誘導尋問に気をつけよう。
2024年11月04日
裁判で証人に対する主尋問(証人申請をした側からする尋問で、反対尋問に対する用語)では、「誘導尋問」が禁止されています。
誘導尋問は、尋問者が誘導したい答えを暗示しながら行う尋問です。
例えば、犯人が殴ったのを見たとも見ないとも証言していない証人に対し、「あなたは、犯人が被害者を殴った時、どの地点にいましたか?」などと質問することです。
証人は、「A地点にいました」などと証言することにより犯人が被害者を殴ったことを前提とした証言をしてしまうことになります。
「そんな質問者の意図なんか、すぐわかるから、騙されないよ」と思うかもしれません。
この実験がありました。
被験者は、自動車が走行していて、衝突する映像を見せられました。
その上で、「自動車は、どのくらいのスピードでガシャンとぶつかりましたか?」と質問されると、「ガラスが割れたことを憶えています」と回答しました。
ところが、実際の映像では、ガラスもヘッドライトも割れてはいませんでした。
つまり、質問の中に「ガシャン」という男を挿入することにより、記憶がすり替わってしまったのです。
無実の罪で逮捕された人が、連日取り調べを受け、「お前がやったんろう?」「なぜ殺したんだ?」などと、真犯人であることを前提とした尋問をされ続けることによって、いつの間にか自分がやったような気になってくる、ということもありうることなのかもしれません。
ですから、私達は、他人に質問をし、情報を引き出そうとする時には、できる限り偏見や予断を排除し、ニュートラルな質問をするように努力しなければなりません。
しかし、反対に、相手を説得しようとする場合には、誘導的な質問は威力を発揮する、ということになります。
慎重に質問を使い分けるようにしましょう。