自殺に関与すると犯罪!?
2017(平成29)年10月末、神奈川県座間市のアパートの一室から9人の遺体が見つかった事件。
みなさんご存知のように、その後の続報で自殺サイトの関係が指摘されています。
自殺サイトとは、インターネット上で一緒に自殺する者を募ったり、自殺の手段を教えたりするサイトで、過去にはサイトを通じて知り合った人が集団自殺するケースが社会問題化したり、複数人が殺害されるという事件も起きています。
そこで今回は、自殺に関連する法律について解説します。
「ネットで知り合った男性と自殺図り死なす 自殺幇助容疑で33歳男を逮捕」(2017年11月10日 産経新聞)
車の中で練炭を使い、同乗の男性と心中しようとしたとして、山梨県警南アルプス署は自殺幇助(ほうじょ)の疑いで、自称住所不定、無職の容疑者の男(33)を逮捕しました。
報道によりますと、事件が起きたのは、2017年11月4~5日。
男は、南アルプス市芦安芦倉の河川敷に駐車中の軽ワゴン車の中で練炭を燃焼させ、当時38歳の都内在住の男性と一緒に自殺を図り、男性を一酸化中毒で死亡させたとしています。
5日午後3時25分頃、通りがかりの男性が河川敷に不審な車を発見。
これを聞いた別の男性が車内を確認後、「人が倒れている」と警察に通報。
同署員が駆けつけたところ、容疑者の男は意識があったため甲府市内の病院に搬送され、体調の回復を待って8日に逮捕したようです。
容疑者はインターネットを通じて男性と知り合ったと供述し、容疑を認めているということです。
まずは関係する条文を見てみましょう。
「刑法」
第202条(自殺関与及び同意殺人)
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。
自殺関与については、「自殺教唆罪」と「自殺幇助罪」があります。
人を教唆(きょうさ)するとは、そそのかすことです。
そそのかして決意させて、自殺させた場合は自殺教唆罪です。
人を幇助(ほうじょ)するとは、手助けをすることです。
すでに自殺の決意をしている人を幇助して自殺させた場合は自殺幇助罪になります。
同意殺人については、人の嘱託(頼んで任せること)、依頼を受けてその人を殺害した場合は「嘱託殺人罪」、人の承諾、同意を得てその人を殺害した場合は「承諾殺人罪」となります。
自殺関与と同意殺人の違いとは、行為者が直接手を下したかどうかで区別されます。
たとえば服毒自殺の場合、自殺を決意している人に毒薬を提供すれば自殺関与となり、自殺を決意している人から依頼を受けて毒薬を飲ませれば同意殺人となります。
座間の事件では、被害者が自殺を決意していない場合や自殺を決意していても、同意や頼まれもしないのに殺してしまった場合などは殺人罪になりますが、仮に被害者が自殺を決意していれば、容疑者の行為、被害者が死亡に至った経緯や原因によって、上記の4つのいずれかが適用されることになるでしょう。
冒頭に紹介したニュースの事件では、同意に基づいて心中を試みたが一方が生き残ったため、死亡した男性の自殺を幇助したとして、容疑者が自殺幇助の疑いで逮捕されたということです。
入水や首吊り、服毒、焼身、飛び降りなど、古今東西さまざまな心中事件が起きていますが、一方が生き残ったケースでは、たとえ自身が手を下して相手を殺害したのではなく、自らも自殺を試みたのだとしても、法律的には犯罪性が消滅する理由にはならないということは覚えておいてください。