タレントが線路立入書類送検 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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タレントが線路立入書類送検

2017年02月13日

80年代アイドルのファンにはショックな事件が起きました。
往年のアイドル2人が書類送検されたようです。

「松本伊代さん早見優さん“線路立ち入り”で書類送検」(2017年2月10日 テレビ朝日)

タレントの松本伊代さんと早見優さんが書類送検されました。
容疑は、鉄道営業法違反です。

報道によると、事件が起きたのは2017年1月13日午後。
2人はテレビの旅番組の収録のため京都市右京区を訪れたところ、撮影の合間にJR山陰本線の踏切から無断で線路に侵入し、写真を撮影。

翌14日、松本さんはその際に撮影した写真を自分のブログにアップしたところ、閲覧者たちから「不適切な行動」などの指摘が殺到。
そのため、15日にブログから写真と記事を削除し、2人とも謝罪のコメントを掲載していたようです。
では早速、条文を見てみましょう。

「鉄道営業法」
第三十七条
停車場其ノ他鉄道地内ニ妄ニ立入リタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス
「鉄道営業法」は、鉄道輸送における旅客や荷物の安全などについて規定した法律です。
1900(明治33)年に施行された法律のため、条文が漢字とカタカナの仮名交じり文になっています。

また、罰則が10円以下となっていますが、こちらは「罰金等臨時措置法」という物価変動に伴う罰金や科料の額などに関する特例を規定する法律によって、現在は1000円以上1万円未満を徴収となっています。

今回の書類送検については、簡単にいえば、無断で線路に立ち入る行為は危険だから罰します、ということですね。

ところで、別の報道によると、松本さんのブログにはこんなコメントもあったようです。

「京都、竹林の道の途中 踏切で優ちゃんとパシャリ」
「その瞬間踏切が鳴り、慌てて逃げる2人」

これは危険です。
仮に、列車の進行を妨げて鉄道会社の業務を妨害すれば鉄道営業法違反だけでは済まない可能性があります。

「刑法」
第234条(威力業務妨害)
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
前条とは、第233条です。

「刑法」
第233条(信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
さらに、もし事故が起きれば大変なことになります。

「刑法」
第125条(往来危険)
1.鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、2年以上の有期懲役に処する。
第126条(汽車転覆及び同致死)
1.現に人がいる汽車又は電車を転覆させ、又は破壊した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。

3.前2項の罪を犯し、よって人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。
今回の2人が列車を転覆させるようなことはないでしょうが、一応解説しておきます。

万が一にも列車が転覆、死者が出るということになっていれば、刑事罰は死刑か無期懲役になる可能性もあるのです。

さらに民事では、不法行為によって莫大な損害賠償金を支払わなければいけなくなります。(民法第709条)

報道によると、今回の事件の現場は京都の嵐山のようですが、近年、日本全国の観光地などで同様な事件も起きているようです。

特に目立つのは、「撮り鉄」と呼ばれる鉄道ファンが起こす事件で、列車を撮影するために無断で線路に侵入し、死亡事故や列車の運休や遅延という事態にまでなっていることが各地で問題になっています。

また、認知症の高齢者が列車に轢かれて高額な損害賠償金を請求されるという事件も起きています。

詳しい解説はこちら⇒「鉄道事故の賠償金は、いくら?」
https://taniharamakoto.com/archives/1421/

観光地で気分が浮かれるのもわかりますが、線路に無断で侵入することは自分も他人も傷つける重大事故につながる危険性があることを、しっかり認識しなければいけません。

最近は、ブログやSNSなどに投稿したいがために、面白半分で色々なことをしようとする人がいますが、人の注意をひくことは、法律違反となる可能性もありますので、十分注意していただければと思います。