会社の秘密情報を盗むと犯罪になる!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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会社の秘密情報を盗むと犯罪になる!?

2014年10月24日

仕事関係の人や友人などと飲みに行った際、ちょっと突っ込んだ質問に、「それは企業秘密だから」などと答えることがあります。

お酒の席でのジョークのように使われたりしますが、実際、企業の秘密を不正に手に入れたり、転売したりしたらどうなるでしょうか?

もちろん、冗談では済まされませんね。
そんな事件が相次いでいます。

「日産元社員を在宅起訴 不正競争防止法違反罪」(2014年10月22日 産経新聞)

日産自動車のサーバーに接続して企業秘密に当たる新型車の企画情報を不正に得たなどとして、横浜地検は22日、元社員の男(37)を不正競争防止法違反(営業秘密の領得)の罪で在宅起訴しました。

起訴状によると、男は昨年7月、不正に利益を得る目的で自宅や厚木市の事業所で、新型車の企画情報など複数のファイルデータを自分のハードディスクに複製。

2010年11月16日ごろから2013年7月31日ごろまでの間には、横浜市旭区の研修施設で車の製造工程などが書かれた教本の一部を複写、その後に転職先に持ち込んだとしています。

今年5月、神奈川県警が不正競争防止法違反容疑で男を逮捕し、地検は6月、処分保留で釈放していたようです。
「不正競争防止法」については以前、解説しました。

詳しい解説はこちら⇒「うっかり話してしまった“個人情報”の暴露は犯罪になる!?

うっかり話してしまった“個人情報”の暴露は犯罪になる!?

不正競争防止法は、事業者間の公正な競争と国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争を防止する目的で設けられた法律で、損害賠償に関する措置まで規定されています。

今回の事件は、「営業秘密の領得」の罪です。
企業が秘密管理している製造技術や販売マニュアル、顧客名簿などを持ち出して独立・転職・転売したり、不正に取得することを禁じています。

じつは、この営業秘密の領得意外にも不正競争防止法が禁じるものにはさまざまあり、例えば以下のようなものが規定されています。

「周知表示混同惹起行為」
既に知られているお店の看板に似せたものを使用して営業するなど。

「著名表示冒用行為」
ブランドとなっている商品名を使って同じ名前のお店を経営するなど。

「商品形態摸倣行為」
ヒット商品に似せた商品を製造販売するなど。

「技術的制限手段に対する不正競争行為」
CDやDVD、音楽・映像配信などのコピープロテクトを解除する機器やソフトウェアなどを提供するなど。

「原産地等誤認惹起行為」
原産地を誤認させるような表示、紛らわしい表示をして商品にするなど。

「競争者営業誹謗行為」
ライバル会社の商品を特許侵害品だとウソを流布して、営業誹謗するなど。

「代理人等商標無断使用行為」
外国製品の輸入代理店が、そのメーカーの許諾を得ずに商標を使用するなど。

不正競争防止法違反の罰則は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれを併科です。

かなり重い罰則ですが、さらに損害賠償請求される可能性もあることを考えれば、ほんの出来心では済まされない行為です。

ところで、今年起きた不正競争防止法違反事件では社会的に大きな話題になったものがありました。
ベネッセの顧客情報が大量に流出した事件です。

「元SE“営業秘密でないと認識” ベネッセの顧客情報流出で初公判」(2014年10月14日 産経新聞)

東京地裁立川支部で14日、ベネッセコーポレーションの顧客情報流出事件で、不正競争防止法違反(営業秘密の複製、開示)の罪に問われた元システムエンジニアの被告の男(39)の初公判が開かれた。

起訴状によると、被告の男は6月17日と27日、勤務していたベネッセ関連会社の東京都多摩市の事業所で、計約3千万件の顧客情報を業務用パソコンにダウンロードして保存。私用のスマートフォンなどにコピーして持ち出し、うち約1千万件を名簿業者に渡したとしている。

被告の男は、「やったことは事実だが、営業秘密として管理されていたものではないと認識している」と述べたという。
その他にも、次のような事件が起きています。

「医師らの個人情報1万7千件流出 不正持ち出し容疑で36歳男を逮捕」(2014年10月14日 産経新聞)

警視庁サイバー犯罪対策課は2014年10月14日、医療関係の人材紹介会社から医師や看護師などの個人情報17,000件を不正に持ち出したとして、IT関連会社契約社員の男(36)を不正競争防止法違反(営業秘密の領得)容疑で逮捕したとのことです。

報道によると、男は平成24年5月、システムエンジニアとして勤務していた新宿区の人材紹介会社のサーバーにアクセスし、不正な目的で営業秘密である医師などの個人情報17,000件をファイル共有サイトに複製したとしています。

男は、同年7月に同社を退職後、同9月に医療関係の別の人材紹介会社(渋谷区)の設立に参加していました。同課が平成25年12月、この人材紹介会社を同容疑で家宅捜索したところ、容疑者が複製したものと酷似した個人情報が見つかっており、同課は複製した個人情報を流用していたとみています。
「東芝研究データ流出、元技術者を起訴 不正競争防止法違反罪で東京地検」(2014年4月3日 産経新聞)

東芝の半導体の研究データが韓国のライバル企業に不正流出した事件で、東京地検は東芝の業務提携先メーカーの元技術者の男(52)を不正競争防止法違反罪で起訴したとのことです。男は、転職先では役員級の待遇を受けており、データ提供の見返りだったとみられます。

起訴状によると、被告の男は半導体メーカーの技術者だった平成20年1~5月、東芝の開発拠点の工場で「NAND型」フラッシュメモリーの最新の研究データを記録媒体に不正にコピー。韓国の半導体大手メーカー「SKハイニックス」に転職後の同年7月以降、SK社の社員らにデータを提供したとしています。
金や欲に目がくらみ、職場の秘密情報を不正に取得したり、売ったりするのは重大な犯罪であることを、この機会にしっかりと認識してほしいと思います。

同時に、経営サイドでもコンプライアンスの重要性を認識して、企業情報の漏えいなどの問題などが起きないような危機管理への対応が望まれます。

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