもって対応していかなければなりません。

    ちなみに、悪質な交通事故のため、「慰謝料増額事由」に該当し、民事でも通常よりも高額の賠償となるでしょう。

  • 脱線事故の補償問題(個別賠償方式)

    2005年04月08日

    尼崎市の脱線事故後のJR西日本の対応は裏目裏目に出ているようです。合同慰霊祭の開催場所に関して、遺体安置所となった尼崎市記念公園総合体育館を指定し、遺族らの猛反発があい、結局中止になりそうです。遺族らは、事故後、初めて損傷した遺体と対面した場所です。最も行きたくない場所でしょう。
     
    事故当日および事故後の懇親会や飲み会の話も次々に出てきており、意識レヴェルの点で叩かれているようです。
     
    生存者や遺族に対する心理面でのケアの必要性については、その必要性はこのブログで5月1日にも書きましたが、JR西日本では、5月4日から電話によるカウンセリングを実施しているようです。
    精神的ショックを受けた方は、どんどん利用した方が良いと思います。
    JR西日本は、電話相談ももちろんですが、面談カウンセリングも行う必要があると思います。また、心理面でのケアは、自分ではなかなか難しいもの。告知ももっと行わないと、カウンセリングを利用しようとしないのではないでしょうか。
     
    JR西日本は、これ以上対応でミスをすることは許されないでしょう。補償問題について、原因究明後は、遺族に対し、全死亡者に平等の定額賠償などを提案したら、評価は地に落ちます。全ての人には、異なる事情があります。一家の大黒柱だった人もいれば、親をなくした子供もいるのではないでしょうか。全ての遺族、負傷者、賠償必要者について、個別に賠償額を算定し、適正な金額を提案しなければなりません。
     
    金額算定については、交通事故で集積されている賠償額算定方法を参考に行われることになるでしょう。
     
    かなり大変な作業になりますので、多数の弁護士が必要になるでしょう。

     

  • 任意売却における買主側注意(詐害行為)

    2005年04月05日

    不動産の任意売却において、買主側が注意すべきものについて、詐害行為取消権という問題があります。これは、不動産の所有者兼債務者が、一般債権者に支払ができなくなることを知りながら、一般債権者が換価支払を受けられるべき財産を不当に減少させた場合に、それを取り消すことができるという制度です。
     
    たとえば、無担保不動産を所有している人が、その不動産を誰かに贈与してしまい、財産がなくなった結果、その人の債権者が債権を回収できなくなるような場合に、債権者は、その贈与を取り消すことができます。
     
    これが、任意売却の場面で、どのように作用するか。取り消されるということは、買主からすれば、代金を払ったにもかかわらず、不動産を取り戻され、または認定された価額を更に支払わなければならなくなるということです。
     
    まず、判例では、不動産を売却して金銭にかえることは、消費または隠匿しやすい財産にかえることであり、詐害行為にあたると言います。
     
    ただし、ご安心ください。担保物件を相当な価額で売却し、その売却代金を抵当権者等の優先債権に弁済した場合には詐害行為にあたらないと言います。したがって、相当な価額でなければ、詐害行為として取り消される場合があります。
     
    オーバーローンでなく、剰余価値がある場合もご注意ください。剰余部分については、不動産を金銭にかえたことになり、詐害行為になる可能性があります。
     
    また、担保不動産と同時に無担保不動産を売却した場合、建物内の機械造作等の売買も行った場合は、抵当権の及ばない範囲では、動産を金銭にかえたことになり、詐害行為になるかどうか判断しなければなりません。
     
    一般の任意売却の場合には、大丈夫な場合が多いように思われますが、上記のようなこともあり、任意売却の買主も、念のため弁護士に相談するのがよいでしょう。