税理士損害賠償 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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  • 消費税説明義務で税理士勝訴。東京地裁平成20年11月17日判決

    2021年07月22日

    今回は、税理士損害賠償の裁判例のご紹介です。

    東京地裁平成20年11月17判決(TAINS Z999-0135)です。

    (事案)

    原告は、平成16年12月1日に設立された、米の販売・加工等を目的とする株式会社です。

    原告と被告税理士は、は、平成18年1月13日、以下の内容の税務顧問契約を締結しました。

    【業務内容】
    (ア) 税理士法に定める業務及び会計業務
    (イ) 前項の業務遂行のため必要とする関連業務

    【報酬】
    (ア)顧問料月額2万円
    (イ)決算報酬年額合計30万円

    【特約】
    「定期訪問なし。税務上の問題につきましてはお電話にてお問い合わせ下さい。」「問題解決のため、資料作成、調査等が必要となる場合には、別途料金が発生いたします。」

    原告の消費税の課税売上高は、第1期、第2期とも1000万円未満であったため、第1期間を基準期間とする第3期は、自動的に消費税免税事業者となるものでありました。

    原告は、平成17年6月に、資本金を3000万円から24億円に増やし、その後、多額の広告宣伝費を支出しましたが、消費税課税事業者選択届出書は提出していませんでした。

    そこで、原告は、被告には、消費税課税事業者選択届出制度について、原告に助言する義務があるのにこれを怠ったため、原告は消費税課税事業者選択届出書を提出して消費税課税事業者となることができず、消費税の還付を受けることができなかったと主張して、債務不履行に基づく損害賠償請求権に基づき、還付金及び弁護士費用相当額の合計3687万0960円等の支払を求めました。

    (判決)

    本件契約書の「顧問料」「概要・根拠」の欄には、「定期訪問なし。税務上の問題につきましては、お電話にてお問い合わせ下さい。」と記載されているところ、この文言は、本件契約は、被告が原告を定期訪問せず、原告から税務相談があった場合には電話で対応するという内容のものであるから、被告としては、原告から相談がない限り、助言ないしそのための情報収集をすることはないことが定められているものと解する

    被告は、本件において、原告の第1期の決算業務を行っており、原告が課税事業者選択届出書を提出して課税事業者とならない限り、第3期には、自動的に免税事業者となることを知っていたと認められるから、被告としては、原告が本件制度の存在を知らないこと又は失念していることを認識した場合はもちろん、被告がそのことを容易に認識し得るような場合には、被告は原告に対し、本件制度の存在を説明する義務を負うと解するのが相当であり、また、原告が本件制度を実際に知っていたか否かにかかわらず、原告が本件届出書を提出して課税事業者となった方が課税上有利になる可能性があることを本件届出書提出期限までに認識し、又はそのことを容易に認識し得た場合も、被告は原告に対し、本件制度について注意を喚起する義務を負う

    原告には、相当程度の税務知識があったと考えることが自然であることに加え、本件制度は事業者であれば知っておくべき基本的知識といえるものであることも考え合わせると、原告が本件制度を知らないこと又は失念していることを被告が認識していたと認めることはできず、また、被告がそのことを容易に認識し得たということもできない。そうすると、被告は原告に対し、本件制度の存在を説明する義務を負っていたと認めることはできない。

    被告は、本件届出書提出期限までに、原告が第3期以降に多額の広告宣伝費を支出する可能性があることを認識し得たということができるが、原告の広告宣伝費は、平成18年2月までは毎月2000万円程度ずつ発生していたところ、同年3月に急激に増加して4億8808万3541円となったものであり、被告がその明細を受け取ったのは本件届出書提出期限後であったことからすると、被告は、本件届出書提出期限までに、原告が第3期において具体的にどの程度の広告宣伝費を支出することになるかについてまで認識していたと認めることはできない。

    したがって、被告は、本件において、本件届出書を提出して課税事業者となった方が課税上原告に有利になる可能性があることを本件届出書提出期限までに認識し、又はそのことを容易に認識し得たとまでは認められないから、原告に対し、本件制度について注意を喚起すべき義務を負うと解することはできない。

    ===================

    以上です。

    本件では、契約書の記載が取り上げられています。

    消費税の助言義務は、税理士は、積極的に調査や情報収集して依頼者のために助言をする義務があるかどうかが争われることが多いです。

    この場合、契約書があれば、その記載が重視されます。

    今回も、契約書に「定期訪問なし。税務上の問題につきましては、お電話にてお問い合わせ下さい。」と記載されてあったことから、税理士の義務が受動的な義務にとどまるものと認定されています。

    したがって、税理士が契約をする時は、必ず契約書を締結することとし、契約書には、法的な義務として負担するもののみを限定的に記載することをおすすめします。

    「税理士を守る会」では、そのような観点から作成した契約書式集を提供しています。

    「税理士を守る会」は、こちら
    https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/

  • 税賠で因果関係なしとして税理士勝訴した裁判例

    2021年07月16日

    今回は、税理士損害賠償で、納税者が修正申告によって損害を被ったとして訴えた事件について、税理士が勝訴した事例です。

    東京地裁平成2年8月31日判決(TAINS Z999-0004)です。

    (事案)

    依頼者は、駐車場経営をしていたところ、貸し駐車場を買い換えることとし、買換をしました。

    その際、税理士に助言を求め、過去10年以上にわたり砂利敷きロープ張りの状態で約30台を収容する貸駐車場を経営してきたが、本件駐車場についても、これと同様な状態で継続的に事業の用に供していくものであるとの説明をした。

    税理士は、このような状態であれば、租税特別措置法37条1項の「特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例」の趣旨に合致し、脱税を図るものでもないので、本件特例の適用を受けられるものと判断し、依頼者にに対し、両駐車場の写真を撮影して証拠資料を確保しておくように指示し、特例を適用して確定申告書を作成し、申告をした。

    その後、依頼者は、税務署から呼び出され、買換資産を駐車場として利用する場合に本件特例の適用を受けるためには、コンクリート又はアスフアルト舗装がなされ車止めが設けられていることが必要であり、砂利を敷いてロープを張つているだけの本件駐車場については本件特例の適用は認められないから、依頼者ら全員について右特例の適用がないものとして昭和61年分の所得税の修正申告をするように勧められた。

    本件特例に関する国税庁の通達(措通37-21)によれば、買換えにより取得した資産を事業の用に供したかどうかの判定について、「空閑地(運動場、物品置場、駐車場等として利用している土地であつても、特別の施設を設けていないものを含む。)である土地、空家である建物等は、事業の用に供したものに該当しない。」とされていた。

    依頼者は、税務署の指導に従って修正申告をした上で、被った損害について、税理士に損害賠償を請求した。

    (判決)

    本件特例の適用が認められる要件は、租税特別措置法37条に規定するところであつて、同条の「買換資産」に該当するためには、「事業の用に供したもの」であることを要するが、右要件に該当するか否かは、当該資産の従前の利用状況、当該資産の形態等を総合して客観的に判断されるべきことであり、駐車場について、舗装及び車止めの施設の有無が、その要件でないことはいうまでもない。

    本件通達が、「空閑地(運動場、物品置場、駐車場等として利用している土地であつても、特別の施設を設けていないものを含む。)である土地は、事業の用に供したものに該当しない。」としたのは、このような土地については、「事業の用に供した」ことが客観的に明らかでないことが多く、同条の適用を認めることが難しいとの税務行政上の解釈指針を示したものにすぎない。

    そして、税務署がする修正申告の勧めは、あくまで納税者の自発的な申告を促すものであり、それ自体に、何ら強制力を持つものでないから、納税者がこの勧めに応じて修正申告をするか否かは、当該納税者が自らの責任において判断決定すべきことであつて、修正申告により確定した納税義務が、申告者以外の者の行為によつたというためには、その者の行為が、当該修正申告をするために直接的な契機になつた場合などの特別な事情のある場合に限られるというべきである。

    そして、本件において、原告らが、損害を被つたと主張する本件納付金の納付が、原告らの修正申告によるものであること、本件駐車場は、譲渡資産である駐車場と同様に、砂利敷きでロープを張つたものであり、譲渡資産と施設の状態に差異がなかつたこと、原告は譲渡資産を利用して過去10年以上駐車場業を営んでおり、右の土地と買換資産の利用状態がほぼ同一である以上本件特例の適用が認められるとする被告の判断にも相当な根拠が存すること、右修正申告をすることについては、被告はこれに反対であつて、当初の申告を維持して更正処分がされた場合には不服申立てをして争うことを勧めたが、原告らは、被告の意向に反し、修正申告をすることとし、原告Aについては被告に依頼し、その余の原告らについては自ら修正申告書の提出をしたことは、前示のとおりである。

    右の経緯に鑑みると、本件納付金の納付は、原告らが自らの責任においてした修正申告の結果であり、被告の申告指導が、右申告につき、直接的な契機をなすなどの特別な事情が存すると認めるに足りず、結局、被告の行為は、原告らの主張する損害との間に相当因果関係を欠くものというべきである

    ===================

    以上です。

    本件でのポイントは、

    ●税理士は特例に関する通達の要件を満たすよう助言しなかったが、それでも特例は適用されると判断した

    ●税理士の判断には相当の根拠がある

    ●依頼者が特例の適用が受けられなかった不利益は、依頼者の責任においてした修正申告の結果であり、税理士の行為と損害との間に相当因果関係はない

    ということです。

    税理士の助言内容が税法解釈上正しいかどうか、また、通達の適法性について判断することなく結論を導いています。

    税理士が、申告代理をし、後日税務調査が行われた時に、別の税理士が対応して修正申告をする場合があります。

    そして、その結果、損害を被ったとして前任税理士に損害賠償請求をするケースがあります。

    この場合に、当該修正申告が正しいことを前提に議論が進む場合がありますが、その前に、「修正申告の必要があったかどか」を検討することが大切です。

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  • 税理士の名義貸しの判断基準

    2021年07月08日

    今回は、税理士の名義貸しについて、考えてみたいと思います。

    名義貸しは、税理士法37条の2です。

    同条は、

    「税理士は、第五十二条又は第五十三条第一項から第三項までの規定に違反する者に自己の名義を利用させてはならない。」

    と規定しています。

    同法52条は非税理士による税理士業務であり、53条1項から3項は、非税理士による税理士等の名称使用です。

    名義貸しの典型的な事例としては、税理士業務の停止又は税理業務の禁止の懲戒処分中の税理士から頼まれて、当該税理士が作成した税務書類に名前を貸して署名押印をする行為や非税理士が作成した税務書類に税理士が名義を貸して署名押印等をする行為です。

    では、具体的な事例において、名義貸しに該当するかどうかをどう判断したらよいでしょうか。

    それは、

    ・税理士が作成した税務書類なのか

    ・非税理士等が作成した税務書類なのか

    ということです。

    この点、税理士法基本通達2-5は、

    「法第2条第1項第2号に規定する『作成する』とは、同号に規定する書類を自己の判断に基づいて作成することをいい、単なる代書は含まれないものとする。」

    と規定しています。

    つまり、ポイントは、「税理士が自己の判断に基づいて税務書類を作成したかどうか」ということになります。

    この判断基準から、以下の行為は、課税標準等の計算など税務書類を作成するための判断を税理士が行っておらず、非税理士が行っていることから、名義貸しに該当することとなります。

    (1)非税理士が下書きしたものを税理士がパソコンで入力して税務書類を作成して署名押印した場合

    (2)非税理士が作成した税務書類を税理士が転記ミスのチェックのみをして税務書類を作成して署名押印した場合

    (3)税理士業務の停止または禁止の処分を受けている者が作成した税務書類に署名押印した場合

    (参考)「3 税理士が遵守すべき税理士法上の義務等と懲戒処分}国税庁HP、問3-16

    https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/ihan/qa03.htm#a3-12

    以上の判断基準を参考に、日常業務において、名義貸しかどうかを判定していただければと思います。

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  • 【所長税理士向け】職員の不正行為で懲戒処分にならないために

    2021年06月25日

    会計事務所の職員が所長税理士の知らないところで不正をした場合に、所長税理士が懲戒処分を受ける可能性があることをご存じでしょうか。

    税理士法は、税理士が脱税相談をした場合、書面添付における添付書面に虚偽の記載をした場合、税理士法に違反した場合、国税若しくは地方税に関する法令の規定に違反した場合に懲戒処分をすることができる旨規定している(税理士法46条)。

    つまり、税理士法に違反すると、懲戒事由に該当する、ということです。

    そして、税理士法41条の2は、「税理士は、税理士業務を行うため使用人その他の従業者を使用するときは、税理士業務の適正な遂行に欠けるところのないよう当該使用人その他の従業者を監督しなければならない。」と規定していますので、職員に対する監督義務を怠ると、懲戒事由に該当する、ということになります。

    私の弁護士法人は、「税理士を守る会」を運営しているので、税理士が国税局の税理士専門官による調査を受けるという相談も寄せられます。

    そして、税理士には、調査を受ける理由が見当たらない、という場合には、職員の不正行為が疑われている、という場合が多いのです。

    では、何をしておけば、職員に対する監督義務を履行したといえるでしょうか。

    主には、つぎようなことです。

    (一)就業規則、服務規律、業務マニュアル、誓約書等の整備

    (二)相談、連絡、報告の徹底と証拠化

    (三)守秘義務その他の税理士法、関係法令などの職員研修

    このうち、難しいのが(三)の職員研修です。

    税理士が、税理士法(非税理士業務の禁止、脱税相談の禁止、違法行為を是正する助言義務、名義貸し、守秘義務、懲戒事例の確認)、税理士法以外(マイナンバー法、不正競争防止法(営業秘密)、犯罪収益移転防止法)などを研究して、それを職員に講義する、となったら、多大な時間と労力を要するでしょう。

    しかし、国税局からの調査では、職員に対する教育はどうしているのか、と聞かれます。

    したがって、履行しておくことが望まれます。

    そこで、今回、「会計事務所職員の研修プログラム」を作りました。

    6月29日まで【2万円引き!】です。

    どんな内容か、一度ご覧ください。

    https://myhoumu.jp/compliancelp/

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  • 税務調査の非協力と仕入税額控除の否認

    今回は、税務調査の非協力と仕入税額控除の否認について解説します。

    最高裁平成16年12月16日判決(百選第6版89事件)です。

    (事案)

    ●納税者は、大工工事業を営む個人事業者です。

    ●平成2年分確定申告について、税務調査がありましたが、納税者は、税務職員が帳簿書類を提示して調査に協力を求めたにもかかわらず、一部領収書を提示しただけで、その余の帳簿書類の提示を拒否し、調査に協力しませんでした。

    ●そこで、税務署長は、提示されなかった部分の課税仕入れについては、消費税法30条7項の「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に該当するとして、消費税額の控除を否認しました。

    (争点)

    ●税務調査の際に、納税者が仕入税額控除に係る帳簿又は請求書等を提示しなかった場合に、消費税法30条7項の「保存しない」場合に該当するか?

    (判決)

    ●消費税法30条7項(仕入れに係る消費税額の控除)の規定の反面として、事業者が帳簿又は請求書等を保存していない場合には同条1項が適用されないことになるが、このような法的不利益が特に定められたのは、資産の譲渡等が連鎖的に行われる中で、広く、かつ、薄く資産の譲渡等に課税するという消費税により適正な税収を確保するには、帳簿又は請求書等という確実な資料を保存させることが必要不可欠であると判断されたため。

    ●消費税法30条7項(仕入れに係る消費税額の控除)は、当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等が税務職員による検査の対象となり得ることを前提にしているものであり、事業者が、国内において行った課税仕入れに関し、同法30条8項1号所定の事項が記載されている帳簿を保存している場合又は同条9項1号所定の書類で同号所定の事項が記載されている請求書等を保存している場合において、税務職員がそのいずれかを検査することにより課税仕入れの事実を調査することが可能であるときに限り、同条1項を適用することができること
    を明らかにするものである

    ●消費税法30条7項(仕入れに係る消費税額の控除)に規定する帳簿又は請求書等を整理し、これらを所定の期間及び場所において、同法62条(当該職員の質問検査権)に基づく税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合は、同法30条7項にいう「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に当たる

    ===================

    消費税法の文言は、「保存しない場合」となっています。

    そこで、保存はしているが、税務調査で提示しない場合が、「保存しない場合」に該当するかどうかが問題となります。

    この点、裁判所は、保存は、税務調査で検査できることを前提とするものなので、税務調査で検査できないような保存状態である場合には、保存しているとは言えない、という判断をしました。

    したがって、税務調査において請求書等を提示拒否した場合には、仕入税額控除が否認される結果となります。

    同じ論点が青色申告承認取消にもあります。

    税務調査で帳簿書類を提示しない場合には、やはり「保存してない」と認定され、青色申告承認も取り消されることになります(最高裁平成17年3月10日判決)。

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  • 税賠で税理士勝訴したが、なお注意

    2021年05月14日

    今回は、税賠で税理士が勝訴した裁判例をご紹介します。

    委任契約成立の有無が争われた事例です。

    東京地裁平成27年5月19日判決(判例秘書登載)です。

    (事案)

    ●税理士は、A社、B社と顧問契約を締結していた。

    ●原告Xは、両社の代表取締役であり、Xの妻である原告X2は、両社の取締役である。

    ●X及びX2は、共有の居住用不動産を売却し、譲渡損失が生じたが、損益通算ができないものであった。

    ●原告らが被告税理士Yに対し、相談したところ、Yは、居住用不動産買換特例の適用を受けることで損益通算ができる可能性があると回答した。

    ●Xらは、Yの助言に基づき、A社から借り入れることとし、その後B社からの借入に変更したが、それぞれYに対し、特例の適用ができるかどうか、確認した。

    ●Xらが不動産を購入し、買換特例の適用を受けることを前提とした確定申告書を作成し、税理士Yに確認を求めたが、Yからは、特段の問題意識は伝えられなかった。

    ●後日税務調査があり、特定の適用が否認され、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けた。

    ●なお、Xらは、税理士Yに対し、過去に不動産や株式について、何度か税務相談をしたことがあった。

    (争点)

    (1)原告らと被告との間の税務顧問契約の有無
    (2)原告らと被告との間の委任契約の有無及びその内容
    (3)不動産の売却に関する損益通算に関して、原告らに対して、被告が誤った説明をしたか。

    (裁判所の判断)

    (1)原告らと被告との間の税務顧問契約の有無

    過去に被告が無償で原告らの税務相談に応じたことがあるものの、その回数が多いわけではなく、かつ、その多くは被告と税務顧問契約がある会社との関係がある事柄の税務相談であること、原告らは、本件における不動産の売却を踏まえた原告らの確定申告についても、被告に委任することなく行っていることからすると、直ちに、原告らと被告との間で包括的な税務顧問契約が成立していたと認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

    (2)原告らと被告との間の委任契約の有無及びその内容

    相談料の有無・金額の確認等をした形跡はないこと、経理担当者から損益通算の適用の有無を正確に判断するための売買契約書、過去の確定申告書等の資料を送付されていないこと、原告らからは、税理士事務所職員に対し、損益通算をした場合の試算がされたものが送付された過ぎないことからすると、職員において損益通算の可否についての確定的な回答が得られるものではないことは明らかであり、業務としての税務相談の回答を求めたものと認めることができない。

    3)不動産の売却に関する損益通算に関して、原告らに対して、被告が誤った説明をしたか。

    不動産の損益通算に関して、原告らと被告との間には何らの契約関係も認めることができないのであるから、被告に契約上の義務違反を認めることができない。また、税理士事務所職員は、確定的な回答をしているわけでもなく、A社の経理担当者も確定的な回答を求めたと認めることはできないのであるから、その回答の適否如何を問わず、税理士事務所職員に過失は認められないのであって、被告に債務不履行も不法行為も認めることはできない。

    ===================

    以上です。

    本件では、顧問先会社の代表者との顧問契約や税務相談の委任契約を否定しました。

    しかし、役員との無償の顧問契約を認定した裁判例もあります(東京地裁平成12年6月30日判決、TAINS Z999-0066)。

    したがって、あくまで事例判断であり、かつ、本件事実関係と同様の事案においても、顧問契約や委任契約が否定されるとは限らないことをご注意ください。

    なお、委任契約は、無償でも成立します。

    したがって、やはり、税賠対策は、必須です。

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  • 礼金を漏らして税理士損害賠償になった裁判例

    2021年04月23日

    今回は、税理士損害賠償の裁判例の紹介です。

    東京地裁平成21年10月26日判決(判例タイムズ1340号199頁)です。

    (事案)

    ●不動産賃貸業をしている原告が,税理士である被告に対して,平成11年度から平成17年度までの所得税の確定申告にかかる青色申告決算書及び確定申告書の作成を委任した。

    ●原告は、被告税理士に対し、収入については、内訳明細書を、支出については領収書等を交付したが、実際には礼金や更新料等を受領していたにもかかわらず、内訳明細書には、多くの礼金や更新料等の記載がなかった。

    ●領収証の中にも私的な犬小屋の建設費用に関する領収書などがあったが、税理士は、提出された内訳明細書をそのまま転記し、犬小屋の建設費用なども経費計上した。

    ●後日税務調査があり、不動産収入の申告漏れ及び必要経費の計上の誤り等を指摘された。

    ●原告は修正申告をし、過少申告加算税、延滞税、重加算税等を課された。

    ●原告は、被告が税理士としての職務上の注意義務を怠り,原告から提出された資料の内容を精査,確認しないまま漫然と確定申告書等を作成し,原告にこれらを提出させて確定申告させた402万3300円の損害賠償を求めた。

    (裁判所の判断)

    ●被告は,税理士として,独立した公正な立場において,申告納税制度の理念に沿って,納税義務者の信頼に応え,納税義務の適正な実現を図ることを使命とする専門職であり(税理士法1条参照),税理士業務を行うに当たっては,依頼者が,課税標準等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,若しくは仮装している事実等があることを知ったときには,直ちにその是正をするよう助言する(法41条の3)などの義務を負う。したがって,被告は,上記法の趣旨に照らして,本件委任契約に基づき,原告に対し,税務の専門家として,税務に関する法令,実務に関する専門知識に基づいて,原告からの委任の趣旨に沿うよう,適切な助言や指導を行って,確定申告書等の作成事務を行うべき義務を負う。

    ●税務に関する専門知識を有する被告において,本件各確定申告書等の記載と本件各資料の記載を照合して,本件各確定申告書等の根拠となっている本件各資料の内容を精査すれば,礼金等の収入の有無や必要経費の内容や金額などについて,疑問をもち,原告に対し,これらについて説明を求め,追加資料の提出を促すことは容易であったというべきである。

    ●被告の対応は,従業員であるBをして,原告から提出された本件各資料を精査,確認することなく,そのまま転記して不正確な内容の本件各確定申告書等を作成させ,自らも,その内容の正確性を精査,確認せず,漫然と記名又は記名・押印したという他はなく,前記(1)認定の本件委任契約を受任した税務の専門家として,原告からの委任の趣旨に沿うよう,原告に対し,適切な助言や指導を行って確定申告書等を作成すべき義務を怠ったと認められる。

    ===================

    不動賃貸業では、礼金や更新料を受領することが多いにもかかわらず、それらの記載がない時は、その点について確認する必要があります。

    これは、「本来、あるべき収入がない」という不自然な状況に気づく必要がある、ということです。

    また、依頼者が作成した収入の内訳書があったとしても、同時に根拠資料が提出されていたときは、その照合を行わないと、注意義務違反を問われる可能性があることにも注意が必要です。

    なお、税理士は、礼金等の有無を確認し、根拠資料を提出するよう求めた、と主張しましたが、その証拠は提出されませんでした。

    この点について、裁判所は、次のように判断しています。

    「7年間に亘って,一度も上記要請に応じなかったのであれば,税理士としての職責を担う被告としては,もはや,適切な業務が遂行できないとして,本件委任契約を解除するなどの手段を講じるのが自然である」

    つまり、適切な税理士業務ができない状況になった時は、「辞任する」選択肢も検討すべきだ、ということです。

    ===================

    長くなりましたが、もう一点指摘しておきたいと思います。

    今回、税務調査では、被告とは別の税理士が対応しました。

    結果的に、重加算税が課されていますが、この点について争われていません。

    しかし、本件で問題となった内訳書は、原告本人ではなく、不動産仲介業者が作成したものを、そのまま提出したものです。

    また、犬小屋の建設費用はありましたが、特に原告が嘘をついて税理士に提出したわけではなく、他の領収書と一緒に提出しています。

    つまり、外形上、隠蔽又は仮装と解釈できる行為がありません。

    このような場合には、税務調査に対応した税理士としては、重加算税の賦課要件である隠蔽又は仮装がないので、重加算税賦課決定が違法である旨の指摘をし、納税者に適切な助言をする注意義務があると考えられます。

    この点についてもご注意いただきたいと思います。

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  • 退職税理士が顧客奪取で損害賠償

    2021年04月16日

    今回は、会計事務所退職者による顧客奪取で損害賠償が認められた裁判例です。

    千葉地方裁判所松戸支部平成21年7月24日判決(TAINS Z999-0142)、東京高裁平成21年12月3日判決(TAINS Z999-0143)です。

    地裁では、1134万3850円の支払が命じられ、高裁では、1104万9850円の支払が命じられています。

    (事案)

    被告は、平成11年8月に会計事務所に就職し、税理士法人となった後も引き続き、勤務し、平成19年3月に退職した。

    その間、平成15年12月に税理士資格を取得し、平成17年8月から平成19年3月まで税理士法人の社員税理士であった。

    被告は会計事務所に就職する際、次のような誓約書を締結した。

    「私は、雇用期間中及び退職後においても、当事務所の許可なく、当事務所の顧問先あるいは顧問先であった者、及びその関係会社並びに代表者に対して、直接的又は間接的に係わりなく、さらには有償又は無償に係わりなく、税理士業務及び会計業務は一切致しません。たとえ、先方からの依頼であってもお断りすることを誓約致します。これに反した場合は、当事務所が当該顧問先等から得ているあるいは得ていた年間顧問料の5年分の金額又は当事務所が、当該顧問先等から得られたであろう年間報酬見積金額の5倍の金額を損害賠償金として直ちに現金にてお支払い致します。」

    被告は、税理士法人を退職後、税理士法人の顧客を奪取した。

    (裁判所の判断)

    競業禁止契約自体は有効であるが、使用者と労働者との間における労働者の退職後の競業を禁止し、実損害額の賠償を予定する合意がその態様にかかわらず常に有効であるというのも相当ではなく、使用者が競業禁止契約の締結により達成しようとした目的、労働者の退職前の地位、競業が禁止される業務、期間、地域の範囲、使用者による代替措置の有無等の事情を考慮して、その合意が合理性を欠き、労働者の職業選択の自由を著しく制限し、不当に害するものであると判断される場合には、公序良俗に違反するものとして無効になることがあると解するべきである

    原告は、顧客獲得のため、年間約800万円から900万円という多額の投資を行った結果、顧客との契約を取り付けたのに対し、被告乙は、顧客との間の契約締結時に立ち会ったにすぎないことからすると、顧客の開拓は専ち原告の投下資本によるもので、被告乙の貢献があったということはできない。

    そうすると、被告乙が本件各顧客を吸引することができたのは、専ら被告乙の個人的資質及び能力のみによるものであるということはできず、原告に勤務して担当者としての業務を行っていた間の成果を利用する面が濃いものであるから、原告の本件各顧客との人的関係を維持するという本件競業禁止契約の目的は、自由競争を阻害するものではなく、正当である

    本件のように、原告が、被告乙に実務経験を積ませるなどして、被告乙が税理士資格を取得できた後に、本件各顧客を奪取されてしまったのでは、原告の営業活動により得られた利益が不当に侵害されることになる。

    (本件契約では、有効期間は定められていないが、)本件競業禁止契約は、被告乙の在職中及び退職した日の翌日(平成18年9月1日)から2年間の範囲で有効である

    (固有の代償措置はないが)被告乙が税理士資格を取得するためG大学大学院に通学していた約2年半の間、週2回程度の勤務に対して月額20万円の給与の支払をしていたことが認められ、かかる措置は、被告乙に対する厚遇であり、相当の代償措置が講じられていたということができる。

    被告乙は、原告を退職するに当たり、原告代表者に対し、税理士業務を行わない旨を述べたことが認められるほか、退職後に原告の従業員であった丁及び戊が相次いで被告事務所で勤務するようになったことに照らすと、被告乙には一定の背信性がうかがわれる

    (賠償額を5年分の顧問料と定めているが)原告に現実に生じた損害を賠償するという限りにおいて、・・・有効なものというべきである。

    ===================

    退職者による顧客奪取については、誓約書がない場合には、原則として自由競争です。

    競業禁止契約がある場合については、多数の裁判例があり、有効無効が入り乱れています。

    本件では、競業禁止契約を有効としましたが、契約の内容そのものを認めたのではなく、内容を限定して有効としました。

    また、禁止することにより被告の職業選択の自由が制限されることとの引換えの「代償措置」と従業員を引き抜いた「背信性」にも言及しています。

    最終的に裁判で損害賠償が認められるかどうかは、不確実ですが、競業禁止契約(誓約書)は、一定の効力を有する、ということになりますので、顧客奪取を防止したい場合には、就職時に締結しておいた方がいいでしょう。

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  • 物納の説明義務違反で、税理士損害賠償

    2021年04月02日

    今回は、相続税申告業務における物納の助言指導義務違反が認定された税理士損害賠償の裁判例を紹介します。

    名古屋地裁平成28年2月26日判決(TAINS Z999-0170)です。

    (事案)

    ●養親Bが死亡し、納税者が株式その他の財産を相続した。

    ●納税者は、相続税を現金納付できなかったが、税理士が物納について助言指導しなかったために、株式を3回に分けて売却し、相続税を納税した。

    ●売却した株価は、リーマンショックにより、相続開始時よりも下落していた。

    ●そこで納税者は、株式を物納していれば避けられた納税額の損害を被ったとして、税理士法人に対して損害賠償請求をした。

    (判決)

    ●被告は、原告との間で締結した準委任契約上の善管注意義務を負い、委任者の説明内容や関係法令、制度を適切に確認、調査の上、委任者において適正な納税を行い、かつ、最も利益となるように申告手続及び納付手続を行うべき注意義務、そのための助言指導義務を負っていると解すべきである。

    ●しかし、上記注意義務の具体的な内容は、契約のそれぞれの時点において異なるとい
    うべきである。

    ●仮に相続税申告についての契約締結自体は4月の時点であったとしても、上記のとおりの作業の連続性や、相続税申告に関するやりとりがなされていることから、契約締結前の段階における信義則上の注意義務が生じていたというべきであるから、契約締結がないことをもって、被告が責任を免れるものではないといえる。

    ●初回訪問時は、遺言執行者であるC信託銀行も財産目録調製に着手した段階であり、相続財産の内容も判明しておらず、被告において原告固有の財産も把握していないのであるから、物納の可能性については不明であった。

    ●通常この段階で受遺者が株式を処分することは想定されていないというべきであるし、原告が養父の相続において物納の経験があることにも鑑みれば、被告ないしEにおいて、原告がD株を処分することは予見不可能であったというべきであるから、この時点で物納について具体的に説明し、株式の処分を控えるように伝える義務まであったということはできない。

    ●8月11日の時点においては、財産目録の調製が完了して、遺言執行者において遺言の執行段階に入っており、相続税の概算が算出されたのであるから、申告手続について委託を受けた税理士には、納税の方法について委任者に確認し、必要な助言指導を行う義務が発生しているというべきである。

    ●原告が物納についてある程度の知識を有しており、株式の売却を行う前に、税理士に対して物納の可能性について再度確認をすることが困難であったような事情もうかがわれないこと、原告が投資により、より有利な資産を得る目的で資産運用を行っていた事実に照らせば、原告が積極的な投資意欲を有していたものと認められ、第3回売却についても、投資目的での売却という要素が否定できないことに照らせば、原告の過失割合は3割と認定するのが相当である。

    ⇒2408万7000円の損害賠償を命じた。

    ===================

    本件は、相続税の納付に関する物納制度を説明しなかったことが善管注意義務に違反する、とされた事例です。

    他の裁判例でも、延納制度について説明しないことが助言指導義務違反とされたものがあります。

    したがって、相続税額がある程度の金額の時は、延納・物納制度について説明し、その説明を証拠化しておく必要があります。

    「税理士を守る会」の会員の先生は、相続業務受任の際の説明・同意書にしっかり説明が入っていますので、ご利用いただければと思います。

    また、契約締結前の準備段階においても、善管注意義務が認定されていますので、注意が必要です。

    すでに相談を受けているので、相談を受け、これから相続税業務に入っていく税理士としては、その段階で必要となる説明助言はしなければならない、ということです。

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  • 消費税助言義務が争われた裁判例

    2021年03月26日

    今回は、税理士損害賠償の裁判例のご紹介です。

    平成26年3月26日判決(TAINS Z999-0156)です。

    ホテル業を営むグループ会社数社の決算補助業務並びに法人税及び消費税の申告業務を受任していた税理士及び会計法人が、消費税に関し、適切な課税選択の届出書を提出すべき助言を怠った、として、損害賠償請求をされた事案です。

    結論としては、税理士の注意義務違反は否定され、税理士勝訴となっています。

    争点は、税理士に助言義務はあるか、という点であり、契約の解釈です。

    裁判所は、以下のように判断しました。

    ●消費税の課税形態に関する判断は、翌期・翌々期の事業の見込みに従って行われるべきものであり、決算補助業務や法人税・消費税の申告業務を行うことから直ちに導き出されるものではない

    ●いったん課税事業者ないし簡易事業者の選択をすると2年間はそれをやめることができないのであるから、その判断は当該事業者に委ねられている

    ●依頼者である事業者から個別の相談又は問い合わせがない限り、その事業者について、事業の見通しを積極的に調査し、又は予見した上で、当該事業者の消費税の課税形態の選択について助言又は指導を行うべき義務は原則としてない

    ●依頼者から消費税の課税形態に関する個別の相談若しくは問い合わせがある場合又は個別の相談若しくは問い合わせがなくとも依頼者から適切な情報提供がされるなどして、税務に関する行為によって課税上重大な利害得失があり得ることを具体的に認識し、若しくは容易に認識し得るような事情がある場合には、依頼者に対し、当該行為の助言、指導等をするべき付随的な義務が生じる場合もあり得る

    ===================

    結論として税理士勝訴ですが、事例判断であり、全ての場合に税理士に助言義務がない、とされるわけではありませんので、ご注意ください。

    最後の部分ですが、個別の相談がなくても、助言義務が生じる場合があることを示唆しておりますし、また、経営に関するコンサルティングなどが契約内容に入っていれば、助言義務が認められる可能性があります。

    そのようなことにならないためには、契約書に消費税に関する注意事項を明記しておくことが大切になります。

    仮に最終的に勝訴できたとしても、裁判を起こされること自体は精神的・経済的な損害となるためです。

    「税理士を守る会」の先生方は、ダウンロード可能な契約書の消費税の項目を改めてご確認いただければと思います。

    上記裁判例を踏まえ、対処してあります。

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