学校の柔道事故での慰謝料は?(弁護士解説) | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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学校の柔道事故での慰謝料は?(弁護士解説)

2016年08月10日

学校で部活や授業で柔道をやることがありますが、そこで怪我をして、重い後遺障害が残ったり、場合によっては死亡したり、ということが起こります。

まず、授業については、学校の教育活動の中心をなすものであり、生徒は教師の指導に従わなければならないわけですから、授業を実施する教師は、授業中に生徒の心身に生じうる危険を予見し、回避するために適切な措置をとる注意義務があります。

そして任意の活動である部活動よりも高度の注意義務を負っている、と考えられます。

さらに、柔道は、「武道」であり、身体接触を伴うものですから、それ自体すでに生徒の生命身体に危険がおよぶことが予見されるものです。

したがって、柔道を授業で実施する教師としては、生徒に対し、生徒の心身に危険が生じないよう適切に指導するとともに、危険を回避するために適切な措置をとる注意義務があるといえます。

また、教育活動の一環として行われる学校の課外のクラブ活動(部活動)においては,生徒は担当教諭の指導監督に従って行動するのであるから、担当教諭は、できる限り生徒の安全にかかわる事故の危険性を具体的に予見し,その予見に基づいて当該事故の発生を未然に防止する措置を採り、クラブ活動(部活動)中の生徒を保護すべき注意義務を負います(最高裁平成18年3月13日判決)。

そして、教師がこれらの注意義務に違反し、そのために生徒が怪我、あるいは死亡した場合には、民間学校の場合には、教師個人に不法行為に基づく慰謝料など損害賠償責任が発生します。

また、民間学校の場合は、学校も債務不履行に基づく損害賠償責任や教師の使用者として、使用者責任が発生します。

国公立学校の場合には、国家賠償法に基づき、国や地方公共団体に損害賠償責任が発生します。

では、過去の事例で、学校における柔道事故で、どのような裁判が行われたか、見ていきましょう。

【松山地裁平成5年12月8日判決】

中学校三年生の体育の授業において、担当教諭の指示により柔道部員である生徒が大内刈りを掛け、受け身を失敗した相手の生徒に頭部外傷を負わせた学校事故。生徒は、頭蓋骨形成術施行のため、頭に強い衝撃を加えることがないようにしなければならず、日常生活が制約され、視力が低下するなどの後遺症が残ったため、国家賠償法に基づき、地方公共団体に対して、4873万2492円の損害賠償を求めて提訴しました。
判決では、教諭の注意義務として、「教諭としては、原告の体力及び運動能力が一般の生徒に比し劣っている上、原告がそれまでに柔道の経験がなく、受け身の練習をしたとはいえ、その練習時間も少なく、しかも、技を掛けて受け身をした経験がないため、技に対応して受け身をすることについては未熟であることを認識しており、現に、原告を含め生徒六人が福島に一回目に大内刈りを掛けられたときには上手に受け身をすることができなかったことを十分に分かっていたのであるから、原告に対しては受け身のしやすい大腰等の技を掛けて受け身の練習を行わせるべきであり、また、技を掛けて受け身の練習を行わせるときには、柔道の指導方法を学んでいた野本教諭が自ら技を掛けるべきであった」と認定しました。

その上で、「教諭は、少し柔道の心得のあるとはいえ、同じ三年生の福島に命じて、初心者にとっては受け身が必ずしも容易ではなく、受け身をしっかりと行わなければ頭部を打つ危険性を内在する大内刈りを掛けさせて受け身の練習を行わせ、技を掛けられた生徒全員が受け身に失敗していることを知りながら、福島に対して、「中途半端に技を掛けるな。」、「まだ受け身の不十分な生徒もいるから、相手の右袖を軽く持っておいてやれ。」と指示し、原告らに対しては「踏ん張ってはいかん。」と指示しただけで、原告ら生徒に二回目も同じ技を掛けさせたため、原告が受け身を失敗し、本件事故が発生したものである。したがって、野本教諭には、初心者の原告に受け身の練習をさせるに当たり、初心者にとっては受け身が必ずしも容易ではなく、受け身をしっかりと行わなければ頭部を打つ危険性を内在する大内刈りを掛けさせるのは適切ではなく、これを選択したこと自体に誤りがあるだけでなく、自ら技を掛けず、少し柔道の心得がある福島に大内刈りを掛けさせた点についても、前記注意義務に違反しており、野本教諭には、本件事故発生について過失がある」と判断して、損害賠償義務を認めました。

その結果、裁判所は、地方公共団体に対し、1892万1547円の損害賠償を命じました。
【東京高裁平成25年7月3日判決】

高校における部活動である柔道部に1年生として在籍していた生徒が,柔道大会の県予選会の前に行われたウォーミングアップ練習において他の柔道部員に投げられた際、急性硬膜下血腫を発症した学校事故。生徒には四肢麻痺で常時介護を要する重度の後遺障害が残ったので、学校に対し、合計2億5000万円余の損害賠償を求めて提訴しました。

判決では、生徒の柔道の技術が未熟であり、前日に脳震盪と診断されていること、練習相手である柔道部員との技能差、体格差が大きく、試合前であるから、試合に準ずる態度で臨むことが予見できたのであるから、生徒を練習に参加させないか、参加させるとしても、生徒の安全を確保するために適切な指導をすべきであったのに、それを怠った、という過失を認定しました。

その結果、裁判所は、学校に対し、1億8000万円余の損害賠償を命じました。

このように、柔道は、武道であり、それ自体に危険を発生させるものであり、その実施には、生徒の生命身体に対する細心の注意を払った適切な指導が要求されます。

それにもかかわらず、生徒が怪我をし、場合によっては死亡した場合には、教師に安全配慮義務がある可能性があり、その場合には、学校あるいは国や地方公共団体に損害賠償責任が発生します。

重篤な後遺障害が発生する場合には、慰謝料など損害賠償額も高額になります。

柔道による学校事故が発生した場合には、弁護士にご相談ください。

ご相談は、こちらから。
http://www.bengoshi-sos.com/school/