増え続ける空き家に空き家対策法が施行
総務省が公表した「人口推計(2015年2月概算値)」では、日本の総人口は1億2697万人で、前年同月比22万人減となっています。
また、厚生労働省の人口推計では、2060年には9000万人を割り込み、高齢化率は約40%にもなる見込みだということです。
この先、一体どんな未来が待っているのでしょうか?
ところで、少子高齢化にともなって、近年クローズアップされてきたもののひとつに「空き家問題」があります。
今回、空き家問題に関する法律に関して動きがあったので解説したいと思います。
「1年間使われなければ“空き家”利用促進へ指針」(2015年2月26日 読売新聞)
国土交通省と総務省は、荒れ果てた「空き家」の撤去や利用促進のための基本指針を公表しました。
これは、2014年11月に成立・公布された「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称、空家対策特別措置法)が2月26日に一部施行されたことに合わせて公表されたもので、判断基準として、建物が1年間を通して使用されていないことなどを示したものです。
市区町村は今後、指針に沿って対策計画を作り、取り組みを本格化させるとしています。
なお、同法では、近隣に危険や迷惑を及ぼす「特定空き家」について、市区町村に解体の指導や命令、行政代執行を行うことが認められましたが、この部分は5月に施行されることになっています。
【空き家とは?】
総務省が公表した「平成25年住宅・土地統計調査」によると、全国の住宅総数は6063万戸、総世帯数は5025万世帯。
そのうち、約820万戸が空き家で、空き家率は13.5%となり年々増加しています。
こうした現状を踏まえて成立したのが「空家対策特別措置法」です。
この法律は全部で16条から成り、「適切な管理がされていない空き家が防災、衛生、景観などで地域住民の生活環境に深刻な影響をおよぼしていることから、その生命、身体、財産を保護するとともに、空き家の活用を促進する」(第1条)ことを目的としています。
ところで、空き家とはどういうものを指すのかといえば、同法では以下のように定義しています。
「建築物又はこれに付属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地」(第2条1項)で、立木、門、塀、ネオン看板なども含みます。
こうした空き家について、今回の指針には以下のようなことが盛り込まれています。
・空き家の所有者が自らの責任で的確に管理、対応すること。
・所有者が経済的な理由等から十分管理できない場合は、各市区町村が地域の実情に応じて地域活性化などの観点から有効活用を図る。
・周辺の生活環境に悪影響を及ぼす空き家は、各市区町村が適切な措置を講じ、かつ情報を提供する。
・使用実態の有無については、建築物等の用途、人の出入りの有無、電気・ガス・水道の使用状況及びそれらが使用可能な状態か否か、所有者の利用実査気についての主張などから客観的に判断する。
・建物等の使用実績が、概ね1年間ないことを空き家の基準とする。
・空き家に関するエータベースの整備。
・空き家及びその跡地の活用促進 など。
【特定空き家とは?】
次に、報道の中にもあった「特定空き家」について見ていきましょう。
こちらは、今年5月の施行です。
特定空き家とは、以下のものをいいます。(第2条2項)
・倒壊等、著しく保安上危険となるおそれのある状態
・著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われないことにより、著しく景観を損なっている状態
・その他、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
また、空家対策特別措置法では、特定空き家に対して以下のような措置を取ることができると定めています。
・市町村長は、所有者に対して除去・修繕・立木竹野伐採・その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとるように助言、指導することができる。(第14条1項)
・改善されない場合は、助言・指導を受けた者に対して必要な措置をとるように勧告・命令することができる。(第14条2項、3項)
・それでもなお必要な措置を講じない場合は、行政代執行法が定める通り、市町村長は強制執行することができる。(第14条9項)
・市町村長は、当該職員や委任した者に空き家と認められる場所に立ち入り調査をさせることができる。(第9条2項)
罰則については、第14条3項に違反した場合、50万円以下の過料、第9条2項に違反した場合は、20万円以下の過料となります。
さて、ここまで見てくると、空家対策特別措置法には2つの目的があることがわかります。
ひとつは、問題のある空き家に対する除去などの対策強化。
もうひとつが、空き家の有効活用の促進です。
【空き家対策に関連したさまざまな問題】
なお、空き家の固定資産税について政府・与党は、平成27年度与党税制改正大綱に、税金面の優遇措置をなくし増税する方針を盛り込んでいます。
今まで、住宅が建つ200平方メートル以下の土地の場合、税率は6分の1に軽減されていました。
しかし、空き家を取り壊して更地にした場合、この特例措置が受けられなくなっていたため、空き家が増え続ける要因にもなっていました。
ところが今回の税制改正で、倒壊の恐れのある危険な空き家にも今までの6倍の固定資産税がかかるようになるわけです。
また、2019年に日本の世帯総数がピークに達し、その後減少に転じることでマイホーム需要も減少して、住宅不況が起こることを危惧する、いわゆる2019年問題も控えています。
空き家対策が進まないと、2023年には空き家率が21.0%にまで増加するという野村総合研究所の予測もあるようです。
まだまだ不透明な部分もありますが、今後の空家対策特別措置法の動向を見守っていきたいと思います。