埋没コストに惑わされないようにしよう
私たちは、常に正しい決断をしたいと願っています。
感情に惑わされず、理性によって合理的な決断をしたいと願っています。
しかし、色々な要因によって、私たちの正しい決断は阻害されます。
その一つに「埋没コスト」というものがあります。
たとえば、私が譲渡不可の歌手のライブチケットを1万円で購入したとします。
ライブの当日、体調が悪くなったので、ライブに行くよりは、家で少しゆっくりしたいと思いました。
しかし、せっかく買ったライブのチケットがあります。
そこで、私は、無理をしてライブに行きましたが、体調不良のため、十分に楽しめませんでした。
体調が悪化した私は思いました。
「ああ、こんなことなら家でゆっくりしていれば良かった」
ライブに行くか、家でゆっくりするか、という二者択一の時に、「家でゆっくりする」という決断をすべきだったのに、ライブに行ってしまったのです。
何が起こったのでしょうか?
「埋没コスト」が働いたのです。
「埋没コスト」というのは、いったん投下して、回収ができない費用のことを言います。
ライブチケットは、1万円で購入して、譲渡不可ですから、金券ショップにも売れません。回収不能です。
私は、この1万円のもとを取ろうとして、無理をしてライブに行ったのです。
これが「埋没コスト」による正しい決断の阻害です。
投下した1万円は、すでにチケットになっていますので、ライブに行くかどうかの場面で、私が持っている権利は、「無料でライブに行く権利」と「家でゆっくりする権利」です。
そう考えると、体調のことを考えると、家でゆっくりする権利を行使するでしょう。
しかし、すでに投下した1万円のことを考えると、そのような合理的な判断ができなくなり、なんとかして1万円を回収しようとし、無理をしてでもライブに行ってしまうのです。
この「埋没コスト」の呪縛から逃れるには、投下した費用のことを考えず、今と将来のみを見ることです。
交際相手と別れる時、「埋没コスト」が働くと、「あれだけ尽くしたのだから、すぐに別れられない」「あれだけ金を使ったりプレゼントをあげたりしたのだから、簡単には別れられない」などと思います。
しかし、大事なことは、すでに投下した時間や費用ではなく自分の今と将来です。
「埋没コスト」に引きずられないようにしましょう。