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バレンタインデーのチョコで公職選挙法違反!?
2016年02月23日バレンタインデーの歴史は3世紀中頃のローマ帝国にまで遡るという説があるようです。
日本での起源にも諸説あるようですが、それはともかく、今回はバレンタインデーにチョコレートをあげると法律違反になる可能性がある!? という報道について解説します。
恋人たちの日に法律違反とは穏やかではないですが、一体どういうことでしょうか?
市内の支援者21人にバレンタインデーのチョコレートを配っていた、兵庫県の市議の行為が、公職選挙法が禁じる寄付行為に当たる恐れがあるとして、兵庫県警三木署が事実関係を調べているようです。
2月13日、市議は後援会幹事らの自宅を訪問。
近況報告の手紙に、約500円のチョコレートを添えて配ったということで、手紙には「支援者のお一人お一人のご恩情に報いることのできるよう、襟を正して活動して参ります」などと書かれていたようです。市議は、バレンタインデーのプレゼントを支援者に贈ったのは初めてだったとし、「普段からお世話になっている人ばかりで、寄付行為に当たる認識がなかった。反省している」、「今後は一層注意をしたい」と話しているということです。
公職選挙法では、選挙の有無に関わらず、公職の候補者等が選挙区内の人に対して、どのような名義であっても一切の寄附を禁止しています。第199条の2(公職の候補者等の寄附の禁止)
1.公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域。以下この条において同じ。)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。(後略)
これに違反した場合、3年以下の禁固又は50万円以下の罰金に処されます。(第248条)今回の市議会副議長の行為、つまりバレンタインデーに支持者に対してチョコを贈ることも「寄付行為」にあたるのではないか、ということが問題になっているわけですね。
一般的な感覚では、数百円のチョコをあげるくらい問題ないだろうと考える人もいると思いますが、寄付行為の禁止は公職選挙法における基本のひとつですから、「知らなかった」「認識がなかった」というのでは勉強不足、政治家の資質を問われてもしょうがないことです。
では、どのような行為が寄付行為となるのでしょうか。
総務省のホームページの「選挙・政治資金」のコーナーでは次のものなどが寄付禁止の対象になるとしています。・お祭りへの寄付・差し入れ
・落成式・開店祝等の花輪
・秘書が代理で出席する場合の葬式の香典
・葬儀の花輪・供花
・入学祝・卒業祝
・病気見舞い
・町内化会の集会・旅行等の催物への寸志・飲食物の差し入れ
・秘書等が代理で出席する場合の結婚祝
・地域の運動会・スポーツ大会への飲食物等の差し入れその他、政治家の後援団体(後援会など)からの寄付や、政治家が役職員や構成員である会社や団体からの政治家の名前を表示した寄付なども禁止されています。
詳しい解説はこちら⇒
「祭りへの寄附が問題に! 公職選挙法が定める規制とは?
https://taniharamakoto.com/archives/1619なお、例外として寄付が認められているものに「親族に対して行う寄付」があります。
親族とは民法上の親族と同じで、6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族となっています。ちなみに、いとこは4親等、はとこは6親等。
3親等の姻族としては、兄弟姉妹の配偶者の子や配偶者の伯父・叔父・伯母・叔母、配偶者の甥・姪などがあげられます。3月には、「ホワイトデー」があります。
バレンタインデーにチョコレートをもらった公職の候補者等は、ホワイトデーにクッキーを渡すと、今回と同じように公職選挙法違反になる可能性がありますので注意が必要です。
また、クリスマスも同様です。
「クリスマスパーティがあるから、各自プレゼント持参で」と言われ、プレゼントを持っていくと、公職選挙法違反になる可能性があります。
プレゼントは、親族だけにしましょう。
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選挙では金品をあげても、もらっても犯罪です【公職選挙法 買収及び利害誘導罪】
2015年08月18日民主主義においては、選挙は公正に行われなければいけません。
ところが、そうとは考えていない人たちがいるようです。今回は、「政治」と「金」と「酒」、おまけに「法律」について解説します。
「村議が日本酒配る 公選法違反容疑で書類送検」(2015年8月11日 産経新聞)
有権者に日本酒を配ったとして、2015年4月の統一地方選で当選した新潟県弥彦村の村議(82)が、公選法違反(買収)容疑で新潟県警に書類送検されていたことがわかりました。
同県警によると、3~4月頃、投票を呼び掛けるために複数の有権者に一升瓶の日本酒を20本以上、配った疑いがあるようです。
村議は現在7期目で、4月の村議選(定数10)に無所属で出馬し、321票で最下位当選。
取材に対し、選挙活動の中で日本酒を配ったことを認め、「進退については捜査の結果が出てから考えたい」と話しているということです。
公職選挙法については以前にも解説しています。
詳しい解説はこちら⇒
「祭りへの寄附が問題に! 公職選挙法が定める規制とは?」
https://taniharamakoto.com/archives/1619「公職選挙法では候補者等による寄附は禁止」
https://taniharamakoto.com/archives/1675公職選挙法は、1950年に衆議院議員選挙法と参議院議員選挙法、そして地方自治法の選挙に関する条文を統合して制定されました。
内容は、国会議員や地方公共団体の議会の議員・首長など公職に関する定数や選挙方法などについて規定しています。今回は買収の容疑です。
以下に、まとめます。「公職選挙法」
第221条(買収及び利害誘導罪)
1.次の各号に掲げる行為をした者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
一 当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき。
二 当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対しその者又はその者と関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の直接利害関係を利用して誘導をしたとき。
三 投票をし若しくはしないこと、選挙運動をし若しくはやめたこと又はその周旋勧誘をしたことの報酬とする目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し第一号に掲げる行為をしたとき。
四 第一号若しくは前号の供与、供応接待を受け若しくは要求し、第一号若しくは前号の申込みを承諾し又は第二号の誘導に応じ若しくはこれを促したとき。
五 第一号から第三号までに掲げる行為をさせる目的をもつて選挙運動者に対し金銭若しくは物品の交付、交付の申込み若しくは約束をし又は選挙運動者がその交付を受け、その交付を要求し若しくはその申込みを承諾したとき。
六 前各号に掲げる行為に関し周旋又は勧誘をしたとき。
買収罪とは、選挙運動期間中かどうかに関係なく、選挙で当選することを目的に有権者や選挙運動員に対して金品を渡したりする行為をしたときに適用されます。対象となるのは、お金以外にも以下のようなものがあります。
・食事や酒の提供
・金券(商品券等)の提供
・旅行や観劇などへの招待
・選挙運動員への法律に定める額を超えた報酬の支払い
・報酬を支給することができる運動員以外の人への金品等の提供注意が必要なのは、金品や接待を受けた人や要求した人(被買収)も買収罪の対象となるということです。
公職の候補者や選挙運動の統括責任者、出納責任者が違反した場合は、4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処されます。(第221条3項)
多数の選挙人(有権者)や選挙運動員に対して買収を行った場合は、五年以下の懲役又は禁錮に処されます。(第222条1項)
なお、「連座制」というものがあります。
これは、買収罪の刑に処せられた者が、連座裁判等により総括主宰者、出納責任者、地域主宰者、親族、秘書又は組織的選挙運動管理者等に当たることが確定した場合(親族、秘書及び組織的選挙運動管理者等については禁錮刑以上の場合のみ)、公職の候補者本人に連座制が適用され、当選無効や立候補制限が課せられるというものです。(第251条の2、3)
さて、ちょうど同時期に、お金による買収事件の報道もありました。
以下の事件です。「尾花沢市前議長逮捕、買収などの疑い 県警と尾花沢署」(2015年8月13日 山形新聞)
山形県警捜査2課と尾花沢署は、2015年年7月12日に投開票された尾花沢市議選で有権者に現金を配ったとして、当選した同市議会前議長(70)を公選法違反(買収、事前運動)の疑いで逮捕しました
告示日前の6月ごろ、同市内で容疑者への投票や票の取りまとめなどの選挙運動に対する報酬として、有権者数人に現金計十数万円を渡した疑いで、現金以外にも、ギフトセットなどの物品を多数の有権者に対して配っていたようです。
同県警は受け取った側についても公選法違反(被買収)容疑で、任意で事情を聴いているということです。
公職選挙法は、公明、適正に選挙が行われ、民主政治の健全な発達のために制定されたのですが、残念ながら違反者が後を絶ちません。酒は飲んでも飲まれるな、という言葉がありますが、飲む前にすでに自分の欲に飲まれて、お金や酒を受取った有権者にも問題があります。
選挙に関係して金品をあげた人だけでなく、もらった人も犯罪となる可能性があることに、十分注意してほしいと思います。
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どこまでできる?インターネットでの選挙運動
2014年12月10日第47回衆議院議員総選挙が、もうすぐ施行されます。
投票日は、12月14日です。解散の理由や選挙の争点が、あれこれ取りざたされていますが、事前の予想では今回は投票率が低いとみられているようです。
そこで今回は、選挙運動と法律について解説したいと思います。
さて、選挙に関する法律が定められているものといえば、「公職選挙法」です。
公職選挙法については以前、解説しました。
詳しい解説はこちら⇒「祭りへの寄附が問題に! 公職選挙法が定める規制とは?」
https://taniharamakoto.com/archives/1619公職選挙法は、選挙の公正を確保するために「選挙運動期間に関する規制」や「未成年者の選挙運動の禁止」など、選挙運動に関するさまざまな規制が定められています。
ところで現在、選挙運動にインターネットが利用されているのを、みなさんはご存知でしょうか?
じつは、以前はインターネットを利用した選挙運動は、法定外の違法な「文書図画の頒布」であるとして禁止されていました。
文言としては違和感がありますが、「文書図画」にインターネットも含んでいる、という解釈です。
しかし、これだけネットが普及している現代では、選挙もネットとは切り離せないということで法整備が進められ、2013年4月19日の「改正公職選挙法」によって、一定の規制のもとでインターネットの利用が解禁されたという経緯があります。
では、この改正によってインターネットでの選挙運動では、何ができるようになり、何ができないのか、まとめてみます。
【ウェブサイト等を利用する方法】
〇政党、候補者、有権者すべての人は、ウェブサイト(ホームページ)、ブログ、掲示板、SNS(ツイッター・フェイスブック等)等を利用した選挙運動ができる。(第142条の3第1項)〇選挙運動用のウェブサイト等には、電子メールアドレス、返信用フォームのURL等、その者に連絡をするのに必要となる情報を表示する義務がある。(第142条の3第3項)
〇ウェブサイト等に掲載された選挙運動用文書図画は、選挙期日当日もそのままにしておくことができる。(第142条の3第2項)
ただし、選挙運動は選挙期日の前日までに限られており、更新はできない。(第129条)
【電子メールを利用する方法】
〇選挙運動用の電子メールについては、政党と候補者に限って利用することができるが、一般有権者は禁止。(第142条の4第1項)
ただし、メールの送信先には一定の制限がある。(第142条の4第2項)〇電子メール送信者には、一定の記録保存の義務がある。(第142条の4第1項)
〇電子メールで送信される文書図画には、送信者の氏名やアドレス等の表示の義務がある。(第142条の4第6項)
【処罰の対象となる禁止行為】
〇20歳未満の未成年者の選挙運動は禁止。(第137条の2)〇選挙運動は、公示・告示日から投票日の前日までしかすることができない。(第129条)
〇選挙運動用のホームページや、候補者・政党等から届いた電子メール等、選挙運動用のビラやポスター等の頒布は禁止。(第142条)
〇選挙運動のための有料インターネット広告については禁止。ただし、
政党等は、選挙運動期間中、当該政党等の選挙運動用ウェブサイト等に直接リンクする政治活動用有料広告を掲載することができる。(第142条の6)〇当選させない目的で候補者に関して虚偽の事項を公にし、または事実を
ゆがめて公にする行為は禁止。(第235条第2項)〇当選させる、もしくは当選させない目的で真実に反する氏名、名称または身分の表示をして、インターネットを利用する行為は禁止。(第235条の5)
さらに、悪質な誹謗中傷行為は「名誉棄損罪」(刑法第230条)や、「侮辱罪」(刑法第231条)などに、また、候補者のウェブサイト等の改ざんは「選挙の自由妨害罪」(公職選挙法第225条第2号)や「不正アクセス罪」(不正アクセス禁止法第3条)などにより刑事罰の対象になる可能性があります。
法律上、政党・候補者と有権者では、できる選挙運動に違いがあるわけですね。以上、身近な例で言うと、
●未成年者の選挙運動はNG
●一般の有権者はフェイスブックやツイッターでの選挙運動はOK。ただし、本人に連絡できるためのメールアドレス等を表示する必要あり。虚偽の名称や身分を表示することは禁止。
●一般の有権者は電子メールやメルマガではNG
特に、メルマガを発行している方は、「応援したい!」という思いが強すぎて、間違って選挙運動を行わないようお気をつけください。
ちなみに、実際の選挙では、某アイドルグループの総選挙のようにインターネットでの投票は行われていませんので、ご注意ください。(+o+)
また、候補者の書籍を複数購入しても、投票権を複数得られるわけではありませんので、ご注意ください。(+o+)(+o+)
さらに、当選者のコメントを聴いても、某アイドルグループの当選者のコメントのように感動することは期待できませんので、ご注意ください!(T_T)
「日本を今一度、洗濯いたし申し候」
(坂本龍馬)それは、無理かっ!?L(゚□゚)」オーマイガッ!
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公職選挙法では候補者等による寄附は禁止
2014年10月21日自民党の小渕優子議員が、関連する政治団体での不適切な資金処理が疑われている問題などの責任を取って、経済産業大臣を辞任しました。
また、群馬県の市民団体が、「政治資金規正法違反」(虚偽記入)と「公職選挙法違反」(買収)の罪で小渕氏に対する告発状を東京地検に提出したようです。
「小渕氏に対する告発状を東京地検に提出 地元オンブズマン」(2014年10月20日 産経新聞)
群馬県の市民団体「市民オンブズマン群馬」は、経済産業相を辞任した小渕優子氏(群馬5区選出)の関連政治団体が開催した「観劇会」をめぐる不透明収支問題で、政治資金規正法違反と公職選挙法違反の罪で小渕氏に対する告発状を東京地検に提出しました。
報道によると、平成22年と23年、小渕氏の地元・群馬県の政治団体「小渕優子後援会」と「自民党群馬県ふるさと振興支部」は、東京の劇場「明治座」で支援者向けに観劇会を開催。
小渕氏は、両団体の会費収入を2年間で計約742万円としていたが、政治資金収支報告書から支出は計約3384万円に上ることが判明しているとのことです。
報告書通りであれば、差額の約2642万円を政治団体が負担した形で、有権者への利益供与を禁じた公職選挙法に抵触する恐れがあるとしています。
さらに別の報道では、自身の資金管理団体「未来産業研究会」がネギやこんにゃく、ベビー用品、化粧品などを購入していたことについて小渕氏は、「群馬県外の支援者への贈答品や、海外出張時のお土産だった。政治家が人脈を広げることは重要な仕事のひとつで、政治活動の経費として認められると思っている」、「公私の区別はしっかりつけている」と主張。
さらに、親族企業からたびたび購入していた服飾品については、「姉がデザインしたもので、(名産品とは)違った話題で交流が深められる。大変重宝している」と語っているようです。
小渕氏は、観劇会をめぐる収入と支出が大きく食い違っていることについて、「指摘を受けている通り、大きな疑念があると言わざるを得ない」と述べ、税理士ら第三者に調査を依頼する意向を示したということです。
それでは早速、公職選挙法から見ていきましょう。公職選挙法は、衆議院議員や参議院議員、地方公共団体の議会の議員、首長を公選するための選挙について定めた法律で、衆参両院の定数や選挙方法、選挙権・被選挙権などについて規定しています。
公職選挙法の寄付の禁止については、以前解説しました。
詳しい解説はこちら⇒「祭りへの寄附が問題に! 公職選挙法が定める規制とは?
https://taniharamakoto.com/archives/1619今回は、まず、寄附の禁止規定に該当するかどうか、です。
「公職選挙法」
第199条の2
1.公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域。以下この条において同じ。)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。ただし、政党その他の政治団体若しくはその支部又は当該公職の候補者等の親族に対してする場合及び当該公職の候補者等が専ら政治上の主義又は施策を普及するために行う講習会その他の政治教育のための集会(参加者に対して饗応接待(通常用いられる程度の食事の提供を除く。)が行われるようなもの、当該選挙区外において行われるもの及び第百九十九条の五第四項各号の区分による当該選挙ごとに当該各号に定める期間内に行われるものを除く。以下この条において同じ。)に関し必要やむを得ない実費の補償(食事についての実費の補償を除く。以下この条において同じ。)としてする場合は、この限りでない。ここで、「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のものをいいます(同法179条)。
罰則は、1年以下の禁固又は30万円以下の罰金です。
さらに、その利益供与が集票目的であるならば、別の罰則が適用されます。
第221条(買収及び利害誘導罪)
1.当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき。公職者の場合、罰則は4年以下の禁固又は100万円以下の罰金です。
さらに、ここでもうひとつ注意しなければいけないのは、金品をもらったり接待を受けた人も犯罪になる可能性があるということです。
4.第1号若しくは前号の供与、供応接待を受け若しくは要求し、第1号若しくは前号の申込みを承諾し又は第2号の誘導に応じ若しくはこれを促したとき。
罰則は、3年以下の禁固又は50万円以下の罰金です。
これは、公職選挙法の基本中の基本です。
では次に、政治資金規正法を見てみましょう。
政治資金規正法は、政治家や政治団体が取り扱う政治資金について規定した法律です。
今回指摘されているのは、虚偽記入です。
「政治資金規正法」
第12条(報告書の提出)
政治団体の会計責任者は、毎年十二月三十一日現在で、当該政治団体に係るその年における収入、支出その他の事項で次に掲げるものを記載した報告書を、その日の翌日から三ヵ月以内に、第六条第一項各号の区分に応じ当該各号に掲げる都道府県の選挙管理委員会又は総務大臣に提出しなければならない。1.すべての収入について、その総額及び総務省令で定める項目別の金額並びに次に掲げる事項
2.すべての支出について、その総額及び総務省令で定める項目別の金額並びに人件費、光熱水費その他の総務省令で定める経費以外の経費の支出について、その支出を受けた者の氏名及び住所並びに当該支出の目的、金額及び年月日
政治団体は、その年の収入と支出すべてを記載しなければいけません。
違反した場合、罰則は5年以下の禁固又は100万円以下の罰金です。
ところで本日、安倍内閣の松島法務大臣もまるで示し合わせたように辞任を発表しました。
こちらは、自身の選挙区で法務大臣の肩書の入った「うちわ」を配布したことが発端でした。先ほどの「寄附」の禁止に該当するかどうか、という問題です。
もう一度確認してみましょう。
「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のものをいいます。
少なくとも、うちわを配ることは、「債務の履行」としてなされるものではありません。
とすると、うちわが、「物品」といえるかどうか、ということになります。
ここでは、うちわが財産として価値があるものかどうか、が問われます。
過去の判例で、寄附に該当したものとしては、ビール券(最高裁平成12年11月20日判決)、「初盆参り」として現金5,000円(福岡高裁平成8年12月16日判決)などがあります。
うちわは手であおいで涼をとるために使用されます。
同じ涼をとるためのものとして、エアコンを送ったら、間違いなく寄附ですね。
扇風機も寄附です。
では、扇子はどうでしょう?
やはり、財産として価値があるものと言えるでしょう。
さて、それでは、うちわは、どうでしょうか?
そういう観点からすると、うちわは安価とはいえ、残産として価値がない、とまではいえないでしょう。
松島さんの旗色は悪い、と言わざるを得ないでしょう。
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祭りへの寄附が問題に! 公職選挙法が定める規制とは?
2014年08月31日今年も日本全国で、さまざまな夏祭りが開かれたことと思います。
神輿に祭囃子、盆踊りに花火大会、サンバカーニバルなどもありますね。
「祭り」と聞くと、血が騒ぐという人もいるでしょう。さて、そんな夏祭りが静岡県富士市で問題になっているようです。
楽しいはずのお祭りに、一体何があったのでしょうか?「市議複数が夏祭りに“会費”出す 1人5千円、寄付行為に抵触か」
(2014年8月28日 静岡新聞)静岡県富士市の複数の保守系市議が、毎年9月に開かれる夏祭りで、少なくとも過去5年間に「会費」として、1人5000円を主催者に渡していたことがわかりました。
内部資料の協賛者一覧に、地元企業や事業所の代表者、市内各種団体の代表者らとともに、市議や前市議、衆院議員の名前と金額が記してあったようです。
毎年、お金を渡していた市議がいるほか1回のみの市議もいて、取材に対し、いずれも認めているということです。
また、別の祭りでも「会費」を渡している市議がほかにも複数いて、市議会でも問題視する声が出始めているようです。
市選挙管理委員会は「公選法は一切の寄付行為を禁じている」との認識を示しているとのことですが、報道では、祝儀や会費などを暗に求める有権者や地域の姿勢も問題だとしています。
一般の人や地元の人は、政治家でも誰でも寄付をしてくれるのだから、ありがたいことだと思う人もいるでしょう。しかし、「寄附」ということになると、これは、れっきとした法律違反なのです。
日本には、「公職選挙法」という法律があります。
これは、国会議員や地方公共団体の議会の議員・首長など公職に関する定数と選挙方法などを規定するもので、1950年、衆議院議員選挙法・参議院議員選挙法の各条文や、地方自治法における選挙に関する条文を統合する形で新法として制定されたものです。「公職選挙法」
第1条(この法律の目的)
この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする。
選挙の立候補者は「自由」に、かつ「公明」、「適正」に選挙活動しなければいけないのですが、そのために「選挙運動期間に関する規制」(選挙の公示・告示日から選挙期日の前日までしかできない)や、「未成年者の選挙運動の禁止」、「文書図画の頒布の規制」などの規制が定められています。また「公職選挙法」では、選挙の有無に関わらず、公職の候補者等が選挙区内の人に対して、どのような名義であっても一切の寄附を禁止しています。(第199条の2)。
ちなみに、総務省のホームページでは、禁止されている寄附の例として、以下のようなものを挙げています。
〇病気見舞い
〇祭りへの寄附や差入れ
〇地域の運動会やスポーツ大会への飲食物の差入れ
〇結婚祝い・香典
〇葬式の花輪・供花
〇落成式・開店祝の花輪
〇入学祝・卒業祝
〇お中元・お歳暮これは、公職選挙法の基本中の基本ですから、知らずに政治家をしている人がいるとすれば、言語道断ですね。
法律遵守の自覚が乏しいと言わざるを得ません。
ところで、公職選挙法は、「寄付」について、次のように規定しています。
197条 2項
「この法律において「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のものをいう。」ここでは、「会費」は「寄附」にならないとしており、今回の方々も「祭りの会費だから寄附にはあたらない」と判断したのかもしれません。
しかし、「寄附」になるかどうかは、お金を交付するときの名称にかかわらず、その実質により判断されます。
そして、法律では、「会費その他債務の履行としてなされるもの」は寄附ではないとされています。
ポイントは、「債務の履行」かどうか、ということです。
たとえば、私たち弁護士が支払う「弁護士会費」は、登録した弁護士が当然に支払わなければならない性質のものであり、「債務の履行」として支払うものですから寄附ではありません。
では、今回の祭りの会費はどうでしょう。
町内全員の義務になっていれば別ですが、寄附の意思を持つ人が任意に行うものであれば、「債務の履行」とは言えず、「寄附」にあたり、公職選挙法違反になる、ということになります。
迷った時は選挙管理委員会や弁護士に確認することが大切ですね。
公職に就いている人も、これから公職に就こうと大志を抱いている人も、公職選挙法は熟知していなければいけません。
自信がないという人は早速、勉強してください。
それが政治家の責務です!同時に、有権者や地域全体の問題でもありますから、この機会に公職選挙法を勉強してみてもいいかもしれません。
ただし、とてもわかりにくい法律になっています。(;´Д`)アウ…