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  • 最高裁ルール前の重加算税判例の読み方

    2019年07月14日

    最近、重加算税に関する相談が増えています。

    そこで、今回は、重加算税が適法かどうかを判断する際に、過去の判例をどう読むか、について説明したいと思います。

    大阪地裁昭和55年5月18日判決(TAINS Z113-4595)をご紹介します。

    (事案)

    不動産の貸付を業とする納税者が会社に対する貸付金の利息収入(雑所得)を除外して確定申告をした事案です。

    (判決)

    ●利息収入による雑所得が除外されていること、原告は本件処分前の被告の職員の調査に際し、その職員に東南商事に貸された金300万円について原告は仲介をしただけで利息収入を得てはおらず、そのほかに650万円を東南商事に貸したこともないと供述したこと(原告が税務調査の際、利息収入がないと答弁したことは当事者間に争いがない)、以上のことが認められ、この認定に反する証拠はない。
    ●この事実と前記認定の事実とを併せ考えると、原告は故意に課税標準の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づき申告書を提出したものであるというほかはない。

    (結論)

    重加算税賦課決定を適法と判断しました。

    つまり、次の2つの事情により、隠蔽または仮想を認定しています。

    (ア)雑所得が除外されていること

    (イ)税務調査で虚偽の答弁をしたこと

    しかし、この判決の後に、最高裁の2つの判決が出されており、その最高裁では、次の2つのルールが示されています。

    【ルール1】
    (最高裁平成6年11月22日判決)

    (1)各確定申告の時点において、真実の所得金額を隠ぺいしようという確定的な意図を持っており

    (2)必要に応じ事後的にも隠ぺいのための具体的工作を行うことも予定して、

    (3)会計帳簿類から明らかに算出し得る所得金額の大部分を脱漏し、所得金額を殊更過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出した

    というような事情が認められる場合には、重加算税の賦課要件を満たすことになります。

    【ルール2】
    (最高裁平成7年4月28日判決)

    納税者自身の積極的な行為がない場合でも、納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の右賦課要件が満たされる。

    上記最高裁ルール1によると、上記(ア)(イ)だけでは足りず、さらに、(3)各確定申告の時点において、真実の所得金額を隠ぺいしようという確定的な意図を持っていたか

    (4)必要に応じ事後的にも隠ぺいのための具体的工作を行うことも予定していたかが問われることになりますので、現段階であれば、さらにその点を審理すべきとして差し戻しの対象になる可能性があります。

    あるいは、最高裁ルール2により、納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたというような事情があるかどうか、さらにその点を審理すべきとして差し戻しの対象になる可能性があります。

    ==================

    このように、最高裁ルールが出される前の下級審判決は、そのまま事案に適用することはできず、その後の最高裁ルールを当てはめた上で、具体的な事案における重加算税の適否を判断していくことが必要になってくると考えます。

    そのためには、現在通用する重加算税に関する最高裁ルールがきちんと整理されているかどうかが重要となると思います。

    ご相談は、こちらから。
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  • 「つまみ申告」に関する最高裁平成6年11月22日判決

    2019年07月06日

    今回は、いわゆる「つまみ申告」に関する最高裁平成6年11月22日第三小法廷判決(民集48巻7号1379頁、TAINS Z206-7415)を解説します。

    一 事案の概要

    1Xの亡夫Aは、白色申告に係るサラリーマン金融業を営んでおり、昭和53年分ないし同55年分の所得税に係る確定申告をそれぞれ法定申告期限内に行いました。

    2 亡Aは、その後4回にわたり修正申告をしました。

    3 課税庁は、亡Aが、3年分にわたって真実の所得金額の大部分を脱漏し、過少申告をしたことから、過少申告加算税、重加算税等の賦課決定を受けました。

    4 そこで、Xは、処分取消訴訟を提起しました。

    5 本事案では、亡Aは、本件係争各年における営業につき正しい会計帳簿類を作成記載しており、取引記録及び貸付金・利息の入手金を集計した記録も揃えていました。

    6 いわゆる「つまみ申告」の事案です。

    二 判決

    「亡Aは、会計帳簿類や取引記録等により自らの事業規模を正確に把握していたものと認められるにもかかわらず、確定申告において、3年間にわたり最終申告に係る総所得金額の約3ないし4パーセントにすぎない額(差額で約8億円ないし16億円少ない額)のみを申告したばかりでなく、その後2回ないし3回にわたる修正申告を経た後に初めて飛躍的に多額の最終申告をするに至っているのである。しかも、確定申告後の税務調査に際して、真実よりも少ない店舗数や過少の利息収入金額を記載した本件資料を税務署の担当職員に提出しているが、それによって昭和55年分の総所得金額を計算すると、最終修正申告に係る総所得金額の約17パーセントの額(差額で約14億円少ない額)しか算出されない結果となり、本件資料の内容は虚偽のものであるといわざるを得ない。その後右職員の慫慂に応じて修正申告をしたけれども、その申告においても、右職員から修正を求められた範囲を超えることなく、最終修正申告に係る総所得金額の約7ないし13パーセントにとどまる金額(差額で約7億7600万円ないし15億2000万円少ない額)のみを申告しているにすぎない。」

    「右のとおり、亡Aは、正確な所得金額を把握し得る会計帳簿類を作成していながら、3年間にわたり極めてわずかな所得金額のみを作為的に記載した申告書を提出し続け、しかも、その後の税務調査に際しても過少の店舗数等を記載した内容虚偽の資料を提出するなどの対応をして、真実の所得金額を隠ぺいする態度、行動をできる限り貫こうとしているのであつて、申告当初から、真実の所得金額を隠ぺいする意図を有していたことはもちろん、税務調査があれば、更に隠ぺいのための具体的工作を行うことをも予定していたことも明らかといわざるを得ない。以上のような事情からすると、亡Aは、単に真実の所得金額よりも少ない所得金額を記載した確定申告書であることを認識しながらこれを提出したというにとどまらず、本件各確定申告の時点において、白色申告のため当時帳簿の備付け等につきこれを義務付ける税法上の規定がなく、真実の所得の調査解明に困難が伴う状況を利用し、真実の所得金額を隠ぺいしようという確定的な意図の下に、必要に応じ事後的にも隠ぺいのための具体的工作を行うことも予定しつつ、前記会計帳簿類から明らかに算出し得る所得金額の大部分を脱漏し、所得金額を殊更過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出したことが明らかである。したがつて、本件各確定申告は、単なる過少申告行為にとどまるものではなく、国税通則法68条1項にいう税額等の計算の基礎となるべき所得の存在を一部隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づき納税申告書を提出した場合に当たるというべきである〔最高裁昭和46年(あ)第1901号同48年3月20日第3小法廷判決・刑集27巻2号138頁参照〕。

    そうすると、これと異なり、本件各申告行為が殊更の過少申告に当たらず、国税通則法68条1項に定める要件を満たさないとした原判決には、同条項の解釈適用を誤った違法があるものといわなければならず、右の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり、その余の上告理由について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、原審の確定した前記事実関係の下においては、Xの本訴請求はいずれも失当として棄却すべきであって、これと結論を同じくする第一審判決は正当であるから、Xの控訴は棄却すべきものである。」

    三 解説

    国税通則法68条1項に規定する「‥‥の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ペいし、又は仮装し」たとは、最高裁判決により定義されてはいませんが、和歌山地裁昭和50年6月23日判決(TAINS Z082-3588)が、「不正手段による租税徴収権の侵害行為を意味し、「事実を隠ペい」するとは、事実を隠匿しあるいは脱漏することを、「事実を仮装」するとは、所得.財産あるいは取引上の名義を装う等事実を歪曲することをいい」いずれも行為の意味を認識しながら故意に行うことを要するものと解すべきである。」として以降、概ねこのように解されています。

    国税庁は、「課税処分に当たっての留意点」(平成25年4月 大阪国税局 法人課税課、TAINS H250400課税処分留意点178頁)において、「『隠蔽』とは、課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽し、あるいは故意に脱漏することをいい、また『仮装』とは、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、故意に事実を歪曲することをいう(名古屋地裁昭和55年10月13日判決)」としています。
    典型的には二重帳簿作成や資料の隠匿等の積極的工作をすることですが、本件のように、積極的工作がない「つまみ申告」の場合も、計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ペいし、又は仮装したと言えるかどうか、が問題とされた事案です。

    最高裁判決の判断の元となる事実認定を抽出すると、次のようになります。

    (1)正確な所得金額を把握し得る会計帳簿類を作成していながら、3年間にわたり極めてわずかな所得金額のみを作為的に記載した申告書を提出し続けた

    (2)税務調査に際しても過少の店舗数等を記載した内容虚偽の資料を提出するなどの対応をして、真実の所得金額を隠ぺいする態度、行動をできる限り貫こうとしている

    (3)申告当初から、真実の所得金額を隠ぺいする意図を有していたことはもちろん、税務調査があれば、更に隠ぺいのための具体的工作を行うことをも予定していたことも明らか

    以上の事実認定をもとに、次のような事実認定をしています。

    (ア)本件各確定申告の時点において、白色申告のため当時帳簿の備付け等につきこれを義務付ける税法上の規定がなく、真実の所得の調査解明に困難が伴う状況を利用し、真実の所得金額を隠ぺいしようという確定的な意図を持っていた

    (イ)必要に応じ事後的にも隠ぺいのための具体的工作を行うことも予定していた

    (ウ)会計帳簿類から明らかに算出し得る所得金額の大部分を脱漏し、所得金額を殊更過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出した

    単なる「つまみ申告」だけでは、重加算税の賦課要件は満たさず、上記の要件に該当する事実があるかどうかを吟味する必要がある、ということです。

    そして、重加算税賦課要件に該当することについては、課税庁側に立証責任があることを忘れてはいけません。

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