市長と副市長の賭けマージャンは犯罪になるか?
今回は、現役の市長と副市長が市役所の開庁中に賭け事をしていたという報道について法律解説します。
この行為、犯罪になる可能性はあるのでしょうか?
「飯塚市長、賭けマージャン 平日昼に、副市長と」(2016年12月22日 西日本新聞)
福岡県飯塚市の市長と副市長が、平日昼に市庁舎を離れ、賭けマージャンを繰り返していたことがわかったようです。
新聞社の取材に対し、市長は、「市長になってから行っていた。何回かはわからない。開庁中に(役所を)抜け出してマージャンをしていたのには道義的責任がある」と回答。
また、副市長は、平日午後の公務が入っていない時、秘書に「昼から休む」と告げてマージャンを楽しんでおり、「決裁が滞ることはなく、公務に支障はなかったが、道義的責任は残る」と話しているということです。
報道によると経緯は次の通りです。
・市長は地元食品メーカーの社長から2006年に初当選(現在、3期目)。副市長は市財務部長を経て2010年から現職
・市長は就任以降の約10年間、副市長は数年前から市内にある元店舗に訪れており、店は2人が来る時だけ開いていた。
・メンバーには、2017年4月に市施設の指定管理者となる事業者の社長も含まれていた。市長と副市長とは以前からの知り合いで、「指定の口利きをお願いしたことは一切ない」と話している。
・今年に入り、副市長が面識のない人物から自身が店に出入りする画像を提示され、「善後策を福岡市内のホテルで考えましょう」と迫られたため、飯塚署に相談していた。金銭的な要求などはなかったという。
・市長は、会見で記者から賭けマージャンの違法性を指摘されたところ、「金を賭けずにマージャンをする人が世の中に何%いるのか。(賭けることを認めないと)マージャン人口が減るのでは」、「違法である可能性があることはわかっているが範囲があり、今回は許される範囲内だと思う」と強弁。
また、副市長は、「ゲーム感覚だった。ゴルフでチョコレートを賭けるようなもの」、「平日の開庁時間に賭けマージャンをしたことは道義的に責任がある。ただ、楽しみは何かないと。違法というのは違うと思う」と述べ、2人とも賭けを正当化するかのような発言もあった。
・賭けのレートは、「大きく動いても1日に1万~1万2000円程度。社会通念上許される範囲だと思っている」、「メンバーである知人には便宜供与を図ったことは一切ない」、「急に辞めるのは無責任だ。自分の任期はぴしっと(やる)」と市長が発言。
・ところが、12月26日の定例記者会見では一転。2人とも発言を撤回し、謝罪。市政治倫理審査会を年明けに設け、辞職を勧告された場合は従うと発言した。
今回の賭けマージャンが賭博罪に該当するか、どうか、検討してみましょう。
「刑法」
第185条(賭博)
賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
ポイントとなるのは、「一時の娯楽に供する物」です。
判例や通説では、一時の娯楽に供する物とは、食事、飲み物、お菓子、タバコなど、その場で消費してしまうような物のことをいいます。
厳密にいえば、法律では1円でも賭けをすれば違法です。
「金銭そのものは、一時の娯楽に供する物とはいえない」とする判例もあります。(最判昭和23年10月7日刑集2巻11号1289頁)
したがって、判例の立場からすると、今回の賭けマージャンは、賭博罪が成立する、ということになるでしょう。
ただ、一般的には少額の金銭を賭けている分には、警察が動くことは少ないでしょう。
そうであるからといって、賭けマージャンが許されるわけではありません。
この犯罪が守ろうとしているのは、国民一般の健全な勤労観念や国民経済等の公益ですから、それらを損なわないような明確な金額など、一定の線引きも必要ではないか、と思います。