殺人未遂に使われた武器・狼牙棒とは? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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殺人未遂に使われた武器・狼牙棒とは?

2017年11月29日

今回は、マニアックな武器を使った殺人未遂事件の裁判の判決について解説します。

「先端にとげ…中国の武器「狼牙棒」で殴打 殺人未遂罪で54歳男に懲役4年判決」(2017年11月27日 産経新聞)

中国古来の武器「狼牙棒(ろうげぼう)」(全長約186センチ、重量約2.3キロ)で、近くに住むバングラデシュ人男性を殴ったとして殺人未遂罪に問われた千葉県富里市の無職の男(54)に対する裁判員裁判の判決公判が千葉地裁で開かれました。

判決によると、事件があったのは2017(平成29)年4月13日午後10時50分頃。
被告の男は同市内の駐車場内で、殺意をもって、狼牙棒を男性の頭にむけて2回振り下ろし、頭蓋骨骨折など全治1ヵ月の重傷を負わせたとしています。

裁判長は「殺意があったと認定できる」として、懲役4年(求刑懲役8年)を言い渡したということです。

犯行に使われた狼牙棒という武器は一般的には知らない人が多いでしょう。

狼牙棒(ろうげぼう)とは、実際に存在する金属製の棒状武器で、棒の先端部分にサボテンのような多数の棘(とげ)がついた紡錘の形をしたおもりを取りつけたもの。今回のサイズは、全長約186センチ、重量約2.3キロ。

強烈ですね。

近年では、中国の武装警察にも配備されているようです。

もともとの起源は古代中国の春秋時代とされ、時代が下った宋の時代(960~1279年)に発達し、その後の明の時代に書かれたとされる伝奇歴史小説『水滸伝(すいこでん)』に登場する猛将・秦明(しんめい)が使いこなす武器としても知られます。

『水滸伝』には、秦明が狼牙棒で敵を兜や鎧の上から叩き潰すという場面があったりしますが、鉄のおもりで兜や鎧ごと叩き潰し、しかも無数の棘が貫通して肉体を突き刺すわけですから、かなり殺傷能力の高い武器だといえます。

中国の武装警察、どんな場面で使うのでしょうか。。

さて、武器の話はこのくらいにして、法律の解説にいきましょう。

まずは、関係する条文を見てみます。

「刑法」
第203条(未遂罪)
第199条及び前条の罪の未遂は、罰する。

第199条(殺人)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

ちなみに前条とは、第202条(自殺関与及び同意殺人)で、「自殺教唆罪」と「自殺幇助罪」、「嘱託殺人罪」、「承諾殺人罪」などの罪について規定しているものです。

ところで、未遂罪の場合は刑の減免があります。

第43条(未遂減免)
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

平成20~23年の殺人未遂の判決を見ると、大体の相場としては、殺人罪の量刑から減軽されて、7年以下の懲役(執行猶予を含む)が判決全体の80%以上を占めるというデータがあります。

比率としては、3年以下(執行猶予)が31.75%、5年以下が23.16%、7年以下が20.18%で、重いものとしては15年以下が1.93%、13年以下が2.46%、11年以下が5.09%となっています。

今回の判決では、被告が使用した武器は狼牙棒という殺傷能力が高いものであったことからも、殺意があったと認められたということだと思います。

ちなみに、武器に関する犯罪としては以前、ヌンチャクに関する事件について解説しています。

詳しい解説はこちら⇒「ブルース・リーは軽犯罪法違反か?

なお、仮に人を殺傷しなくても、狼牙棒のような武器を所持、携帯していると軽犯罪法違反などの罪に問われる可能性があります。

武器が好きな人は、くれぐれも気をつけましょう。