埋没コストに惑わされないようにしよう | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
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埋没コストに惑わされないようにしよう

2012年09月01日

私たちは、常に正しい決断をしたいと願っています。

感情に惑わされず、理性によって合理的な決断をしたいと願っています。

しかし、色々な要因によって、私たちの正しい決断は阻害されます。

その一つに「埋没コスト」というものがあります。

たとえば、私が譲渡不可の歌手のライブチケットを1万円で購入したとします。

ライブの当日、体調が悪くなったので、ライブに行くよりは、家で少しゆっくりしたいと思いました。

しかし、せっかく買ったライブのチケットがあります。

そこで、私は、無理をしてライブに行きましたが、体調不良のため、十分に楽しめませんでした。

体調が悪化した私は思いました。

「ああ、こんなことなら家でゆっくりしていれば良かった」

ライブに行くか、家でゆっくりするか、という二者択一の時に、「家でゆっくりする」という決断をすべきだったのに、ライブに行ってしまったのです。

何が起こったのでしょうか?

「埋没コスト」が働いたのです。

「埋没コスト」というのは、いったん投下して、回収ができない費用のことを言います。

ライブチケットは、1万円で購入して、譲渡不可ですから、金券ショップにも売れません。回収不能です。

私は、この1万円のもとを取ろうとして、無理をしてライブに行ったのです。

これが「埋没コスト」による正しい決断の阻害です。

投下した1万円は、すでにチケットになっていますので、ライブに行くかどうかの場面で、私が持っている権利は、「無料でライブに行く権利」と「家でゆっくりする権利」です。

そう考えると、体調のことを考えると、家でゆっくりする権利を行使するでしょう。

しかし、すでに投下した1万円のことを考えると、そのような合理的な判断ができなくなり、なんとかして1万円を回収しようとし、無理をしてでもライブに行ってしまうのです。

この「埋没コスト」の呪縛から逃れるには、投下した費用のことを考えず、今と将来のみを見ることです。

交際相手と別れる時、「埋没コスト」が働くと、「あれだけ尽くしたのだから、すぐに別れられない」「あれだけ金を使ったりプレゼントをあげたりしたのだから、簡単には別れられない」などと思います。

しかし、大事なことは、すでに投下した時間や費用ではなく自分の今と将来です。

「埋没コスト」に引きずられないようにしましょう。