時計を止めるな
広大な砂漠の真ん中の村に豊かな水と果物を蓄えた井戸があった。
そのおかげで村は何百年もの間、繁栄し続けてきた。
この村に住む人々は、井戸を「永遠の泉」と呼んでいた。
村の中央には砂時計があり、村の人々はこの砂時計を見ながら時間を測り、日々の暮らしを営んでいた。
しかし、ある時から水が少しずつ減り始めた。
村人たちは、永遠の泉の井戸を覗き込んで首をかしげたが、「きっとすぐに元に戻るだろう」と楽観視し、いつもの生活を続けた。
しかし、シゲルだけは夜に静かに井戸を見つめ、つぶやいた。
「新しい水源を探しに行かなければ。」
だが村人たちは彼の言葉に耳を貸さなかった。
「この井戸は何百年も村を豊かにしてくれた。これからも変わらないさ。」
それでもシゲルは、「変わらないものなんて存在しない。動かなければ何も変えられない。」と決意し、砂漠の果てへと旅立った。
砂漠の旅は過酷であり、シゲルは、「自分の決断は間違いだったのではないか」と何度も自問した。
数ヶ月後、ボロボロになったシゲルは砂漠の向こうで、澄んだ湖と緑の木々が広がり、冷たい水が流れているオアシスを見つけた。
そこには数十人の人たちが幸せそうに暮らしていた。
シゲルは急いで村へ戻り、皆にこのことを伝えた。しかし、村人たちは言った。
「信じられない。何百年も変わらなかった井戸が、今さら枯れるはずがない。」
しかし、井戸の水はついに完全に枯れ、村は砂嵐の中で朽ち果て始めた。その時になって、村人たちは初めて恐怖に駆られたが、時すでに遅かった。
村人たちは、生き延びることができなかった。
シゲルは、村の中央の砂時計を見た。
砂時計の砂は、全て落ちてしまっていた。
「変化を恐れず、一歩を踏み出そう」
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