顧客情報持ち出しは、犯罪!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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顧客情報持ち出しは、犯罪!?

2017年03月15日

今回は、他人には隠しておきたい「秘密」の中でも、企業の営業秘密に関する犯罪について解説します。

「勤務先から持ち出した顧客情報で契約 保険代理店の元店長ら4人を書類送検 大阪府警」(2017年3月13日 産経新聞)

大阪府警生活経済課は、勤務先だった保険代理店から持ち出した顧客情報を使って生命保険を契約させたとして、元店長の男(45)と元同僚の42~54歳の男女3人を書類送検しました。
容疑は、不正競争防止法違反(営業秘密の使用など)です。

報道によると、容疑者の男は2013(平成25)年9~11月、大阪府羽曳野市に本社がある保険代理店の顧客情報をもとに大阪市内の30代女性に生命保険を契約させるなどし、それ以外にも持ち出した情報をもとに営業活動を行ない、自身が経営する別の保険代理店との間で契約を結ばせるなどの手口で、計約116万円の手数料を得ていたようです。

なお、容疑者の男は今年1月、約500人分の顧客情報を不正に持ち出したとして、同法違反(営業秘密の不正取得)容疑で逮捕されましたが、その後に処分保留で釈放されていたということです。
「不正競争防止法」は、事業者間の公正な競争や、これに関する国際約束の的確な実施を確保するために、不正競争の防止と損害賠償等について定めた法律です。(第1条)

さまざまな不正行為について規定しているのですが、たとえば今回の事件でも問題になった営業秘密については次の行為などが不正行為としてあげられます。

・企業が秘密として管理している製造技術上のノウハウ、顧客リスト、販売マニュアル等を窃取、詐欺、強迫、その他の不正の手段により取得する行為(第2条4号)

・不正取得行為により取得した営業秘密を使用したり、開示する行為(第2条4号)

・不正に取得された情報だということを知っている、もしくはあとから知って、これを第三者が取得、使用、開示する行為(第2条5号、6号)

・保有者から正当に取得した情報でも、それを不正の利益を得る目的や、損害を与える目的で自ら使用または開示する行為(第2条7号)

近年、こうした営業秘密に関する不正行為が後を絶ちません。

たとえば2014年には、日産の元社員が新型車の企画情報を不正に取得して流出させた事件や、ベネッセで外部業者のSEが関与して2000万件以上の個人情報が流出した事件、東芝の半導体の研究データが不正に流出した事件などが起きました。
また、2015年には、家電量販店のエディオンの元課長が退職時などに不正に取得した営業秘密情報を転職先の企業に漏洩した事件も起きていますが、これらの事件は氷山の一角にすぎません。

こうした事態を受けて、2015年7月には不正競争防止法の改正が行われ、それまで罰金の上限が個人は1000万円、法人が3億円だったものが、個人で2000万円(懲役刑は10年以下)、法人は5億円とし、海外企業への漏洩は3000万円、法人は10億円にそれぞれ大幅に引き上げられています。(第21条)

これは、かなり重い刑事罰だと思います。
では、こうした不正行為に対して企業はどのような防衛策をとるべきでしょうか?

法的にポイントとなるのは、社員への早期の対応と、社内規定の厳格化です。

1.まず入社時に、営業秘密の漏えいに関する誓約書を提出させる。
2.就業規則にも懲戒処分の規定に関して厳格に明記し、社員全員に周知させる。
3.入社後、秘密情報の不正取得が犯罪であることを研修などの社員教育で徹底していく。
4.退社時にも誓約書を提出させる。

経営者にとっては、こうした早期の社員教育と社内規定の厳格化を徹底していくことが大切です。

会社の営業秘密の漏洩に関するご相談はこちらから
http://www.bengoshi-sos.com/aboutfee