どこに集中すべきか?
今日は、こんな物語です。
ケイは、窓の外を眺めていた。
彼の頭の中は、来週の重要なプレゼンテーションのことが頭から離れない。成功すれば昇進への道が開けるが、失敗すれば今の停滞した状況が続くだろう。
彼は心配していた。
クライアントがプレゼンをどう評価するか。
その前に重大な問題がある。明日の朝までに部長の最終承認が下りるかどうか。部長はここ数日、機嫌が悪い。
承認がおりなければ、プレゼンターが同僚のシゲキに交代になるかもしれない。
ケイは焦燥感に駆られ、思考が堂々巡りしていた。
プレゼン資料の作成が全く進まなかった。
「ちくしょうっ!!」
ケイは、自分の部屋で思わず叫んでしまった。
すると、隣の部屋で寝ていた祖母が、静かにケイの部屋に入ってきた。
「ケイ、まだ起きていたのかい?」
ケイは身を起こし、正直な気持ちを打ち明けた。「おばあちゃん、プレゼンのことが心配で。僕がどれだけ頑張っても、部長の気分一つで全てが決まるなんて、理不尽だよ」
祖母は何も言わず、ケイの隣に座った。そして、静かに話し始めた。
「昔、小さな村にまじめな青年が住んでいてね。」
「ある日、村が大干ばつに見舞われた。作物は枯れ、村人たちは飢えに苦しんだ。皆が雨乞いをし、天を恨んだが、青年はただ静かに毎日、畑に水をやり続けた。枯れゆく作物に、ごくわずかな水を」
ケイは首をかしげた。「でも、おばあちゃん、それじゃ意味がないよ。雨が降らないことには、どうしようもないじゃないか」
祖母は微笑んだ。
「その通りだね。雨を降らせることは、青年の力ではどうすることもできなかった。だが、彼は毎日畑に水をやり、土の健康を保ち、次の恵みを待ち続けた」
「数週間後、ついに待望の雨が降った。他の村の畑は、干上がってひび割れた土ではすぐに水を吸収できず、作物も完全に枯れてしまっていた。
しかし、青年の畑だけは、彼が毎日手入れをしていたおかげで、しっとりと水分を含んだ土が雨水を効率よく吸収し、すぐに作物が芽吹き始めたんだ。
結果、青年の畑は村で一番早く豊かな収穫をもたらした。」
祖母は言った。
「青年は、何をしたかって?雨が降るかどうかを悩み続けた?
そうじゃない。青年は、自分にできることに、ただ、集中しただけなんだよ」
ケイは、はっとした。
そして、静かに立ち上がり、デスクの椅子に座ると、PCの電源を入れた。
祖母は、デスクに向かうケイの背中を微笑んで見つめていた。
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