ハーバード流交渉術で大切なこと
1989年に出版された「ハーバード流交渉術」(知的生き方文庫)という本があります。
ベストセラーになっており、私も弁護士になって、交渉がうまくいかず、悩んでいた時に読みました。
この交渉術では、「原則立脚型交渉」を推奨しています。
原則立脚型交渉には、4つの原則があります。
(1)人と問題を分離せよ。
(2)立場でなく利害に焦点をあてよ
(3)行動について決定する前に多くの可能性を考え出せ
(4)結果はあくまでも客観的基準によるべきことを強調せよ
私は、この本を何度も読み込み、実際の交渉で何度も使ってみました。
私達弁護士が扱う紛争における交渉で、もっとも重視すべきは、(1)の「人と問題を分離せよ」です。
なぜか、というと、紛争における交渉では、往々にして、紛争の対象となっている問題ではなく、相手の人格攻撃になってしまうからです。
たとえば、貸金返還の交渉をしている時に、
「あなたがだらしないから、お金がなくなってしまうんだ」
「あなたはいつも嘘ばかりつくから信用できないんだ」
「なぜそんな偉そうに言うんだ。あなたはそんなに偉いのか」
などという発言が出てくることがあります。
そうすると、言われた方は、自分が攻撃されたと感じ、
「そういうあなただって・・・」
などと相手の人格を攻撃したくなります。
しかし、これでは交渉はまとまりません。
お金を返すか、返さないか、返すとしてどういう条件で返すか、とは、何の関係もないからです。
ですから、紛争における交渉では、できる限り、たとえ相手から人格攻撃を受けたとしても、自分からは相手の人格を攻撃せず、ひたすら交渉の対象に集中することが重要になってきます。
紛争における交渉の機会があれば、自分の交渉や、誰かが行っている交渉を分析してみてください。
言うほど簡単ではないことがわかります。
何事も、常に意識して努力することにより、徐々に身についていくものだと思います。
そして、この「人と問題を分離せよ」を意識し続けることで、人格も磨かれるのではないか、と考えています。
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