税理士損害賠償 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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  • 【税理士向け】遺言能力を確認しよう。

    2021年12月10日

    税理士は遺言書の作成について助言を求められる場合が多いと思います。

    しかし、特に自筆証書遺言については、相続開始後、「無効だ」と主張されるケースも増えているように思います。

    それは、「遺言を書いた時、すでに認知症で意思能力がなかった。だから、遺言は無効だ」という主張です。

    裁判で遺言が無効になったりすると、遺言を助言した税理士の責任追及を考える人が出てきかねません。

    そこで、公正証書遺言にし、遺言が無効にならないようにしようとするわけですが、公正証書にしても、遺言が無効になる場合があります。

    東京地裁平成29年6月6日判決(判例時報2370号68頁)の事例です。

    この事例では、アルツハイマー型認知症を発症していた被相続人が公正証書遺言をした事例において、長谷川式認知症スケールや医師の意見書、日常の行動などを検討した上で、遺言の当時、遺言能力がなかったとして、公正証書遺言を無効とした、というものです。

    したがって、「公正証書にしたから安心だ」ということにはならないわけです。

    では、遺言能力に疑問がある依頼者から遺言に関する業務の依頼を受けた場合には、どうすればよいでしょうか。

    注意すべきポイントとしては、

    ・遺言能力の有無を確認する

    ・遺言能力が争われる可能性がある場合は、遺言能力を後日立証できるような証拠を残す

    ということです。

    そこで、まず遺言者と面談し、遺言の意味を理解できるかどうか、確認します。

    その上で、以下のような証拠が残せるかどうか、検討します。

    ・長谷川式スケールの実施
    (認知症の診断に用いられるものです)

    ・医師による意見書

    ・看護記録の開示請求
    (年数経過で廃棄されます)

    ・遺言作成時や遺言作成前後の会話等の録音、録画

    このように証拠化しておかないと、遺言作成した時に遺言能力があったかどうか、遺言者死亡後に立証するのが難しい場合があります。

    ご注意いただければと思います。

    「税理士を守る会」は、こちら
    https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/

  • 消費税の税賠で税理士勝訴・東京地裁平成15年5月21日判決

    2021年11月25日

    今回は、消費税に関する税理士損害賠償で税理士が勝訴した東京地裁平成15年5月21日判決(TAINS Z999-0069)をご紹介します。

    (事案)

    ・原告会社はその所有する賃貸用ビルの建て替えを行った。

    ・顧問契約を締結していた公認会計士は、「課税事業者選択届出書」を提出しなかった。

    ・原告会社は、公認会計士が、当該届出書を提出していれば消費税の還付を受けられたはずだとしての債務不履行に基づき損害賠償を請求した。

    (判決)

    ・本件顧問契約は、公認会計士である被告の専門的な資格に基づく事務処理を目的としたものではあるが、被告の主張するとおり、原告の法人税・事業税の確定申告及びその前提となる決算処理を目的としたものであった。

    ・原告から関係する資料の提供を受けてその選択の適否についてまで相談を受けたという場合であれば格別、各事業年度の決算処理及び確定申告に係る事務処理をもっぱら目的とした本件顧問契約が締結されていたにとどまる本件事案においては、被告が、原告に対し、進んで課税事業者となるよう指示し、必要な資料の提供を求め、選択届出書を原告を代理して自ら提出し、あるいは、原告にその提出を促すまでの義務があったということはできない。

    ・本件で問題となっている消費税の取扱いは、事業者であれば、賃貸用ビルの建替え以前に、そもそも当該事業に伴い、消費税が課税される事業者であるのか、その課税を免れる小規模事業者であるのか、それまでの課税の有無からして、自らの消費税法にいう事業者その建替えに際しても、その後の採算性、事業展開を検討する過程で、税金対策として、当然に考慮に入れていたはずで、かつ、その程度の税務知識であれば、自らが免税事業者であることの認識があれば、専門家の指導・助言を求めるまでもなく、これを持ち合わせているのが一般的であって、被告から敢えて指導・助言を求めなければ分からないというような次元の問題ではない。

    ================

    以上です。

    本件では、課税事業者か免税事業者かの判断は納税者が当然にできる、というニュアンスで判決が書かれていますが、裁判所が常にそのような判断をしてくれるわけではありません。

    「課税事業者と免税事業者とどちらが有利かは、税務の専門的知識を有する税理士から助言を得なければ正確に判断できない」と判断される可能性もあります。

    したがって、消費税法に大きく影響を与える事象を行う場合には、依頼者の方で、税理士に対して情報提供をする義務を負担させるよう契約書に記載しておく方が安全です。

    なお、「税理士を守る会」にセットしている契約書では、当然その点も考慮して作成しています。

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  • 税理士の守秘義務

    2021年11月19日

    今回は、税理士法の守秘義務についてです。

    税理士法38条は、「税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない。」と規定しています。

    そして、税理士法基本通達38-2は、「法第38条に規定する『税理士業務に関して知り得た秘密』とは、税理士業務を行うに当たって、依頼人の陳述又は自己の判断によって知り得た事実で、一般に知られていない事項及び当該事実の関係者が他言を禁じた事項をいうものとする。」とされています。

    税理士が扱う情報は、個人又は法人の収入、支出、税額などの情報ですが、これらは、全て一般に知られていない情報であり、守秘義務の対象となる情報がほとんどであると言えるでしょう。

    税理士が守秘義務に違反した場合には、損害賠償責任が発生し、懲戒処分の対象となり、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる可能性があります(税理士法59条)。

    また、守秘義務は、資格を有する税理士にだけあるものではありません。

    税理士法54条は、「税理士又は税理士法人の使用人その他の従業者は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならない。税理士又は税理士法人の使用人その他の従業者でなくなった後においても、また同様とする。」とされています。

    職員にも守秘義務がある、ということなので、事務所内で徹底する必要があります。

    職員も守秘義務に違反した場合には、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金刑が科せられることとされており(税理士法59条)、税理士と同等の責任を負担します。

    最近は、自宅で仕事をすることも多いと思いますが、家族も顧客との関係では「第三者」です。

    税理士の事案ではありませんが、看護師が配偶者に仕事上の秘密を漏らし、守秘義務違反として損害賠償請求をされ、それが認められた事案があります。

    また、たとえば会社の大株主であっても、役員でなければ理論上は第三者です。

    決算書等を要求されても、事実認定として会社の承諾があったとされない限り、これを交付してはいけない、ということになります。

    ご注意いただきたいと思います。

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  • インボイス制度における税理士損害賠償のリスク

    2021年11月12日

    令和5年10月1日から、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が導入されます。

    そして令和3年10月1日から適格請求書発行事業者の登録申請の受付が開始されました。

    この新しい制度ですが、税理士が損害賠償責任を負担する可能性のある制度でもあります。

    想定されるのは、

    (1)適格請求書発行事業者の登録をした場合の有利不利に関する説明助言義務違反

    (2)適格請求書発行事業者の登録申請手続き、取り下げ手続の失念

    (3)顧問先等が受領する取引先からの適格請求書の取得・保存についての助言義務違反(説明なし、説明不足)

    (4)顧問先等が受領する取引先からの適格請求書の記載内容の正確性(要件具備)及び適法性(発行者が適格請求書発行事業者であるかどうかどうかの確認を含む)の確認義務違反

    などです。

    まだ制度が開始されておらず、トラブル事例が発生していないので、他にもあるかもしません。

    これらにどう対応したらよいのか、という点が悩ましいところだと思います。

    おすすめとしては、

    ・適格請求書発行事業者の登録をするかどうかの判断は依頼者とすること

    ・税理士に適格請求書発行事業者の登録を依頼した場合には、その証拠を残しておくこと

    ・顧問先等が受領する取引先からの適格請求書の確認などは顧問先等に行ってもらうこと

    などです。

    これらについて、契約書に記載するか、あるいは契約書とは別の合意書を締結しておく、という方法です。

    【税理士を守る会】の会員の先生方は、すでに上記に対する備えをした契約書10種類をセットしてありますので、ご利用いただければと思います。

    なお、税理士が適格請求書発行をしないで済むように、顧問契約書で税理士の側の適格請求書の記載要件を具備しておく方が面倒がなくてよいと思います。

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  • 税理士の複数事務所問題

    2021年09月24日

    今回は、税理士法の複数事務所の禁止についてです。

    税理士法40条3項は、「税理士は、税理士事務所を二以上設けてはならない。」と規定しています。

    そして、税理士法基本通達40-1は、「法第40条に規定する『事務所』とは、継続的に税理士業務を執行する場所をいいます。

    そして、継続的に税理士業務を執行する場所であるかどうかは、外部に対する表示の有無、設備の状況、使用人の有無等の客観的事実によって判定するものとする。」と規定しています。

    判定のポイントは、

    (1)外部に対する表示の有無、

    (2)設備の状況、

    (3)使用人の有無等

    「客観的事実」によることとなり、おなじみ、「社会通念」に従って判断されることになると考えられます。

    この規定の趣旨は、

    (一)税理士の業務活動の本拠としてこれを1箇所に限定することが法律関係を明確にする上で便宜であること、

    (二)個人の監督能力を超えて業務の範囲を拡大することを事務所の面から規制し、これにより税理士以外の者が税理士業務を営むことを防止すること、

    とされています(「新税理士法五訂版」日本税理士会連合会編、170頁)。

    税理士が複数の場所で業務を行い、又はテレワークの推進により税理士又は職員が自宅で業務を行うことが想定されます。

    その際は、上記の基準に照らして、複数事務所との疑念を抱かれないようにしていただければと思います。

    心配な方は、「税理士を守る会」の掲示板や無料面談相談で、ご相談いただければと思います。

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  • 税理士の不正行為是正義務

    2021年09月10日

    今回は、税理士法の不正行為是正義務です。

    税理士法41条の3は、税理士が、税理士業務を行うに当たって、委嘱者が次に掲げることを行っている事実を知ったときは、直ちに、その是正をするよう助言しなければならない、と規定しています。

    ①委嘱者が不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れている事実

    ②不正に国税若しくは地方税の還付を受けている事実

    ③国税若しくは地方税の課税標準等の計算の基礎となるべき事実の全部若しくは一部を隠ぺいし、若しくは仮装している事実

    税理士は、納税義務の適正な実現を図ることを使命とするため(税理士法1条)、税理士業務を行うにあたり、委嘱者が架空取引の記帳や二重帳簿の作成など脱税行為を行っている事実を知ったときは、ただちにその是正を助言する義務を負います。

    税理士が、顧問先等の脱税行為を知ったとき、その脱税工作を前提として、自ら税務書類の作成を拒絶することは当然です。

    そして、助言するのは義務ですから、不正行為を発見したときに、「自ら関わらなければよい」、というわけではなく、黙認せずに不正行為を是正するよう助言することが求められています。

    この助言義務は税理士法上の義務ですから、同条違反は懲戒事由になるものです。

    また、顧客が悪いのは当然ですが、助言しないことによって是正されない場合には、後日、過少申告加算税、延滞税、重加算税を課せられた場合に損害賠償請求をされる可能性があります。

    顧客の方が悪いので「過失相殺」はされるでしょうが、それでも税理士に損害賠償責任が発生する可能性がある、ということです。

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  • 税理士の責任限定条項を無効にした裁判例

    2021年08月27日

    これまで税理士の委任契約書の

    責任限定条項(賠償額の上限を定める条項)を

    無効とした裁判例はありませんでした。

    しかし、今般、初めて同条項を無効とする判決が出ました。

    横浜地裁令和2年6月11日判決です。

    このメルマガを書いている時点では、まだ

    TAINSには掲載されていません。

    事例としては、相続税申告業務で小規模宅地等の

    特例を適用しなかった、として税理士法人が

    損害賠償請求をされた事例です。

    委任契約書には、賠償額の上限を報酬額と

    する規定がありました。

    ところが、裁判所は、その条項を

    【消費者契約法10条】

    を根拠として、無効とし、税理士法人敗訴判決を

    出しました。

    消費者契約法10条は、消費者の利益を一方的に害する

    条項を無効とする規定です。

    控訴されているので、その結果も待たれます。

    今後も同種裁判が争われることが予想されます。

    では、今後、責任限定条項は無意味となるのか。

    税理士としては、どう対応すればいいのか。

    【税理士を守る会】の正会員の先生は、先日、

    メールでお知らせしたとおり、

    特別解説動画を配信しておりますので、ぜひ、

    ご覧ください。

    裁判例の分析と今後の対応策を動画で解説しています。

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  • 税賠保険の事前税務相談特約

    2021年08月06日

    今回は、税理士職業賠償責任保険(税賠保険)についてです。

    税賠保険は、主契約と特約に分けられています。

    特約には、

    ・事前税務相談業務担保特約

    ・情報漏えい担保特約

    があります。

    税賠保険でよく問題になるのが、この「事前税務相談業務担保特約」です。

    この違いは何か、というと、

    「課税要件事実の発生の前か後か」

    です。

    主契約の「税務相談」は、課税要件事実の発生「後」のみが対象です。

    たとえば、「取得した資産について、特別償却と税額控除のどちらが課税上有利か」というような相談です。

    しかし、主契約では、課税要件事実発生「前」の税務相談は対象外です。

    たとえば、「相続税対策のため子供に土地を贈与したいが、いくら贈与税がかかるか」というような相談です。

    このような税務相談に対応するのが、「事前税務相談業務担保特約」であり、「顧客の求めに応じて、将来的な課税要件事実の発生を前提とする個別の税額計算等に関する事項の相談を行う業務」を対象とします。

    税理士には、このような、課税要件事実の発生前の相談も多数寄せらると思います。

    セミナーでは毎回お話していますが、税賠保険に加入するのであれば、必ずこの「事前税務相談業務担保特約」もセットでつけておくことをおすすめしたいと思います。

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  • 消費税説明義務で税理士勝訴。東京地裁平成20年11月17日判決

    2021年07月22日

    今回は、税理士損害賠償の裁判例のご紹介です。

    東京地裁平成20年11月17判決(TAINS Z999-0135)です。

    (事案)

    原告は、平成16年12月1日に設立された、米の販売・加工等を目的とする株式会社です。

    原告と被告税理士は、は、平成18年1月13日、以下の内容の税務顧問契約を締結しました。

    【業務内容】
    (ア) 税理士法に定める業務及び会計業務
    (イ) 前項の業務遂行のため必要とする関連業務

    【報酬】
    (ア)顧問料月額2万円
    (イ)決算報酬年額合計30万円

    【特約】
    「定期訪問なし。税務上の問題につきましてはお電話にてお問い合わせ下さい。」「問題解決のため、資料作成、調査等が必要となる場合には、別途料金が発生いたします。」

    原告の消費税の課税売上高は、第1期、第2期とも1000万円未満であったため、第1期間を基準期間とする第3期は、自動的に消費税免税事業者となるものでありました。

    原告は、平成17年6月に、資本金を3000万円から24億円に増やし、その後、多額の広告宣伝費を支出しましたが、消費税課税事業者選択届出書は提出していませんでした。

    そこで、原告は、被告には、消費税課税事業者選択届出制度について、原告に助言する義務があるのにこれを怠ったため、原告は消費税課税事業者選択届出書を提出して消費税課税事業者となることができず、消費税の還付を受けることができなかったと主張して、債務不履行に基づく損害賠償請求権に基づき、還付金及び弁護士費用相当額の合計3687万0960円等の支払を求めました。

    (判決)

    本件契約書の「顧問料」「概要・根拠」の欄には、「定期訪問なし。税務上の問題につきましては、お電話にてお問い合わせ下さい。」と記載されているところ、この文言は、本件契約は、被告が原告を定期訪問せず、原告から税務相談があった場合には電話で対応するという内容のものであるから、被告としては、原告から相談がない限り、助言ないしそのための情報収集をすることはないことが定められているものと解する

    被告は、本件において、原告の第1期の決算業務を行っており、原告が課税事業者選択届出書を提出して課税事業者とならない限り、第3期には、自動的に免税事業者となることを知っていたと認められるから、被告としては、原告が本件制度の存在を知らないこと又は失念していることを認識した場合はもちろん、被告がそのことを容易に認識し得るような場合には、被告は原告に対し、本件制度の存在を説明する義務を負うと解するのが相当であり、また、原告が本件制度を実際に知っていたか否かにかかわらず、原告が本件届出書を提出して課税事業者となった方が課税上有利になる可能性があることを本件届出書提出期限までに認識し、又はそのことを容易に認識し得た場合も、被告は原告に対し、本件制度について注意を喚起する義務を負う

    原告には、相当程度の税務知識があったと考えることが自然であることに加え、本件制度は事業者であれば知っておくべき基本的知識といえるものであることも考え合わせると、原告が本件制度を知らないこと又は失念していることを被告が認識していたと認めることはできず、また、被告がそのことを容易に認識し得たということもできない。そうすると、被告は原告に対し、本件制度の存在を説明する義務を負っていたと認めることはできない。

    被告は、本件届出書提出期限までに、原告が第3期以降に多額の広告宣伝費を支出する可能性があることを認識し得たということができるが、原告の広告宣伝費は、平成18年2月までは毎月2000万円程度ずつ発生していたところ、同年3月に急激に増加して4億8808万3541円となったものであり、被告がその明細を受け取ったのは本件届出書提出期限後であったことからすると、被告は、本件届出書提出期限までに、原告が第3期において具体的にどの程度の広告宣伝費を支出することになるかについてまで認識していたと認めることはできない。

    したがって、被告は、本件において、本件届出書を提出して課税事業者となった方が課税上原告に有利になる可能性があることを本件届出書提出期限までに認識し、又はそのことを容易に認識し得たとまでは認められないから、原告に対し、本件制度について注意を喚起すべき義務を負うと解することはできない。

    ===================

    以上です。

    本件では、契約書の記載が取り上げられています。

    消費税の助言義務は、税理士は、積極的に調査や情報収集して依頼者のために助言をする義務があるかどうかが争われることが多いです。

    この場合、契約書があれば、その記載が重視されます。

    今回も、契約書に「定期訪問なし。税務上の問題につきましては、お電話にてお問い合わせ下さい。」と記載されてあったことから、税理士の義務が受動的な義務にとどまるものと認定されています。

    したがって、税理士が契約をする時は、必ず契約書を締結することとし、契約書には、法的な義務として負担するもののみを限定的に記載することをおすすめします。

    「税理士を守る会」では、そのような観点から作成した契約書式集を提供しています。

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  • 税賠で因果関係なしとして税理士勝訴した裁判例

    2021年07月16日

    今回は、税理士損害賠償で、納税者が修正申告によって損害を被ったとして訴えた事件について、税理士が勝訴した事例です。

    東京地裁平成2年8月31日判決(TAINS Z999-0004)です。

    (事案)

    依頼者は、駐車場経営をしていたところ、貸し駐車場を買い換えることとし、買換をしました。

    その際、税理士に助言を求め、過去10年以上にわたり砂利敷きロープ張りの状態で約30台を収容する貸駐車場を経営してきたが、本件駐車場についても、これと同様な状態で継続的に事業の用に供していくものであるとの説明をした。

    税理士は、このような状態であれば、租税特別措置法37条1項の「特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例」の趣旨に合致し、脱税を図るものでもないので、本件特例の適用を受けられるものと判断し、依頼者にに対し、両駐車場の写真を撮影して証拠資料を確保しておくように指示し、特例を適用して確定申告書を作成し、申告をした。

    その後、依頼者は、税務署から呼び出され、買換資産を駐車場として利用する場合に本件特例の適用を受けるためには、コンクリート又はアスフアルト舗装がなされ車止めが設けられていることが必要であり、砂利を敷いてロープを張つているだけの本件駐車場については本件特例の適用は認められないから、依頼者ら全員について右特例の適用がないものとして昭和61年分の所得税の修正申告をするように勧められた。

    本件特例に関する国税庁の通達(措通37-21)によれば、買換えにより取得した資産を事業の用に供したかどうかの判定について、「空閑地(運動場、物品置場、駐車場等として利用している土地であつても、特別の施設を設けていないものを含む。)である土地、空家である建物等は、事業の用に供したものに該当しない。」とされていた。

    依頼者は、税務署の指導に従って修正申告をした上で、被った損害について、税理士に損害賠償を請求した。

    (判決)

    本件特例の適用が認められる要件は、租税特別措置法37条に規定するところであつて、同条の「買換資産」に該当するためには、「事業の用に供したもの」であることを要するが、右要件に該当するか否かは、当該資産の従前の利用状況、当該資産の形態等を総合して客観的に判断されるべきことであり、駐車場について、舗装及び車止めの施設の有無が、その要件でないことはいうまでもない。

    本件通達が、「空閑地(運動場、物品置場、駐車場等として利用している土地であつても、特別の施設を設けていないものを含む。)である土地は、事業の用に供したものに該当しない。」としたのは、このような土地については、「事業の用に供した」ことが客観的に明らかでないことが多く、同条の適用を認めることが難しいとの税務行政上の解釈指針を示したものにすぎない。

    そして、税務署がする修正申告の勧めは、あくまで納税者の自発的な申告を促すものであり、それ自体に、何ら強制力を持つものでないから、納税者がこの勧めに応じて修正申告をするか否かは、当該納税者が自らの責任において判断決定すべきことであつて、修正申告により確定した納税義務が、申告者以外の者の行為によつたというためには、その者の行為が、当該修正申告をするために直接的な契機になつた場合などの特別な事情のある場合に限られるというべきである。

    そして、本件において、原告らが、損害を被つたと主張する本件納付金の納付が、原告らの修正申告によるものであること、本件駐車場は、譲渡資産である駐車場と同様に、砂利敷きでロープを張つたものであり、譲渡資産と施設の状態に差異がなかつたこと、原告は譲渡資産を利用して過去10年以上駐車場業を営んでおり、右の土地と買換資産の利用状態がほぼ同一である以上本件特例の適用が認められるとする被告の判断にも相当な根拠が存すること、右修正申告をすることについては、被告はこれに反対であつて、当初の申告を維持して更正処分がされた場合には不服申立てをして争うことを勧めたが、原告らは、被告の意向に反し、修正申告をすることとし、原告Aについては被告に依頼し、その余の原告らについては自ら修正申告書の提出をしたことは、前示のとおりである。

    右の経緯に鑑みると、本件納付金の納付は、原告らが自らの責任においてした修正申告の結果であり、被告の申告指導が、右申告につき、直接的な契機をなすなどの特別な事情が存すると認めるに足りず、結局、被告の行為は、原告らの主張する損害との間に相当因果関係を欠くものというべきである

    ===================

    以上です。

    本件でのポイントは、

    ●税理士は特例に関する通達の要件を満たすよう助言しなかったが、それでも特例は適用されると判断した

    ●税理士の判断には相当の根拠がある

    ●依頼者が特例の適用が受けられなかった不利益は、依頼者の責任においてした修正申告の結果であり、税理士の行為と損害との間に相当因果関係はない

    ということです。

    税理士の助言内容が税法解釈上正しいかどうか、また、通達の適法性について判断することなく結論を導いています。

    税理士が、申告代理をし、後日税務調査が行われた時に、別の税理士が対応して修正申告をする場合があります。

    そして、その結果、損害を被ったとして前任税理士に損害賠償請求をするケースがあります。

    この場合に、当該修正申告が正しいことを前提に議論が進む場合がありますが、その前に、「修正申告の必要があったかどか」を検討することが大切です。

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