税理士損害賠償 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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  • 礼金を漏らして税理士損害賠償になった裁判例

    2021年04月23日

    今回は、税理士損害賠償の裁判例の紹介です。

    東京地裁平成21年10月26日判決(判例タイムズ1340号199頁)です。

    (事案)

    ●不動産賃貸業をしている原告が,税理士である被告に対して,平成11年度から平成17年度までの所得税の確定申告にかかる青色申告決算書及び確定申告書の作成を委任した。

    ●原告は、被告税理士に対し、収入については、内訳明細書を、支出については領収書等を交付したが、実際には礼金や更新料等を受領していたにもかかわらず、内訳明細書には、多くの礼金や更新料等の記載がなかった。

    ●領収証の中にも私的な犬小屋の建設費用に関する領収書などがあったが、税理士は、提出された内訳明細書をそのまま転記し、犬小屋の建設費用なども経費計上した。

    ●後日税務調査があり、不動産収入の申告漏れ及び必要経費の計上の誤り等を指摘された。

    ●原告は修正申告をし、過少申告加算税、延滞税、重加算税等を課された。

    ●原告は、被告が税理士としての職務上の注意義務を怠り,原告から提出された資料の内容を精査,確認しないまま漫然と確定申告書等を作成し,原告にこれらを提出させて確定申告させた402万3300円の損害賠償を求めた。

    (裁判所の判断)

    ●被告は,税理士として,独立した公正な立場において,申告納税制度の理念に沿って,納税義務者の信頼に応え,納税義務の適正な実現を図ることを使命とする専門職であり(税理士法1条参照),税理士業務を行うに当たっては,依頼者が,課税標準等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,若しくは仮装している事実等があることを知ったときには,直ちにその是正をするよう助言する(法41条の3)などの義務を負う。したがって,被告は,上記法の趣旨に照らして,本件委任契約に基づき,原告に対し,税務の専門家として,税務に関する法令,実務に関する専門知識に基づいて,原告からの委任の趣旨に沿うよう,適切な助言や指導を行って,確定申告書等の作成事務を行うべき義務を負う。

    ●税務に関する専門知識を有する被告において,本件各確定申告書等の記載と本件各資料の記載を照合して,本件各確定申告書等の根拠となっている本件各資料の内容を精査すれば,礼金等の収入の有無や必要経費の内容や金額などについて,疑問をもち,原告に対し,これらについて説明を求め,追加資料の提出を促すことは容易であったというべきである。

    ●被告の対応は,従業員であるBをして,原告から提出された本件各資料を精査,確認することなく,そのまま転記して不正確な内容の本件各確定申告書等を作成させ,自らも,その内容の正確性を精査,確認せず,漫然と記名又は記名・押印したという他はなく,前記(1)認定の本件委任契約を受任した税務の専門家として,原告からの委任の趣旨に沿うよう,原告に対し,適切な助言や指導を行って確定申告書等を作成すべき義務を怠ったと認められる。

    ===================

    不動賃貸業では、礼金や更新料を受領することが多いにもかかわらず、それらの記載がない時は、その点について確認する必要があります。

    これは、「本来、あるべき収入がない」という不自然な状況に気づく必要がある、ということです。

    また、依頼者が作成した収入の内訳書があったとしても、同時に根拠資料が提出されていたときは、その照合を行わないと、注意義務違反を問われる可能性があることにも注意が必要です。

    なお、税理士は、礼金等の有無を確認し、根拠資料を提出するよう求めた、と主張しましたが、その証拠は提出されませんでした。

    この点について、裁判所は、次のように判断しています。

    「7年間に亘って,一度も上記要請に応じなかったのであれば,税理士としての職責を担う被告としては,もはや,適切な業務が遂行できないとして,本件委任契約を解除するなどの手段を講じるのが自然である」

    つまり、適切な税理士業務ができない状況になった時は、「辞任する」選択肢も検討すべきだ、ということです。

    ===================

    長くなりましたが、もう一点指摘しておきたいと思います。

    今回、税務調査では、被告とは別の税理士が対応しました。

    結果的に、重加算税が課されていますが、この点について争われていません。

    しかし、本件で問題となった内訳書は、原告本人ではなく、不動産仲介業者が作成したものを、そのまま提出したものです。

    また、犬小屋の建設費用はありましたが、特に原告が嘘をついて税理士に提出したわけではなく、他の領収書と一緒に提出しています。

    つまり、外形上、隠蔽又は仮装と解釈できる行為がありません。

    このような場合には、税務調査に対応した税理士としては、重加算税の賦課要件である隠蔽又は仮装がないので、重加算税賦課決定が違法である旨の指摘をし、納税者に適切な助言をする注意義務があると考えられます。

    この点についてもご注意いただきたいと思います。

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  • 退職税理士が顧客奪取で損害賠償

    2021年04月16日

    今回は、会計事務所退職者による顧客奪取で損害賠償が認められた裁判例です。

    千葉地方裁判所松戸支部平成21年7月24日判決(TAINS Z999-0142)、東京高裁平成21年12月3日判決(TAINS Z999-0143)です。

    地裁では、1134万3850円の支払が命じられ、高裁では、1104万9850円の支払が命じられています。

    (事案)

    被告は、平成11年8月に会計事務所に就職し、税理士法人となった後も引き続き、勤務し、平成19年3月に退職した。

    その間、平成15年12月に税理士資格を取得し、平成17年8月から平成19年3月まで税理士法人の社員税理士であった。

    被告は会計事務所に就職する際、次のような誓約書を締結した。

    「私は、雇用期間中及び退職後においても、当事務所の許可なく、当事務所の顧問先あるいは顧問先であった者、及びその関係会社並びに代表者に対して、直接的又は間接的に係わりなく、さらには有償又は無償に係わりなく、税理士業務及び会計業務は一切致しません。たとえ、先方からの依頼であってもお断りすることを誓約致します。これに反した場合は、当事務所が当該顧問先等から得ているあるいは得ていた年間顧問料の5年分の金額又は当事務所が、当該顧問先等から得られたであろう年間報酬見積金額の5倍の金額を損害賠償金として直ちに現金にてお支払い致します。」

    被告は、税理士法人を退職後、税理士法人の顧客を奪取した。

    (裁判所の判断)

    競業禁止契約自体は有効であるが、使用者と労働者との間における労働者の退職後の競業を禁止し、実損害額の賠償を予定する合意がその態様にかかわらず常に有効であるというのも相当ではなく、使用者が競業禁止契約の締結により達成しようとした目的、労働者の退職前の地位、競業が禁止される業務、期間、地域の範囲、使用者による代替措置の有無等の事情を考慮して、その合意が合理性を欠き、労働者の職業選択の自由を著しく制限し、不当に害するものであると判断される場合には、公序良俗に違反するものとして無効になることがあると解するべきである

    原告は、顧客獲得のため、年間約800万円から900万円という多額の投資を行った結果、顧客との契約を取り付けたのに対し、被告乙は、顧客との間の契約締結時に立ち会ったにすぎないことからすると、顧客の開拓は専ち原告の投下資本によるもので、被告乙の貢献があったということはできない。

    そうすると、被告乙が本件各顧客を吸引することができたのは、専ら被告乙の個人的資質及び能力のみによるものであるということはできず、原告に勤務して担当者としての業務を行っていた間の成果を利用する面が濃いものであるから、原告の本件各顧客との人的関係を維持するという本件競業禁止契約の目的は、自由競争を阻害するものではなく、正当である

    本件のように、原告が、被告乙に実務経験を積ませるなどして、被告乙が税理士資格を取得できた後に、本件各顧客を奪取されてしまったのでは、原告の営業活動により得られた利益が不当に侵害されることになる。

    (本件契約では、有効期間は定められていないが、)本件競業禁止契約は、被告乙の在職中及び退職した日の翌日(平成18年9月1日)から2年間の範囲で有効である

    (固有の代償措置はないが)被告乙が税理士資格を取得するためG大学大学院に通学していた約2年半の間、週2回程度の勤務に対して月額20万円の給与の支払をしていたことが認められ、かかる措置は、被告乙に対する厚遇であり、相当の代償措置が講じられていたということができる。

    被告乙は、原告を退職するに当たり、原告代表者に対し、税理士業務を行わない旨を述べたことが認められるほか、退職後に原告の従業員であった丁及び戊が相次いで被告事務所で勤務するようになったことに照らすと、被告乙には一定の背信性がうかがわれる

    (賠償額を5年分の顧問料と定めているが)原告に現実に生じた損害を賠償するという限りにおいて、・・・有効なものというべきである。

    ===================

    退職者による顧客奪取については、誓約書がない場合には、原則として自由競争です。

    競業禁止契約がある場合については、多数の裁判例があり、有効無効が入り乱れています。

    本件では、競業禁止契約を有効としましたが、契約の内容そのものを認めたのではなく、内容を限定して有効としました。

    また、禁止することにより被告の職業選択の自由が制限されることとの引換えの「代償措置」と従業員を引き抜いた「背信性」にも言及しています。

    最終的に裁判で損害賠償が認められるかどうかは、不確実ですが、競業禁止契約(誓約書)は、一定の効力を有する、ということになりますので、顧客奪取を防止したい場合には、就職時に締結しておいた方がいいでしょう。

    「税理士を守る会」の会員の先生は、書式をご利用ください。

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  • 物納の説明義務違反で、税理士損害賠償

    2021年04月02日

    今回は、相続税申告業務における物納の助言指導義務違反が認定された税理士損害賠償の裁判例を紹介します。

    名古屋地裁平成28年2月26日判決(TAINS Z999-0170)です。

    (事案)

    ●養親Bが死亡し、納税者が株式その他の財産を相続した。

    ●納税者は、相続税を現金納付できなかったが、税理士が物納について助言指導しなかったために、株式を3回に分けて売却し、相続税を納税した。

    ●売却した株価は、リーマンショックにより、相続開始時よりも下落していた。

    ●そこで納税者は、株式を物納していれば避けられた納税額の損害を被ったとして、税理士法人に対して損害賠償請求をした。

    (判決)

    ●被告は、原告との間で締結した準委任契約上の善管注意義務を負い、委任者の説明内容や関係法令、制度を適切に確認、調査の上、委任者において適正な納税を行い、かつ、最も利益となるように申告手続及び納付手続を行うべき注意義務、そのための助言指導義務を負っていると解すべきである。

    ●しかし、上記注意義務の具体的な内容は、契約のそれぞれの時点において異なるとい
    うべきである。

    ●仮に相続税申告についての契約締結自体は4月の時点であったとしても、上記のとおりの作業の連続性や、相続税申告に関するやりとりがなされていることから、契約締結前の段階における信義則上の注意義務が生じていたというべきであるから、契約締結がないことをもって、被告が責任を免れるものではないといえる。

    ●初回訪問時は、遺言執行者であるC信託銀行も財産目録調製に着手した段階であり、相続財産の内容も判明しておらず、被告において原告固有の財産も把握していないのであるから、物納の可能性については不明であった。

    ●通常この段階で受遺者が株式を処分することは想定されていないというべきであるし、原告が養父の相続において物納の経験があることにも鑑みれば、被告ないしEにおいて、原告がD株を処分することは予見不可能であったというべきであるから、この時点で物納について具体的に説明し、株式の処分を控えるように伝える義務まであったということはできない。

    ●8月11日の時点においては、財産目録の調製が完了して、遺言執行者において遺言の執行段階に入っており、相続税の概算が算出されたのであるから、申告手続について委託を受けた税理士には、納税の方法について委任者に確認し、必要な助言指導を行う義務が発生しているというべきである。

    ●原告が物納についてある程度の知識を有しており、株式の売却を行う前に、税理士に対して物納の可能性について再度確認をすることが困難であったような事情もうかがわれないこと、原告が投資により、より有利な資産を得る目的で資産運用を行っていた事実に照らせば、原告が積極的な投資意欲を有していたものと認められ、第3回売却についても、投資目的での売却という要素が否定できないことに照らせば、原告の過失割合は3割と認定するのが相当である。

    ⇒2408万7000円の損害賠償を命じた。

    ===================

    本件は、相続税の納付に関する物納制度を説明しなかったことが善管注意義務に違反する、とされた事例です。

    他の裁判例でも、延納制度について説明しないことが助言指導義務違反とされたものがあります。

    したがって、相続税額がある程度の金額の時は、延納・物納制度について説明し、その説明を証拠化しておく必要があります。

    「税理士を守る会」の会員の先生は、相続業務受任の際の説明・同意書にしっかり説明が入っていますので、ご利用いただければと思います。

    また、契約締結前の準備段階においても、善管注意義務が認定されていますので、注意が必要です。

    すでに相談を受けているので、相談を受け、これから相続税業務に入っていく税理士としては、その段階で必要となる説明助言はしなければならない、ということです。

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  • 消費税助言義務が争われた裁判例

    2021年03月26日

    今回は、税理士損害賠償の裁判例のご紹介です。

    平成26年3月26日判決(TAINS Z999-0156)です。

    ホテル業を営むグループ会社数社の決算補助業務並びに法人税及び消費税の申告業務を受任していた税理士及び会計法人が、消費税に関し、適切な課税選択の届出書を提出すべき助言を怠った、として、損害賠償請求をされた事案です。

    結論としては、税理士の注意義務違反は否定され、税理士勝訴となっています。

    争点は、税理士に助言義務はあるか、という点であり、契約の解釈です。

    裁判所は、以下のように判断しました。

    ●消費税の課税形態に関する判断は、翌期・翌々期の事業の見込みに従って行われるべきものであり、決算補助業務や法人税・消費税の申告業務を行うことから直ちに導き出されるものではない

    ●いったん課税事業者ないし簡易事業者の選択をすると2年間はそれをやめることができないのであるから、その判断は当該事業者に委ねられている

    ●依頼者である事業者から個別の相談又は問い合わせがない限り、その事業者について、事業の見通しを積極的に調査し、又は予見した上で、当該事業者の消費税の課税形態の選択について助言又は指導を行うべき義務は原則としてない

    ●依頼者から消費税の課税形態に関する個別の相談若しくは問い合わせがある場合又は個別の相談若しくは問い合わせがなくとも依頼者から適切な情報提供がされるなどして、税務に関する行為によって課税上重大な利害得失があり得ることを具体的に認識し、若しくは容易に認識し得るような事情がある場合には、依頼者に対し、当該行為の助言、指導等をするべき付随的な義務が生じる場合もあり得る

    ===================

    結論として税理士勝訴ですが、事例判断であり、全ての場合に税理士に助言義務がない、とされるわけではありませんので、ご注意ください。

    最後の部分ですが、個別の相談がなくても、助言義務が生じる場合があることを示唆しておりますし、また、経営に関するコンサルティングなどが契約内容に入っていれば、助言義務が認められる可能性があります。

    そのようなことにならないためには、契約書に消費税に関する注意事項を明記しておくことが大切になります。

    仮に最終的に勝訴できたとしても、裁判を起こされること自体は精神的・経済的な損害となるためです。

    「税理士を守る会」の先生方は、ダウンロード可能な契約書の消費税の項目を改めてご確認いただければと思います。

    上記裁判例を踏まえ、対処してあります。

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  • 分掌変更退職給与と税賠リスク

    2021年02月26日

    税理士向け記事です。

    今回は、税賠リスクが高い分掌変更による役員退職金の否認問題を取り扱います。

    分掌変更退職給与が否認された場合における課税は、ご存じのとおり、「トリプルパンチ課税」と呼ばれるものです。

    【法人税】

    定期同額給与以外の給与になり、全額損金不算入

    【所得税】

    退職したことにならないので、給与所得課税

    【源泉所得税】

    給与所得になるので、徴収漏れ

    というものです。

    そして、退職給与としての税務処理は、税理士が判断するわけですから、その認定に善管注意義務違反があれば、税理士に対する損害賠償に発展する可能性がある、ということです。

    では、分掌変更の退職給与の判断では、どのような点に注意すれば良いでしょうか。

    一応通達を掲げておきます。

    暗記している方は、飛ばしてください。

    ===================

    法人税基本通達

    9-2-32 法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。(昭54年直法2-31「四」、平19年課法2-3「二十二」、平23年課法2-17「十八」により改正)

    (1) 常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)になったこと。

    (2) 取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第71条第1項第5号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる要件の全てを満たしている者を除く。)になったこと。

    (3) 分掌変更等の後におけるその役員(その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。

    (注) 本文の「退職給与として支給した給与」には、原則として、法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれない。
    ===================

    上記(1)~(3)は、「例示」ですので、認定にあたっては、あくまでも「実質的に退職したと同様の事情にあると認められる」かどうかを認定しなければならない、ということになります。

    裁判所も、「本件通達は、・・・役員の分掌変更又は改選による再任等に際して、法人の役員が実質的に退職したと同様の事情にあるものと認められ、その分掌変更等の時に退職給与として支給される金員を損金の額に算入することができる場合についてその例示等を定めたものであると解される。」としています(東京地裁平成29年1月12日判決)。

    ここでは、過去の裁判例や裁決例から、「実質的に退職したと同様の事情にあると認められる」かどうかの考慮要素となったポイントを抽出してみます。

    ・事業運営上の重要な意思決定に関与したか

    ・営業面で重要な役割を果たしたか

    ・金融機関との交渉に重要な役割を果たしたか

    ・資金調達に重要な役割を果たしたか

    ・経営会議に参加して意見を表明したか

    ・支出や経費、財務に関し、意見を表明する等重要な役割を果たしたか

    ・稟議書等を決裁しているか

    ・人事に関与しているか

    ・役員報酬や従業員給与等の決定に関与しているか

    ・予算決算に関与しているか

    このような点について、社内の書類を検討し、また、インタビューをして事実認定をすることになります。

    そして、その結果については証拠化して、将来の税務調査によって否認されうること、その際はトリプルパンチ課税があることを説明し、その説明したことも証拠化することになります。

    税理士が退職給与認定は難しそうだと思ったら、その旨説明し、それでも関与先の責任において行う、ということであれば、損害賠償の免責の証書をいただく方が良いでしょう。

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  • 税理士に対する「調査」(懲戒調査含む)

    2021年01月29日

    今回は、税理士に対する「調査」について、簡単に説明します。

    税理士に対する調査には、主に

    ・所轄税務署による国税通則法に基づく税務調査(質問検査)

    ・財務省設置法19条に基づく「実態調査」

    ・懲戒処分を前提とする「調査」

    の3つがあります。

    税務調査については、一定割合の税理士に対して行われるもので、比較的簡略に行われることが多いようです。

    しかし、事前に非違行為が疑われる情報がある場合は、簡略調査の途中、非違行為が疑われる情報を見つけた場合には、本格的に行われる場合もあります。

    次に、財務省設置法19条に基づく「実態調査」は、特に非違行為の情報がない状態で行われる簡易的な調査です。

    雑談などをしながら簡単に調べて終了となります。

    懲戒処分を前提とする「調査」については、

    ・国税局の「税理士専門官」が主体となって行う調査

    ・所轄税務署の税理士事務担当者が主体となって行う調査

    調査の結果、税理士法違反が発見された場合、その違反が軽微な場合もあるので、必ず懲戒処分がされるわけではありません。

    税理士法違反が軽微で、注意指導により改善が見込まれる場合は、

    ・口頭又は文書による指導

    ・業務改善書の提出

    などで終了することもあります。

    しかし、看過できない税理士法違反があった場合には、懲戒処分がされることになります。

    上記のことを頭に入れておき、むやみに不安になったり、心配したり、しないようにしましょう。

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  • 税理士はどの程度説明すべきか

    2021年01月15日

    税理士向けの記事です。

    税理士の損害賠償では、「説明助言義務」が争われることが多いです。

    争われ方は、3つ。

    (1)説明が間違っていた

    (2)その点を説明する義務があるかどうか

    (3)説明すべきなのに、しなかった

    この(3)の中には、「説明はしたが、不十分だった」というものも含まれます。

    例を挙げます。

    相続税業務を受託して、相続税申告をしたと事例で検討します。

    後日の税務調査で、名義預金を指摘され、修正申告をし、過少申告加算税、延滞税、重加算税を課せられたとします。

    相続人は、「税理士から説明がなかった。説明があれば出していた。説明義務違反だ」と損害賠償を請求してきました。

    税理士は、「メールで『名義預金も出してください』と説明しました」と抗弁しました。

    この抗弁は認められるでしょうか。

    おそらく裁判所からは「説明が不十分だった」と認定されるでしょう。

    なぜか、というと、税務の素人は、「名義預金」と言われても、その意味内容、要件を理解できないためです。

    それでは説明したことにはならない、ということになります。

    説明助言義務は、一般人がその意味内容を理解できる程度に説明助言をする必要がある、という点に注意していだきたいと思います。

    では、どの程度に説明すれば、一般人が理解する程度の説明と言えるのか。

    「税理士を守る会」の会員の先生は、書式集の中の「相続税申告業務受任にあたっての説明・同意書」の説明の程度を参考にしていただければと思います。

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  • 2020年12月19日

    「税理士を守る会」で、過去にあった質問です。

    「新規顧問契約を締結する法人があります。

    契約書は締結したいと思いますが、現時点では、作業量が判然としないので、料金を決められません。

    そこで、当面契約書を締結せずに業務を開始したいと思います。

    その間に税賠が心配なのですが、防止法はありませんか?」

    他の先生方も同じような事情があるかもしれませんので、この点について解説します。

    契約書は税理士を税賠請求から守るものでもあるので、ぜひ締結していただきたい、と常々申し上げております。

    しかし、中には、作業量がまだわからないので、実際に始めてみないと、顧問料その他の料金を決められない、という場合もあると思います。

    私は、その場合でも、当初より契約書を締結することを推奨しているものです。

    では、金額不明の場合に、どのように契約書を締結するか、についてですが、次のように行います。

    ・契約書の金額欄の箇所は、「甲乙間で別途合意する金額とする」と記載し、金額以外の部分を確定させて契約書を締結する。

    ・後日、金額が決まった時点で、合意書を締結し、「●年●月●日付『●●契約書』の委任業務欄記載の税理士報酬について、以下のとおり合意する」として、契約書と関連づける。

    ・契約書の中に理由不問の中途解約条項を記載する(報酬の折り合いがつかない際に、すぐに解約できるようにしておく)。

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  • 自己脱税で税理士懲戒処分

    2020年12月12日

    今回は、自己脱税をしたことを理由として懲戒処分を受けた税理士が、処分取消訴訟を提起した事案をご紹介します。

    大阪地裁平成30年8月2日判決(Z999-2170)

    (事案)

    税理士業を営んでいた原告が、自己の所有する神戸市所在のマンションの一室及びその敷地利用権(所有権)の売却をしました。

    原告は、これについて、租税特別措置法に基づく居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用があることを前提に、課税長期譲渡所得金額を0円として平成23年分の所得税の確定申告をしました。

    本件申告について、財務大臣から、原告は本件マンションを主としてその居住の用に供していないにもかかわらず上記所得金額を不正に1511万0114円圧縮したなどとして、平成27年6月9日付けで業務停止3月の懲戒処分を受けたため、被告を相手に、本件処分の取消しを求めて主訴しました。

    (税理士法の規定)

    税理士法37条

    税理士は、税理士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。

    (裁判所の判断)

    原告自身は仕事からの帰りが遅くなったときなどに、定期的に、本件マンションを利用して日常生活を送っていたということができ、一定の居住実態があったものと認められる。
    妻は本件戸建を主たる生活の拠点とし、妻が本件マンションで寝起きすることは少なく、洗濯は本件戸建に洗濯物を持ち帰ってしていた。

    電気・ガス・水道の使用量からも、マンションの利用は一定範囲に限定されていた。

    原告は、税理士及び公認会計士の登録上の住所を本件戸建の所在地とし、年賀状の差出人の住所も運転免許証の住所も、本件戸建の住所としていた。

    戸建て住宅とマンションとの間で住民票の移動を繰り返していたが、マンションに住民票を置いていた時期は、短期間である。

    そうすると、原告は、神戸市の戸建住宅(本件戸建)を自らの主たる住居と認識し、本件戸建を日常的に利用して日常生活を送っていたものと認められる。

    原告は、本件譲渡につき居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受けるためには、本件マンションが主たる住居に該当しなければならないことを知りながら、本件マンションの所在地を住所とする住民票の写しを添付して神戸税務署長に提出し、本件確定申告を行った原告の行為は、信用失墜行為の一類型としての仮装行為による自己脱税と評価すべきである。

    その結果、裁判所は、請求を棄却しました。
    =================

    隠ぺい又は仮装行為により、過少申告等をした場合には、重加算税が課せられます。

    税理士であれば、当然にそのことは念頭に置いていると思います。

    しかし、自己の税務申告にあたり、隠ぺい又は仮装行為を行い、過少申告等を行った場合には、税理士法37条の信用失墜行為に該当し、懲戒処分の対象となります。

    また、業務において、故意又は過失により脱税相談等を行った場合は、税理士法45条で懲戒処分の対象となります。

    十分注意したいところですね。

  • 税理士が外部委託する時の法的注意

    2020年11月17日

    税理士が受託した業務の外部への再委託の守秘義務についてです。

    税理士業務のうち、記帳代行部分を外部の記帳代行会社に再委託している先生も多いかと思います。

    その際、法的に注意すべき点があります。

    ・再委託の許可

    ・守秘義務

    という点です。

    税理士の顧問契約は、多くの場合には、【委任契約】と解釈されることになります。

    委任契約となると、改正民法で、

    ====================
    民法第644条の2の1項

    「受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。」

    ====================

    という規定があるので、そもそも【依頼者の許諾がないと、法律上、再委託できない】、ということになります。

    そして、記帳代行会社は、顧問先から見たら第三者ですので、税理士法に基づく税理士の守秘義務により、正当な理由がなければ秘密を漏らしてはいけません。

    税理士の【業務上の都合】は、正当な理由になりません。

    民法上も、税理士法上も、顧問先に無断で再委託することはできない、ということになります。

    したがって、再委託自体について、顧問先の許諾を得る必要がある、ということになります。

    「税理士を守る会」の会員の先生は、会でご提供している契約書をご利用いただければ、上記の点はクリアできます。

    そうでない先生で、記帳代行会社に再委託する際は、顧問先から許諾を得ることを忘れないようご注意いただきたいと思います。

    その他の問題点としては、記帳代行業者がミスをしたことにより、税務申告に過誤が生じた場合、顧問先と記帳代行業務について契約をしている当事者は税理士となりますので、税理士が損害賠償請求を受ける、という点にも注意が必要です。

    「税理士を守る会」は、こちら
    https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/

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