危険ドラッグで自動車運転しただけで現行犯逮捕です
危険ドラッグに絡む交通事故の急増で、警視庁に動きがあったので解説します。
「危険ドラッグ、事故なくても逮捕へ 警視庁、道交法積極適用を通知」(2014年8月5日 産経新聞)
警視庁は5日、危険ドラッグ(脱法ドラッグ)の吸引者による交通事故が相次いでいることを受け、使用が疑われる運転が発覚した場合、道交法違反(過労運転等の禁止)容疑で現行犯逮捕する運用を始め、各警察署などに通知しました。
以下に挙げるような条件を満たせば、同法が禁じる「薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態での運転」の疑いがあるとみなすということです。
〇運転手の意識が混濁するなど異常な状態
〇正常でない運転をしたことが明白
〇車内に危険ドラッグや吸引具がある
人身・物損事故を起こした場合、これまでは薬物と事故との因果関係を立証するために数ヵ月も鑑定結果を待たなければいけなかったのですが、今後は事故だけでなく、検問などで事前に危険ドラッグの使用が疑われれば、同法違反容疑を適用し、現行犯で逮捕するとしています。
愛知県警では7月下旬から、物損事故を起こした運転者に危険ドラッグの使用が疑われる場合、同法違反容疑で現行犯逮捕する運用を始めているようですが、今回さらに一歩踏み込んだ方針といえるでしょう。
薬物の影響で正常な運転ができない状態で事故を起こした場合は、「危険運転致死傷罪」の適用が問題となりますが、この罪は構成要件が厳格なため、それほど多く適用されるわけではありません。
また、事故を起こして始めて適用されるため、薬物使用での運転の抑制という観点で言えば、まだ十分に機能しているとは言えません。
そこで、薬物使用での運転には、事故を起こす前でも摘発してしまおう、というのが今回の運用です。
薬物使用での運転の抑制の観点からは、評価できる運用だと思います。
では早速、「道路交通法」を見てみましょう。
「道路交通法」
第66条(過労運転等の禁止)
何人も、前条第1項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。
これに違反すると、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。
ちなみに、前条第1項とは、酒気を帯びての運転です。
別の報道によると、2013年上半期に危険ドラッグに絡んで摘発された人数66人に対して、2014年上半期では、すでに145人が摘発。
また、2014年上半期に摘発した危険ドラッグ使用者による交通事故33件のうち、26件で検出された薬物は、薬事法の指定薬物ではなかったことが判明。
2013年でも、1年間で摘発した38件のうち28件は未指定で、7割以上で規制対象外の薬物が使われていたようです。
覚醒剤や大麻は、試薬を使えば短時間で鑑定できるのですが、危険ドラッグは、違法かどうかの鑑定に数ヵ月もかかっていたわけですから、こうした迅速な判断は、危険運転による死傷事故の抑止には一定の効果があると思われます。
どのような成分が入っていて、人体にどう作用するかわからない危険ドラッグを吸うことも、それで自動車を運転することも、ご法度だということを肝に銘じてほしいと思います。