うっかり話してしまった“個人情報”の暴露は犯罪になる!?
誰にでも口がすべって、余計なことを言ってしまったり、ついうっかり他人に秘密を話しちゃうこと、ありますよね。
でも、ちょっと待ってください!
あなたの不用意な一言が犯罪になるかもしれないのです。
「苦情電話装い威圧、巧みに個人情報を奪った探偵の男が逮捕」
千葉県のガス会社の顧客情報が流出した事件で、東京都目黒区の調査会社の男が不正競争防止法違反(営業秘密侵害)の疑いで逮捕されました。
男は契約者になりすましてコールセンターへ苦情電話をかけ、3~4分の1回の電話で契約名義など個人情報を聞き出していたということです。
ニュースによると、
その手口は単純にして巧妙で、「料金を払っているのに請求書がきた」と言いがかりをつけ、「名前? さっき言ったでしょ」「漢字は間違ってないか」などと相手を追い詰める。
電話口で女性職員がひるむと、さらに「画面、ちゃんと見ろよ」「こっちは料金払ってんだ」とたたみかけ、相手が情報を口にするように仕向けていたといいます。
その後の調べによると、男らは逮捕前に50ほどの自治体に電話をかけていたとみられ、昨年11月に神奈川県逗子市で起きたストーカー殺人事件の被害者の住所の割り出しにも関わった疑いもあるということです。
さて、この不正競争防止法とはどういうものなのでしょうか。条文を見てみましょう。
不正競争防止法
第1条
この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
「不正競争」は多岐にわたりますが、たとえば以下のようなものが挙げられます。
〇既に知られているお店の看板に似せたものを使用して営業する(周知表示混同惹起行為)
〇ブランドとなっている商品名を使って同じ名前のお店を経営する(著名表示冒用行為)
〇ヒット商品に似せた商品を製造販売する(商品形態摸倣行為)
〇企業が秘密管理している製造技術や販売マニュアル、顧客名簿などを持ち出して独立・転職・転売したり、不正に取得する(営業秘密)
〇CDやDVD、音楽・映像配信などのコピープロテクトを解除する機器やソフトウェアなどを提供する(技術的制限手段に対する不正競争行為)
〇原産地を誤認させるような表示、紛らわしい表示をして商品にする(原産地等誤認惹起行為)
〇ライバル会社の商品を特許侵害品だとウソを流布して、営業誹謗する(競争者営業誹謗行為)
〇外国製品の輸入代理店が、そのメーカーの許諾を得ずに商標を使用する(代理人等商標無断使用行為)
今回のケースは、不正競争防止法違反の中の「営業秘密侵害」にあたります。
法律では窃取(せっしゅ)、詐欺(さぎ)、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為や、その営業秘密を使用、開示する行為、不正取得された営業秘密を使用、開示する行為、事業者から開示された営業秘密を、不正に利益を得る目的あるいは事業者に損害を被らせる目的で使用、開示する行為、などを禁止しています。
探偵の男は不正に顧客情報という「営業秘密」を入手して利益を得ていたので当然、犯罪になります。
では、顧客情報を漏らしてしまった職員、つまり個人情報を扱う会社の社員が情報を漏らしてしまうと犯罪になるのでしょうか?
この職員は威圧的に責められ、心理的には動揺していたでしょうが情報を漏らすつもりなどなかったはずです。
しかし、自分で気づかぬうちに個人情報を流出させてしまいました。
この犯罪は、故意犯ですので、故意か、故意ではなかったのか? がポイントとなります。
よって女性職員は、故意に情報を流出させたわけではないので犯罪にはなりません。
ところが問題なのは、故意の場合です。
たとえば昨年、ソフトバンクの代理店の元店長が携帯電話契約者の個人情報を会社外の探偵業者に渡し、報酬を受け取っていたとして逮捕された事件がありました。
不正競争防止法違反の罰則は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれを併科です。重い罰則です。
さらには、損害賠償請求の対象になる可能性もあります。
ほんの出来心や、軽い小遣い稼ぎのつもりでも、個人情報の取り扱いには犯罪にもなりうる危険が潜んでいます。
うっかりでは済まされない、個人情報を扱う人は十分に注意してください。