お金を払う強盗犯人? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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お金を払う強盗犯人?

2010年12月27日

おもしろい事件だ。

お金を取ろうとした強盗が、逆に9万円払ったという事件だ。

これでは、意味がわからない。

事件はこうだ。

住居に侵入した男がいたので、取り押さえようとしたところ、柄の先端がとがった「しの」と呼ばれる工具(長さ約30センチ)を取り出して反撃。それを取り上げたら、「お金払うから、逃がしてくれ」といって、9万円を払った、というものだ。

これなら、わかる。

http://news.livedoor.com/article/detail/5298550/

警察は、強盗致傷の容疑で捜査を進めている。

推測だが、男は空き巣に入ったつもりだったのだろう。

男は、家には誰もいないと思っていたはずだ。

誰もいなければ、金目の物を盗って逃げていただろう。

その場合には、住居侵入罪と窃盗罪だ。

ところが、今回は、強盗致傷。

強盗は、暴行や脅迫を加えて、金目の物を要求する場合に成立する。

今回は、武器を取り出してからは、金目の物を要求していない。逆だ。9万円払っているのだから。

では、なぜ強盗なのだろうか?

実は、刑法には、「事後強盗罪」というものがある。

それは、窃盗犯人が、盗んだ物を取り戻すのを防いだり、逮捕を免れたりするために暴行・脅迫を加えた場合にも、強盗と同じに処罰する、というものだ。

今回は、この事後強盗の容疑なのだろう。

そして、暴れた過程で相手に怪我をさせたので、強盗致傷の容疑がかかっているのだろう。

強盗致傷の法定刑を知っているだろうか。

とても重い。

無期懲役又は6年以上20年以下の懲役だ。

空き巣に入って、9万円払って逃げ出した男でも、強盗致傷になると、このくらい重くなる。

たかが空き巣と軽く見ない方がいい。