不当解雇を弁護士に相談するメリット | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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不当解雇を弁護士に相談するメリット

2019年01月24日

働いていたら、突然解雇されることがあります。
そんな時、従業員としたらパニックになるでしょう。
通常、従業員は、給料をもらうことによって生活をしています。解雇される、ということは給料がなくなるわけですから、生活できなくなってしまいます。
養うべき家族がいる場合などは、さらに大変な事態になってしまいます。
突然解雇された場合には、色々な疑問が頭にわいてきます。

こんな解雇は無効ではないか?不当な解雇ではないか?

不当解雇かどうかは、誰が決めるの?

不当解雇の判断基準は?

不当解雇を弁護士に相談するのはあり?

不当解雇で請求できる慰謝料額は?

不当解雇の裁判は大変?

突然の解雇に、どのように対処したらよいのか、解雇された時に弁護士に相談した方がいい理由などについて紹介していきます。

1 解雇の前提には労働契約がある

従業員と会社との間には、「労働契約」「雇用契約」があります。
労働契約は、従業員が労働力を会社に提供し、その対価として給与を支払ってもらう契約です。
労働条件については、労働条件通知書、労働契約書、就業規則などに記載されますが、中には、何も書類を作成しないで口頭だけで取り決めてしまう会社もあるようです。もちろん労働基準法違反です。
解雇すると、この労働契約が破棄されることになります。

2 解雇とは?

解雇とは、会社が従業員に対し、労働契約を一方的に破棄する行為です。
労働契約が破棄されると、従業員は給料をもらうことができなくなります。給料で生活している従業員にとっては死活問題となります。
もちろん、会社は、従業員を自由に解雇できるわけではありません。
一定の場合には、解雇が無効になり、従業員は職場復帰をしたり、未払い給与を払ってもらったり、場合によっては、慰謝料請求をすることができます。
しかし、現実には、解雇事由がないのに、会社が従業員を解雇してしまっている例も多いように思います。

3 退職との違い

解雇と異なる概念に「退職」があります。
どちらも労働契約を終了させるものですが、どのような違いがあるでしょうか。
解雇は、先ほど説明したように、会社が一方的に労働契約を破棄するものであり、従業員の意思とは無関係です。
これに対し退職は、従業員が自ら退職届け等を提出するなどして、労働契約を解消することです。基本的に従業員の意思がないと、退職は成り立ちません。
このように、解雇と退職は「それが従業員の意思にもとづくものか」という点で違いがあることになります。
退職は、従業員の意思に基づくものなので、後から「不当解雇だ」と言っても裁判所は取り合ってくれません。
会社は、従業員を解雇する前に、「退職勧奨」といって、自ら退職するよう説得することがあります。このときに説得に応じて、自ら退職届を提出して退職すると、後で翻意して「解雇だった」といっても、争うのは難しくなってしまいます。
したがって、やめたくないのであれば、退職勧奨されたとしても、決してそれに応じてはいけない、ということになります。

4 解雇の3種類

解雇には3種類があります。

普通解雇
整理解雇
懲戒解雇

それぞれについて説明していきます。

普通解雇とは、懲戒解雇ではない解雇のことです。
たとえば従業員の勤務態度や能力、病気などを理由に解雇するケースが該当します。
普通解雇は、解雇の要件が厳しく判断されます。
要件を満たさないときは、「不当解雇」と判断され、無効になります。

整理解雇とは、いわゆるリストラ解雇のことです。
会社の経営状態が著しく悪化し、そのまま雇用を維持すると会社が倒産してしまうおそれがあるような場合に行われます。
整理解雇が有効になるためにも、厳しい要件を満たすことが必要です。
要件を満たさないと、やはり「不当解雇」となり、無効になります。

懲戒解雇は、従業員が重大な問題を起こして会社の規律を維持するために行うような解雇です。
たとえば、会社のお金を横領したり、刑事事件を起こしたり、というような場合です。
懲戒解雇をするには、就業規則等に定めが必要であり、要件を満たさない懲戒解雇は、やはり「不当解雇」として無効になります。

5 解雇が有効になるための要件とは

では、3種類の解雇は、どのような要件で有効になるのでしょうか。

普通解雇の要件
普通解雇は、以下の要件を満たさないと、不当解雇として、解雇が無効となります。

適正手続
普通解雇が有効になるためには、解雇の適正な手続きが守られることが必要です。
労働基準法では、会社側は従業員を解雇するとき、30日前に解雇予告をするか、その日数に足りない場合には解雇予告手当を払うことを要求しています。

解雇権濫用法理
普通解雇には、解雇権濫用法理があります。
解雇権濫用とは、「解雇理由の客観的合理性」と「解雇手続きの社会的相当性」がないにもかかわらず解雇してしまうことです。そのような場合には、解雇権を濫用したとして、解雇が無効になります。
たとえば「態度が反抗的で気に入らない」「他の従業員と比べて成績が少し悪い」「遅刻や欠勤が多い」という程度の理由では解雇できません。たとえば、勤務態度不良の社員がいる場合に、何度も注意指導し、改善の機会を与えたにもかかわらず、改善の余地がなく、「それ以上雇用関係を続けることが、客観的にみて不可能」という程度にならないと解雇できないと考えましょう。

整理解雇

整理解雇の4要素
整理解雇では「解雇の4要素」があり、4つの要素を検討して整理解雇が不当かどうかを判断していきます。

(1)人員整理の必要性
整理解雇が有効になるためには、会社にとって整理解雇が必要であることです。多少経営状態が悪くなっているだけでは、まだ人員整理が必要とはいえません。

(2)解雇回避努力
整理解雇をする前に、会社は、解雇を回避するための努力をしなければなりません。
たとえば資産を売却したり、他の合理化策を検討しなければなりません。

(3)人員選定の合理性
整理解雇が有効になるためには、解雇する人員を選定する選択基準の合理性が必要とされています。恣意的な人員選定は許されません。
一般的には一定の高年齢を基準にする、給料が高額の人を基準にする、などの選定がされます。

(4)手続きの妥当性
手続の妥当性も必要です。労働組合と協議したり、説明会を開いたり、など、手続保障も要求されています。

また、整理解雇のケースでも、解雇予告や解雇予告手当は必要です。

懲戒解雇

懲戒権の濫用

懲戒解雇は従業員に重大な問題がある場合にされますが、その場合にも、解雇の合理性や相当性が必要となります(労働契約法15条)。
従業員が重大な問題を起こしたとしても、懲戒解雇は重すぎる、というような場合には、不当解雇として無効になります。
たとえば、製造業の内勤社員が交通事故を起こして罰金刑になった、という場合「刑事事件を起こした」ということで懲戒解雇できるかといえば、それは難しいでしょう。しかし、会社のお金を横領して執行猶予付の懲役刑になった、ということであれば懲戒解雇は有効になるでしょう。
会社が従業員を懲戒解雇するには、必ず就業規則で懲戒解雇に関する規程をおいておく必要があります。懲戒に関する定めがないと、懲戒解雇はできない、ということになります。

不当解雇

会社が従業員を解雇したときに「不当解雇」として無効になるのは、以下のようなケースです。

解雇事由の無効

解雇事由が無効になるケースがあります。
たとえば思想や信条、性別などを理由とする解雇は無効です。
妊娠出産をしたことを理由とする解雇は無効です。
解雇をするには、正当な事由が必要である、ということです。

解雇権の濫用

先ほど説明したように普通解雇の場合、「解雇の合理性、社会的相当性」が必要です。また、整理解雇の場合、「整理解雇の4要素」が問われます。懲戒解雇の場合には懲戒権の濫用は許されません。
これらの場合には、不当解雇として、解雇が無効になります。

手続

普通解雇の場合、解雇予告を行っておらず、解雇予告手当も支払っておらず解雇の手続き的要件を満たしていない場合、即時に解雇の効力は発生していませんが、解雇通知後30日が経過した時点もしくは解雇通知後に解雇予告手当を支払ったときに、解雇の効果が発生すると考えられています(昭和35年3月11日)。

解雇が無効にあった事例

トラストシステム事件

派遣社員のシステムエンジニアが、派遣先でメールを私的利用したり私的に要員派遣業務をあっせんした事例において、裁判所は、メールの使用は服務規律に違反するけれども過大に評価できるものではなく、要員の私的なあっせんについては明確に事実認定できず、職務遂行能力も解雇が必要なほど低いとは言えないとして、解雇を無効と判断しました。

三井倉庫港湾事件

「必ず会社の労働組合に加入すべき」というユニオンショップ協定のある会社において、その労働組合を脱退して別の労働組合に加入した従業員が解雇された事例で、裁判所は、ユニオンショップ協定によって従業員に特定の労働組合への加入を強制することは許されないとして、会社による解雇は解雇権の濫用として無効とされました。

解雇されたら?

会社から不当解雇されたら、次のように対処します。

解雇理由証明書の発行を求める

解雇されたら、会社に対し「解雇理由証明書」の発行を求めます。解雇理由証明書とは、会社が考える「解雇理由」を書いた書類で、要求された場合には、会社は、この解雇理由証明書を発行しなければなりません。
後で不当解雇を主張するとき、まずは会社がなぜ解雇したのか、の理由を知らなければなりません。なぜなら、解雇が無効、というためには、解雇の要件を満たしていないことを主張しなければならないためです。
そのために、解雇理由を明らかにし、「その理由では解雇の要件を満たしていませんよ」と主張することになります。

証拠集め

次に不当解雇の証拠集めを行います。
就業規則
解雇通知書
解雇理由証明書
労働契約書
労働条件通知書
メール、メモ、業務日報など
録音

内容証明郵便

いよいよ会社に対し、不当解雇を主張する段階です。
後で証拠に残るように、「内容証明郵便」という郵便で送ります。内容証明郵便で送れば、配達記録がついて、「確かに送った」という証拠になりますし、どのような内容で送ったかも証明できます。
内容としては、解雇無効と地位確認、未払賃金、場合によっては慰謝料や損害賠償を求めることになります。

労働審判

内容証明郵便を送っても解決できない場合には、調停や労働審判を申し立てて裁判所で解決を目指します。
労働審判は、裁判よりも迅速に解決を目指すことができます。
弁護士に依頼して労働審判を申し立てるようにしましょう。

裁判

労働審判でも解決できない場合には、最終的に労働裁判をして解決します。労働審判をせずにいきなり裁判を起こすこともできます。裁判は弁護士に依頼して行うようにしましょう。

不当解雇を弁護士に相談するメリット

不当解雇されたら、なるべく早めに弁護士に相談した方がよいでしょう。

自分の場合は、不当解雇かどうか弁護士に相談する

解雇されたとき、それが不当解雇なら訴えて復職したり、慰謝料を請求できたりします。しかし、自分の場合が不当解雇なのか、あるいは適法な解雇なのか、自分で判断することは難しいでしょう。
法律の問題ですから、やはり弁護士に相談して不当解雇かどうか、弁護士に判断してもらうことをおすすめします。

弁護士に証拠の集め方を相談する

先ほど書いたように、不当解雇されたら、証拠を集める必要があります。それも裁判で有利になるような証拠が必要です。裁判で有利になるかどうかは、裁判に携わっている弁護士に相談するのが最も有効な手段です。
証拠の集め方を弁護士に相談するようにしましょう。

弁護士に交渉依頼する

従業員が自分で内容証明郵便を作成したり、元の上司や社長と交渉するのは精神的に大変でしょう。
弁護士に依頼すると、弁護士が代理人として書類作成や交渉窓口になってくれますので、精神的に楽です。

弁護士相手だと会社も真剣になる

従業員本人が会社に対して「不当解雇」と主張したり内容証明郵便を送ったりしても、会社側が真剣に対応してくれないことがあります。しかし、弁護士が代理人として出てくると、裁判を予想しますので、会社も弁護士に依頼したり、真剣に対応することになります。

弁護士に法的手続を依頼する

会社と交渉をしても合意できない場合には、労働審判や労働裁判により、強制的な手続に移行します。
これらの法的手続は素人では難しいので、やはり弁護士に依頼することになるでしょう。

以上、不当解雇を弁護士に相談するメリットを説明してきました。

更に詳しく知りたい人は、こちらを参考にしてください。

不当解雇を弁護士に相談した方がよい7つの理由
https://roudou-sos.jp/kaikopoint/

多くの解雇は無効です。
https://roudou-sos.jp/kaiko/