スカートめくりが「いたずら」から「犯罪」に昇格 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
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スカートめくりが「いたずら」から「犯罪」に昇格

2014年11月01日

1980年代初頭、当時の少年たちに『まいっちんぐマチコ先生』という漫画が人気でした。

キュートでスタイル抜群なマチコ先生に、クラスの悪ガキたちがスカートめくりをしたり、胸にタッチしたりいたずらし放題。

するとマチコ先生は、「いやーん、まいっちんぐ!」といって、すべては許されるのでした。

ところが先日、男子と女子の間で、いたずらでは済まされなかった事件が起きました。

一体何が起きたのでしょうか?

「女子高生への強制わいせつ容疑で高2男子を逮捕」(2014年10月30日 福島民友新聞)

福島署は29日、強制わいせつの疑いで福島市に住む高校2年の男子生徒(17)を逮捕しました。

男子生徒は28日午後8時50分頃、同市のアパートの踊り場で高校3年の女子生徒(17)に背後から近づき、スカートをめくり上げるなどした疑いのようです。

2人は別の高校に通い、面識はなかったが、女子生徒は自転車で帰宅途中、男子生徒の自転車に追い越されていたということです。
ただのいたずらだったのか、わいせつ目的だったのか、ストーカー行為の待ち伏せだったのか、現場で他の行為にもおよんでいたのか、報道内容からだけでは詳しいことはわかりませんが、「強制わいせつ」とはどんな罪なのでしょうか?
まずは条文を見てみましょう。

「刑法」
第176条(強制わいせつ)
13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
強制わいせつ罪とされるには、13歳以上の男女に対しては、暴行又は脅迫が用いられる必要があり、被害者の承諾がある場合は成立しません。

一方、13歳未満の男女に対しては、暴行や脅迫が用いられる必要はなく、たとえ被害者の承諾があったとしても罪が成立します。

ところで、「わいせつ」な行為にはどんなものがあるのでしょうか?
判例では、強制的に行うとわいせつとされる行為には以下のものなどがあります。

股間に手を差し入れる、キスをする、自己の陰部を押し当てる、手で陰部に触れる、女性の乳房を弄ぶ、人前で裸にする、裸にして写真を撮る、下着の上から臀部を撫でる、いわゆる痴漢行為など。

何やら青少年が反応してよろこびそうな単語が満載ですが、これらの行為を暴行・脅迫をもって行うと犯罪になるので注意してください。

今回のケースでは、スカートめくりくらいで犯罪にするのはやりすぎではないか、という意見もあるでしょう。

一方で、知らない男にいきなりスカートをめくられて女子生徒は恐怖だったろうし、性犯罪助長にもつながりかねないから犯罪にするのは当然だという考えもあるでしょう。

また、刑法では「責任年齢」について、14歳に満たない者の行為は、罰しないとあります(第41条)。

今回の事件では、男子生徒は17歳ですので、罰せられる年齢です。ただし、少年法がありますので、成人とは異なる手続になるでしょう。

スカートめくりは、ドラマや漫画の世界では、相手の女子に殴られたり、怒られたりするだけで済むかもしれませんが、リアルな現実世界でやったら犯罪になる可能性があることを、成人した大人でも未成年者でも、しっかり認識しておいたほうがいい時代になったのかもしれません。