他の選択肢は、なぜ必要か? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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他の選択肢は、なぜ必要か?

2011年06月04日

男がある店に人質5人をとって立て籠もった。ウソップ

警察の交渉チームが現場に到着し、電話で犯人と交渉を始めた。電話

犯人の男は、6億円の現金と、逃走用の4WDを要求している。お金ジープ

犯人は、まずは30分以内にドーナツとミネラルウォーターを差し入れるよう要求した。mineral water

交渉人は、「わかった。ドーナツとミネラルウォーターを差し入れよう。その代わり、人質を1人解放してくれ」と、駆け引きをした。チョッパー

犯人は、「そんな駆け引きはナシだ。30分以内に差し入れられなかったら、人質を1人射殺する」と答えた。犯人は拳銃を持っていたのだ。ピストル

交渉人は、なんとか人質を解放するよう交渉したが、犯人は頑として応じなかった。

「仕方ない。ドーナツとミネラルウォーターでは、たいした実害はない。差し入れよう」チョッパー

交渉人は譲歩して、それらを差し入れた。

すると、犯人から要求があった。

「1時間以内に6億円の現金と逃走用の4WDを用意しろ。用意できなければ、人質を1人射殺する」火薬星!

交渉人は、言った。

「それは無理だ。6億円を準備するには、3時間はかかる。その前に人質の安全を確認させてくれ」チョッパー

犯人「うるさい。こちらの要求をのまなければ、人質を殺すまでだ」火薬星!

結局、1時間以内に現金を用意できず、犯人は人質を1人射殺した。

犯人「これが最後だ。これから30分以内に用意しなければ、人質を1人射殺する」ウソップ

警察は、これ以上犠牲者を出すわけにはいかない、ということで、犯人の要求に屈した。

以上はもちろん架空の話である。こんな風にはならない。

なぜなら、犯人が立て籠もった場合、まず警察は、現場を封鎖し、射撃班を配置する。

犯人が逃げられなくするのと、交渉決裂の場合に、強行突入するためである。

上の例で、なぜ警察は犯人の要求に屈したのだろうか?

それは、交渉決裂の際に取り得る別の選択肢を用意しなかったからだ。

それが強行突入である。

交渉の際には、交渉決裂の際に取り得る別の選択肢を用意しておかないと、どうしてもその交渉を成立させなければならなくなる。

交渉決裂、という選択肢がなくなるのだ。

そうなると、相手と主張が食い違った場合に、交渉決裂を恐れるあまり、譲歩せざるを得なくなってしまうのだ。

上の例では、交渉が決裂すると、犯人は人質を射殺することになるが、警察としては、それは困るので、交渉に固執することになる。

そして、交渉を成立させるために、譲歩し、交渉を成立させる(要求に応じる)しかなくなってしまったのだ。

しかし、現場を封鎖し、射撃班を配置して強行突入の準備をした場合にはどうか。

この場合、犯人の要求に応じることもできるし、犯人の要求を拒絶して、強行突入をはかることもできる。

犯人もそれがわかっている。

あまり自分の要求ばかりを主張すると、交渉が決裂して強行突入されると思うと、ある程度の譲歩も期待できる。

つまり、他の選択肢を用意することにより、色々な駆け引きが可能になるのである。

以上のことからわかるように、交渉に入る前には、先を見通し、交渉決裂の場合にはどうするか、を考えておく方がいい。

そうすれば、強い交渉が可能となるはずである。