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労働基準監督官が社長を逮捕!?


2016年3月24日

労働基準監督官が社長を逮捕することがあるって知ってましたか?

「外国人実習生に違法な長時間労働させた疑い 社長ら逮捕」(2016年3月22日 朝日新聞デジタル)

岐阜労働基準監督署は22日午前、外国人技能実習生に違法な長時間労働をさせたなどとして、岐阜県岐南町の婦人・子供服製造会社社長(50)と、岐阜市の技能実習生受け入れ事務コンサルタントの男(50)を最低賃金法と労働基準法の違反容疑で逮捕しました。

報道によると、2014年12月~15年8月、2人は共謀し中国人技能実習生4人に対し、岐阜県の最低賃金(当時は時給738円)に満たない額で、しかも1日8時間の法定労働時間を超えて働かせ、割増賃金も支給していなかったようで、不払いの賃金の合計は約475万円になるということです。

容疑者の2人は、技能実習生の帳簿の改ざん、労働基準監督署の立ち入り調査に応じず無視、虚偽説明の繰り返しなどをしていたことから、悪質性が高いと判断されたようです。

技能実習生は、午後10時~翌午前5時の深夜帯や休日にも働かされていたということで、1ヵ月当たり133~187時間の時間外労働があり、2015年9月に労働基準監督署に申告したことで、今回の発覚につながったとしています。

技能実習生に対する労働基準法違反などでの逮捕は異例だということです。
今回のポイントは次の3点です。

1.違法な長時間労働・割増賃金の不払いによる労働基準法違反
2.最低賃金以上の額を支払わなかったことによる最低賃金法違反
3.労働基準監督署の権限の範囲について

残業代の不払いについては以前、解説しました。

1週間で40時間、かつ1日8時間の「法定労働時間」を超えて「時間外労働」(残業)させた場合や休日労働・深夜業を行わせた場合、使用者は労働者に「割増賃金」(残業代)を支払わなければいけません。

労働基準監督署へ届け出をしないで時間外労働をさせたり、時間外労働をさせて割増賃金を支払わなかったりした場合、労働基準法違反で6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。

ただし、労使間で「36協定(さぶろくきょうてい)」を結んでいる場合は、その限りではありません。
次に、最低賃金法についてです。

使用者は労働者に対して、国で決められた「最低賃金」よりも多く給料を支払わなければいけません。

都道府県ごとに定められたものを「地域別最低賃金」、特定産業に従事する労働者を対象に定められたものを「特定最低賃金」といいます。
使用者は、いずれかのうち高いほうの最低額以上を労働者に支払わなければいけません。

最低賃金が支払われない場合、労働者は労働基準監督署に訴えることができます。

「最低賃金法」
第4条(最低賃金の効力)
1.使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

これに違反した場合も、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。

そして、これらの法律に基づいて、労働者の最低労働基準や職場の安全衛生を守るために企業を調査・監督し、法律が守られていなければ使用者を指導するのが労働基準監督署です。

労働基準監督署には、厚生労働省の専門職員である「労働基準監督官」が所属していて、企業への立ち入り調査(臨検)などをします。

計画的に対象企業を選定して調査することを「定期監督」、労働者からの申告・告発を受けて調査することを「申告監督」といいます。
概ね次のような流れで現場での任務を遂行します。

「労働基準監督官の仕事の流れ」
1.企業を訪問
2.立ち入り調査/臨検(使用者や労働者への事情聴取、帳簿の確認など)
3.法律違反が認められた場合、「文書指導」、「是正勧告」、「改善指導」、「使用停止命令」などを実施
4.企業からの是正・改善報告を受けて、是正・改善が確認できれば指導は終了
5.是正・改善が認められない場合、再度監督を実施し、重大・悪質な場合は送検

ちなみに、立ち入り調査を拒んだり、妨げたりした場合、30万円以下の罰金に処される可能性があります。

さて、労働基準監督官は、労働基準法の番人、司法警察官、労働Gメンなどとも呼ばれます。
それは、労働基準監督官が「労働基準法」や「最低賃金法」、「労働安全衛生法」などの法律違反について「刑事訴訟法」に規定する司法警察員の職務を負っているため、警察官と同じような権限を行使することができるからです。

労働基準監督官の主な権限は次の通りです。
・事業場への予告なしの立ち入り調査(臨検)
・帳簿書類の提出要求と確認
・使用者や労働者への尋問
・使用者や労働者への報告・出頭命令
・監督指導
・法令違反者の送検・逮捕

通常、労働基準関係法令に違反し、改善が認められない使用者などは送検(刑事事件として起訴するかどうかを決定するために検察官に事件を送ること)されることが多いのですが、今回のケースではさらに悪質だと判断されたことで逮捕になったと思われます。

送検や逮捕となれば、刑罰を科せられるのはもちろん、会社名や個人名を公表される場合があり、場合によっては今回のように全国に報道されることにもなりますから、会社が被る損害は甚大になります。

経営者は、ただ利益を上げればいいというわけではありません。
法令を遵守し、従業員を守り、職場の安全を確保していくことが求められるのです。
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過労運転をさせた社長が逮捕!?


2015年10月17日

ある運送会社の社長が、自らは運転していないのに道路交通法違反で逮捕されたようです。

一体、どんな罪を犯したというのでしょうか?

「過労運転黙認容疑で運送会社社長を逮捕 月400時間拘束続く」(2015年10月15日 産経新聞)

兵庫県警交通捜査課などは、トラック運転手に長時間にわたる運転をさせたとして、同県加古川市の運送会社社長(67)を、道路交通法違反(過労運転の下命)容疑で逮捕しました。

2014年11月、過労運転の恐れがあることを知りながら、トラック運転手の男性社員(60)に大阪市から広島県福山市までの運送を命じた容疑としています。

事の発端は、県警が高速道路の路側帯に停車していた同社の運転手に事情を聞いたところ、「仮眠中だった」と話したことから、同社の運行業務の実態を捜査。
そこで、過労運転が常態化していた疑いが強まったため、会社側の管理責任を問えると判断したようです。

社長の男は、「過労とわかっていたが、会社の利益のために運転させた」と容疑を認めているということです。

過去には、事故発生後に同容疑で立件したケースはありますが、事故が発生する前に適用する例は全国的にも珍しいとしています。
【道路交通法違反“過労運転の下命”とは?】
「道路交通法」は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的としています。(第1条)

では、「過労運転の下命」とはどういうものでしょうか?
関連する条文を見てみましょう。

第66条(過労運転等の禁止)
何人も、前条第1項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。
※これに違反した場合は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第117条の2の2第7号)
※前条(第65条)第1項とは、酒気帯び運転の禁止です。
※薬物等の影響により正常な運転ができない状態で運転した場合は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(第117条の2第3号)
第75条(自動車の使用者の義務等)
1.自動車の使用者(安全運転管理者等その他自動車の運行を直接管理する地位にある者を含む。)は、その者の業務に関し、自動車の運転者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることを命じ、又は自動車の運転者がこれらの行為をすることを容認してはならない。

四 第66条の規定に違反して自動車を運転すること。
運転者に十分な休養を与えずに、正常な運転ができない状態にも関わらず運転をさせたり、運転することを容認した場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第117条の2の2第10号)
つまり、第66条は運転者、第75条は使用者(事業者)に対する規定ということになります。

ちなみに、使用者(事業者)は運転者に対して、制限速度を超えるスピードで運転させたり、飲酒運転を容認してもこの罪に問われることになるので注意が必要です。
【過労運転の定義とは?】
では、過労運転には一定の基準や定義があるのでしょうか?

トラック運転者の労働条件の改善を図るために策定された、労働大臣告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)では、次のように規定しています。

・1ヵ月の拘束時間は、原則として293時間が限度
・ただし、労使協定を締結した場合は、320時間まで延長できる
・1日の拘束時間は13時間以内を基本とし、延長する場合は16時間が限度
・1日の休息時間は、継続8時間以上を与えなければならない
・1日の拘束時間が15時間を超える回数は、1週間に2回まで。
・1日の運転時間は、2日平均で1日あたり9時間が限度
・1週間の運転時間は、2週間ごとの平均で44時間が限度
・連続運転時間は、4時間が限度

これらの「限度」を超えると過労運転になる可能性があります。

過去の判例では、上記の基準も参考に過労運転にあたるかどうかが争われているので、ドライバーを管理する立場の人や会社の社長などは注意が必要です。
ところで、警視庁が公表している「平成26年中の交通事故の発生状況」によると、交通事故の総件数から見れば少ないものの、過労運転が原因の交通事故は378件起きています。

過労状態で自動車を運転して、集中力の低下や居眠り運転などによる交通事故を起こしてしまえば、大惨事になりかねません。

使用者や管理者は法律を守って、ドライバーに十分な休息を与えなければいけません。
また、ドライバー自身も無理をせず安全運転に努めて、事故や交通違反がないようにしてほしいと思います。

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31歳年の差にストーカー規制法違反


2015年5月14日

今回は、かなり年上の女性を好きになりすぎて、ついには逮捕されてしまった男の話です。

男が犯した罪とは何だったのでしょうか?

「“好きで忘れられなかった”54歳女性に23歳男がストーカー行為で逮捕」(2015年5月12日 産経新聞)

兵庫県警生活安全企画課と県警豊岡南署は、元交際相手の女性(54)につきまとい、メールを連続して送りつけたなどとして、会社員の男(23)をストーカー規制法違反容疑で逮捕しました。

報道によると、男は3月6日~8日にかけて、女性から拒まれたにもかかわらず、「電話をください」などと36回ものメールを送りつけ、さらには4月17日午後2時半ごろ、被害者宅を監視するなどしたようです。

同署は被害女性から相談を受け、3月に警告を行いましたが4月になってもストーカー行為が続いたため、今回の逮捕となったとしています。

2人は、以前勤務していた会社の同僚で、男は「好きで忘れられなかった」と容疑を認めているということです。
年上の女性に憧れ、恋をする青年…そんな設定の小説や映画がありますが、現実世界ではストーカー行為は犯罪になります。
では、条文を見てみましょう。

「ストーカー規制法」
第2条(定義)
1.この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
「つきまとい行為」は、以下の8つが規定されています。
①待ち伏せ、尾行、および自宅や勤務先を見張り、押しかけること。
②行動を監視していると告げる行為。
③面会や交際、その他義務のないことを行うことの要求。
④著しく粗野、乱暴な言動。
⑤無言電話、連続した電話・FAX・メール。
⑥汚物・動物の死体等の送付。
⑦名誉を害する事項の告知。
⑧性的羞恥心を侵害する事項の告知、わいせつな写真・文章などの送付、公表。
どれもやられたら迷惑なものばかりで、被害者にとってはたまったものではありませんね。

以下に、この法律について簡単にまとめておきますので、この機会に「ストーカー規制法」について学んでいただきたいと思います。

・ストーカー規制法は、正式名称を「ストーカー行為等の規制等に関する法律」といいます。

・1999(平成11)年に起きた「桶川ストーカー殺人事件」をきっかけに、2000(平成12)年11月に制定された法律で、その後、2012(平成24)年に発生した「逗子ストーカー殺人事件」を受けて、2013(平成25)年6月に改正されました。

・ストーカー行為とは、つきまとい行為を同一の人に対して反復して行うことです。(第2条2項)

・上記①~④に関しては、「身体の安全、住居などの平穏、名誉が害され」、「行動の自由が著しく害され不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る」とされています。(第2条2項)

・上記のストーカー行為をした者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第13条)

・ストーカー行為は「親告罪」です。
親告罪とは、被害者が告訴(捜査機関に対し犯罪を申告して処罰を求めること)しなければ公訴できない犯罪のことです。

・警察は、行為者に対して警告書によって警告ができます。(第4条)
警告に従わない場合、都道府県公安委員会は禁止命令を出すことができます。(第5条)
この命令に従わない場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(第14条)

・女性だけでなく、男性も保護の対象となっています。

上記にあてはまる行為を受けている方も多いのではないでしょうか。

せっかくの一度の人生、他人からのつきまとい行為により、ビクビクしながら生きるのはもったいないですね。

「警察に申告するのがこわい」

という人もいますが、むしろ、そのまま行動がエスカレートする方が、もっと怖い目にあうと思います。

勇気を出して、警察に被害を申告するようにしましょう。

ご相談は、こちらから。
http://www.bengoshi-sos.com/about/0903/

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