松尾芭蕉が軽犯罪法違反!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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松尾芭蕉が軽犯罪法違反!?

2016年09月14日

「漂泊の歌人」と呼ばれる人がいます。

たとえば、古くは和歌の西行、俳句の松尾芭蕉、連歌の宗祇。
近代では、俳人の種田山頭火なども全国を放浪しながら俳句を詠んだといわれています。

文化史のヒーローです。

しかし現代なら、こうした漂泊の歌人たちは犯罪者になってしまうかもしれません。

なぜなら、「軽犯罪法」には「浮浪の罪」というものがあるからです。

「軽犯罪法」
第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

四 生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの
軽犯罪法では、33個の軽微な秩序違反行為について規定しています。
その4番目に挙げられているのが、この浮浪の罪です。

条文にあるように、この罪の成立要件は次の4つです。

・生計を立てるための収入がない
・働く能力はある
・職業に就く意志がない
・一定の住居を持たない。

この4つの要件がすべてそろったうえで、一定の目的もなくあちこちをうろついた場合に、この罪は成立します。

この犯罪は、法律で働くことを強制しているわけではありません。

こうした「うろつき行為」は犯罪につながる危険があるために、まずは軽犯罪法で禁止しているわけですね。

ちなみに、働く能力があるのに就職する意志がないニートと呼ばれる人たちの場合、住む家があり、親から生活費をもらっているならば当然、浮浪の罪には該当しません。

経営していた会社が倒産して夜逃げした、あるいは自己破産して住む家もなくなって浮浪者のような生活をしているような人は、働く能力があるならば、この罪が該当する可能性があります。

生きるのがつらいとき、すべてを捨てて放浪の旅に出かけたい、などと思う人もいるかもしれませんが、浮浪者になると逮捕される可能性もあります。

やはり、額に汗をかいて働くことが大切ですね。

歴史の勉強が足りず、松尾芭蕉の場合、どうかわかりませんが、もし、現代によみがえり、上記の要件に該当するならば、軽犯罪法違反、という可能性もあります。

合掌。。