少年院から逃走は逃走罪ではない? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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少年院から逃走は逃走罪ではない?

2011年07月18日

13日に、大阪府の浪速少年院から、入所中の少年(18)が、脱走したそうです。

鉄格子を切り、有刺鉄線を乗り越えて脱走した模様。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/522827/

警察は、建造物損壊容疑で逮捕状を取り、全国に指名手配したとのことです。

ところで、刑務所から脱走すると、逃走罪(拘禁場を損壊すれば加重逃走罪)が成立します。

刑法97条
裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、1年以下の懲役に処する。

刑法98条
前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場もしくは拘束のための器具を損壊し、暴行もしくは脅迫をし、又は2人以上通謀して、逃走したときは、3月以上5年以下の懲役に処する。

今回の容疑は、逃走罪ではなく、建造物損壊容疑です。

つまり、鉄格子を損壊した、ということです。

なぜ逃走容疑ではないかというと、脱走者が少年だからです。

逃走罪は、「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」で規定する刑事収容施設に収容されている者に適用される罪です。逮捕されて勾留されている者、裁判で有罪が確定して収容されている者などです。

今回は、少年院からの脱走ですが、少年院は、刑事収容施設ではなく、逃走罪は成立しません。

少年院は,家庭裁判所から保護処分として送致された少年に対し,社会不適応の原因を除去し, 健全な育成を図ることを目的として矯正教育を行う法務省所管の施設とされています。

そこで、建造物損壊容疑で逮捕状を取った、ということだと思います。

刑務所からの脱走は、映画では良く見ますけど、現実に脱走する人はほとんど聞きません。

本当にやるとは驚きです。

本人は、逃げて生き延びるのに必死だと思うので、周辺住民は気をつけていただきたいと思います。

少年院においては、施設管理をより一層徹底していただきたいと思います。