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都知事選で公職選挙法違反はあったか?

 >都知事選で公職選挙法違反はあったか?

2016年8月10日

今年、2016(平成28)年の東京都知事選挙は、7月31日に投開票を実施。
小池百合子さんが当選を果たし、第20代の東京都知事に就任しました。

歴代最多となる21名が立候補する中、本命と目された主要3候補の争いに注目が集まりましたが、法律の視点から見ると、また違ったポイントが浮かび上がってきます。

今回は、主要3候補が選挙活動中に行った行為が、はたして法律違反になるのかどうかについて解説します。

関連する法律は、「公職選挙法」。
問題となる行為は次の3つです。

①増田寛也さんの「穴あきのビラ」の配布
②小池百合子さんの「夜20時以降のタスキがけ」行為
③鳥越俊太郎さんの応援演説で「歌謡ショー」開催
【公職選挙法とは?】
「公職選挙法」は、1950(昭和25)年に制定された法律です。
それまであった衆議院議員選挙法・参議院議員選挙法の各条文や、地方自治法における選挙に関する条文を統合する形で新法として成立しました。
規定しているのは、国会議員や地方公共団体の議会の議員・首長など公職に関する定数と選挙方法、選挙権と被選挙権、選挙運動などです。

その目的は以下の通りです。

第1条(この法律の目的)
この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする。
【穴あきのビラの配布は利益供与?】
まず、①のケースから見ていきます。

選挙活動中、増田寛也さんの陣営では、うちわにも見える“穴あきのビラ”をスタッフが有権者に配布していました。
これが、有権者への利益供与となる「寄付行為」に当たるのかどうかです。

「公職選挙法」
第199条の二(公職の候補者等の寄附の禁止)
1.公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域。以下この条において同じ。)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。(後略)
これに違反した場合、3年以下の禁固又は50万円以下の罰金に処されます。(第248条)

穴あきビラを配っていたのはスタッフで、本人は「配っていない」、「これは、うちわではありません」と発言していたようですが、それは筋が通らない話のようにも思えます。

では、このビラが「寄付」になるのかどうか、という問題について、条文をから考えてみます。

第179条(収入、寄付及び支出の定義)
2.この法律において「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のものをいう。
過去の判例では、寄附に該当したものとして、ビール券(最高裁平成12年11月20日判決)や、「初盆参り」として現金5000円(福岡高裁平成8年12月16日判決)などがあります。

今回のポイントとなるのは、ビラが「うちわのように使用できる」という点です。

うちわは、主に身体に風を送って暑さを和らげるための物品です。
街頭で無料配布しているものもありますが、商品として販売されているものもあります。

つまり、経済的価値がある、ということですね。

であるならば、うちわは「財産上の利益がない」とはいえないため、公職選挙法に違反する可能性があります。

一方、問題の「穴あきのビラ」は、形としては、うちわとしては少々使いづらいといえます。
しかし有権者は、このビラをうちわ代わりに使っていたようです。

であるならば、増田さんの陣営が、このビラをうちわに使用する目的で丸い穴を空けたかどうか、がポイントとなってきます。
仮に、うちわに使用する目的でビラに丸い穴を空けた、というのであれば、公職選挙法に違反する可能性があるでしょうが、そうは言わないので、結局法律違反にはならないでしょう。
2014(平成26)年10月、国会議員(当時の法務大臣)が自らの選挙区の祭りで、うちわを配ったとして辞任に追い込まれた件が記憶に新しいところですが、「明らかにうちわと判断される物品を配布した」という点で今回の問題とは異なるものといえます。

なお、罰則は以下の通りです。

第221条(買収及び利害誘導罪)
次の各号に掲げる行為をした者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
一 当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき。
【夜20時以降のタスキがけ行為は法律違反?】
次に、小池百合子さんの行為について考えてみます。

2016年7月16日、地元の盆踊り大会に飛び入り参加した際、夜の20時以降であるにもかかわらず、選挙用のタスキをかけ、選挙スタッフやマスコミを引き連れて会場に登場したようです。

この行為が公職選挙法違反になるのではないか、という声が聞かれました。

条文を見てみます。

第140条の二(連呼行為の禁止)
何人も、選挙運動のため、連呼行為をすることができない。ただし、演説会場及び街頭演説(演説を含む。)の場所においてする場合並びに午前八時から午後八時までの間に限り、次条の規定により選挙運動のために使用される自動車又は船舶の上においてする場合は、この限りでない。
午後8時から翌朝の午前8時までの間で禁止されているのは「連呼行為」です。
つまり、タスキをかけていても「都知事選には小池百合子をよろしくお願いします」といったような連呼をせずに歩いていれば許容されるということです。

連呼行為とは、短時間に同一内容の短い文言を反復して呼称することをいいます。
拡声器を使っているかどうか、タスキをかけているか、のぼりを使っているかどうかは無関係です。

今回、小池さんが「小池をよろしく!」などの言葉を連呼していれば公職選挙法違反になる可能性がありますが、そうではなさそうです。

この点も、やはり法律違反にはならないでしょう。

罰則は以下の通りです。

第243条(選挙運動に関する各種制限違反、その一)
次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
一の二 第140条の二第一項の規定に違反して連呼行為をした者
【応援演説で歌謡ショー開催?】
最後に、鳥越俊太郎さんのケースです。

2016年7月18日、東京・巣鴨での街頭演説の際、「40年来の友人」であるという歌手の森進一さんに演説をバトンタッチ。
その際、聴衆からのリクエストに応えて、森さんが代表曲である『襟裳岬』のサビ部分を披露したというものです。

この場合も、①の増田さんのケースと同様に、歌の一節が「財産上の利益」になるかどうかの判断となります。

歌手の歌を聞くことは、会場の入場料を払うのが通常であり、財産上の利益といえる場合があると思います。

したがって、応援演説で歌を一曲披露し、ミニコンサートのような演出になるのであれば、通常は対価が発生する可能性があり、公職選挙法違反となる可能性があります。

しかし、歌の1節を披露する程度では、それ自体が取引の対象となるともいえず、それが財産上の利益とまでは評価されないものと考えます。

結論としては、法律違反にはならないでしょう。

なお、仮にこれが公職選挙法に違反した場合の罰則は、①の場合と同じになります。

問題提起をしておいて、なんですが、結論としては、今回の都知事選は、法律を守って、行われた、ということで良かったと思います。

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