税理士損害賠償 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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  • 税理士の複数事務所問題

    2021年09月24日

    今回は、税理士法の複数事務所の禁止についてです。

    税理士法40条3項は、「税理士は、税理士事務所を二以上設けてはならない。」と規定しています。

    そして、税理士法基本通達40-1は、「法第40条に規定する『事務所』とは、継続的に税理士業務を執行する場所をいいます。

    そして、継続的に税理士業務を執行する場所であるかどうかは、外部に対する表示の有無、設備の状況、使用人の有無等の客観的事実によって判定するものとする。」と規定しています。

    判定のポイントは、

    (1)外部に対する表示の有無、

    (2)設備の状況、

    (3)使用人の有無等

    「客観的事実」によることとなり、おなじみ、「社会通念」に従って判断されることになると考えられます。

    この規定の趣旨は、

    (一)税理士の業務活動の本拠としてこれを1箇所に限定することが法律関係を明確にする上で便宜であること、

    (二)個人の監督能力を超えて業務の範囲を拡大することを事務所の面から規制し、これにより税理士以外の者が税理士業務を営むことを防止すること、

    とされています(「新税理士法五訂版」日本税理士会連合会編、170頁)。

    税理士が複数の場所で業務を行い、又はテレワークの推進により税理士又は職員が自宅で業務を行うことが想定されます。

    その際は、上記の基準に照らして、複数事務所との疑念を抱かれないようにしていただければと思います。

    心配な方は、「税理士を守る会」の掲示板や無料面談相談で、ご相談いただければと思います。

    「税理士を守る会」は、こちら
    https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/

  • 税理士の不正行為是正義務

    2021年09月10日

    今回は、税理士法の不正行為是正義務です。

    税理士法41条の3は、税理士が、税理士業務を行うに当たって、委嘱者が次に掲げることを行っている事実を知ったときは、直ちに、その是正をするよう助言しなければならない、と規定しています。

    ①委嘱者が不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れている事実

    ②不正に国税若しくは地方税の還付を受けている事実

    ③国税若しくは地方税の課税標準等の計算の基礎となるべき事実の全部若しくは一部を隠ぺいし、若しくは仮装している事実

    税理士は、納税義務の適正な実現を図ることを使命とするため(税理士法1条)、税理士業務を行うにあたり、委嘱者が架空取引の記帳や二重帳簿の作成など脱税行為を行っている事実を知ったときは、ただちにその是正を助言する義務を負います。

    税理士が、顧問先等の脱税行為を知ったとき、その脱税工作を前提として、自ら税務書類の作成を拒絶することは当然です。

    そして、助言するのは義務ですから、不正行為を発見したときに、「自ら関わらなければよい」、というわけではなく、黙認せずに不正行為を是正するよう助言することが求められています。

    この助言義務は税理士法上の義務ですから、同条違反は懲戒事由になるものです。

    また、顧客が悪いのは当然ですが、助言しないことによって是正されない場合には、後日、過少申告加算税、延滞税、重加算税を課せられた場合に損害賠償請求をされる可能性があります。

    顧客の方が悪いので「過失相殺」はされるでしょうが、それでも税理士に損害賠償責任が発生する可能性がある、ということです。

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  • 税理士の責任限定条項を無効にした裁判例

    2021年08月27日

    これまで税理士の委任契約書の

    責任限定条項(賠償額の上限を定める条項)を

    無効とした裁判例はありませんでした。

    しかし、今般、初めて同条項を無効とする判決が出ました。

    横浜地裁令和2年6月11日判決です。

    このメルマガを書いている時点では、まだ

    TAINSには掲載されていません。

    事例としては、相続税申告業務で小規模宅地等の

    特例を適用しなかった、として税理士法人が

    損害賠償請求をされた事例です。

    委任契約書には、賠償額の上限を報酬額と

    する規定がありました。

    ところが、裁判所は、その条項を

    【消費者契約法10条】

    を根拠として、無効とし、税理士法人敗訴判決を

    出しました。

    消費者契約法10条は、消費者の利益を一方的に害する

    条項を無効とする規定です。

    控訴されているので、その結果も待たれます。

    今後も同種裁判が争われることが予想されます。

    では、今後、責任限定条項は無意味となるのか。

    税理士としては、どう対応すればいいのか。

    【税理士を守る会】の正会員の先生は、先日、

    メールでお知らせしたとおり、

    特別解説動画を配信しておりますので、ぜひ、

    ご覧ください。

    裁判例の分析と今後の対応策を動画で解説しています。

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  • 税賠保険の事前税務相談特約

    2021年08月06日

    今回は、税理士職業賠償責任保険(税賠保険)についてです。

    税賠保険は、主契約と特約に分けられています。

    特約には、

    ・事前税務相談業務担保特約

    ・情報漏えい担保特約

    があります。

    税賠保険でよく問題になるのが、この「事前税務相談業務担保特約」です。

    この違いは何か、というと、

    「課税要件事実の発生の前か後か」

    です。

    主契約の「税務相談」は、課税要件事実の発生「後」のみが対象です。

    たとえば、「取得した資産について、特別償却と税額控除のどちらが課税上有利か」というような相談です。

    しかし、主契約では、課税要件事実発生「前」の税務相談は対象外です。

    たとえば、「相続税対策のため子供に土地を贈与したいが、いくら贈与税がかかるか」というような相談です。

    このような税務相談に対応するのが、「事前税務相談業務担保特約」であり、「顧客の求めに応じて、将来的な課税要件事実の発生を前提とする個別の税額計算等に関する事項の相談を行う業務」を対象とします。

    税理士には、このような、課税要件事実の発生前の相談も多数寄せらると思います。

    セミナーでは毎回お話していますが、税賠保険に加入するのであれば、必ずこの「事前税務相談業務担保特約」もセットでつけておくことをおすすめしたいと思います。

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  • 消費税説明義務で税理士勝訴。東京地裁平成20年11月17日判決

    2021年07月22日

    今回は、税理士損害賠償の裁判例のご紹介です。

    東京地裁平成20年11月17判決(TAINS Z999-0135)です。

    (事案)

    原告は、平成16年12月1日に設立された、米の販売・加工等を目的とする株式会社です。

    原告と被告税理士は、は、平成18年1月13日、以下の内容の税務顧問契約を締結しました。

    【業務内容】
    (ア) 税理士法に定める業務及び会計業務
    (イ) 前項の業務遂行のため必要とする関連業務

    【報酬】
    (ア)顧問料月額2万円
    (イ)決算報酬年額合計30万円

    【特約】
    「定期訪問なし。税務上の問題につきましてはお電話にてお問い合わせ下さい。」「問題解決のため、資料作成、調査等が必要となる場合には、別途料金が発生いたします。」

    原告の消費税の課税売上高は、第1期、第2期とも1000万円未満であったため、第1期間を基準期間とする第3期は、自動的に消費税免税事業者となるものでありました。

    原告は、平成17年6月に、資本金を3000万円から24億円に増やし、その後、多額の広告宣伝費を支出しましたが、消費税課税事業者選択届出書は提出していませんでした。

    そこで、原告は、被告には、消費税課税事業者選択届出制度について、原告に助言する義務があるのにこれを怠ったため、原告は消費税課税事業者選択届出書を提出して消費税課税事業者となることができず、消費税の還付を受けることができなかったと主張して、債務不履行に基づく損害賠償請求権に基づき、還付金及び弁護士費用相当額の合計3687万0960円等の支払を求めました。

    (判決)

    本件契約書の「顧問料」「概要・根拠」の欄には、「定期訪問なし。税務上の問題につきましては、お電話にてお問い合わせ下さい。」と記載されているところ、この文言は、本件契約は、被告が原告を定期訪問せず、原告から税務相談があった場合には電話で対応するという内容のものであるから、被告としては、原告から相談がない限り、助言ないしそのための情報収集をすることはないことが定められているものと解する

    被告は、本件において、原告の第1期の決算業務を行っており、原告が課税事業者選択届出書を提出して課税事業者とならない限り、第3期には、自動的に免税事業者となることを知っていたと認められるから、被告としては、原告が本件制度の存在を知らないこと又は失念していることを認識した場合はもちろん、被告がそのことを容易に認識し得るような場合には、被告は原告に対し、本件制度の存在を説明する義務を負うと解するのが相当であり、また、原告が本件制度を実際に知っていたか否かにかかわらず、原告が本件届出書を提出して課税事業者となった方が課税上有利になる可能性があることを本件届出書提出期限までに認識し、又はそのことを容易に認識し得た場合も、被告は原告に対し、本件制度について注意を喚起する義務を負う

    原告には、相当程度の税務知識があったと考えることが自然であることに加え、本件制度は事業者であれば知っておくべき基本的知識といえるものであることも考え合わせると、原告が本件制度を知らないこと又は失念していることを被告が認識していたと認めることはできず、また、被告がそのことを容易に認識し得たということもできない。そうすると、被告は原告に対し、本件制度の存在を説明する義務を負っていたと認めることはできない。

    被告は、本件届出書提出期限までに、原告が第3期以降に多額の広告宣伝費を支出する可能性があることを認識し得たということができるが、原告の広告宣伝費は、平成18年2月までは毎月2000万円程度ずつ発生していたところ、同年3月に急激に増加して4億8808万3541円となったものであり、被告がその明細を受け取ったのは本件届出書提出期限後であったことからすると、被告は、本件届出書提出期限までに、原告が第3期において具体的にどの程度の広告宣伝費を支出することになるかについてまで認識していたと認めることはできない。

    したがって、被告は、本件において、本件届出書を提出して課税事業者となった方が課税上原告に有利になる可能性があることを本件届出書提出期限までに認識し、又はそのことを容易に認識し得たとまでは認められないから、原告に対し、本件制度について注意を喚起すべき義務を負うと解することはできない。

    ===================

    以上です。

    本件では、契約書の記載が取り上げられています。

    消費税の助言義務は、税理士は、積極的に調査や情報収集して依頼者のために助言をする義務があるかどうかが争われることが多いです。

    この場合、契約書があれば、その記載が重視されます。

    今回も、契約書に「定期訪問なし。税務上の問題につきましては、お電話にてお問い合わせ下さい。」と記載されてあったことから、税理士の義務が受動的な義務にとどまるものと認定されています。

    したがって、税理士が契約をする時は、必ず契約書を締結することとし、契約書には、法的な義務として負担するもののみを限定的に記載することをおすすめします。

    「税理士を守る会」では、そのような観点から作成した契約書式集を提供しています。

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  • 税賠で因果関係なしとして税理士勝訴した裁判例

    2021年07月16日

    今回は、税理士損害賠償で、納税者が修正申告によって損害を被ったとして訴えた事件について、税理士が勝訴した事例です。

    東京地裁平成2年8月31日判決(TAINS Z999-0004)です。

    (事案)

    依頼者は、駐車場経営をしていたところ、貸し駐車場を買い換えることとし、買換をしました。

    その際、税理士に助言を求め、過去10年以上にわたり砂利敷きロープ張りの状態で約30台を収容する貸駐車場を経営してきたが、本件駐車場についても、これと同様な状態で継続的に事業の用に供していくものであるとの説明をした。

    税理士は、このような状態であれば、租税特別措置法37条1項の「特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例」の趣旨に合致し、脱税を図るものでもないので、本件特例の適用を受けられるものと判断し、依頼者にに対し、両駐車場の写真を撮影して証拠資料を確保しておくように指示し、特例を適用して確定申告書を作成し、申告をした。

    その後、依頼者は、税務署から呼び出され、買換資産を駐車場として利用する場合に本件特例の適用を受けるためには、コンクリート又はアスフアルト舗装がなされ車止めが設けられていることが必要であり、砂利を敷いてロープを張つているだけの本件駐車場については本件特例の適用は認められないから、依頼者ら全員について右特例の適用がないものとして昭和61年分の所得税の修正申告をするように勧められた。

    本件特例に関する国税庁の通達(措通37-21)によれば、買換えにより取得した資産を事業の用に供したかどうかの判定について、「空閑地(運動場、物品置場、駐車場等として利用している土地であつても、特別の施設を設けていないものを含む。)である土地、空家である建物等は、事業の用に供したものに該当しない。」とされていた。

    依頼者は、税務署の指導に従って修正申告をした上で、被った損害について、税理士に損害賠償を請求した。

    (判決)

    本件特例の適用が認められる要件は、租税特別措置法37条に規定するところであつて、同条の「買換資産」に該当するためには、「事業の用に供したもの」であることを要するが、右要件に該当するか否かは、当該資産の従前の利用状況、当該資産の形態等を総合して客観的に判断されるべきことであり、駐車場について、舗装及び車止めの施設の有無が、その要件でないことはいうまでもない。

    本件通達が、「空閑地(運動場、物品置場、駐車場等として利用している土地であつても、特別の施設を設けていないものを含む。)である土地は、事業の用に供したものに該当しない。」としたのは、このような土地については、「事業の用に供した」ことが客観的に明らかでないことが多く、同条の適用を認めることが難しいとの税務行政上の解釈指針を示したものにすぎない。

    そして、税務署がする修正申告の勧めは、あくまで納税者の自発的な申告を促すものであり、それ自体に、何ら強制力を持つものでないから、納税者がこの勧めに応じて修正申告をするか否かは、当該納税者が自らの責任において判断決定すべきことであつて、修正申告により確定した納税義務が、申告者以外の者の行為によつたというためには、その者の行為が、当該修正申告をするために直接的な契機になつた場合などの特別な事情のある場合に限られるというべきである。

    そして、本件において、原告らが、損害を被つたと主張する本件納付金の納付が、原告らの修正申告によるものであること、本件駐車場は、譲渡資産である駐車場と同様に、砂利敷きでロープを張つたものであり、譲渡資産と施設の状態に差異がなかつたこと、原告は譲渡資産を利用して過去10年以上駐車場業を営んでおり、右の土地と買換資産の利用状態がほぼ同一である以上本件特例の適用が認められるとする被告の判断にも相当な根拠が存すること、右修正申告をすることについては、被告はこれに反対であつて、当初の申告を維持して更正処分がされた場合には不服申立てをして争うことを勧めたが、原告らは、被告の意向に反し、修正申告をすることとし、原告Aについては被告に依頼し、その余の原告らについては自ら修正申告書の提出をしたことは、前示のとおりである。

    右の経緯に鑑みると、本件納付金の納付は、原告らが自らの責任においてした修正申告の結果であり、被告の申告指導が、右申告につき、直接的な契機をなすなどの特別な事情が存すると認めるに足りず、結局、被告の行為は、原告らの主張する損害との間に相当因果関係を欠くものというべきである

    ===================

    以上です。

    本件でのポイントは、

    ●税理士は特例に関する通達の要件を満たすよう助言しなかったが、それでも特例は適用されると判断した

    ●税理士の判断には相当の根拠がある

    ●依頼者が特例の適用が受けられなかった不利益は、依頼者の責任においてした修正申告の結果であり、税理士の行為と損害との間に相当因果関係はない

    ということです。

    税理士の助言内容が税法解釈上正しいかどうか、また、通達の適法性について判断することなく結論を導いています。

    税理士が、申告代理をし、後日税務調査が行われた時に、別の税理士が対応して修正申告をする場合があります。

    そして、その結果、損害を被ったとして前任税理士に損害賠償請求をするケースがあります。

    この場合に、当該修正申告が正しいことを前提に議論が進む場合がありますが、その前に、「修正申告の必要があったかどか」を検討することが大切です。

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  • 税理士の名義貸しの判断基準

    2021年07月08日

    今回は、税理士の名義貸しについて、考えてみたいと思います。

    名義貸しは、税理士法37条の2です。

    同条は、

    「税理士は、第五十二条又は第五十三条第一項から第三項までの規定に違反する者に自己の名義を利用させてはならない。」

    と規定しています。

    同法52条は非税理士による税理士業務であり、53条1項から3項は、非税理士による税理士等の名称使用です。

    名義貸しの典型的な事例としては、税理士業務の停止又は税理業務の禁止の懲戒処分中の税理士から頼まれて、当該税理士が作成した税務書類に名前を貸して署名押印をする行為や非税理士が作成した税務書類に税理士が名義を貸して署名押印等をする行為です。

    では、具体的な事例において、名義貸しに該当するかどうかをどう判断したらよいでしょうか。

    それは、

    ・税理士が作成した税務書類なのか

    ・非税理士等が作成した税務書類なのか

    ということです。

    この点、税理士法基本通達2-5は、

    「法第2条第1項第2号に規定する『作成する』とは、同号に規定する書類を自己の判断に基づいて作成することをいい、単なる代書は含まれないものとする。」

    と規定しています。

    つまり、ポイントは、「税理士が自己の判断に基づいて税務書類を作成したかどうか」ということになります。

    この判断基準から、以下の行為は、課税標準等の計算など税務書類を作成するための判断を税理士が行っておらず、非税理士が行っていることから、名義貸しに該当することとなります。

    (1)非税理士が下書きしたものを税理士がパソコンで入力して税務書類を作成して署名押印した場合

    (2)非税理士が作成した税務書類を税理士が転記ミスのチェックのみをして税務書類を作成して署名押印した場合

    (3)税理士業務の停止または禁止の処分を受けている者が作成した税務書類に署名押印した場合

    (参考)「3 税理士が遵守すべき税理士法上の義務等と懲戒処分}国税庁HP、問3-16

    https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/ihan/qa03.htm#a3-12

    以上の判断基準を参考に、日常業務において、名義貸しかどうかを判定していただければと思います。

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  • 【所長税理士向け】職員の不正行為で懲戒処分にならないために

    2021年06月25日

    会計事務所の職員が所長税理士の知らないところで不正をした場合に、所長税理士が懲戒処分を受ける可能性があることをご存じでしょうか。

    税理士法は、税理士が脱税相談をした場合、書面添付における添付書面に虚偽の記載をした場合、税理士法に違反した場合、国税若しくは地方税に関する法令の規定に違反した場合に懲戒処分をすることができる旨規定している(税理士法46条)。

    つまり、税理士法に違反すると、懲戒事由に該当する、ということです。

    そして、税理士法41条の2は、「税理士は、税理士業務を行うため使用人その他の従業者を使用するときは、税理士業務の適正な遂行に欠けるところのないよう当該使用人その他の従業者を監督しなければならない。」と規定していますので、職員に対する監督義務を怠ると、懲戒事由に該当する、ということになります。

    私の弁護士法人は、「税理士を守る会」を運営しているので、税理士が国税局の税理士専門官による調査を受けるという相談も寄せられます。

    そして、税理士には、調査を受ける理由が見当たらない、という場合には、職員の不正行為が疑われている、という場合が多いのです。

    では、何をしておけば、職員に対する監督義務を履行したといえるでしょうか。

    主には、つぎようなことです。

    (一)就業規則、服務規律、業務マニュアル、誓約書等の整備

    (二)相談、連絡、報告の徹底と証拠化

    (三)守秘義務その他の税理士法、関係法令などの職員研修

    このうち、難しいのが(三)の職員研修です。

    税理士が、税理士法(非税理士業務の禁止、脱税相談の禁止、違法行為を是正する助言義務、名義貸し、守秘義務、懲戒事例の確認)、税理士法以外(マイナンバー法、不正競争防止法(営業秘密)、犯罪収益移転防止法)などを研究して、それを職員に講義する、となったら、多大な時間と労力を要するでしょう。

    しかし、国税局からの調査では、職員に対する教育はどうしているのか、と聞かれます。

    したがって、履行しておくことが望まれます。

    そこで、今回、「会計事務所職員の研修プログラム」を作りました。

    6月29日まで【2万円引き!】です。

    どんな内容か、一度ご覧ください。

    https://myhoumu.jp/compliancelp/

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  • 税務調査の非協力と仕入税額控除の否認

    今回は、税務調査の非協力と仕入税額控除の否認について解説します。

    最高裁平成16年12月16日判決(百選第6版89事件)です。

    (事案)

    ●納税者は、大工工事業を営む個人事業者です。

    ●平成2年分確定申告について、税務調査がありましたが、納税者は、税務職員が帳簿書類を提示して調査に協力を求めたにもかかわらず、一部領収書を提示しただけで、その余の帳簿書類の提示を拒否し、調査に協力しませんでした。

    ●そこで、税務署長は、提示されなかった部分の課税仕入れについては、消費税法30条7項の「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に該当するとして、消費税額の控除を否認しました。

    (争点)

    ●税務調査の際に、納税者が仕入税額控除に係る帳簿又は請求書等を提示しなかった場合に、消費税法30条7項の「保存しない」場合に該当するか?

    (判決)

    ●消費税法30条7項(仕入れに係る消費税額の控除)の規定の反面として、事業者が帳簿又は請求書等を保存していない場合には同条1項が適用されないことになるが、このような法的不利益が特に定められたのは、資産の譲渡等が連鎖的に行われる中で、広く、かつ、薄く資産の譲渡等に課税するという消費税により適正な税収を確保するには、帳簿又は請求書等という確実な資料を保存させることが必要不可欠であると判断されたため。

    ●消費税法30条7項(仕入れに係る消費税額の控除)は、当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等が税務職員による検査の対象となり得ることを前提にしているものであり、事業者が、国内において行った課税仕入れに関し、同法30条8項1号所定の事項が記載されている帳簿を保存している場合又は同条9項1号所定の書類で同号所定の事項が記載されている請求書等を保存している場合において、税務職員がそのいずれかを検査することにより課税仕入れの事実を調査することが可能であるときに限り、同条1項を適用することができること
    を明らかにするものである

    ●消費税法30条7項(仕入れに係る消費税額の控除)に規定する帳簿又は請求書等を整理し、これらを所定の期間及び場所において、同法62条(当該職員の質問検査権)に基づく税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合は、同法30条7項にいう「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に当たる

    ===================

    消費税法の文言は、「保存しない場合」となっています。

    そこで、保存はしているが、税務調査で提示しない場合が、「保存しない場合」に該当するかどうかが問題となります。

    この点、裁判所は、保存は、税務調査で検査できることを前提とするものなので、税務調査で検査できないような保存状態である場合には、保存しているとは言えない、という判断をしました。

    したがって、税務調査において請求書等を提示拒否した場合には、仕入税額控除が否認される結果となります。

    同じ論点が青色申告承認取消にもあります。

    税務調査で帳簿書類を提示しない場合には、やはり「保存してない」と認定され、青色申告承認も取り消されることになります(最高裁平成17年3月10日判決)。

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  • 税賠で税理士勝訴したが、なお注意

    2021年05月14日

    今回は、税賠で税理士が勝訴した裁判例をご紹介します。

    委任契約成立の有無が争われた事例です。

    東京地裁平成27年5月19日判決(判例秘書登載)です。

    (事案)

    ●税理士は、A社、B社と顧問契約を締結していた。

    ●原告Xは、両社の代表取締役であり、Xの妻である原告X2は、両社の取締役である。

    ●X及びX2は、共有の居住用不動産を売却し、譲渡損失が生じたが、損益通算ができないものであった。

    ●原告らが被告税理士Yに対し、相談したところ、Yは、居住用不動産買換特例の適用を受けることで損益通算ができる可能性があると回答した。

    ●Xらは、Yの助言に基づき、A社から借り入れることとし、その後B社からの借入に変更したが、それぞれYに対し、特例の適用ができるかどうか、確認した。

    ●Xらが不動産を購入し、買換特例の適用を受けることを前提とした確定申告書を作成し、税理士Yに確認を求めたが、Yからは、特段の問題意識は伝えられなかった。

    ●後日税務調査があり、特定の適用が否認され、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けた。

    ●なお、Xらは、税理士Yに対し、過去に不動産や株式について、何度か税務相談をしたことがあった。

    (争点)

    (1)原告らと被告との間の税務顧問契約の有無
    (2)原告らと被告との間の委任契約の有無及びその内容
    (3)不動産の売却に関する損益通算に関して、原告らに対して、被告が誤った説明をしたか。

    (裁判所の判断)

    (1)原告らと被告との間の税務顧問契約の有無

    過去に被告が無償で原告らの税務相談に応じたことがあるものの、その回数が多いわけではなく、かつ、その多くは被告と税務顧問契約がある会社との関係がある事柄の税務相談であること、原告らは、本件における不動産の売却を踏まえた原告らの確定申告についても、被告に委任することなく行っていることからすると、直ちに、原告らと被告との間で包括的な税務顧問契約が成立していたと認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

    (2)原告らと被告との間の委任契約の有無及びその内容

    相談料の有無・金額の確認等をした形跡はないこと、経理担当者から損益通算の適用の有無を正確に判断するための売買契約書、過去の確定申告書等の資料を送付されていないこと、原告らからは、税理士事務所職員に対し、損益通算をした場合の試算がされたものが送付された過ぎないことからすると、職員において損益通算の可否についての確定的な回答が得られるものではないことは明らかであり、業務としての税務相談の回答を求めたものと認めることができない。

    3)不動産の売却に関する損益通算に関して、原告らに対して、被告が誤った説明をしたか。

    不動産の損益通算に関して、原告らと被告との間には何らの契約関係も認めることができないのであるから、被告に契約上の義務違反を認めることができない。また、税理士事務所職員は、確定的な回答をしているわけでもなく、A社の経理担当者も確定的な回答を求めたと認めることはできないのであるから、その回答の適否如何を問わず、税理士事務所職員に過失は認められないのであって、被告に債務不履行も不法行為も認めることはできない。

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    以上です。

    本件では、顧問先会社の代表者との顧問契約や税務相談の委任契約を否定しました。

    しかし、役員との無償の顧問契約を認定した裁判例もあります(東京地裁平成12年6月30日判決、TAINS Z999-0066)。

    したがって、あくまで事例判断であり、かつ、本件事実関係と同様の事案においても、顧問契約や委任契約が否定されるとは限らないことをご注意ください。

    なお、委任契約は、無償でも成立します。

    したがって、やはり、税賠対策は、必須です。

    「税理士を守る会」は、こちら
    https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/