葉山ひき逃げ交通事故で危険運転致死傷罪が適用か? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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葉山ひき逃げ交通事故で危険運転致死傷罪が適用か?

2015年08月27日

8月23日午後5時10分頃、神奈川県葉山町で発生した3人死傷のひき逃げ事故の続報が入ってきました。

「危険運転致死傷適用へ 葉山ひき逃げ死傷事件」(2015年8月26日 神奈川新聞)

神奈川県警は、葉山町の県道で男女12人の歩行者の列に突っ込み、3人を死傷させた事故で、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失致死傷)と道路交通法違反(ひき逃げ)容疑で送検した会社員の男(20)を、より量刑の重い危険運転致死傷容疑で立件する方針を固めたようです。

県警によると、事故直前、男が運転する車が追い越しをしたり、高速度で走行していたことを複数の目撃者が証言。
同時に、現場の道路形状やタイヤ痕、周辺の監視カメラの映像などを分析してスピードの特定を進めているということです。

先日、解説したように、飲酒による人身事故に危険運転致死傷罪を適用するには、「酒に酔って正常な運転ができない状態」で運転したことを検察側が立証しなければいけないのですが、今回これは難しいと思われます。

そこで検察は、危険運転致死傷罪の成立要件である、「進行を制御することが困難な高速度での走行」もしくは、「人又は車の進行を妨害する目的で走行中の自動車の直前に進入・接近し、重大な危険を生じさせる速度で運転」の容疑に切り替えて立件するということだと考えられます。

今回の事故現場のことはよくわかりませんが、スピードオーバーについては、自動車を「制御するのが困難なほどの高速度」が要件ですから、直線道路だと、なかなか適用が難しいことになります。

追い越しのうえでの故意による「割り込み」という危険運転行為については、

急な割り込みに対して相手が自車との衝突を避けるために急ハンドルを切るなどの回避行為をするときに、重大な事故が発生しやすいことに着目したものです。

なお、「重大な危険を生じさせる速度」とは、自車と相手が衝突すると重大な事故になる可能性の高い速度のことで、立法時の答弁では、20~30キロ程度出ていれば、状況によってはこの要件が適用されると解釈されています。

実際、男はどのくらいのスピードを出していたのか。
警察の分析結果が待たれます。

交通事故を弁護士に相談すべき理由