卑わいな言動(迷惑防止条例)は、危ない
今回は“おもちゃ”を使った犯罪について解説します。
おもちゃはおもちゃでも……
「“驚くのが快感”玩具使って下半身露出装う 古物商の63歳男を書類送検」(2017年10月30日 産経新聞)
大阪府警枚方署は、枚方市の古物商の男(63)を大阪府迷惑防止条例違反(ひわいな言動など)の疑いなどで書類送検しました。
事件があったのは、2017(平成29)年3月30日と6月27日の午前。
男は枚方市の路上で、男性器を模した玩具を使い下半身を露出したように装ったということです。
同署によると、男は実際には衣服は脱いでいなかったものの、周辺の防犯カメラの画像などから容疑者として浮上したようです。
男は、「2年半ぐらい前からやっている。女性に見せると相手が驚くのが快感だった」などと供述し、容疑を認めているということです。
迷惑防止条例は名称に違いはありますが、現在47の都道府県すべてで定められています。
その目的は、各都道府県民に対する迷惑行為や暴力行為などを防止し、生活の安全と秩序を維持することとなっています。
「大阪府迷惑防止条例」
第6条(卑わいな行為の禁止)
1.何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
四 前三号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること。
これに違反した場合は、6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第17条1項2号)
とは言え、今回は、局部を露出したわけではなく、局部を露出したように装っていただけで、見えていたのは、おもちゃです。
一体何が「卑わいな言動」だったのでしょうか。
最高裁平成20年11月10日判決を見てみましょう。
この事件は、平成18年7月21日午後7時ころ,旭川市内のショッピングセンター1階の出入口付近から女性靴売場にかけて、当時27歳の女性客の少なくとも約5分間、40m余りにわたって付けねらい、背後の約1ないし3mの距離から、右手に所持したデジタルカメラ機能付きの携帯電話を自己の腰部付近まで下げて、細身のズボンを着用した同女の臀部を同カメラでねらい、約11回これを撮影した、というものです。
北海道の迷惑防止条例違反に問われた事件です。
要するに、女性の臀部をズボンの上から撮影した、ということです。
この事件で、最高裁は、「被告人の本件撮影行為は、・・・・社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らかであり、これを知ったときに被害者を著しくしゅう恥させ、被害者に不安を覚えさせるものといえる」として、有罪にしています。
この基準から考えると、たとえ身体を露出していないとしても、男性器を模した玩具を使い下半身を露出したように装う行為は、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らかであり、これを知ったときに被害者を著しくしゅう恥させ、被害者に不安を覚えさせるものといえるでしょう。
そこで、迷惑防止条例に違反する、と判断されたのでしょう。
ちなみに、過去の報道で、迷惑防止条例違反に問われたものには、次のようなものがあります。
・帰宅途中の小学1年生の女児(6)に声をかけ、腕や腰を触った69歳の男が群馬県迷惑防止条例違反(卑猥な行為の禁止)の疑いで逮捕。
(2017年5月28日 産経新聞)
・2011(平成23)年6月、17年前から約4000人の女児に「唾の研究をしている」などと声をかけ、500人以上の唾を収集していた男が東京都迷惑防止条例違反(常習ひわい行為)容疑で逮捕。
(2017年1月24日 産経新聞)
・靴に仕込んだ小型ビデオカメラで小学生女児のスカートの中を撮影しようとした男が大阪府迷惑防止条例違反(ひわいな言動)容疑で逮捕。
(2014年7月20日 産経新聞)
・10年間毎日、若い女性にわいせつな電話をかけ続けていた男(72)が、奈良県迷惑防止条例違反容疑で逮捕。
(2016年12月19日 産経新聞)
・側溝の中で寝そべり、側溝のふた越しに女性の下着を仰ぎ見ていた男が兵庫県惑防止条例違反容疑で逮捕。
(2015年12月7日 産経新聞)
実際に触ったり、局部を露出したり、というようなことをしなければ迷惑防止条例に違反しないと思っている人もいるでしょうが、「卑わいな言動」というのは意外に広い概念です。
他人が嫌悪するような行為は法律違反になる可能性があるので、いたずら半分に行わないように気をつけましょう。