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  • 税理士が記帳代行会社(会計法人)を設立する場合の注意点

    2020年06月30日

    記帳代行業務は、税理士独占ではないので(税理士法2条2項)、非税理士である会計法人が行うことも法律上許容されます。

    税理士が記帳代行業務を行う会計法人を設立する場合、契約形態としては、次の2種類が考えられます。

    (1)税務業務と記帳代行業務を一括して税理士事務所で受託し、会計法人に外注に出す契約

    (2)税務業務は税理士事務所で受託、記帳代行業務は会計法人で受託する、というように契約を別にする場合

    (1)の一括受託の場合

    この場合、顧客との契約主体は税理士のみとなります。

    会計法人に外注に出す場合には、次の点が問題となります。

    ・守秘義務

    ・複数事務所(会計法人が別の場所にある場合)

    ・従業員の管理監督

    ・会計法人(非税理士)による税務業務

    そこで、日本税理士連合会業務対策部から、「税理士事務所等の内部規律及び内部管理体制に関する指針」が出されています。

    ===================

    【参考】税理士が主宰する会計法人に対する外部委託において留意すべき事項

    委託主である税理士が主宰する会計法人に対し、外部委託を行う場合は以下の点に留意すべきである。

    ・ 会計法人の業務及び従業員等の監督の観点から、主宰会計法人の代表者には主宰税理士自身が過半数を超える出資の割合をもって就任し、責任を負うべきである。

    ・ 効果的な監督の観点から、主宰会計法人の所在地は、税理士事務所等と同一場所とすべきである。同様の趣旨から、その法人の支店及び営業所は設置すべきではない。

    ・ 会計業務は主宰税理士が税理士業務とともに一括して契約したうえで、これを主宰会計法人へ委託する方式の採用を徹底すべきである。

    ・ 主宰税理士と主宰会計法人との委託契約上において、会計法人は税務一般の業務を絶対にしてはならないことを明らかにしたうえで、会計法人の業務は会計業務に限ることとし、税理士業務については、主宰税理士と顧問先との契約を明確にする。

    ====================
    このほかに、顧客から、再委託の承諾をもらい、守秘義務を解除していただく必要もあります。

    上記指針は、「本指針は、社会公共性の高い税理士業務の性格に鑑み、税理士の使命を全うするために必要な事項として、税理士事務所等の内部規律及び内部管理体制を適切に整備するための参考になることを目的に策定したものである。」とされ、あくまでも参考にとどまるものです。

    上記指針に違反することが直ちに懲戒事由になるとは考えておりませんが、その結果として、

    ・守秘義務

    ・複数事務所

    ・従業員の管理監督

    ・会計法人(非税理士)による税務業務

    に違反すると評価された場合には、懲戒事由に該当すると考えます。

    しかし、私は上記指針と異なり、会計法人と顧客との別途契約方式も有効との考え方を採用しています。

    税理士以外の者を代表者にすることも許されると考えます。

    この点は、当該税理士が関与しない全くの第三者である記帳代行会社が記帳代行を受託している場合を考えていただければよろしいかと思います。

    この契約形態の場合には、一括受託とは反対に、如何に税理士事務所と会計法人を区別するか、という点が重要になってくると思います。

    気をつけるべき点が全く異なる、ということです。

    次の点に注意する必要があります。

    ・同一事務所内に会計法人を設置する場合は、守秘義務の観点から物理的区分性が必要になってくる

    ・守秘義務、非税理士による税務業務の禁止、従業員の監督の観点から、税理士事務所従業員が会計法人の従業員を兼務しない

    ・税務業務と会計業務を明確に区別する

    ・税理士事務所と会計法人で直接情報のやりとりをするには、顧客から守秘義務を解除していただく必要がある

    ===================

    このように、契約形態により、注意すべき点が全く異なってきますので、一度整理しておくことをおすすめしたいと思います。

  • 決算期変更で税理士懲戒処分

    2020年03月27日

    気になる税理士の懲戒処分がありました。

    法人の顧問先が利益がたくさん出てしまった際に、

    「うち5月決算なんだけど、3月と4月で利益ですぎちゃったんですけど、利益を減らせませんか?」

    などと相談されることがあると思います。

    この時、安易に、

    「じゃあ、決算期を変更しましょう。一応臨時株主総会議事録を作成しておいた方がいいので、私の方で作成しておきますよ」

    などと回答し、そのまま処理すると、懲戒処分を受けることがあります。

    以下の懲戒処分事例が国税庁により、公表されています。

    ====================
    (1)被処分者は、関与先であるA社の法人税の確定申告にあたり、開催されていない臨時株主総会において、決算期が5月から3月に変更されたと偽装することによって、4月および5月に生じた収益を除外し、所得金額を圧縮した事実に反する申告書を作成した。

    (2)被処分者は、A社の消費税および地方消費税の確定申告にあたり、開催されていない臨時株主総会において、決算期が5月から3月に変更されたと偽装することによって、4月および5月に生じた課税売上高を除外し、消費税および地方消費税額を圧縮した事実に反する申告書を作成した。

    ====================
    つまり、株主総会を開催していないにもかかわらず、開催したかのように偽装して、決算期を変更した、ということです。

    条文としては、税理士法36条と45条1項が関連します。

    ===================

    税理士法45条1項

    財務大臣は、税理士が、故意に、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、又は第三十六条の規定に違反する行為をしたときは、二年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができる。

    ===================

    税理士法36条

    税理士は、不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ、又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき、指示をし、相談に応じ、その他これらに類似する行為をしてはならない。

    ===================

    決算期を変更する助言をすることはあると思いますが、その際には、臨時株主総会を省略せず、実際に開催しないと、否認され、重加算税の対象になる可能性があるとともに、懲戒処分、税理士損害賠償に発展する可能性すらある、ということになります。

    税理士の先生方は、ご注意いただければと思います。

  • 給与を外注費処理で税理士懲戒処分

    2020年01月21日

    今回は、税理士向けの記事です。

    国税庁のホームページにおける税理士の懲戒処分の事例が更新されました。

    その中に、気になる事例がありました。

    被処分者は、関与先であるA社及びB社の消費税及び地方消費税の確定申告に当たり、従業員に対する給与について、その一部を外注費に計上することによって、消費税及び地方消費税額を圧縮した真正の事実に反する申告書を作成した。

    処分としては、「税理士業務の禁止」です。

    税理士業務の禁止は、税理士登録抹消処分され、処分日から3年を経過する日まで税理士資格なし、ということで、かなり厳しい処分です。

    法令違反の根拠としては、税理士法45条1項です。

    財務大臣は、税理士が、故意に、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、又は第三十六条の規定に違反する行為をしたときは、二年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができる。

    「故意」の不真正税務書類の作成を認定した、ということです。

    従業員に対する給与を外注費にしたがる経営者がいますが、多くの場合には税理士の指導により実態が業務委託になるよう整えてくれると思います。

    しかし、中には形式だけ整えて税理士の指導に従わない経営者もいると思います。

    その場合、税理士としては、外注として処理できない旨経営者に助言指導することになりますが、経営者が従わない場合に、将来の否認の可能性を指摘した上でやむなく外注費として処理する先生もいらっしゃるかと思います。

    ところがこの場合には、

    「税理士が、従業員に対する給与について、その一部を外注費に計上することによって、消費税及び地方消費税額を圧縮した真正の事実に反する申告書を作成した。」

    ということになってしまい、先ほどの懲戒処分の事例と同じ行為になってしまいます。

    経営者に助言指導したとしても、税理士が知っている以上、「故意」が認定される、ということです。

    この点、十分注意したいところです。

  • 税理士法人社員の無限連帯責任

    2019年11月23日

    税理士法人を設立するには、税理士2人以上が必要です。

    そして、税理士法人の社員には、いわゆる「無限連帯責任」があると言われています。

    税理士法人がその債務を完済できない場合には、社員税理士が無限に責任を負う、ということです。

    たとえば、税理士法人が巨額の損害賠償責任を負い、税理士法人の財産では、その損害賠償金を払いきれない場合には、社員税理士が支払うことになる、ということです。

    この条文上の根拠を整理しておきたいと思います。

    根拠条文は、税理士法第48条の21です。

    同条が、会社法580条第1項を準用しています。

    そこで、会社法580条1項を見てみます。

    会社法第580条第1項
    社員は、次に掲げる場合には、連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負う。
     
    一 当該持分会社の財産をもってその債務を完済することができない場合

    この結果、税理士法人が債務を負った場合には、

    (1)税理士法人の財産をもって債務を支払う。

    (2)(1)で債務を完済することができない場合は、社員税理士が全員連帯して個人として債務を支払う。

    ということになります。

    そして、税理士が債務を完済できず、破産してしまった場合には、税理士法26条により、日本税理士会連合会により税理士登録を抹消されてしまいます。

    厳しいですね。

    税理士は、損害賠償請求に備える方法を研究しておく必要があります。

    税理士先生からの税賠相談をお受けしております。お気軽にご相談ください。

    税理士に対する損害賠償請求防御のご相談は、こちら

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    もっと詳しく知りたい方は、こちらの書籍も参考にしてください。
    「税務のわかる弁護士が教える税理士損害賠償請求の防ぎ方」(ぎょうせい)

  • 法令の趣旨に反した節税で税理士損害賠償判例

    2019年10月09日

    立法の趣旨に反した節税指導をしたことを理由として、税理士に損害賠償責任が認められた裁判例として、東京地裁平成10年11月26日判決(TAINS Z999-0047)を紹介する。

    税理士らに対し、合計5999万9999円の損害賠償が命じられた事例である。

    (事案の概要)
    1 Xら被相続人一郎の相続人は、Yが代表を務めるコンサルタント会社に相続税の節税策について相談した。

    2 コンサルタント会社は、Xらに対し、節税策を助言し、Xらは、次のとおり節税策を実行した。

    ①一郎がA社の株式を買い受け、その売買代金14億52万3600円を支払った。

    ②一郎は、株式を一定期間経過後、相続人Xに対して贈与した。

    ③Xは本件贈与について、配当還元方式により本件株式を評価した上、1709万7600円の価額の贈与を受けたとして、平成6年3月柏税務署に対し、642万3300円の贈与税の申告を行った。

    ④受贈者である相続人Xは、株式を一定期間保有した後、時価(13億4167万8000円)で売却し、買取資金を回収した。

    3 柏税務署長はXに対し、平成8年2月16日、平成6年3月の贈与税の申告について贈与税として9億6904万6100円及び過少申告加算税1億4407万1500円を納付すべきとする更正処分及び加算税の賦課決定処分をした。

    4 そこで、Xらは、Yらに対し、助言指導義務違反を理由として、不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。

    5 相続税法第22条は、「・・・相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価・・・による。」と規定し、財産評価基本通達第一1(二)は、「財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、・・・それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。」と規定している。

    そして、同通達によると、少数株主の所有する株式の価額については、当該株式の年間配当金額を基準として計算する方法(配当還元方式)により評価することとされている。

    6 本件で、Yらは、この通達に基づく相続税の節税策を助言したものである。

    (裁判所の判断)

    1 本件相続税対策は贈与税ひいては相続税の大幅な軽減を目的として考案されたものであることは明らかである。そして、本件株式は専ら相続税又は贈与税の負担の軽減を図る目的で一時的に保有され、その目的を達成すると、出資額に見合う金銭を回収することを目的として発行される特殊な株式であり、通達が配当還元方式により評価することを予定している株式とかけ離れた性質を有するというべきであり、右株式を配当還元方式により評価した場合には、納税者間の課税の公平が著しく損なわれる上、富の再配分機能を通じて経済的平等を実現するという相続税法の立法趣旨から大きく逸脱することは明らかである。

    2 Yは税理士であり、租税立法、通達及び課税実務等について専門的知識を有するのであるから、右立法の趣旨に反せず、課税実務において認められる内容の相続税対策を考案し、これをもって自己が経営する会社等を介して税務相談をすべき注意義務があるというべきである。しかるに、Yが考案した本件相続税対策は、租税立法の趣旨を大きく逸脱しており、課税実務上到底認め難いものであること、右対策が考案されたころには、いわゆる節税商品については、形式的に通達に従っていても税務当局から否認される流れが出始めていたこと、コンサルティング会社に雇用されている税理士のうち2名が右相続税対策は税務当局に否認されるリスクがあると考え、同社を退職したこと、Y自身も本件株式の購入価額と配当還元方式による評価額に差異が有り過ぎたことを自認していることなどからすれば、Yにおいて右対策が税務当局から否認されるおそれがあることは十分に予見することが可能であったというべきであり、それにもかかわらず、前記注意義務に反して課税実務において否認されるような本件相続税対策を考案し、これをもって自己が経営する会社等を介して税務相談をさせたことについて過失が認められる。

    (解説)
    本件で、税理士は、形式上、財産評価基本通達に則った節税策を助言している。

    しかし、判決では、税理士は、「立法の趣旨に反せず、課税実務において認められる内容の相続税対策を考案し、これをもって自己が経営する会社等を介して税務相談をすべき注意義務がある」として、行き過ぎた節税策により依頼者が損害を被った場合には、税理士に損害賠償責任が成立する旨判示した。

    財産評価基本通達総則6項は、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と規定し、財産評価基本通達に則った処理であっても、評価が著しく不適当と認められるときは、国税庁長官の指示を受けて評価する、としている。

    したがって、通達に従った処理をしておけば否認される心配がない、とは言えないことになる。

    税理士は、法令の範囲内で依頼者に有利となるよう助言指導する義務があるが、その法令の範囲内という意味は、形式面だけでなく、立法の趣旨に反せず、かつ、課税実務において認められる範囲内、という趣旨を含むものである。

    したがって、税理士としては、この点に留意した上で、業務を行うことが肝要である。

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  • 消費税の課税形態の選択で税理士損害賠償(税理士勝訴)

    2019年10月02日

    今回は、税理士に対する損害賠償が争われた東京地裁平成26年3月26日判決(TAINS Z999-0156)をご紹介します。

    (事案の概要)

    ホテル事業を行う納税者である会社X社並びにそのグループ会社らが、税理士及び会計法人に対し、グループ会社36社における消費税の課税形態の選択に関して、必要な事情聴取や調査を行い、適切な課税形態を判断すべき義務を怠ったことにより、不適切な課税形態が選択されて、消費税の還付を受けられず、不要な納税をしたことによる損害を被ったと主張して、損害賠償請求をしたものです。

    (結論)

    税理士及び会計法人が勝訴しました。

    つまり、債務不履行はない、という判断です。

    (裁判所の判断)

    【業務範囲の認定】

    ●決算補助業務並びに法人税及び消費税の申告業務を受任していた

    ●包括的委任契約ないし税務顧問契約が締結されていた事実は認められない。

    (消費税の課税形態に関しては判断する義務は原則として負わない)

    ●消費税の課税形態に関する判断は、翌期・翌々期の事業の見込みに従って行われるべきものであり、決算補助業務や法人税・消費税の申告業務を行うことから直ちに導き出されるものではない。

    ●消費税の課税形態に関する判断は、当該事業者の翌期・翌々期の売上げ及び仕入れという事業の見通しに従って行われるべきものであって、いったん課税事業者ないし簡易事業者の選択をすると2年間はそれをやめることができないのであるから、その判断は当該事業者に委ねられているところであり、税務申告等に関与する税理士ないし税理士法人が決定し得るところではないというべきである。

    ●したがって、税務申告等に関与する税理士ないし税理士法人については、依頼者である事業者から個別の相談又は問い合わせがない限り、その事業者について、事業の見通しを積極的に調査し、又は予見した上で、当該事業者の消費税の課税形態の選択について助言又は指導を行うべき義務は原則としてないものというべきである。

    (消費税の課税形態に関する判断を負う場合)

    ●もっとも、法人税・消費税の申告業務等を受任している税理士法人としては、依頼者から消費税の課税形態に関する個別の相談若しくは問い合わせがある場合又は個別の相談若しくは問い合わせがなくとも依頼者から適切な情報提供がされるなどして、税務に関する行為によって課税上重大な利害得失があり得ることを具体的に認識し、若しくは容易に認識し得るような事情がある場合には、依頼者に対し、当該行為の助言、指導等をするべき付随的な義務が生じる場合もあり得るというべきである。

    (あてはめ)

    ●自らの判断に基づいて届出書を提出しなかったものと推認されるのであるから、被告らが、原告X社に対し、課税形態の選択について何らかの助言、指導等をするべき事情があったとも認められない。

    ================

    以上です。

    本件判決は、税理士及び会計法人の契約の「業務範囲」が問題となった事例です。

    本件では、各会社と契約書が締結してある会社と契約が締結していない会社がありました。

    業務範囲に「節税コンサルティング」などと記載してあったら、危なかったと思います。

    やはり、税賠を防止するには、契約書は必ず締結し、業務範囲は、明確かつ限定的に記載すべきものと思います。

    ご相談は、こちらから。
    https://www.bengoshi-sos.com/zeimu/

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  • 税理士の損害賠償責任の前提となる9つの注意義務

    2019年08月11日

    税理士と依頼者との契約は、委任契約ないし請負契約とされる。

    そして、税理士が損害賠償責任を負う場合には、税理士の善管注意義務違反が問題となるが、注意義務の内容はいくつかの類型に分類することができる。

    ここでは、税理士の注意義務を9つに分類し、概説することとする。

    (1) 説明助言義務

    税理士は、善管注意義務に基づき、依頼者に対して関連税法及び実務に関して、有益な情報および不利益な情報を提供し、依頼者が適切に判断できるように説明及び助言をしなければならない。これを税理士の説明助言義務と言う。

    この説明助言義務については、税理士が

    ①説明助言義務を負うか、

    ②説明助言義務を負うとして、説明助言したかどうか、

    で争われることになる。過去の裁判例では、②に関し、税理士が「説明助言した」と主張するものも多い。しかし、裁判実務においては、税理士の側で「説明助言した」と証明できない場合には、説明助言の事実が否定される傾向にある。

    したがって、税理士が無用の損害賠償請求を防止するためには、説明助言したことを証拠化して残しておくことが重要である。

    まず、税理士が受託業務を遂行する上で確認すべきことについて、説明助言義務があることは当然である。

    相続税申告業務を行うに際し、海外財産も全て申告するよう説明したことが認められないとして税理士に説明助言義務違反が認められた例がある(東京地裁平成24年1月30日判決・判例時報2151号36頁)。

    相続税申告業務を受託した税理士について、「相続税の納付がいつ必要であるのかを相続人に説明し、その納付が可能であるかどうかを確認し、これができない場合には、延納許可申請の手続をするかどうかについて意思を確認するのは、相続税の確定申告に付随する義務」であるとして、説明助言義務違反を認めた事例がある(東京高裁平成7年6月19日判決・判例時報1540・48頁)。

    不利益についての説明助言としては、税理士が所得税確定申告にあたって、依頼人に対し、申告書作成に必要な原始資料の提出を求めたが、依頼者はこれを拒否し、依頼人の指示する不適法な方法で確定申告をするよう要請され、その旨申告したが、その際、重加算税などの説明をしなかったため、納税を余儀なくされたとして、損害賠償され、それが認められた事例がある(前橋地裁平成14年12月6日判決・TAINS Z999-0062)。但し、依頼者が書類提出を拒否したものであるので、過失相殺がされている。

    したがって、依頼者に不利益が生ずべき時は、それが依頼者の責に帰すべきときであったとしても、当該不利益を説明助言し、依頼者が適切に判断できるようにすべきである。

    以上のように、税理士は、受託業務を行う上で確認が必要な事項について説明助言すべきことはもとより、依頼者が適切な判断をするために必要な事項、依頼者に将来生ずる可能性がある事項なども予測して、説明助言すべきことになる。また、説明助言は、その存否に争いとなったときは、税理士が説明助言したことを立証するのが困難となる場合があるから、可能な限り書面等の証拠を残しておくことが望ましい。

    (2) 有利選択義務

    税理士の注意義務の一つとして、有利選択義務がある。これは、複数の選択しうる処理の方法がある場合に、法令の許容する限度で依頼者に有利な方法を選択する義務である。

    この点について、東京地裁平成7年11月27日判決(TAINS Z999-0019)は、相続税の財産評価を誤るとともに、配偶者に対する税額軽減を適用せずに相続税申告書を作成、提出した事例について、税理士は、「税務の専門家として、租税に関する法令、通達等に従い、適切に相続税の申告手続をすべき義務を負うことはもちろん、納税義務者たる」依頼者の「信頼にこたえるべく、相続財産について調査を尽くした上、相続財産を適切に各相続人に帰属させる内容の遺産分割案を作成、提示するなどして、」依頼者に「とってできる限り節税となりうるような措置を講ずべき義務をも負う」と判示している。

    以上より、税理士が受託した業務を処理するに際し、法令の許容する範囲内で複数の処理が可能なときは、できる限り依頼者の有利になるよう処理する義務があるので、注意が必要である。

    (3) 不適正処理是正義務

    税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする(税理士法第1条)。

    そして、税理士は、税務の専門家として、高度の知識と技能を駆使して、依頼者の納税義務の適正な実現を図らなければならない。したがって、依頼者の依頼や説明などが不適正であり、納税義務の適正な実現を図ることができないような場合には、これを是正する義務がある。これは、不適正処理是正義務である。

    この点に関し、前述の留保金課税が問題となった大阪地裁平成20年7月29日判決(TAINS Z999-0118)は、「依頼者の指示が不適切であれば、これを正し、それを適切なものに変更させるなど、依頼者の依頼の趣旨に従って依頼者の信頼に応えるようにしなければならない。」と判示している。

    また、東京地方裁判所平成24年12月27日判決(判例タイムズ1392号163頁)は、消費税の課税事業者選択届けを提出しなかった点に注意義務違反があるかどうかが争われた事例に対し、「税理士は、委任者の説明に基づき、その指示に従って申告書等を作成する場合にも、委任者の説明及び指示のみに基づいて事務処理を行えば足りるというものではなく、税務の専門家としての観点から、委任者の説明内容を確認し、それらに不適切な点があって、これに依拠すると適切な税務申告がされないおそれがあるときには、不適切な点を指摘するなどして、これを是正した上で、税務代理業務等を行う義務を 負うと解される。」と判示し、税理士の注意義務違反を認めた。

    (4) 前提事実の確認義務

    税理士が受託業務を行うに際しては、法令適用の前提となる事実について、依頼者に質問し、書類を精査するとともに、それが不十分である場合には、さらに調査をして前提事実を解明する注意義務がある。これが前提事実の確認義務である。

    京都地裁平成7年4月28日判決(TAINS Z999-0008)は、譲渡所得の申告に際し、譲渡資産が過去の買い換え特例の適用を受けていたにもかかわらず、依頼者が関連書類を税理士に提出せず、買い換え特例の適用がないものとして処理した事例について、「税理士が、依頼者の税務書類の作成過程において、依頼者から事情を聴取する際には、特に問題となりそうな点に言及し、事実関係の把握に努め、依頼者の説明だけでは十分に事実関係を把握できない場合には、課税庁で当該疑問点を指摘し、調査を尽くさなければならない。」と判示して前提事実の確認義務を認めた。なお、本裁判例では、依頼者の説明不足について、2割の過失相殺をした。

    ただし、この訴訟の控訴審である大阪高裁平成8年11月29日判決(TAINS Z999-0008)は、税理士が依頼者に対し、「以前に不動産を譲渡したことがあるか」と質問したところ、「譲渡したことはない」との返事であり、また、不動産の譲渡関係の資料もないという回答を得た旨の事実を認定し、このような事実関係のもとでは、税理士は、さらに課税庁まで出向いて調査する義務は負わない、と判示した。

    (5) 積極調査義務

    税理士は、税務の専門家として、高度の知識と技能を有するとともに、その知識と技能を駆使して依頼者の納税義務の適正な実現を図ることを期待されている。したがって、その知識と技能に照らし、依頼者の説明や資料に疑問点を生じたり、不十分であるなどの場合には、依頼者に積極的に問いただしたり、資料提示を求め、調査する義務がある。これが積極調査義務である。

    東京地裁平成21年10月26日判決(判例タイムズ1340号199頁)は、所得税確定申告書の作成を受任した税理士が、不動産賃貸業をしている依頼者から提出された資料に礼金の収入等の漏れがあったにもかかわらず、そのまま確定申告書を作成した事例において、「税理士業務を行うに当たっては、依頼者が、課税標準等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、若しくは仮装している事実等があることを知ったときには、直ちにその是正をするよう助言する(法41条の3)などの義務を負う。」とした上で、「本件各資料の内容及び本件各確定申告書等の記載に照らせば、税務に関する専門知識を有する」税理士において、「本件各確定申告書等の記載と本件各資料の記載を照合して、本件各確定申告書等の根拠となっている本件各資料の内容を精査すれば、礼金等の収入の有無や必要経費の内容や金額などについて、疑問をもち、」依頼者に対し、「これらについて説明を求め、追加資料の提出を促すことは容易であったというべきである。」と判示して、税理士の注意義務違反を認めた。

    また、東京地方裁判所平成24年12月27日判決(判例タイムズ1392号163頁)で、税理士が消費税確定申告書の作成を受託したところ、依頼者は、自宅の一部を会社に賃貸し、その賃料を受領していたが、税理士から給与以外の収入があるか質問された際に、「ない」と回答したので、税理士は、それを前提として、消費税課税事業者選択届けを提出しなかった事例において、税理士は、「税務の専門家としての観点から、委任者の説明内容を確認し、それらに不適切な点があって、これに依拠すると適切な税務申告がされないおそれがあるときには、不適切な点を指摘するなどして、これを是正した上で、税務代理業務等を行う義務を負うと解される。」とした上で、税理士が把握した資料によって、依頼者が賃料収入を得ていることは、「容易に推測可能」であったとして、税理士の積極調査義務違反を認めた。

    (6) 税法以外の法令調査義務

    税理士は税法の専門家であり、全ての法律に関する専門家ではないが、税理士がその職務を行うにあたって、税法の適用の前提として、他の法律を解釈適用する必要が生ずる場合がある。このような場合に、税理士は、どこまで法令の調査をし、確認を求められるのか、が、税理士の法令調査義務の問題である。

    国籍法の調査義務が争われた事例として、東京地裁平成26年2月13日判決(TAINS Z999-0145)がある。この事例は、相続税申告業務において、税理士は、相続人の1人が長期間アメリカ合衆国で生活していることから、アメリカ合衆国に帰化して日本国籍を喪失しており、制限納税義務者に該当する可能性があると考え、関係者に確認したところ、関係者からは、「確かにアメリカ合衆国の国籍を取得したが、日本国籍を放棄していないため、二重国籍である」と回答があったので、税理士は、これを前提に制限納税義務者ではないことを前提として、申告書を作成したところ、本件では、国籍法によると、アメリカ合衆国の国籍を取得した時点で日本国籍を喪失していた、というものである。この事例において、裁判所は、まず一般論として、「確かに、税理士は、税務に関する専門家であるから、一般的には租税に関する法令以外の法令について調査すべき義務を負うものではない」と述べて、一般的法令調査義務はない、と判示した。しかしながら、相続税申告にあたっては、相続人が日本国籍を有しない制限納税義務者かどうか確認する必要があり、国籍を有するかどうかは国籍法が規定しているから、国籍法を確認する義務を負う、とした。

    これに対し、相続税申告業務において、相続人が相続していない不動産について相続財産に含めたことにより過大な相続税の支払いを余儀なくされたとして税理士に対して損害賠償請求がされた事例において、那覇地裁沖縄支部平成23年10月19日判決は、「税理士は、税務の専門家であって、法律の専門家ではないから、ある財産を遺産に含めて相続税の課税対象として処理する場合に、所有権の移転原因を厳密に調査する義務があるとまではいえず、税務署が納税行為の適正を判断する際に先代名義の不動産の有無を考慮している現状にも照らせば、被告が本件土地に関する調査義務に違反したということはできない。」として、税理士の注意義務違反を否定した。
    以上から、税理士には、税法の要件を満たすかどうかを判断する前提として他の法令の適用関係を判断する必要がある場合には、その法令を調査確認する義務を負うが、法令の解釈適用については、法律の専門家ではないから、厳密な法律解釈までは必要ではなく、税務の専門家として要求される調査を尽くすことで足りる、ということになろう。

    (7) 租税立法遵守義務

    税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする(税理士法第1条)。

    したがって、税理士は、租税立法を遵守する義務を負う。租税立法遵守義務は、租税立法の文言に直接的に反する行為をしてはならないことはもとより、租税立法の趣旨に反する行為をしてはならないことを含む。また、税務署職員は、行政通達に基づいて実務を行うものであるから、通達に反する処理をすることは依頼者に不利益が生ずる可能性があり、慎重を要する。そして、仮に通達に反する助言をする場合には、通達に反する旨、及び後日依頼者に不利益が生ずる可能性があることを説明助言する必要がある。これが、税理士の租税立法遵守義務の問題である。

    この点、法人税確定申告において、通達に反する助言指導を行った税理士に対する損害賠償の事例について、大阪高裁平成10年3月13日判決(判例時報1654号54頁)は、「依頼者から基本通達に反する税務処理を求められたり、専門家としての立場からそれなりの合理的理由があると判断して基本通達と異なる税務処理を指導助言したりする場合において、基本通達が国税庁長官が制定して税務職員に示達した税務処理を行うための基準であって法令ではないし、個々の具体的事案に妥当するかどうかの解釈を残すものであるから、確定申告をするに当たり形式上基本通達に反する税務処理をすることが直ちに許されないというものではないものの、税務行政が基本通達に基づいて行われている現実からすると、当該具体的事案について基本通達と異なる税務処理をして確定申告をすることによって、当初の見込に反して結局のところ更正処分や過少申告加算税の賦課決定を招くことも予想されることから、依頼者にその危険性を十分に理解させる義務があるというべきである。」と判示している。

    これに対し、東京地裁平成10年11月26日判決(TAINS Z999-0047)は、相続税の節税に関する助言指導業務において、形式的には財産評価基本通達に則った処理ではあるが、その結果、相続税および贈与税の評価を大きく下げる結果となるスキームが財産評価基本通達総則6項により否認された事例について、「納税者間の課税の公平が著しく損なわれる上、富の再配分機能を通じて経済的平等を実現するという相続税法の立法趣旨から大きく逸脱することは明らかである」とした上で、「考案した本件相続税対策は、租税立法の趣旨を大きく逸脱しており、課税実務上到底認め難いものであること、右対策が考案されたころには、いわゆる節税商品については、形式的に通達に従っていても税務当局から否認される流れが出始めていたこと」などから、税理士は、「対策が税務当局から否認されるおそれがあることは十分に予見することが可能であったというべきであ」る、として、税理士の注意義務違反を認めた。

    以上より、税理士の法令遵守義務として、次のような注意義務に留意すべきである。

    ① 法令を遵守する義務

    ② 原則として通達に従った処理を行うが、通達と異なる処理を行う場合には、依頼者に生ずる可能性のある不利益を精査し、依頼者に十分説明し、理解を得ておくこと、通達と異なる処理が認められるよう税務専門家として証拠化しておくこと。

    ③ 形式的に通達に則った処理であったとしても、租税立法の趣旨に反するような処理ないし説明助言をしないこと。

    (8) 第三者に対する注意義務

    銀行など金融機関をはじめ、法人または個人に対して融資をする者、取引を開始しようとする者が、その財務内容や営業活動を調査するために、税務申告書や試算表などの提出を求めることがある。そして、それらの内容が真実であると信頼して、融資や取引を開始することがある。ところが、税務申告書等の内容が真実に反するものであり、そのために貸付金や売掛金の回収が不可能にある、という事態が想定しうる。

    この場合、当該虚偽の税務申告書や試算表等を税理士が作成したものである場合には、損害を被った第三者としては、損害の原因を作出したのが税理士であるとして、税理士に対して損害賠償請求をすることがある。これが、第三者に対する注意義務の問題である。

    この場合、税理士と第三者との間には契約関係がないから、債務不履行責任は問題とはならない。問題となるのは、不法行為責任である。

    税理士は税務の専門家として、公正な立場において、納税者の適正な納税義務の実現を図るため、真正な税務申告書を作成する義務を負う。そして、故意または相当の注意を怠って真正の事実に反して税務申告書を作成したときは、懲戒処分を受けることがある(税理士法第45条1項、2項)。

    そして、税務申告書の内容を信頼して融資取引を行ったり、取引を開始あるいは継続することがあることは容易に推測できることであり、かつ、税務申告書の内容が虚偽である場合には、それによって債権回収が不可能になりうることも容易に推測可能であり、かつ、その結果を回避することも可能である。

    その意味で、税理士は、第三者が内容虚偽の税務申告書等を信頼して行動した結果、損害を被ることのないように、税務申告書等の内容を真正にすべく注意義務を負っていると解される。よって、故意または過失によって内容虚偽の税務申告書等を作成し、それによって第三者が損害を被った場合には、税理士には不法行為に基づく損害賠償責任が発生する場合がある、と考える。

    この点、仙台高裁昭和63年2月26日判決(TAINS Z999-0002)は、税理士の作成した内容虚偽の確定申告書の記載を真実と信じて、保証、担保の提供などをした者が損害を被った事例において、税理士は、依頼者が「これを利用して融資先を欺いて甲社の金融を得ることを知りながら、乙社の実情を粉飾し、このような虚偽の内容を記載した書類を作成したものであること、すなわち、」税理士「はこれにより乙社に対して融資をするものが損害を受けるかもしれないことを予見しながらあえてこのような虚偽の内容を記載した書類を作成したものであることが認められる。」として、税理士の損害賠償責任を認めた。

    (9) 退職税理士の競業避止義務

    税理士事務所または税理士法人の所属税理士が退職し、または、税理士法人の社員税理士が脱退する際に、もとの税理士事務所(法人)と顧客をめぐって紛争となる場合がある。退職する税理士が担当している依頼者が、税理士退職に伴って、元の勤務先の税理士事務所(法人)との委任契約を解消し、退職税理士と新規に委任契約を締結する場合である。いわゆる退職税理士の競業避止義務の問題である。

    まず、憲法第22条は、職業選択の自由を基本的人権として規定しており、税理士資格を有する者が、税理士事務所(法人)を退職した後、税理士業務を行うことを禁止することは、多くの場合、公序良俗違反で無効となるものと思われる。

    では、退職後、従来の依頼者と新規に契約を締結する場合はどうか。

    この場合も、そのような行為をしない旨の特別の誓約書等による合意がない場合には、元の勤務先の税理士事務所を誹謗中傷するなど「社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な態様で元雇用者の顧客を奪取したとみられるような場合」でなければ、損害賠償責任を負うことはない(最高裁平成22年3月25日判決)。

    では、退職後、従来の依頼者への勧誘を禁止する特別の合意がある場合はどうか。

    大阪地裁平成24年4月26日判決(TAINS Z999-0130)は、税理士事務所が、退職した税理士らに対し、就業規則に違反し、違法に競業し、かつ、不正の利益を得る目的で営業秘密を使用したなどとして損害賠償を求めた事例で、積極的に働きかけて依頼者と契約を結ぶことを禁止する合意をしたと認定しつつも、積極的な働きかけはなかった、と判断して退職税理士らの損害賠償責任を否定した。

    次に、東京地裁平成26年4月9日判決(TAINS Z999-0150)は、税理士法人の社員を辞任する前から、Xの業務を執行する社員でありながら、許される開業準備行為の範囲を超えて、Xの顧客に対してXの信用を失墜させるような言動をしたり、Xとの顧問契約等を解約してYが開設する事務所と顧問契約等をするように働きかけるなどし、依頼者の多数が税理士法人との契約を解約し、退職社員税理士と新規契約を締結した、として損害賠償を求めた事例である。この事例において、裁判所は、まず社員の期間中の行為については、「社員である間に」脱退する税理士が「将来の競業行為のために行う準備については、」脱退する税理士の「営業の自由と、税理士法人であるXの利益との調和の観点から、競業行為の準備をすることは許容されるものの、Xの顧客に対し、Xとの間の顧問契約等を解約して、」脱退する税理士が「開設する事務所と顧問契約等を締結するように、違法不当な方法で働きかけることは許されないと解される。」としたが、本件ではそのような行為はないとした。次に、税理士法人脱退後については、「一般に、税理士法人の社員が脱退後に行った税理士法人との競業行為は、自由競争に属し自由であるから、当該競業行為が、社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な態様で元の税理士法人の顧客を奪取したとみられるような場合に限って、元の税理士法人に対する不法行為に当たる」としたが、本件では、そのような行為はないとし、結論として、脱退する税理士の責任を否定した。

    退職ないし税理士法人を脱退する税理士としては、次の点に留意すべきである。

    ① 在職中に挨拶程度を超えて積極的に既存の契約を打ち切って、自己との新規契約を勧誘すると損害賠償責任が発生する場合がある。

    ② 退職後は、従前の勤務先との特別の禁止合意がない限り、従前の依頼者に対する勧誘行為は自由である。ただし、従前の勤務先の誹謗中傷など、「社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な態様で元雇用者の顧客を奪取したとみられるような場合」には違法となる。

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  • 新事業承継税制の税賠リスクと契約手法

    2018年11月19日

    平成30年度税制改正で大きく変わった「特例事業承継税制」ですが、税理士の先生方は、その適用に消極的な方が多いように思います。

    理由を聞いてみると、「打ち切りリスクがたくさんあって、危ない」「納税猶予の打ち切りになった時に税理士に責任になるのではないか」などという不安があるようです。

    そこで、今回は、税理士向けに、特例事業承継税制における税理士損害賠償リスクを可能な限り回避する方法について解説したいと思います。

    ここでは、「特例事業承継税制」「新事業承継税制」という言葉を使いますが、同じ意味で使います。

    特例事業承継税制は、贈与税あるいは相続税が納税猶予されて、最終的には全部免除されるということで、非常に納税者にメリットがある税制となっています。

    しかし、途中、多数の納税猶予の打ち切りリスクというものがあり、リスクも非常に大きく、一気に多額の納税が発生する可能性があるということになっています。

    新事業承継税制の流れ

    まず、新事業承継税制の流れを簡単に見ていきたいと思います。

    まず、「特例承継計画」の提出確認です。

    2023年3月31日までにこれをやるということになります。その上で贈与を実施するということです。

    その後で「円滑化法」の認定を受けるということになります

    そして翌年、贈与税の申告をする。

    これは贈与の場合です。

    その後は、5年間にわたって事業の継続をしつつ、「年次報告書」それから「届出書」を年に1回ずつ出し続けるということになります。

    5年が経過した後は、報告書と届出書は3年に1回ずつ、ずっと出し続けるということになります。

    そのようなことがあって、先代経営者が死亡等すると、猶予税額が免除されるというような流れになっています。

    相続税のほうも、ほとんどこの流れと同じです。

    では、この流れの中でどういう税賠リスク(納税者のリスクと同時に税理士のリスクが発生しますので、税賠リスク)が発生するか、ということです。
     
     
     

    特例事業承継税制の税賠リスク10段階

    特例事業承継税制の税賠リスク段階を10段階に分けてみました。

    1つ目は、当初この新事業承継税制を説明・助言する段階です。

    それから、打ち切りリスクに備えて、自社株の評価を低くするということを行う可能性もあります。

    そうすれば、納税猶予が打ち切られた時のインパクトを多少和らげることができるためです。

    この自社株対策でミスが発生した場合の税賠リスクです。

    それから3番目に、特例承継計画の作成・提出をしますので、この段階でミスが発生する可能性があります。

    4つ目は、特例承継計画の変更申請段階です。

    特例承継計画は、1回出したら変更できないわけではなく、後で変更することができますので、その変更申請の段階です。

    それから5番目、贈与税・相続税申告書作成、申告代理。これは通常の税理士業務のリスクと同じです。

    6番目は、経営承継円滑化法12条1項の、認定申請・確認の段階です。

    7番目は、5年間にわたる年1回の特例承継期間の「年次報告書」、「届出書」を提出しますので、これを忘れたり、間違えたり、というリスクがあります。

    8番目は、特例承継期間中および経過後において、打ち切り事由への対応段階です。

    従業員の雇用要件があったり、減資してはいけないとか、色々な納税猶予の打ち切り事由がありますが、これを監視したり、対応したり、そういうことが税理士に求められる場合に税理士損害賠償リスクが高まるということです。

    9番目は、贈与税の納税猶予から相続税の納税猶予への切り替えの時です。

    10番目が、贈与税・相続税の最後の免除申請の段階、ということになります。

    このように、新事業承継税制適用するには多くの税賠リスクが潜んでいるということになります。

    そして、想定される損害賠償請求の理由についてです。

    まず1つ目は、税理士の説明助言義務違反です。

    説明すべきだったのに税理士が説明しなかったということで損害賠償を受けるパターンです。

    2番目、説明助言義務違反、説明助言が誤っていたとして損害賠償請求を受ける。

    3番目は、適用の過誤。

    要件欠缺などですが、ここは実務書を見ながら、きっちりやっていただきたいところです。

    4番目、各種書類・届出書の提出失念です。

    これが怖いところですね、年1回の年次報告書、3年に1回の報告書を忘れたのが納税者の責任なのか、税理士の責任なのかということです。

    5番目は、申告書等への適用明記、添付書類漏れなどです。

    これは業務の段階できっちりやっていただきたいと思います。

    6番目は、期日管理に関する説明助言義務違反です。

    納税者が届出書等を提出しなかったときに「なんで先生言ってくれなかったんですか」というようなことから損害賠償に発展するパターンです。

    7番目は、打ち切り事由に該当しないよう監視・指導をする義務違反。

    打ち切り事由がたくさんありますが、知らずにやってしまったとき、「税理士の先生、新事業承継税制適用してたんだから、ちゃんと言ってくれないと、止めてくれないと困るじゃないですか」というように言われてしまうリスクです。

    このように特例事業承継税制を適用するには、10段階において、7つの税理士損害賠償リスクが発生することになります。
     
     
     

    税賠のパターン

    「新事業承継税制は、リスクが高いので専門事務所に任せよう」という税理士も多いと思います。

    「顧問契約に基づく業務はやるけれども、事業承継税制は他の事務所に委託する」というパターンです。

    その場合でも、こういうクレームがありえます。

    顧問契約はしていたが、事業承継は他の事務所を紹介し、手続きをした。

    ところが他の事務所が特例承継期間にしなければならない報告を怠った。

    他の事務所の責任ですよね。

    しかし、こういうことを言われる可能があります。

    「事業承継は、他の事務所にお願いしましたよ。でも先生は当社の顧問税理士で、事業承継税制を適用したことをご存じですよね。1年ごとに報告をしないといけないことを知っていたでしょう。なぜ助言してくれなかったんですか。顧問税理士としての助言義務違反じゃないんですか?」

    あるいは、

    「事業承継をお願いした事務所とは契約が切れたことを知ってたでしょ?
    そうすると、先生が言ってくれない限り私たちはできませんよ」

    と言われる可能性があります。

    こんなことを避けるためには、顧問契約書にも「新事業承継税制は業務範囲外だ」ということを書かないといけないような事態になってくるのではないでしょうか。

    このような文言を顧問契約書に書いておくことが考えられると思います。

    第〇条 甲と乙は、甲が特例事業承継税制の助言・手続き・期日管理等は、本件委任業務の範囲外とし、乙は、特例事業承継税制に関する助言・手続・期日管理等をsる義務を負わない。

    新事業承継税制は顧問先に説明しておいた方が良いと思いますが、後になって「説明を受けてない」と言われる可能性があります。

    従って、説明・助言したことを立証する手段を講じておく必要があるということです。

    特例事業承継税制について説明する資料としては、国税庁の「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予免除(事業承継税制のあらまし)

    それに基づいて説明すれば、一応の説明は完了した、ということになりますので、その写しを交付して、説明して、説明を受けたことの確認を、署名押印を得る、ということになります。

    そうすれば、説明助言したことは立証できるということになります

    新事業承継業務は税賠リスクが高いのですが、逆に、こういうことを言う税理士がいます。

    「期日管理等をするので、その分、報酬を増額できる」

    ということだったり、

    「事業承継税制を適用してたら、なかなか顧問契約は切れないんじゃないか」

    ということで、積極的に考える先生もいます。

    ただ、専門的に事業承継業務をやっている先生だったらいいですが、法人の顧問業務を主に行っている税理士が3年に1回の期日管理をしていくのは非常に難しいのではないか、と予想します。
     
     
     

    税賠リスクを低減するための5段階契約システム

    そこで、可能な限り税理士の税賠リスクを低減するということで考えたのが、5段階に契約を分ける、というシステムです。

    どういう契約か、説明していきます。

    5段階というのは、第1段は「当初説明助言業務」だけを受任するという方法です。

    「自社株の評価」とか「事業承継税制の説明」、あるいは「贈与税や相続税の資産対策等の助言業務」をまず初めに受任して、その他の事業承継業務を業務の範囲から除外するということです。

    第2段階として、「特例承継計画作成・提出段階」がありますので、この支援業務、あるいは「変更申請書の提出業務」、これを単発で受任し、その他の業務を委任業務から除外します。

    3段階目は、「贈与税・相続税の申告業務」、これも単発で受任します。

    4段階目は、「経営承継円滑化法の認定申請に係る業務」、これも単発で受任し、それ以降の年次報告書や届出書、打ち切り事由に該当しないよう助言するような業務を除外します。

    5段階目は、その後の業務、「年次報告書の提出等」がありますが、これも1年1年個別に受任する、という方法をとります。

    通常は、依頼者は、「税理士に任せたから、税理士がやってくれるだろう」と考えています。

    しかし、税理士の側は、「そんなことまで受任していませんよ」と考えていることも多いものです。

    つまり、受任範囲の認識に齟齬がり、それが原因で税理士損害賠償に発生することも多いのです。

    そこで、5段階契約にすることにより、特例事業承継税制における受任業務の範囲を1回1回依頼者と確認しあいます。

    そして、何が依頼者の責任範囲で、何が税理士の責任範囲かを確認しあうのです。

    この方式により、認識のズレがなくなりますので、それによる税賠を防ぐことができる、ということになります。
     
     
     

    判例でみる5段階契約システム

    契約書で区切っていくと、何が有効かというと、過去の判例を見ていただければわかります。

    東京地裁の平成24年3月30日判決です。

    税理士が勝訴したのですが、契約書が締結されていた事例です。

    判決は、「顧問契約上、なすべき義務は契約書に明記された税務代理や税務相談等の事項に限られる」。

    「依頼者の業務内容を積極的に調査し、または予見して税務に関する経営判断に資する助言・指導を行う義務はない」ということで、契約書の記載内容を重視して、契約範囲を定めています。
     
     
     

    第1段階

    その観点から考えると、第1段階の「当初説明助言業務」では、例えばこういうふうに書くことになります。

    「業務範囲」
    1、 自社株式の評価額算定 金●円
    不動産その他の鑑定費用・専門家費用は含まれません。

    2、本契約期間における事業承継税制の説明及び適用判定

    3、事業承継税制利用における本契約期間における贈与税・相続税の試算と対策助言、これが業務です。

    ※以下は業務範囲に含まれません。別途契約となります。
    1、自社株対策(組織再編含む)
    2、特例承継計画の作成・提出から始まる事業承継税制の全ての手続及び期日管理

    これらはすべて業務対外です、という記載になります。

    なお、特例承継計画は2023年3月31日が提出期限となりますので、ご希望の際はお申し出ください、ということを書いておくことで、これも対象外ですよ、ということと、提出期限につい説明・助言を果たした、という証拠になります。
     
     
     

    第2段階

    そして、第2段階にいきますと、まず事業承継計画書提出なんですけれども、2023年3月31日までに事業承継計画書を提出する必要があります。

    そして、契約書では事業承継計画書を実際に作成・提出する時点で受任します。

    なぜかというと、何年も前に前もって契約してしまうと、出し忘れてしまう可能性があるからです。

    ですから実際に作成提出する時点で契約、ということになります

    それから、変更申請書を業務範囲から除外しておかないと、内容に変更を生じたことを知っていたにも関わらず、出さなかった場合に責任を問われますので、これを除外します。

    変更申請書も、受任するときに受任する、ということです。

    その後の手続きも業務範囲から除外することになります。
     
     
     

    第3段階

    そして、第3段階は相続税・贈与税の税務申告書の作成・提出段階ですね、これは税務書類の作成申告書特有の、通常の税賠リスクということになりますので、個別に委任契約書を作成します。

    そして、個人と契約をする際には、消費者契約法が適用されますので、損害賠償の制限条項の文言には、普通の法人税の契約書とは異なる記載をしなければなりません。

    それから、説明助言義務が問題となることが多いので、契約時に一般的な説明書、同意書を得ておくのが、後の税賠リスクを低減させる、ということになります。

    消費者契約法の、損害賠償の制限条項というのは何のことを言っているのかというと、こういう条項のことです。

    「損害賠償の制限条項」

    (例)
    乙が甲に対し、故意または過失による債務不履行または不法行為に基づく損害賠償債務を負担するときは、その賠償額の上限は、甲が乙に対して支払った当該行為があった年の年間報酬額を上限とする

    損害賠償金は払いますけれども、その上限金額はいくらいくらにしてください、というのがこの損害賠償の制限条項です。

    個人と契約を締結する際には、消費者契約法の適用がありますので注意が必要です。

    消費者契約法の適用があると、損害賠償の制限条項が無効になる場合があります。

    こういう場合に無効になります。

    1、債務不履行または不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を
    免除する条項

    2、債務不履行または不法行為で故意又は重過失で消費者に生じた損害を賠償する
    責任の一部を免除する条項

    従って、消費者契約法の制限に当たらないような規定の仕方をする必要があります。

    ここでは割愛します。

    ところで、この話をすると、「では、対象法人とだけ契約すればいいのでは?」と考える人がいると思います。

    ところが、税理士損害賠償は、債務不履行だけでなく、「不法行為」による請求もあります。

    不法行為は、契約書を締結していない人からでも訴えられることがある、ということです。

    したがって、対象法人とだけ契約書を締結しても、納税猶予が打ち切りになった個人から不法行為に基づく損害賠償請求を受ける可能性がある、ということです。

    では、誰と契約を結ぶのが望ましいか、ですが、長くなるので、ここでは割愛します。
     
     
     

    第4段階

    次に、第4段階の契約は、認定申請の段階です。

    特例承継期間中、毎年1回および特例承継期間経過後3年に1回。

    5年経過後以降における年次報告書、継続届出書の期日管理及び提出を業務範囲から除外しておくということが重要です。

    上記報告書と届出書の提出を怠ると打ち切り事由になること、その他の打ち切り事由を説明したことを契約書に記載しておくことも必要でしょう。

    特例承継期間中および特例承継期間経過後において打ち切り事由に該当しないように積極的に調査・監視などを行うコンサルタント業務をも業務範囲から除外します。

    そうしておかないと、「なんで言ってくれなかったんですか」ということになる。

    その他、免除申請なども業務範囲から除外しておきます。
     
     
     

    第5段階

    第5段階目です。

    これは年次報告書等の提出段階です。

    特例承継期間中、毎年1回および特例承継期間経過後3年に1回における年次報告書、継続届出書の提出を個別に受任します。

    毎年受任します。

    そして今回提出する1回のみ受任とし、来年あるいは3年後の提出は受任範囲から除外します。

    「その時にまた受任しますよ」ということですね。

    期日管理及び打ち切り事由に該当しないことの管理はあくまで納税者に責任があるんですよ、ということを明記します。

    そして、報告書と届出書の提出を怠ると打ち切り事由になること、その他の打ち切り事由を説明したことを契約書に明記しておきます。

    そして、特例承継期間中および特例承継期間経過後において打ち切り事由に該当しないよう積極的に調査・監視などを行うコンサルタント業も業務範囲から除外します。

    その他、免除申請なども業務範囲から除外します、ということです。

    このように契約書を区切って、その都度個別に契約を締結していくというのが税理士の税賠リスクをできる限り回避する方法だと思います。

    この、5段階契約の目的というのは、単に税理士の責任を回避するというものを目的とするものではありません。

    あくまでも、認定取り消し、打ち切り事由に該当しないようにする責任というのは納税者にありますので、その自覚をしっかり持っていただくことが大切です。

    多額の贈与税や相続税の納税が最終的に免除されるという大きなメリットがある制度です。

    その大きなメリットを受ける納税者が、メリットを受けるための注意をし続ける責任があるのだという自覚を持っていただくことが大切です。

    そして、税理士はあくまでその支援をする存在だということを明確にすることを目的にしています。

    その意味で、「税理士に全部任せたぞ、俺は知らん」ということは通じないということをよく理解していただくことが必要です。

    依頼者は税理士に任せた認識であり、税理士は依頼者が期日管理等をするという認識である、というような認識のズレによる税賠を防止することを目的にしています。

    また、説明すべきことを契約書に明記しますので、説明したのに聞いてないというような、「言った言わない」による税賠を防止ます。

    以上、5段階契約システムによって税理士の事業承継税制の税賠リスクをできる限り回避するという方法について説明しました。
     
     
     

    5段階システムに対応する契約書書式

    対策のポイントは契約書を締結するということです。

    ところが、契約書にはいろんな条項がありますので、なかなか作成するのは難しいと思います。

    特に、新事業承継税制を理解している弁護士でないと、この作成はなかなか難しいのではないか、と思います。

    そこで今回、私のほうで、この5段階にわたる契約書を開発して作成を致しました。

    第1段階第2段階第3段階第4段階第5段階、そして第3段階の相続税・贈与税の契約においては、説明・助言が問題となることが多いので、相続税業務の契約時に、納税者に説明すべきこと、一般的に説明すべきことを網羅した説明書も一緒に作成を致しました。

    これらを利用することによって、税理士が新事業承継税制で税賠リスクをできるだけ回避するということに、ご協力できるのではないかと思っています。

    Amazonからご購入いただけます。

    【1】今回の記事で書いた内容をさらに詳細に解説するDVDは、こちら(書式なし)。

    【2】五段階契約書書式(解説動画付)は、こちら。

  • 税理士の守秘義務について

    2017年10月09日

    税理士の守秘義務について解説をします。

    税理士法第38条は、次のように規定します。
    「税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない。税理士でなくなつた後においても、また同様とする。」

    そして、この条文の解釈について、「税理士法基本通達」は、次のように規定しています。

    (正当な理由)
    38-1 法第38条に規定する「正当な理由」とは、本人の許諾又は法令に基づく義務があることをいうものとする。

    (税理士業務に関し知り得た秘密)
    38-2 法第38条に規定する「税理士業務に関して知り得た秘密」とは、税理士業務を行うに当たって、依頼人の陳述又は自己の判断によって知り得た事実で、一般に知られていない事項及び当該事実の関係者が他言を禁じた事項をいうものとする。

    (窃用)
    38-3 法第38条に規定する「窃用」とは、自ら又は第三者のために利用することをいうものとする。

    (使用者である税理士等が所属税理士から知り得た事項)
    38-4 規則第1条の2第2項、第6項及び第7項の規定により使用者である税理士又は使用者である税理士法人の社員税理士が所属税理士から知り得た事項は、法第38条に規定する「税理士業務に関して知り得た秘密」に含まれることに留意する。

    では、税理士が守秘義務に違反した場合には、どうなるでしょうか。

    まず、一つ目は、懲戒処分です。

    そして、二つ目は、刑罰です。

    税理士法第59条により、2年以下の懲役又は百万円以下の罰金が定められています。

    重いですね。

    次のような場合には、税理士は、どうしたら良いでしょうか。

    ・警察から問い合わせがあった場合に、確定申告書等を開示してよいか?

    ・会社の業務に関与していない社長の妻から、確定申告書等の開示を要求されたら?

    ・代表権のない取締役から、総勘定元帳の開示を求められたら?

    個別の事情に応じて判断しなければなりません。

    過去には、弁護士法23条照会に対して、クライアントの情報を開示した行為が守秘義務違反かどうかが争われた事例があります。
    (大阪高裁平成26年8月28日判決)

     

    税理士資格を有する税理士事務所のスタッフは、税理士法上の義務を負担しませんが、守秘義務を負わせる必要があります。

    入社時の誓約書や就業規則などで、工夫が必要でしょう。

    詳しくは、ご相談ください。⇒相談窓口

  • 税理士が作成保存する会計データの所有権

    2017年10月09日

    税理士と顧問先との間で、税理士が作成した顧問先の会計データの所有権の帰属が争われた裁判例がありますので、紹介します。

    東京地裁平成25年9月6日判決です。

    事案としては、税理士が、元顧問先に対し、税理士顧問契約に基づく報酬請求として、43万7940円を請求し、顧問先が反訴として、税理士が保有する会計データ(電子データ)を引き渡さなかったことが債務不履行だと主張し、143万4416円の損害賠償その他の請求をした、というものです。

    顧問契約書が締結されており、業務内容としては、以下のとおりでした。

    ・法人税、事業税、住民税及び消費税の税務代理及び税務書類の作成業務

    ・税務相談

    ・総勘定元帳(調査時の出力)並びに決算
    会計処理に関する指導及び相談

    ・上記項目以外の業務については別途協議する。

    入力された会計データを出力した総勘定元帳は、依頼者に送付されていましたが、本件は、弥生会計に入力された会計データそのものを依頼者に引き渡す義務があるのかどうかが争われた事案です。

    つまり、「会計データ」自体の所有権が、税理士に帰属するのか、顧問先に帰属するのか、が争われたものです。

    この点について、裁判所は、税理士が保存していた会計データの所有権は税理士に帰属しており、会計データの引き渡し義務はないと判断しました。

    ただし、この判決は、税理士が、入力結果を渡す義務がない、と判断したものではありません。

    会計データの所有権のみを判断したものです。

    税理士と顧問先との契約関係は、委任契約とされています(最高裁昭和58年9月20日判決)。

    そして、民法645条は、「受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。」と規定しています。

    したがって、税理士は、受任事務を処理した時は、その結果について報告すべき義務があることは忘れてはいけません。

    「税理士を守る会」は、こちらから。
    https://myhoumu.jp/zeiprotect/

    税理士損害賠償防御は、こちらから。
    https://www.bengoshi-sos.com/zeibai/

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