「いやよ」「いやよ」も罪のうち!?
「恋と戦争においては、あらゆる戦術が許される」
イギリスの劇作家であるジョン・フレッチャー(1579-1625)の言葉だそうです。
恋でも戦争でも、劇中でなら大抵のことは許されるとしても、実際の社会においては何をしても許されるということはありませんね。
男と女の問題でも、嫌がる相手にやる義務のないことを強制すれば犯罪になる可能性があります。
「わいせつ動画ほのめかし不倫継続迫った疑い 年金事務所副所長を逮捕」(2015年1月20日 産経新聞)
警視庁久松署は、交際中に撮影したわいせつな動画の公開をほのめかし、不倫相手の女性に関係を続けるよう迫ったとして、日本年金機構目黒年金事務所の副所長の男(58)を強要未遂の疑いで逮捕しました。
昨年10月、男は交際していた都内の40代女性に別れ話を切り出された際、動画を見せて脅迫。
翌11月には、「過去がリークされたら困るよね」というメールを送って、自分との交際を続けさせようとしたようです。
女性が同署に相談して発覚したようですが、男は容疑の一部を否認しているとのとこです。
この事件、容疑は強要未遂ですが、どんな罪なのでしょうか?
まずは条文を見てみましょう。
「刑法」
第223条(強要)
1.生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
2.親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3.前2項の罪の未遂は、罰する。
強要については、未遂でも処罰されるということです。
ところで、「強要罪」は脅迫や暴行を手段とするわけですが、「暴行罪」(208条)や「脅迫罪」(222条)等とどこが違うのでしょうか?
簡単にいうと、相手を脅して畏怖させた場合は脅迫罪で、脅してお金を脅し取ると恐喝罪です。
お金ではなく、脅して相手がやる義務のないことをやらせたり、やる権利があることをやらせないのが強要罪です。
暴行罪は暴行をするだけですが、強要罪は、暴行することによって、相手がやる義務のないことをやらせたり、やる権利があることをやらせないのが強要罪です。
今回の事件では、相手には義務のない不倫関係の継続を迫ったものの、女性が首を縦に振らなかったために、強要未遂罪になったわけですね。
ちなみに、どんなことをすると強要罪で処罰されてしまうのか、過去の判例から集めてみました。
・辞職願を書かせる
・謝罪文を書かせる、または読み上げさせる
・医師に麻薬を注射させる
・告訴権者に告訴を止めさせる
・契約上の請求権や解除権の行使などを妨げる
・株主総会の議事進行を妨げる
・土下座を強要する
ついついやらせてしまいそうなものが入っていませか?
脅して結婚させる、脅して離婚させる、脅して使いパシリをさせる、脅して裸の写真をメールで送らせるなど、あれこれ強要すれば犯罪になる可能性があるので注意してほしいと思います。
人に何かをさせたいとき、暴力や脅しを使ってはいけません。
いえ、むしろ、そんな必要はありません。
人を動かしたい時は、質問をすることです。
「人を動かす質問力」(角川書店)
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「あなたのために他人がいるわけではない。
“◯◯してくれない”という悩みは、
自分のことしか考えていない何よりの証拠である」
(アルフレッド・アドラー /オーストリアの精神科医、心理学者
『人生に革命が起きる100の言葉』より)