コンビニが下請法違反!?
親事業者が、取引先の下請け企業に支払う金額を不当に減額していたことが問題になったようです。
今回は「下請法」について解説します。
「下請け代金6億5千万円を不当減額 ファミリーマートに勧告 公取委」(2016年8月25日 産経新聞)
公正取引委員会は、コンビニエンスストア大手のファミリーマートに対し、下請法に違反したとして取引業者への代金返還と再発防止を勧告しました。
ファミリーマートは、おにぎりや弁当などのプライベートブランド(PB)商品の製造を委託している業者20社に支払う代金から、総額約6億5000万円を不当に減額していたようです。
報道によると、ファミリーマートは2014(平成26)年7月~2016(平成28)年6月、新規開業店舗のオープンセールで、PB商品の製造委託業者に対し、売れ残ったPB商品の代金の一部を「開店時販促費」として負担させ、下請け代金を不当に減額。
他にも、「カラー写真台帳」と呼ばれる店舗向け新商品案内の製作費を負担させたり、期間限定の割引セール対象商品の値引き相当額を負担させたりしていたようです。
なお、返還額としては、勧告内容の公表が始まった2004(平成16)年以降で4番目の大きさになるということです。
下請法は、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といいます。
親事業者が下請事業者に商品の製造などを委託・発注する場合、どうしても親事業者のほうが優越的地位にあるため、取引金額を不当に減額されたり、支払いが遅延することがあります。
それは、そうでしょう。
親事業者から「安くしろ。そうしないと、あんたの会社とは取引を打ち切るぞ」と言われたら、下請事業者はその要求に応じないわけにはいきません。
交渉力が全く違いますね。
こうした事態を防ぎ、下請事業者の利益を保護し、取引の適正化を推進するために、1956(昭和31)年6月に下請法が施行されました。
今回のケースは、第4条第1項第3号の「下請代金の減額の禁止」に当たります。
では、条文を見てみましょう。
「下請代金支払遅延等防止法」
第4条(親事業者の遵守事項)
1.親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
三 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。
この第4条では、「親事業者の禁止行為」について定めているので、以下にまとめておきます。
①受領拒否の禁止
下請事業者に責任がないのに、給付(納入品等)の受領を拒むこと。
②下請代金の支払遅延の禁止
支払代金を支払期日までに支払わないこと。
③下請代金の減額の禁止
下請事業者に責任がないのに、下請代金を減額すること。
④返品の禁止
下請事業者に責任がないのに、給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせること。
⑤買い叩きの禁止
通常支払われる対価に比べ、著しく低い下請代金の額を不当に定めること。
⑥物の購入強制・役務の利用強制の禁止
自己の指定する物を強制的に購入させたり、役務を強制的に利用させたりすること。
⑦報復措置の禁止
中小企業庁又は公正取引委員会に対し、禁止行為を行ったことを知らせたとして、下請業者に対して取引を停止するなど不利益な取扱いをすること。
⑧有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
有償支給原材料等を自己から購入させた場合、支払期日より早い時期に対価を支払わせること。
⑨割引困難な手形の交付の禁止
支払期日までに一般の金融機関で割引を受けることが困難な手形を交付すること。
⑩不当な経済上の利益の提供要請の禁止
自己のために、金銭、役務などの経済上の利益を提供させること。
⑪不当なやり直し等の禁止
下請事業者に責任がないのに、給付の内容を変更させたり、給付をやり直させたりすること。
どれもこれも、やられたら下請業者にとってはたまったものではないどころか、企業の存亡にも関わりかねないことばかりですね。
現在、ファミリーマートは業界3位で、今年9月1日には業界4位のサークルKサンクスを傘下に持つ流通大手ユニーグループ・ホールディングス(GHD)と経営統合することで基本合意しており、統合すれば業界2位に浮上。
店舗数では、最大手のセブン-イレブン・ジャパン(約1万8千店)と肩を並べることになるようです。
今回の調査が、下請事業者の申告から始まったのかどうかはわかりませんが、申告した下請事業者との取引を停止するなどすると、さらに下請法違反となるので、それは回避して欲しいと思います。
中小企業が日本を支えています。
親事業者と下請事業者の取引の適正化を望むばかりです。