強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪の本当の違いとは?
「準強制わいせつ:治療偽り体触る 53歳歯科医逮捕 三重」
(2014年2月5日 毎日新聞)
三重県亀山署は、歯科医師の男(53)を準強制わいせつの疑いで逮捕しました。
調べによると、容疑者の男は昨年の10月、当時勤務していた三重県亀山市の歯科医院で20代の女性患者に対して、必要な治療だと偽り体を触るなどしたようです。
男は「かみ合わせが悪い」「大胸筋が張っている」などと理由をつけては治療室とは別の部屋に女性を連れ込み、マッサージと称して、わいせつな行為をしたということです。
女性は、その日のうちに同署に相談。同署は余罪を追及するようです。
「大胸筋が張っている」と言われて喜ぶのは、ボディビルダーくらいでしょう。
「大胸筋張ってますね~!」
(*^▽^*)ゞイヤ~、ソレホドデモ~
ところで、みなさんは今回の事件の容疑である「準強制わいせつ」という罪名を見て疑問に思うことはないでしょうか?
「準」とは何でしょう? 本格的ではない、ささいなわいせつ罪ということでしょうか?
「準優勝」などの、ちょっと惜しいわいせつ罪ということでしょうか?
「準」があるなら、「正式」なわいせつ罪もあるのでしょうか?
じつは、あるのです。それらの違いを法律的に解説してみましょう。
「刑法」第178条(準強制わいせつ及び準強姦)
1.人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。
2.女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。
「心神喪失」と「抗拒不能」という部分がポイントとなります。
13歳以上の者に対して、心神喪失(精神的な障害などによって正常な判断力を失った状態)や、抗拒不能(心理的または物理的に抵抗ができない状態)に乗じてわいせつな行為をした者は、準強制わいせつ罪が、または姦淫行為をすれば準強姦罪が適用されるわけです。
例えば、睡眠や酩酊している人や高度の精神遅滞の人のように被害者がわいせつ行為を認識できない場合は心神喪失、医療行為を装ったときなどは、抗拒不能にあたります。
2004年アテネと2008年北京の両オリンピックで金メダルに輝いた、男子柔道の内柴正人被告の容疑は、準強姦罪でした。
当時、被告が柔道部のコーチを務めていた大学の女子柔道部員が泥酔状態で強姦されたとして起訴された事件は、記憶に新しいところです。
さて、以上が「準」がつく犯罪ですが、次に正式な犯罪を見てみましょう。
心神喪失若しくは抗拒不能に乗じた場合は、「準」でしたが、「暴行」や「脅迫」によって逆らえない状態にして事におよんだ場合、「準」ではない罪となります。
第176条(強制わいせつ)
13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
第177条(強姦)
暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
しかし、刑の重さでいえば「準」だからといって軽くなる、というわけではないということに注意が必要です。
「優勝」と「準優勝」の間には、大きな差がありますが、「強制わいせつ罪」と「準強制わいせつ罪」との間には、刑罰の差はありませんので、よく憶えておきましょう。
あっ、それと、嫡出子(婚内子)と非嫡出子(婚外子)との間には、相続分について大きな差がありましたが、平成25年12月5日に民法が改正され、相続分は平等となりましたので、それも憶えておきましょう。
最後になぞかけです。
バンビとかけまして、
歯医者さんと解きます
その心は?
「しか」とも言います。(+o+)