キツネと肉まんの物語
シロクマ君は、朝、その日の食事を買い出ししようと街の市場に出掛けていった。
どこの店も開いていたが、とりあえずタヌキ君の店に行ってみると、肉まんがたくさんあった。
シロクマ君が値段を尋ねると、タヌキ君は、「500円だよ」と言った。
シロクマ君はビックリした。
普段は、100円で売っている肉まんだったのだ。
シロクマ君は「そんな値段じゃ買えないよ。100円で売ってくれよ」と言った。
タヌキ君は、「実は、父親の借金の返済をしないといけないから、お金がいるんだ。100円で売っていたら、足りないんだよ」と答えた。
シロクマ君は、「100円だったら買ってもいいけど、500円と言い張るなら、ウサギ君の店で買うことにするよ」と言った。
タヌキ君は、その日、まだ肉まんが売れていなかった。100円ではお金は足りないが、ここでシロクマ君を逃すよりも、買ってもらって少しでもお金を稼いだ方が得ではないか、と思った。
そこで、タヌキ君は、シロクマ君に100円で肉まんを売った。
キツネ君は、その日、朝から何も食べていなかった。
夕方、どうしようもなくお腹がすいたので、街の市場に出掛けていった。
すでに遅い時間だったので、ほとんどの店は閉まっていたが、タヌキ君の店だけが開いていた。
早速、タヌキ君も店に行ってみると、肉まんが1つだけ残っていた。
キツネ君が値段を尋ねると、タヌキ君は、「500円だよ」と言った。
キツネ君は、ビックリした。
普段は、100円で売っている肉まんだったのだ。
しかし、キツネ君は、お腹がすいて、どうしようもなかったので、「どうしても肉まんが欲しいんだ。100円で売ってくれよ」と懇願した。
しかし、タヌキ君は、「ダメダメ。最後の肉まんなんだよ。500円出すなら売ってあげるよ」と言ってきかない。
キツネ君は周囲を見渡したが、どこの店も閉まっていて、開いているのは、やはりタヌキ君の店しかなかった。
キツネ君は、どうしてもその肉まんが欲しかったので、500円払って肉まんを買って大事そうに食べた。
この話からわかることは、交渉をするときには、「絶対にこの交渉を決裂させたくない」と、強く思えば思うほど、交渉力は弱くなる、ということだ。
キツネ君は、どうしても肉まんが欲しかったがゆえに、譲歩せざるを得なくなり、500円で肉まんを買ってしまった。
しかし、シロクマ君は、別の店でも食べ物を買うことができたので、交渉が決裂しても構わない立場だった。
だから、譲歩する必要がなかった。
このように、交渉するときには、「交渉が決裂した時の代替措置」を準備しておくことが重要だ。
そうすれば、強い立場で交渉することができるだろう。