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顧問契約終了日の紛争で税賠
2024年04月18日
今回は、顧問契約の終了日がいつかが争点となった税理士損害賠償事件である東京地裁平成8年12月4日判決を解説します。
(事案)
・原告及び被告税理士は、平成3年2月1日、次のとおり顧問契約書を締結した。
(1)会計・税務の顧問業務、税務代理業務を委託すること
(2)前記の会計・税務顧問業務に対して月3万円、税務代理業務に対して年10万円を支払い、被告は、この他に、報告書作成などに伴う特別の業務については、原告に別途請求できることが規定されていた。・原告は、平成4年12月に持ちビルを建替えのため取り壊したことから営業が一時停止し、第34期決算(決算期間 平成4年5月1日から平成5年4月30日)では年間の売上げが3000万円を下回り消費税の課税事業者ではなかつた。
・平成6年6月には旧ビルを建て替えて新ビルが完成し、原告はこれに伴つて建築費用等にかかる多額の消費税を負担することとなり、他方、新ビルを他へ売却するなどして売上げを計上する予定もなかつたので、第36期決算(決算期間 平成6年5月1日から平成7年4月30日)においては、課税事業者を選択して右消費税の還付を受けた方が有利であつた。
(原告の主張)
被告は、原告が第36期決算において消費税の還付を受けられるよう、右決算期において課税事業者となるための選択届出書を、提出期限である平成6年4月30日までに原告のために所轄税務署長に提出し、あるいはその頃原告に対し、右届出書を提出するよう助言する義務を有していたのに、これを怠った。
(被告の主張)
本件契約は、平成5年8月末に合意解約されているので、被告は、平成6年4月になすべき選択届出書の提出を原告のために行つたり、これについて原告に助言したりする義務はなかつた。(判決)
原告は、平成5年9月以降、被告に対しそれまで毎月支払つていた月3万円の顧問料の支払いをしていない。
・平成5年9月以降は、原告から被告に対し、具体的な業務に関する相談や報告等は一切なされておらず、被告の方でも預かつていた原告の関係書類は全て返還し、以後被告は原告のための業務を何ら行つていないこと、・・・平成6年4月末決算(第35期事業年度)については、原告は、これを別の税理士に依頼している。
⇒顧問契約は平成5年8月末で合意解約された(税理士勝訴)
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以上です。
消費税の届け出関係については、提出期限前後で顧問契約が終了されている場合、届け出の助言義務が問題となる場合があります。
顧問料が支払われていなくても、顧客は色々と理由をつけて顧問契約の継続を主張してくることがあります。
このような紛争を防止するには、顧問契約が終了した場合には、終了時期、顧客との権利義務関係を精算するため、「解約合意書」を締結することをおすすめしますが、これができない場合は、書面やメールなどで、「●月●日限りで顧問契約が終了したことを確認させていただきます」などと送っておくことをおすすめします。
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延納許可申請の助言義務違反で税賠(税理士勝訴)
2024年04月11日
今回は、延納の助言義務違反による税理士損害賠償の解説です。
神戸地裁平成10年12月9日判決です。
(事案)
相続人6人に相続税申告手続を依頼された。
申告期限において未分割だったため、法定相続分で当初申告をした。
税理士が延納手続を取らなかったため、納税のために借入をせざるを得なくなり、借入金利息等の損害を被ったとして損害賠償請求をした。
(判決)
税理士が原告一郎に送ったFAXには、次の記載があった。
「延納申請をすることは出来る。」「申請のためにいろいろと書類をととのえる必要があるが、依頼があれば用意するので早急に連絡を願う。」
被告は、原告一郎に対し、延納手続について一応の説明はしている。しかるに、それに対し、原告らが被告に対し、延納手続を取るよう求めたことを認めるべき証拠はない。
延納が許可されるためには、納期限までに金銭で納付することが困難であることが必要とされるところ、原告花子は2億円も借り受けることができたことなどからすれば、そもそも原告らに、納期限までに金銭で納付することが困難な事由があったのかは疑わしい。
→税理士勝訴
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今回は、税理士が延納許可申請の説明をしたことの立証が成功し、税理士が勝訴しました。
決め手はFAXでした。
しかし、FAXがなく、口頭で説明していたら、どうでしょうか。
説明したかどうかが不明となります。
そして、延納許可申請の手続きは執られていません。
ということは、延納許可申請の説明を受けていたら、手続きを依頼していた、というような事情を立証されてしまうと、税理士が説明したことを立証するのは難しくなる、ということです。
このことからも、説明義務の場面では、証拠がとても重要ということになります。
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顧問先の役員に対する助言で税理士損害賠償
2024年04月04日
今回は、顧問会社の役員個人からの税務相談に対して誤った回答をしたことにより税理士損害賠償となった東京地裁平成12年6月30日判決をご紹介します。
(事案)
原告は、A社の取締役である。
A社と被告税理士は、税務顧問契約を締結している。
被告は、A社との税務顧問契約に付随して、原告個人の確定申告業務及び個人の税務相談を行っていた。
原告は、自己の居住用建物を売却することを考え、被告に対し、A社に売却した場合、3000万円の限度での譲渡所得の特別控除の適用を受けられるか相談したところ、被告からは、適用可能との回答を得た。
そこで、原告は建物をA社に売却したが、同族会社への売却のため、特別控除を受けられなかった。
(税理士の主張)
原告個人と被告との間に税務顧問契約はない。顧問料も受領していない。
原告から説明を受けたのは、売却利益が100万円~200万円というものであり、譲渡所得は発生しない前提であったから過失はなく、因果関係もない。
(判決)
顧問契約が存在しないならば、原告から相談を受けた際に、原告個人の相談は受けられない旨相談の受理を拒否すれば足りるのであって、右相談に応じたこと自体本件顧問契約の存在を裏づける事情。
原告からの本件相談内容は、基本的事項に関するものであって、税理士としては初歩的知識というべく、その教示を誤ったという行為は、たとえ無償の顧問契約であったとしても、契約上の義務に反する重大な過失といわなければならない。
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以上です。
法人との顧問契約に付随して、役員等の個人確定申告業務や税務相談などを受けている場合、個人との間でも税務顧問契約が成立していると認定される可能性があるので注意が必要です。
契約書がなく、かつ、顧問料を受領していない無償の場合でも、税務顧問契約は成立します。
したがって、役員の税務相談に応ずる場合は、報酬を0円として契約書を締結することもご検討いただければと思います。
報酬を0円にすれば契約は成立せず、税理士損害賠償にもならないと認識している方もいますが、民法648条1項は、「受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。」として、無償の委任契約を原則としており、報酬が0円だから契約ではない、という抗弁は成立しません。
ご注意ください。
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意思能力調査不足で税賠の裁判例
2024年03月29日
今回は、被相続人が保険契約をした際の意思能力を調査しなかったことを理由として税理士が損害賠償請求を受けた東京地裁平成24年10月16判決を解説します。
(事案)
・T証券は、保険会社の代理店として、平成20年12月15日、被相続人から申し込みを受け、被相続人を保険契約者兼保険料負担者、原告や孫らを被保険者兼年金受取人とする合計3億円の年金型保険契約を締結した。
・被相続人は、平成20年12月19日死亡した。
・原告らは、被告税理士に対し、相続税申告手続きを依頼したが、税理士は、3億円の保険料返還請求権を相続財産ではないとして相続税申告をした。
・課税庁は、被相続人は意思能力がなかったとして、本件保険会社に支払われた3億円の保険料の返還請求権が相続財産に含まれるなどとして、相続税の更正及び加算税の賦課決定を通知した。
(判決)
・税理士が相続人に相続財産について聴き取りを行い、裏付けとなる資料の提出を求めたところ、Aは、不動産、有価証券、現金及び預金等の財産についての裏付けとなる資料とともに、本件保険契約についての資料として本件保険会社が本件保険契約に基づいて保険金の受給権が確定したことを知らせる支払調書の原本を示した。
・Aは、被相続人が原告の生活を心配し、原告の生活が長期間にわたり安定するように年金払の保険に加入したこと、本件保険契約が締結され、原告の今後を憂うことがなくなったと喜んでいたことなどを説明した。
・本件保険会社が原告らの受給権を確定させて本件保険契約の効力を認めている上、梅夫の語る内容は特に不自然なものではなく信用し得るものである。
・相続財産の価額は10億円を超えており、相続人らのために年金を遺す趣旨で3億円の契約を締結することがそれほど不自然であるとはいえないし、契約者が死亡直前まで意識が明瞭であることは十分あり得ることである。
・課税当局が保険契約の有効性を否認することができたのは、被相続人のカルテを取り寄せて分析を行った結果であるが、税理士にはこのような調査手段がない以上、税理士において本件保険契約の有効性に問題のあることを認識し得るような資料を入手し得たとはいえない。
→ 税理士勝訴
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以上です。
本件のように、税理士として注意義務を尽くし、不自然な点がない事案でも、損害賠償請求をされることがあることに注意が必要です。
その場合には、相続人らとどのようなやり取りがあったのか、について記録を残しておくことが重要となってきます。
特に、
・相続財産の認定、
・名義財産、
・課税要件としての居住の認定
など事実認定については、事実認定に使用した資料や事情聴取の内容のメモなど、可能な限り証拠を残しておくことが大切ということになります。
税理士損害賠償の場合、口頭のやり取りのみで、訴訟になった時の立証に苦労することがあります。
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外国税額控除を漏らして税理士損害賠償
2024年03月14日
今回は、外国税額控除を漏らして税賠の裁判例を解説します。
東京高裁平成21年4月15日判決です。
(事案)
・被告税理士は、平成17年9月8日、原告が代表を務める会社の決算書類及び確定申告書の作成を報酬(決算料)12万円で受任した。
・原告個人は、平成17年8月5日に米国不動産を売却していた。
・被告税理士は、平成18年3月9日、原告の所得税確定申告書を作成提出したが、外国税額控除に関する明細書などを添付せず、外国税額控除を受けられなかった。
(争点)
・原告個人の所得税確定申告代理業務を受任したのはいつか。(平成17年中であれば、法人の申告の打ち合わせの際に、米国不動産売却の話が出た可能性がある)
・被告税理士は、原告から外国所得の話がなくても、原告に対し、「外国の所得はないか」と確認すべき義務があるか。(積極的に漏れなく確認する義務があるか)
(判決)
(所得税確定申告業務を受任したのはいつか?)
・平成18年2月3日、原告の平成17年の所得税確定申告書作成の依頼を受け、これを報酬2万5000円で受任した。
(平成17年ではないので、不動産売却の話が出た可能性は低い。)
・これ以降に外国不動産の売却についてのやり取りがあったかどうかが問題となる。
⇒ない。⇒ 税理士は、外国での収入を知らなかった。
(積極的に外国での収入を確認する義務があるか?)
・確定申告を依頼された税理士は、正確な申告をするためには、一般的に依頼者より所得状況の聞き取りを行う義務がある。
・税理士が受任した際にどの程度の聞き取りを行うべきかの具体的な範囲・程度については、もとより具体的事案に応じて決せられるべき。
・被告税理士が、平成18年2月3日の打ち合わせの際に、原告に対し、過去の確定申告書を見せながら、前年の申告以外に収入がないことの確認を求めて聞き取りを行ったものであり、原告からそれら以外の説明がないため外国の財産について認識し得ない状況下では、さらに被控訴人において「国外においても所得があるか」と具体的に指摘した聞き取りまですべき義務があると認めることはできない。
⇒税理士勝訴
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以上です。
(ポイント)
・税理士が受任した際にどの程度の聞き取りを行うべきかの具体的な範囲・程度については、具体的事案に応じて決まるのであり、一般的に決まっているものではありません。
・契約書を締結していれば、受任時期が争いになることはなかったと思われます。
・所得税確定申告を受任した場合に報告及び資料の提出を求める事項について、雛形を作成し、受任時に交付しておく業務フローにする方法もあります。
・契約書に一切の収入について報告し、資料を提出する義務を依頼者に課す方法もあります(責任分担規定)。
・申告書を提出する前に、メール等で依頼者の収入を列挙し、「上記以外で譲渡した資産や収入は一切ないか?」と尋ねておく方法もあります。
いずれにしても、大量に所得税確定申告業務を行う中で、このような事案でも税理士損害賠償請求の発展し、訴訟にまでなってしまう、ということです。
各事務所において、証拠化に工夫が求められるところです。
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礼金漏らして税理士損害賠償
2024年03月07日
今回は、税理士損害賠償の裁判例をご紹介します。
惰性で業務を行わず、注意深く行わなければならないことを教えてくれる東京地裁平成21年10月26日判決です。
(事案)
・X(納税者)は、合計7棟の賃貸用建物及び2つの駐車場を所有して、これらの賃貸業を営んでいる者である。
・Y(税理士)は、平成12年から平成17年度まで、毎年度、Xの所得税の確定申告書等の作成を受任した。
・Xは、Yに対し、不動産収入の内訳明細書や仲介業者が作成した賃料集金明細書を提出した。
・Xは、本件不動産賃貸業において、礼金及び更新料等を受領していたが、不動産収入の各内訳明細書の、礼金・敷金・更新料欄には、これを一切記載せず、また、仲介業者が作成した賃料集金明細書にも、礼金等の額は正確に記載されていなかった。
・Yは、Yの従業員が作成した本件各確定申告書等の各税理士欄に記名又は記名・押印した。Yは、その際、本件各確定申告書等の記載内容を、本件各資料の内容と照合して、その記載内容の正確性を検討したり、自ら又は従業員を通じて、Xらに対し、本件不動産賃貸業に関する礼金等の有無や本件借入利息の内容等についての確認や事情説明、資料の追加提出等を求めることなどはしなかった。
・Xは、平成18年秋以降、税務調査を受け、過少申告加算税、重加算税及び延滞税の支払を余儀なくされたことから、Yに対し、損害賠償を請求した。
(判決)
・本件不動産のうち建物については、月額賃料が5万円から10万円までの賃貸物件で、貸主において、契約締結時又は更新時に礼金又は更新料を受領したり、退去日等との関係から日割賃料が発生するケースも少なくないこと、などから、本件各確定申告書等には、礼金等の収入が計上されず、また、本件借入利息等を含む本件不動産賃貸業に関係しない支出が必要経費として計上されたことが認められる。
・税務に関する専門知識を有するYにおいて、本件各確定申告書等の記載と本件各資料の記載を照合して、本件各確定申告書等の根拠となっている本件各資料の内容を精査すれば、礼金等の収入の有無や必要経費の内容や金額などについて、疑問をもち、Xに対し、これらについて説明を求め、追加資料の提出を促すことは容易であったというべきである。
・本件委任契約を受任した税務の専門家として、Xからの委任の趣旨に沿うよう、Xに対し、適切な助言や指導を行って確定申告書等を作成すべき義務を怠ったと認められる。→税理士敗訴
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以上です。
税理士は、依頼者が事実の全部若しくは一部を隠ぺいし、若しくは仮装している事実があることを知つたときは、直ちに、その是正をするよう助言する義務があります。(税理士法41条の3)
従業員に任せきりにして見落としても、税理士の責任(履行補助者の故意・過失)になります。
チェック体制を整えておく必要があります。
また、資料を見た時に、「通常あるはずのものがない」ものを見つけて質問・資料提出を求めたり、「通常ないはずのものがある」ものを見つけて質問・資料提出を求めることが必要となります。
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納税猶予の助言義務違反で税賠の裁判例
2024年02月22日
今回は、相続税申告において、納税猶予の説明義務に違反したとして損害賠償請求された裁判例をご紹介します。
横浜地裁平成元年8月7日判決です。
(事案)
・原告の父が死亡し、原告他9名が法定相続人として相続が開始した。
・原告他9名は、被告税理士に相続税申告手続を委任したが、農地の納税猶予の適用を依頼し、被告税理士は受任した。
・相続税申告期限の日に税理士は遺産未分割で申告手続をしたが、その際、農地の納税猶予の適用申請をしなかった。
・本件納税猶予は農地についてのみ一部分割をしていれば適用を受けられたにもかかわらず被告税理士が説明を怠ったことにより適用不可となったとして、損害賠償請求をした。
(判決)判決は、以下のとおり、税理士に対し、納税猶予の説明をする義務があると判断しました。
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税理士は、本件納税猶予の適用申請手続の税務代理を受任した場合、委任者に対し、本件納税猶予の適用申請を行うためには、申告期限までに共同相続人間で遺産分割協議書が作成されなければならないこと、即ち、全体の遺産分割協議書が作成されるべきであるが、仮にその作成ができなかつたとしても、当該農地だけの一部遺産分割協議書が作成されなければならないことを説明すべき義務が存するものというべきである。
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また、判決は、事実認定として、税理士は、納税猶予の説明をしなかった、と認定しました。
では、損害賠償責任を認めたか、というと、結論は税理士勝訴です。
説明義務があり、税理士は説明を怠ったにもかかわらず、です。
理由は、以下のとおりです。
・遺産分割の協議は、税理士から相続税申告期限までに分割協議を成立させるよう再三にわたり述べられていたにも拘らずこれができなかつたほど難行していた。
。不動産を本家側、分家側でどのように分配するかで難航しており、相続税の軽減の問題は二次的な問題であった。
・分家側の一部の者が原告に対し相当に感情的になつていた。
・仮に原告が分家側の相続人に対し、本件納税猶予の適用のため本件農地の一部分割を求めたとしても、申告期限内に右一部分割協議が成立し得たものと推認することは困難であった。
・したがって、税理士が説明したとしても、損害は回避できなかった。
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つまり、「損害がない」ので、損害賠償責任もない、ということです。
本件の教訓としては、申告期限までに一部分割すれば適用可能な場合は、そこまで説明しておく必要がある、ということです。
また、他の選択肢を選択することがその時点で想定できないような場合でも一応説明はしておく、ということです。
いずれも証拠化を忘れないようにしておきましょう。
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裏付け資料の確認義務違反で税理士損害賠償
2024年02月15日
今回は、税理士が裏付け資料を確認せずに申告書を作成したことが注意義務違反であるとして損害賠償請求をされた裁判例をご紹介します。
山形地方裁判所鶴岡支部平成19年4月27日判決です。
(事案)
・原告は、クリーニング業を主たる業とする株式会社であり、グループ企業7社がありました。
・原告は、グループ会社の本部機能を担っており、そのために要する費用を、管理費としてグループ会社から徴収していました。
・管理費の徴収に当たっては、事前に、当該グループ会社と原告との間でロイヤリティー契約を締結することはせず、決算書作成の過程で、原告代表者が、税理士が作成した仕訳帳を見て、当該グループ会社の当期の利益額を確認し、その場で管理費額を決定し、出金伝票と支払用の小切手を切るという方法が取られていました。
・税務調査において、管理費及び特別管理費について説明を求められ、実費相当額であることの裏付け資料の提出を求められましたが、裏付け資料を提出することができませんでした。
・その結果、修正申告をしました。
・原告は、顧問の公認会計士及び税理士が適切な助言を怠ったことにより、損害が発生したとして、損害賠償請求をしたという事案です。
【判決】
(事実認定)
税理士は、管理費の徴収にはロイヤリティー契約を締結することを提案したが、原告代表者から、「グループ会社の管理には経費がかかっており、自分が決めている管理費は、かかった経費相当額である。」旨説明され、それ以上契約締結を勧めることはしなかった。
税理士は、原告代表者に対し、管理費として認められるのは、実費相当額のみであることも説明したが、原告代表者は、「原告内部には経営分析のための資料があり、それによれば、管理費として計上している額以上の実費がかかってる。」旨返答し、裏付け資料の有無を問われると、「資料はあるが、原告の色々な経費の中に紛れていて取り出すことは難しく手間がかかる。」旨返答して、丙税理士に対し裏付け資料を見せることは一度もなかった。税理士は、原告専務取締役の協力の下、総勘定元帳等からC社のための経費及びグループ会社の共通経費を拾い出す作業をしているところ、たとえ原告代表者が資料の提出を拒否したとしても、最終的には原告専務取締役の協力を得るなどして、資料の開示を受ければ、原告が計上した管理費及び特別管理費が実費相当額であったか否かを明らかにすることは可能であった。
(あてはめ)
被告は、原告の管理費及び特別管理費の計上について、それを裏付ける客観的資料がない限り、経費として控除の対象にならないことを認識していながら、資料による裏付けをすることなく、漫然と原告代表者が計上した額に基づき税務申告をし、そのために原告が修正申告をせざるを得なくなったと認めることができる。このことからすれば、被告には、本件各税務顧問契約における注意義務に違反した債務不履行があったといえる。
原告代表者は、税務に関して専門知識を有する者ではないのであるから、税務の専門家である税理士としては、その説明が客観的根拠により裏付けられるか否か確認する必要はあった。
管理費及び特別管理費については、極めて高額であり、これが税務署から否認された場合には、顧客である原告等8社に大きなリスクを負わせてしまう危険を孕んでいる。
総勘定元帳等を丹念に調べれば、管理費及び特別管理費として認められるもの、認められないものの区別は可能であった。
被告が何ら資料の徴求をせず、資料はあるという原告代表者の説明を漫然と信じ、その有無を現実に確認しなかったことは、本件各税務顧問契約における注意義務に違反した。
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以上です。
税理士は、強制的な調査権限がない以上、顧問先から資料提出を拒否されればそれ以上、資料の確認ができないことからすれば、少々厳しすぎる判断という印象があるかもしれません。
しかし、管理費及び特別管理費が極めて高額であることからすれば、税務調査があった場合にはその根拠を問われることは容易に予測可能です。
専務取締役の協力を得れば資料を確認することができたと認定していることからすれば、専務取締役に対して資料の提出を求めることはしておいた方が良かったと言えます。
また、総勘定元帳を丹念に調べれば確認可能であったという点も善管注意義務違反の判断に影響を与えているものと考えられます。
顧客に大きな税務リスクがある場合には、リスクの内容をよく説明した上で、その説明を証拠化しておくことが重要です。
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税理士損害賠償と税額増加分
2023年11月17日
法人に対する税理士損害賠償において、税理士が支払った損害賠償金が法人の益金に算入される結果、法人税及び地方税が課税され、その納付を余儀なくされるから、その税額についても、損害であると主張されることがあります。
この論点については、どのように考えれば良いのでしょうか。
結論から言えば、法人税及び地方税は、損害に加算されるべきではありません。
東京地裁令和2年2月20日判決があります。
裁判所は、次のように判示しています。
「原告は、被告から過大納付分及び税理士費用に関する損害賠償金を取得したとしても、当該賠償金が原告の益金に算入される結果、法人税及び地方税が課税され、その納付を余儀なくされるから、その税額についても、損害であると主張する。」
「しかし、当該賠償金に法人税及び地方税が課税されて納付すべき税額が発生するのは、損害を填補する損害賠償金が確実に発生したことを益金として扱うこととした租税制度の結果にすぎず、その発生した税額は、填補されるべき原告の損害とは性質を異にする純然たる租税債務として観念すべきであり、本件債務不履行と相当因果関係のある損害ではない。」
したがって、関与先から上記のような主張があった場合には、当該判決を示し、税額の増加分を加算しない実損害額を前提に、交渉することとなります。
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税理士法人は株式取得をすることができるか。
2023年09月29日
今回は、【税理士を守る会】での質疑応答をご紹介します。
(質問)
税理士法人で出資をして株式会社を設立し、不動産事業を営むことを検討しています。
税理士法など、法律に違反することがあるでしょうか。
(回答)
税理士法48条の5は、「税理士法人は、税理士業務を行うほか、定款で定めるところにより、第二条第二項の業務その他の業務で税理士が行うことができるものとして財務省令で定める業務の全部又は一部を行うことができる。」と規定しており、この規定に反するかどうかが問題となります。
この点、株式の取得自体については、・・・・・
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