自転車のひき逃げ事故で逮捕! | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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自転車のひき逃げ事故で逮捕!

2017年10月04日

自転車の運転を安易に考えてはいけません!
という事件が起きたので解説します。

「自転車でひき逃げ容疑 20歳の女を逮捕 静岡」(2017年10月2日 静岡新聞)

静岡中央署は、静岡市葵区の県道沿いの歩道で発生した自転車によるひき逃げ事件について、静岡市葵区のエステ従業員の女(20)を重過失傷害と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで逮捕しました。

事件が起きたのは、9月28日午前10時半頃。
容疑者の女が歩道を自転車で運転中、横断歩道付近で同区の無職女性(76)の自転車を追い越そうとして接触。
女性を転倒させ、骨盤骨折の重傷を負わせたにもかかわらず、女はそのまま走り去っていましたが、目撃情報などから容疑者として浮上していたということです。

同署によると、容疑者の女は当時、出勤途中で、「スピードを出していた」、「接触したことには気づいていた」などと供述しているということです。

外形的には、自転車同士が接触し、一方の自転車に乗っていた人が倒れ、他方の自転車が走り去った、という状況です。

「自転車でも、ひき逃げが成立するのか?」、「自転車で相手にぶつかっただけでも逮捕!?」と思う人もいると思いますが、「じつは、そうなんです!」ということを法的に説明していきます。

 

【道路交通法における自転車の規定とは?】
道路交通法では、自転車は車両の一種である「軽車両」に規定されています。
ですから当然、自転車の事故も道路交通法違反、ということになります。

ただし、自動車と自転車では、ひき逃げに対する刑罰に違いがあります。

・自動車の場合/10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(第117条2項)

・自転車の場合/1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます。(第117条の5)

 

【道路交通法における“ひき逃げ”とは?】
では、ひき逃げとは、どのような犯罪なのでしょうか?
条文を見てみましょう。

「道路交通法」
第72条(交通事故の場合の措置)
1.交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者は……(以下省略)

 

交通事故を起こした場合、運転者と同乗者は、以下の措置等を取らなければいけません。

①ただちに運転を停止する。
②負傷者を救護する。(安全な場所への移動、迅速な治療など)
③道路での危険を防止するなど必要な措置を取る。(二次事故発生の予防)
④警察官に、事故発生の日時、場所、死傷者の数、負傷の程度等を報告する。
⑤警察官が現場に到着するまで現場に留まる。

これらを怠った場合、ひき逃げという犯罪になるということです。

 

【重過失傷害罪とは?】
重過失傷害罪とは、過失により人を傷害した罪のうち、重大な過失=重過失によって人にケガをさせた罪のことです。

「刑法」
第211条(業務上過失致死傷等)
1.業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

 

ある行為をする際に法律上要求される「注意義務」を著しく欠いている場合、重過失と判断されるわけです。

 

近年、自転車による重傷事故が多発しているようです。

今回のケースのように相手にケガを負わせてしまうと、加害者は被害者に対して、民事では治療費や慰謝料などの損害賠償金を支払うことになります。
死亡事故や、高次機能障害、脊髄損傷などの重傷事故の場合は億単位の金額になることもあります。

そして刑事事件としては、場合によっては逮捕され、死亡事故など重傷度、事故の悪質性や交通犯罪前科などによっては実刑となる可能性もあります。

自転車事故で逮捕、ということに驚いた方もいるかもしれませんが、上記のように、れっきとした犯罪なので、事故を起こした場合は、被害者を救護するようにしましょう。

その前に、周囲の状況に注意して、事故を起こさないように慎重に運転するように心がけたいものです。