交通事故と年金
2004年11月22日
福井県で高齢者の交通事故死が相次いでいるそうです。(記事)
一般に、交通事故で死亡した場合の民事損害賠償は、葬儀関係費用、本人分の慰謝料2,000万円~2,800万円(相続人に相続されます)、近親者の固有の慰謝料数百万円、逸失利益(簡単に言うと事故がなければ得られたであろう利益)等が損害賠償として認められます。
高齢者の場合、慰謝料は基準の中でも低い基準である2,000万円~2,200万円くらいに落ち着くケースが多いようです。慰謝料は、精神的苦痛を慰謝するものですが、命を奪われる精神的苦痛は年齢によって変わるのでしょうか。
問題は、逸失利益で、働いていない場合には、得られるであろう給与等がなく、年金等は死亡すればなくなるのであるから、逸失利益はないのではないか、という議論があります。
しかし、判例の傾向としては、就労してなくてもその蓋然性があれば、就労による逸失利益を認め(但し、働ける期間が短いはずなので減額したりしています。また、その間のかかるであろう生活費の控除で調整されたりします。)、年金についても、老齢年金のように給付が本人だけでなく親族の生活保障目的もあるものや、障害年金のように保険料の支払いがあって年金給付が対価性のあるものは認める傾向にありますが、軍人恩給の扶助料や遺族厚生年金については、本人の本人のみの保障を目的とするものであり、逸失利益とは認められない傾向にあります。