住居侵入罪とは | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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住居侵入罪とは

2010年09月26日

刑法第130条に、「住居侵入罪」という犯罪がある。

「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」

「正当な理由がないのに」というのは、なんでもかんでも理由をつければよい、ということではない。たとえば、家賃を払わない間借り人を追い出すために大家が侵入する行為が住居侵入罪になるとした判例がある(最決昭28・5・14)。

このような場合、面倒かもしれないが、ちゃんと裁判をして、強制執行で追い出さないといけないのだ。

人の住居というのは、人の日常生活に使用される場所のことであり、自宅はもちろんのこと、ハウストレーラーやテントも入る。

刑法の教科書には色々な例が出てくるが、面白かったのは、「条解 刑法 第2版」(弘文堂)だ。

住居侵入罪の対象には、「ドラム缶等は含まれない」(359頁)ということだ。

異議なし。

ドラム缶で寝ている人はいるかもしれないが、それに侵入するとはどういうことか、想像するのが難しい。

ドラム缶に入ったところで「住居侵入罪の現行犯で逮捕する」となったら、びっくりだ。

住居侵入罪で気を付けなければならないのは、表面上立入に対する「同意」があっても成立してしまうことだ。

たとえば、学校のトイレは教師や生徒、デパートのトイレは客などが自由に使って良いことになっている。

しかし、トイレに入る目的が、盗撮目的だったり、のぞき目的だったりすると、管理者の推定的意思に反した立入ということで、住居侵入罪が成立する。

また、強盗目的で、玄関から「ごめんください。トイレを貸してください。」と頼み、家の人が「どうぞ。」と言って、住居内に入った場合でも、住居侵入罪が成立する可能性がある(最大判昭24・7・22参照)。

同意があっても住居侵入罪が成立する場合があることは、憶えておいた方がよい。

家族間でも別居している場合には気を付けた方がいいだろう。

別居中の夫が妻の不貞の現場の写真を撮りに妻の住む自己所有家屋に侵入した行為で住居侵入罪が成立した判例がある(東京高裁判昭58・1・20)。

たとえば、夫が家出をして、その後離婚のための有利な証拠をつかもうと思い、合い鍵を使って妻が住む住居にこっそり入った場合、住居侵入罪が成立する余地がある。気を付けよう。

さきほどの「条解 刑法」によると、「1つの建物中の区画された部屋もそれぞれ独立に住居たり得る。アパート、下宿は当然であるが、他人の家に許可を得て入った後に隣の部屋に平穏を害する態様で入れば住居侵入罪が成立し得る。」という。

他人の家に入ったら、他の部屋に入れず身動きできなくなるということか?

いや、そうではない。「平穏を害する」かどうかが問題なので、普通に招かれて、普通に行動している限りは、他の部屋に入っても逮捕されることはないので、ご安心を。

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