行方不明の妻と離婚するための法的手続きとは?
今年に入って、子供や高齢者の行方不明者の報道が多くありました。
「“所在不明”の子供の実態把握へ 厚労省、虐待防止で初の調査」(2014年4月24日 産経新聞)
「ある日突然いなくなる…“年間5000人”の衝撃」(2014年11月4日 産経新聞)
子供の場合、虐待や無戸籍問題が背景にあるケースがあり、高齢者の場合は認知症による徘徊のまま行方不明になるケースが多いようです。
これらの問題については以前、解説をしました。
詳しい解説はこちら⇒「戸籍のない子供がいる!?離婚後300日問題とは?
https://taniharamakoto.com/archives/1686
「鉄道事故の賠償金は、いくら?」
https://taniharamakoto.com/archives/1421
ところで、行方不明者は子供や高齢者だけではありません。
今年6月に警察庁が発表した資料「平成25年中における行方不明者の状況」によると、昨年の行方不明者数は、83,948人で前年比2,837人の増加となっています。
男性が全体の64.2%を占め、年代別では10歳代が最も多く、19,858人で全体の23.7%、次いで70歳以上が15,160人で18.1%、20歳代が14,952人で17.8%。
原因は、家庭関係が17,919人で全体の21.3%。次いで疾病関係が16,245人で19.4%、事業・職業関係が9,095人で10.8%となっています。
家族や親しい人が突然いなくなるのは大変ショックなことです。
残された家族は戸惑い、途方に暮れてしまうでしょう。
今回は、妻が行方不明になってしまったという男性からの、ある相談です。
Q)43歳の会社員です。妻が蒸発して2年が経ちます。もちろん、初めは警察にも届けて捜していたのですが、生死も不明ですので、もう止めてしまいました。私の気持ちは、今さら妻に帰って来られても逆に困るという感じです。現在、好きな女性がいて再婚を前提に交際しています。2人の子供(18歳の娘、14歳の息子)も賛成してくれています。妻とは、すぐにでも離婚したいのですが、消息が分からないので困っています。早く再婚するにはどうすればいいのでしょうか?
A)現状、行方不明の奥さんの居所がわからないのでは、なすすべがありません。
しかし、行方不明になってから2年が経過ということですから、もう1年待ってください。
3年経てば裁判によって離婚をすることができます。
「民法」では裁判による離婚について以下のように規定しています。
「民法」
第770条(裁判上の離婚)
1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
通常、離婚裁判では調停前置主義といって、調停を経てからでないと裁判を起こすことはできないのですが、相手が行方不明の場合は調停を経ずに裁判を起こすことができます。
「生死不明」という部分の判断が難しいところではありますが、相談者はただ、妻が蒸発して音信不通のまま何もしなかったのではなく、警察にも届けて行方を捜していたわけですから、裁判による離婚が認められる可能性は高いと思われます。
【失踪宣告とは】
妻(もしくは夫)の生死が判明しない場合は、「失踪宣告」という制度を使うこともできます。
失踪宣告とは、生死不明で戻る見込みのない者の家族などが財産管理など法律上の問題を清算するための制度です。
その生死が7年間明らかでないときを「普通失踪」、戦争や船舶の沈没、航空機事故、震災などでその生死が1年間明らかでないときを「危難失踪」といい、家庭裁判所に申立てをすることで死亡扱いとなります。
しかし、相談者の場合、7年は長いと感じるでしょうし、失踪から7年後以降に妻が見つかる、帰ってくる可能性もあることを考えれば、裁判離婚で関係をきれいにしたほうがいいかもしれません。
なお、離婚裁判には「訴状」が必要ですので、法律的なことが難しいようであれば、弁護士などの専門家に相談するのがいいでしょう。
「二十代の恋は幻想である。三十代の恋は浮気である。
人は四十に達して、初めて真のプラトニックな恋愛を知る」
(ゲーテ/ドイツの詩人・小説家・法律家・政治家)