福岡飲酒事故の控訴審逆転判決
平成18年に、福岡市で起こった、飲酒運転で家族5人が乗る自動車に追突して海に転落させ、幼児3人を死亡させたとして、危険運転致死傷と道交法違反(ひき逃げ)の罪に問われた事件の刑事控訴審判決が2009年5月15日、福岡高裁で開かれました。
1審で、検察側は危険運転致死傷罪の適用を主張し、懲役25年を求刑しましたが、福岡地裁は結審後、予備的訴因として業務上過失致死傷罪と道交法違反(酒気帯び運転)の罪を追加するよう検察側に命令し、危険運転致死傷罪の成立を否定して懲役7年6月の判決をしました。
ところが今回の控訴審判決では、1審判決を破棄し、危険運転致死傷罪の成立を認め、懲役20年を判決を下しました。
賛否両論がありますが、今回のポイントは、法律解釈の問題ではなく、事実認定の問題です。
1審判決では、アルコールの影響で運転が困難とまでは言える状態でなく、事故の原因を「わき見運転」としました。
しかし、控訴審判決では、現場の道路状況などから見て、約11~12秒間のわき見運転はあり得ないとし、事故の原因は、アルコールの影響によって、前方注視を行う上で必要な視覚による探索能力が低下したためだ、と判断しました。
つまり、危険運転致死傷罪が成立するためには、「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」になることが必要ですが、この状態とは、アルコールの影響により現実に道路及び交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態を言います。
そして、今回は運転操作という運動機能はあったが、運転の前提となる視覚機能が低下し、それがために前方注視が困難となって前の車の存在を認識できなかったのだ、と認定したものです。
このような事実認定は、おそらく判断する人によって異なってしまう可能性があるでしょう。
まもなく裁判員制度が始まりますが、事実認定に慣れていない一般の人が判断するときはなおさら難しい判断を迫られるものと思われます。
私としては、この判決を是認できるものと考えます。
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