脱法ハーブによる事故に危険運転致死傷罪・懲役11年 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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脱法ハーブによる事故に危険運転致死傷罪・懲役11年

2013年06月11日


「最大懲役15年か、はたまた30年か!?」

愛知県春日井市で2012年10月、脱法ハーブを吸った後に車を運転し、女子高校生をはねて死亡させたとして、危険運転致死罪と道交法違反(ひき逃げ)で起訴された男(31)に対する判決が、10日、名古屋地裁であった。

名古屋地裁は、被告人に、懲役11年(求刑・懲役12年)を言い渡した。脱法ハーブで危険運転致死傷罪が判決で認められたのは初めてと思われる。

弁護側は、「被告は吸引の影響による危険性を認識しておらず、危険運転の故意はなかった」と主張したとのことである。そうすると、成立する罪は、自動車運転過失致死罪となる。

自動車運転過失致死罪になると、法定刑は、最大7年の懲役。これにひき逃げ(最大10年の懲役)が加わると、併合罪となり、最大15年の懲役となる。

(併合罪の場合は、長い方の懲役、今回ではひき逃げの10年の懲役の1.5倍の15年が法定刑の長期の懲役となる)

他方、危険運転致死傷罪の法定刑は、最大20年であるから、危険運転致死傷罪とひき逃げが成立すると、最大30年の懲役となる。

したがって、この争いは、法定刑が最大15年か、30年か、の争いとなる。

ただ、結果としては、求刑が12年で判決が11年なので、危険運転致死傷罪の適用が否定されたとしても、11年の懲役を科すことは理論的には可能であった。

ところで、危険運転致死傷罪が成立するためには、「アルコールまたは薬物の影響で正常な運転が困難」な状態で自動車を運転することが必要である。

「正常な運転が困難な状態」とは、道路や交通の状況に応じた運転操作を行うことが困難な状態のことである。

具体的には、脱法ハーブ吸引の影響により、目が回った状態であったり、運動能力が低下してハンドルやブレーキがうまく操作できなかったり、判断能力が低下して距離感がつかめなかったりして、正常に運転できない状態のことを言う。

今回は、脱法ハーブを吸引することにより、上記のような状態になることを「認識」して運転したかどうかが争われた。

弁護側はこの点を争ったが、判決では、被告人が、事故前にインターネットで吸引の後遺症について検索し、友人からも「脳みそがクラクラする」と聞いていたことなどから「正常運転が難しいことを認識していた」と指摘して、危険運転致死傷罪の適用を認めた、ということだ。

車は大変便利であるが、一歩間違えると、高スピードで動く凶器である。

運転している人は、そのようなことをあまり考えないが、事故のニュースを見た時は、今一度自分に当てはめて慎重に運転することを心がけて欲しい。