自転車事故が増加!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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自転車事故が増加!?

2011年02月17日

東北太平洋沖地震による交通難の影響で、自転車の売れ行きが上々だと言う。

確かに街を歩いていると、なんとなく自転車の数が多いような気がする。

しかし、自転車に乗っている人が、道路交通法を守っているか、と言えば、それは疑問である。

自転車は、道路交通法では、軽車両に該当する。

したがって、軽車両として種々の義務が課せられている。

知らずに自転車に乗っていると、道路交通法違反で罰則を受けることになる。

以下に、自転車の運転手に課せられた主な義務を列記してみる。

・自転車が歩道を走って良いのは例外的場合である。

 道路交通法上、自転車は軽車両であり、車道を走るのが原則である。例外的に歩道を走って良いのは、以下の場合だ。

 ①自転車走行帯や道路標識等で許されている場合
 ②運転者が13歳未満の子供や70歳以上の高齢者、あるいは身体の不自由な人の場合
 ③車道又は交通の状況からみてやむを得ない場合

 これに違反した場合、2万円以下の罰金又は科料が科せられる。

・自転車は左側通行だ。

 これに違反した場合、3ヶ月以上の懲役又は5万円以下の罰金が科せられる。

・酒酔い運転は禁止だ。
 
 自転車も軽車両である以上、酒に酔って運転してはいけない。酒に酔ってふらふらしながら自転車を運転している人を見かけるが、法律違反だ。
 これに違反した場合、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金だ。結構重い。

・2人乗りは禁止だ。

 これに違反した場合、2万円以下の罰金又は科料が科せられる。

・自転車同士で横並びで走ってはいけない。

 友だち同士で横に並んで走っているのを見かけるが、法律違反だ。
 これに違反した場合、2万円以下の罰金又は科料だ。

・夜は前照灯及び尾灯をつける。

 これが点灯していないと、ほぼ間違いなく警察官に呼び止められる。
 これに違反した場合、5万円以下の罰金だ。

・傘を差したり、携帯電話で通話したりしながらの運転は禁止だ。

 そば屋の出前が肩にそばを担いで自転車をこぐのも禁止だ。
 これに違反した場合、5万円以下の罰金だ。

・ブレーキがない自転車(競技用自転車)は道路で走行してはいけない。
 
 これに違反した場合は、5万円以下の罰金だ。

以上は主な義務であるが、是非とも守って欲しい。

これらに違反した場合は、事故になりやすい。

最近、自転車事故が増えているようだ。

警察庁の統計データによると、2009年の交通事故全体件数に占める自転車事故の割合は、21.2%という。

そして、交通事故全体での死傷者数に占める自転車事故での死傷者数の割合は、14.1%ということだ。

自転車事故が結構な割合を占めている。

自転車対歩行者の事故については、1999年には、801件だったのが、2009年には、2900件にもなっている。

自転車の場合、自動車よりも軽く考えてしまいがちであるが、自転車が歩行者と衝突し、歩行者が怪我をしたり、亡くなったりした場合には、刑事事件や民事事件に発展する。

刑事事件としては、重過失致死傷罪、過失致死罪、過失傷害罪の可能性がある。

重過失致死傷罪が5年以下の懲役もしくは禁錮又は100万円以下の罰金だ。

過失致死罪は50万円以下の罰金。過失傷害罪は30万円以下の罰金又は科料だ。

民事事件では損害賠償問題が発生する。

自転車事故でも歩行者が転んだ場合には、頭を打つ危険がある。

打ち所が悪いと死亡したり、重度後遺障害が残る場合がある。

その場合、損害賠償額が多額になる。

これまでのニュースでは、損害賠償額が6008万円、5000万円などの判決が下されている。

しかし、場合によっては、損害賠償額は、自動車事故の場合と同様、1億円や2億円を超える場合もあり得るだろう。

そのような多額の損害賠償義務を負った場合、加害者は支払いきれるだろうか。

そして、ここが致命的な点であるが、自転車の場合には、自動車のような強制保険である自賠責保険がない。

また、ほとんどの人は任意保険にも入っていない。

したがって、個人で負担せざるを得ず、ほとんどの人は、一生かかっても払いきれない債務を負担することになるのだ。

加害者側はまだいい。

一生かかって払い続けるのは自己責任だ。

しかし、被害者はどうなるのか?

脳挫傷や脊髄損傷で、寝たきりになった場合、毎月安くない介護費用などがかかる。生活費は誰が負担するのだろうか。

事故に責任がない歩行者が、事故の後遺症で寝たきりにさせられ、その上、介護も満足にしてもらえず、生活もできない状態にされてしまう可能性があるのだ。

そのような事態は、絶対に避けなければならない。

事故を起こさないことはもちろんだが、万が一の場合を考え、自動車保険やその他の保険い付帯する個人賠償責任保険を付保し、被害者の被害を保険で補えるようにしておくべきだ。

また、国は、自動車保険と同じように、自転車にも、自賠責保険のような強制保険制度を作るべきだ。

重大事故が多発してからでは遅い。

今すぐ着手して欲しいものである。